「うぅ、頭痛い……」
「見た感じ疲労が溜まってたみたいね。学校には連絡しておくから大人しくしてなさい」
翌日。昨日の体調の悪さが悪化して私は熱を出して寝込んでいた。昨日あんな状態だったから日付が変わるまで起きてればこうなる可能性はあったけど、まさか本当に悪化するとは。不幸だわ。
本当のところは行きたいけど、こんな状態で行っても誰かの死を回避することが出来る気がしない。逆に私を庇う形で誰かが死んじゃう可能性だってある。
「はーい」
「それじゃ、私は仕事に行くから。お昼は冷蔵庫に入れてるからレンジでチンしてね」
「うん。わかった。いってらっしゃい」
「ええ。いってきます」
だから、今は体調を戻すことを専決にしないと。今日中に治して明日から復帰する。それがたぶん最善なはず。
ママはそう言って家を出て、家には私一人になる。
喉が渇いたから重い体を起こしてキッチンまで行き、冷蔵庫からお茶と少しは食べとこうとプリンを取り出す。で、無音はあれだからテレビをつけると椅子に座る。
テレビはちょうど天気予報をやっており、今日は一日中雨のようだった。それを眺めながら、プリンを食べていると占いコーナーに変わる。
『今日の十二位は……魚座のあなた。足元に注意かも』
「魚座って花丸じゃない」
今日の最下位が魚座ってことは花丸の身に危険が迫るかも。やっぱり、学校に行った方が……ううん。今日行ったところで今の私の状態じゃ何もできないか。
今の私に出来るのは無事を祈ることくらい。どんな事故が起こるのかわかってれば、最悪それに気を付けるように伝えることが出来るけど、生憎とどんな事故が起こるかわからない。今まであった事故か、はたまた初めてのタイプの事故か。
「はぁー。完全に手詰まりじゃない」
ピロンッ
「ん?」
スマホに通知が来て、それを見ると朝練が中止の連絡だった。火曜日は毎回天気が荒れて朝練が中止になっているからさして驚きはない。となると放課後の練習も早めに切り上げになるのかしら?
土砂崩れからのバスの転倒、海に水没、視界不良からのスピンしてきた交通事故などなど色々なことが火曜日には起きている。比較的土砂崩れが起きている比率は高いから、今回も土砂崩れが起こる確率は高い。でも、土砂崩れに気を付けてと言うのも変に思われそう。
ヨハネ『わかったわ。それと体調崩したから今日は休むわ』
ダイヤ『悪化してしまいましたか。わかりましたわ。善子さんは安静にして療養してくださいね』
リコ『暇だからってゲームしたりしないで寝てなよ』
ヨハネ『流石におとなしくしてるわよ』
マル『と言いつつやってそう』
チカ『流石にないでしょ?それよりも放課後にお見舞い行かないと』
マリ『Oh.それはいいわね』
ヨハネ『お見舞いは来なくていいわ。うつしちゃったら悪いし』
ルビィ『確かにうつっちゃう可能性もあるね』
ヨウ『了解であります』
カナン『じゃっ、早く治して復帰してね。待ってるから』
ヨハネ『みんなも気を付けなさいよ。天気予報だと一日中豪雨っぽいから』
とりあえず来ないように言ったけど、果たして本当に来ないか。割と誰かしら来ちゃうのよね。これに関してはどうにもならないか。
一応みんなにそれとなく注意はできたけど、土砂崩れって注意して避けられるようなものではないわよね
「誰も来なかったし、花丸たちが事故に遭ったって連絡も無かったわね」
夜。私は部屋で一人スマホの画面を眺めながら呟く。結局、先に釘を刺していたからか誰かがお見舞いに来ることは無かった。代わりに大量のメッセージがチャット内に投下されたけど。
マリーと千歌は授業合間の休憩の度にメッセージを飛ばしてきたし、他の皆は二人に比べれば少ないけど、それなりの量にはなった。絶対二人はそれぞれリリーとダイヤに何かしら言われてそうだけど。でも、気にかけてくれるのはうれしかったかしら。
でもそのおかげで皆の状況も割とわかった。と言っても授業のある時間帯は基本的に寝ていたから見れたのはお昼時と放課後辺りだけど。放課後辺りからはあまり眠くなくて、ベッドの上で本を読みながら時々来るメッセージを見ていた。そう言う訳で、花丸が事故に遭わずに無事だということはわかった。でも、十九時頃に道の木が倒れただとかで一時的に通行止めになっているだとか。雨が弱まったら近くの人たちで撤去するらしいけど。
「今日も何事も無く終わった。やっぱり、もう死の運命は終わったってことなのかしら?」
昨日に引き続き、誰も事故に遭わなかったことが気になる。事故に遭わない方がいいけど、何十回も繰り返してきたのに急に誰かが死ぬ自体が無くなったことで逆に落ち着かない。偶然なのか、それとも別の何かが起きて回避されているのか。
今のところ起きている変化と言えば、私が昨日倒れたことと今日体調を崩して一日早く休んだことくらい。もしかして、私の身に起きている変化と何かあるのかしら?でも、それがみんなと関係するとは思えないけど。
「はぁー。考えてもわからないわね。もう寝て明日に備えよ」
~☆~
ヨハネ『治らなかったわ(キッパリ)』
マル『なんでそんなに堂々としてるの?』
リコ『やっぱり……』
マリ『そんな気はしてたわ』
ヨハネ『なんでよ!』
翌日。私は体調が回復せず休む連絡をした。具合が悪いのに日が変わるまで起きてたせいかしら?でも、花丸が事故に遭う可能性があった訳だから起きている必要はあった。花丸が事故に遭って日をまたいだ場合、どっちの日付に飛ぶかわからないから。
もし、事故の翌日、要するに願った日の朝にしか戻れなかったらやり直せなくなる可能性もある。最悪、土曜日に過去に飛んで月曜日にリセットもあるけど、今回のループは異常だから過去に飛べる保証もない。それに、私は土曜日を乗り越えたいわけだし。
あと、みんなの反応辛辣じゃない?
ダイヤ『まぁ、治ってないのはしかたがないですし、今日も安静にしていてくださいね』
ヨハネ『ええ、わかってるわ。うつすと悪いからお見舞いは来なくていいからね』
カナン『了解。じゃっ、お大事に』
早々にチャットを切り上げると、ベッドから出てリビングに行く。ママはもう学校の方に行っているから私一人。別に誰もいないから私が学校に行っても誰かに止められることは無いけど、足元はふらつくし止めとこ。それこそ事故のもとになりそうだし。
「何かないかなぁ」
冷蔵庫の中をのぞきながら軽く食べれるものが無いか探す。中には私の具合が治らないことを見越していたのかヨーグルトやらプリンやらが入っていた。ありがたいけどなんだか複雑な気分。まぁ、いいや。
ヨーグルトを手に取ってテレビをつけると食べ始める。
『十二位は双子座のあなた』
「……マリーの星座ね」
今日の最下位がマリーの星座だからマリーの身に危険が迫るってことよね?二日間は何も無かったけど、今日が大丈夫って訳でもない。水曜日だと、エレベータの転落、階段の崩落、マンションに車が突っ込んでくるとかで大体私のお見舞いに来た帰りに起きてるのよね。となると、お見舞いに誰も来なければ事故はほぼ防げるはず。
今日も来なくていいことはさっき伝えたから平気よね?
ピンポーン
「ん?なんだろ?」
夕方。だいぶ寝たからか眠気が無くてベッドの上で本を読んで安静にしているとインターフォンが鳴った。通販で頼んでいた物が来たのかもと思いながら、でも特に頼んだ覚えもなくインターフォンの画面を見れば、そこには宅配業者の人ではなく、
「なんで、二人がいる訳?」
リリーとマリーが映っていた。
なんで二人がここに?来なくていいって言ったはずなのに。どうしよ。居留守?寝てたことにすれば帰るかしら?でも、わざわざここまで来たのに追い返すのも……。
『善子出てこないわね』
『寝てるのかな?』
どうしたものか悩みながら、外の音だけ聞こえるモードで二人の会話を聞く。もしかしたら二人が来た理由が分かるかもだし。
『あるいは倒れてる?』
『え?』
『例えばよ』
『あっ、そうだよね……』
聞いていれば、なんでか私が倒れているかもという話になる。いや、倒れてないから。勝手に倒さないで。
『よっちゃんを助けないと!』
『あれ?梨子?』
なんかまずそうな雰囲気。てか、私が倒れているかもと言う流れに既視感が……。
~
「非常事態だからピッキングして開けないと!」
~
あっ、いつしかのお見舞いに来た時の千歌だ。あの時も私が倒れてるかもとか予想してピッキングしようとしてたし。
『梨子、ピッキングはダメよ!』
『このままじゃ、よっちゃんが……』
「勝手に人を倒さないでちょうだい」
錯乱しているリリーに、それを抑えるマリー。人の家の前であんまり騒がれるのは迷惑よね。だから、インターフォン越しで声をかける。
すると私の声で二人の動きがピタッと止まり、レンズを二人して見る。
『あっ、よっちゃん』
『Hello、善子』
「で、何しに来たの?」
『お見舞いデース』
「来なくていいって伝えたはずだけど?まっ、入って」
来てしまったものは仕方ないし、二人を部屋に上げる。そもそもここまで来た時点で、今から帰った所で事故は避けられないだろうし。だから、少しでも時間をかけてどうにかする方法を考えないと。でも、今回はエレベータか階段か。どっちだと事故が起きないんだろ?
「「お邪魔します」」
「いらっしゃい」
二人を私の部屋に入ると、私はベッドに腰かけ、リリーは私の隣、マリーは椅子に座る。
「はい。今日のプリントと授業のノートだよ」
「ありがと。で、どうして二人なの?これ渡すのなら花丸たちでよくない?」
リリーが鞄から何枚か紙を取り出し、私に手渡す。それは学校からの連絡プリントと授業ノートで、おそらくは花丸たちから渡されたようだった。でも、花丸たちがリリーたちに託す理由が分からない。
「もしかして二人の身に何か?」
「ううん。全員でお見舞いに行くのはお邪魔かなってことで二、三人で行くことのになってじゃんけんしたら、私と鞠莉ちゃんが負けて」
「負けた人が来るってバツゲームか何かなの?」
「そう言う訳じゃないわ。勝った人だとありきたりだからって理由よ」
「また紛らわしいことを」
一瞬みんな本当は来たくないけどプリントを渡さないといけないから仕方なく来たのかと思っちゃった。ただ単になんとなくそうなっただけなのだと分かって安心……って、今日は事故が起こるかもだから安心できないじゃない。
「あっ、そうだ。お見舞いの品よ」
マリーがそう言って鞄からフルーツの入ったバスケットを取り出す。この光景にデジャヴを感じる。鞄のサイズより大きく見えるのは気のせい?
「どうやって鞄に入れてたの?」
「シャイニー!」
「答える気ないのね」
それから少し話をすると「病人なのだから寝ないと」と言われベッドに寝かされる。でも、朝から割と寝てたから眠れる気がしない。それに、このまま帰したら二人が事故に遭っちゃう。
「よっちゃん、寝ないと治る物も治らないよ」
「でも眠くないし」
「よしよし」
リリーになんでか頭を撫でられる。なんか子ども扱いされてる気がするんだけど。
でも、撫でられるとなんだか落ち着く。すると、さっきまでは眠くなかったのに急に眠気が。ううん。寝る訳にはいかない。でも、落ち着く……。
~☆~
「ん、ん~」
気が付くと私は寝ていた。
部屋は暗くなっており、部屋の中には私以外の人の気配が無い。
「って、私寝ちゃった!?」
寝ぼけてたから反応が遅れたけど、二人がいない。普通に考えれば寝ている間に帰った。でも、今日は事故が起こる可能性があった訳でちゃんと見送ろうと考えてたのに。
「事故は起きていないみたいね」
ベッドの上で状況を確認する。仮に事故が起きていれば救急車のサイレンの音が響いていただろうし、寝ていれば流石に音で起きる。でも、そんな音が響いた様子はないし、寝ていて聞き逃したとは思えない。
スマホを見れば、
チカ『善子ちゃんどう?』
マリ『ちょうど寝た所よ。見た感じ安静にしてれば明日には学校に来れそう』
ルビィ『良かった。じゃぁ、明日には善子ちゃんに会えるね』
みたいな感じでチャットに書かれていた。その後にもちょくちょく更新されていて、二人はもちろん誰も事故に遭った様子はなかった。
事故に遭わずに済んだのなら良かった。
けど、どうして事故が急に起こらなくなったんだろ?三日連続で何も起こらないってことは、単純にもう起こらなくなっただけならいいけど、また起こる可能性も無きにしも非ず。気を緩めて明日急に起こる可能性もあるし、明日以降も警戒を緩めないでおこ。
とりあえず、夕飯まではまだ時間が少しあるし、今のうちに今日の分を途中まで書いとこ。今日はほとんど寝てたけど、どうかこうかしら?いつも寝てる時はどう書いてたっけ?
どう書いたものかと悩んで、少し前の日記を見返していく。そして、
「あれ?この日と今日って似てる……まさかね」
一個気になることが生まれたけど、それはきっと偶然だと思い私は日記を閉じた。