繰り返される堕天   作:猫犬

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今回は曜ちゃんとルビィちゃん視点です。


22 あの日の出来事

『曜!』

『……良かった、善子ちゃんが、無事で』

『なんで、私をかばったりなんか!』

『あはは。気づいたら、体が勝手に、動いちゃってて』

『待ってて、もうすぐ救急車が来るから』

『あー、ちょっと、厳しい、かも。身体の、感覚が、全くないや』

 

雑貨屋に寄った帰りに車に轢かれて倒れる私に涙を流す善子ちゃん。私の状態は悲惨で、もう間に合わないのが一目で分かる。私はそれを第三者の視点から見ていた。

どうして、私が轢かれているのか。どうして、第三者のような視点なのかはわからない。

 

暗転。

 

真っ暗な部屋のベッドの上で善子ちゃんが泣いている。私はどうやら死んだらしく、ママや千歌ちゃんたちが手術室前で泣いていた。そして、善子ちゃんはベッドの上で自分を責めていた。

みんなが私の事を悲しんでくれるのはうれしいけど、私のせいでみんなが泣いているという光景に胸が痛む。

すると、善子ちゃんはおもむろに立ち上がると魔法陣の描かれた布を広げ、机の上に置かれた黒い水晶のペンダントを手に取って布の上に座る。

 

『堕天使ヨハネが命じます……リトルデーモンよ、私に力を……時よ戻れ!時間遡行(アンチクロック)!』

 

そして、詠唱のようなことをする。でも、何も起こらない。善子ちゃんがよく儀式をしているのは見るけど、何かが起きたという話は聞いたことが無いから、さして驚きはない。

 

『曜……帰って来てよ……』

 

善子ちゃんは落胆すると、また涙を流す。今すぐにでも善子ちゃんのそばに行きたいけど、今の私はどう言う訳かそれ以上近づけず、ただ見ていることしかできない。

そして、

 

『我願う。故に我乞う。曜の居る日常を!』

「うわっ!」

 

善子ちゃんが呟くように言葉を口にすると、善子ちゃんが握っていたペンダントの水晶からまばゆい輝きが放たれ、私は声を上げた。

 

 

~~

 

 

「うわっ!」

 

私は声を上げながらガバッと身体を起こして目を覚ました。そこは私の部屋で、どうやらあれは夢みたい。

まぁ、私が死んじゃう夢なんて縁起が悪いよね。なんで、あんな夢見たんだろ?

夢の内容が頭に残っているせいか気になる。でも、朝練が今日はあるからあまりのんびりしている時間も無い。

 

「曜、おはよう」

「おはよう、ママ。手伝うね」

 

制服に着替えて、鞄に今日の荷物を詰め込んで階段を降りてリビングに行く。その間にも夢のことが気がかりで考えていた。

ママは朝ごはんを運んでいるところだったから、一度考えるのを中断してソファーに鞄を置くと、キッチンにある朝ごはんを机に運ぶ。そして、全部運び終えると椅子に座って食べ始める。

 

「曜、何かあったの?」

「ん?どうして?」

 

食べていると急にママにそんなことを聞かれた。どうしてそんなことを聞かれたのかわからないから首を傾げる。別に体調はいつも通りだけど。

 

「いつもなら挨拶しながら敬礼してるでしょ?でも、今日は特にしなかったから」

「あー。ちょっと変な夢を見ちゃって」

「変な夢?」

「うん。まぁ、話すほどのモノじゃないから平気だよ」

「そう?ならいいけど」

 

あんな夢を話すのもどうかと思うし、ママもそれ以上は聞いてこないからこの話はおしまい。今日は頑張って普段通りにしよっと。みんなに心配はかけたくないし。

 

『今日の十二位は牡羊座のあなた!』

「あっ、私だ」

「最下位ね」

 

すると、点けていたテレビで占いが始まり反応する。普段はあまり気にしないけど、流石にあんな夢を見た後だとどうも気になってしまうなぁ。今日はいつも以上に気を付けよっと。

それから朝ごはんを食べ終えると家を出た。ママにはさっきのことを心配されたけど、大丈夫と言って出てきた。

バス停まで歩いて、バス停でバスが来るのを待つ。善子ちゃんと一緒のバスになるかな?

最近は善子ちゃんが乗ってるか乗ってないかが気になる。スマホで聞けばいいかもだけど、それはそれでつまらないからゲーム感覚で。善子ちゃんが乗っていればその日はいい事があるはずといった感じで。

バスが来るとそれに乗り込んで後ろの方に行く。善子ちゃんはいつもの後ろから二列目に座っていて、スマホの画面をジーと見ていた。

よし!いつも通りに挨拶をしないとね。

 

「善子ちゃん、おはヨーソロー」

 

 

~~

 

 

その日の放課後、善子ちゃんが練習中に倒れた。私たちは慌てて善子ちゃんを運び、保険の先生が見るにただの過労から来た貧血だろうということだった。寝ていればよくなるということでひとまず安心。善子ちゃんが倒れたことで皆も疲労が溜まっているかもと言うことで今日の練習は早めに切り上げられた。

善子ちゃんの事が心配で皆善子ちゃんが起きるまでいたかったけど、終バスが近づいても起きる気配が無くて私たちは帰ることになった。鞠莉ちゃんと千歌ちゃんは残ることになって、起きたら志満姉に送ってもらうだとか。

 

「善子ちゃんが起きたらみんなに連絡するね」

「うん。お願いね」

 

そう言って私たちは帰り、淡島を過ぎるとバスの中は私を含めて数人。いつもなら善子ちゃんと喋って過ごすけど、今日は一人。だから、静かな時間が過ぎる。

本当は駅前によって衣装の案でも考えようと思ってたけど、どうしよう。あそこからなら歩いて帰れなくもない……。

 

「まっ、明日でいっか」

 

でも、一人で行っても寂しいだけだし、朝見た夢のことも不吉だから寄り道はしないでおこ。正夢ってこともあるかもしれないしね。

そうして、寄り道せずに家に帰る。

 

チカ『善子ちゃん起きたよ~』

 

家に着いてしばらくすると、千歌ちゃんから皆に連絡が来た。私は気づくと素早く文字を打つ。

 

ヨウ『よかった。善子ちゃん、平気そう?』

カナン『起きたんだね。良かった』

マリ『眠そうにしてるけど、まぁ平気そうかしら?』

リコ『たぶん平気なのかな?』

 

みんなもすぐに返信をして善子ちゃんの無事を喜ぶ。ダイヤさんとルビィちゃん、花丸ちゃんが反応しないのは今手が離せないところなのかな?

 

ダイヤ『席を外していましたわ。とりあえず、安心ですね』

ルビィ『良かった。起きてくれて』

マル『お風呂入ってたずら~』

ヨハネ『私の心配は!?』

 

それから少しして三人からも返信があったのだった。

 

 

~~

 

 

「うぅ。思いつかないよぉ」

「まぁまぁ、今日はまだまだ時間があるし、明日の練習は午後からだから遅くまで起きて頑張ろ?」

「できればいつも通り寝たいけど」

 

土曜日の放課後。そろそろ本格的に曲を完成させなくちゃまずそうになったから千歌ちゃんの家に泊まり込んで一気にやろうとしていた。

私は衣装案がまだだけどとりあえず地区予選でやる曲の衣装を作っている。この衣装はまだ当日まで一月近くあるから時間的に余裕はある。ルビィちゃんとダイヤさん、善子ちゃんで製作は進められるし。

衣装を作りながら月曜日見た夢を思い出した。まぁ、正夢にはならずに済んだからあれ以来すっかり忘れてたけど。

唸る千歌ちゃんを励まし、梨子ちゃんはさっさか書き上げて欲しそうに言う。でも、流石に立て続けに二曲考えるのは難しいよね。

千歌ちゃんの部屋に来た私たちはそれぞれ作業を進めている。千歌ちゃんは紙とにらめっこして歌詞を考え、梨子ちゃんは千歌ちゃんが遊ばないように監視しながら楽譜に書きこんで行く。

 

「そう言えば、私月曜日に変な夢、見たんだよね」

 

なんとなしにそう言う。千歌ちゃんは完全に集中力が切れちゃってるし、気分転換にでもなればと思って。変な夢の話をしたところでそんな夢見たんだぐらいの反応が返って来そうだし。

 

「変な夢?」

「うん。なんか私が事故に遭って死んじゃう夢。まぁ、善子ちゃんが呪文を言ったところで起きちゃったからその後は知らないけど」

「「え?」」

「ん?」

 

「なにその夢~」とかみたいな反応を期待してたけど、二人は驚いたような表情をする。あれ?想像してた反応と違う。

 

「私も水曜日に私と鞠莉ちゃんが死んじゃう夢を見たんだけど……」

「チカも昨日千歌が死んじゃう夢見た……」

「え?」

 

 

~ルビィ~

 

 

『二人とも、大丈夫?』

『『……』』

 

学校からの帰りに横転したバスの中、ルビィと花丸ちゃんは倒れていて、善子ちゃんが駆け寄る。ルビィはそれを離れた所で見ている。どうしてルビィが倒れているのにそれが別のところから見えているのかわからない。でも、ルビィたちの身体の下は赤く染まっていてそれが血なのだと一目で分かった。そしてその量からしても、急いで病院で手術をしないと間に合わないことも。

たぶん夢だよね?ルビィと花丸ちゃんが死ぬなんて嫌だよ!

 

 

暗転。

 

 

場所は変わってそこは病院。Aqoursの皆がすぐに集まり、手術室の前でルビィたちが死んだことが告げられた。みんな涙を流し、ルビィは悲しい気持ちになる。

すると、急に善子ちゃんは走り出す。手洗いに行くと言っていたけど、その表情は嘘を言っているようにしか見えず、この夢は善子ちゃんを基準にしているのか善子ちゃんの方に視点が移る。

善子ちゃんがたどり着いたのは病院の屋上。こんなところに来て一体何するの?そんな疑問を持つと、善子ちゃんは制服のポケットから黒い水晶のペンダントを取り出す。

 

『絶対に二人を救ってみせる!』

 

善子ちゃんは何か決意したような表情をするとそう言う。善子ちゃんが何をする気なのかわからず見守っていると、

 

『我願う。故に我乞う。花丸とルビィの居る日常を!』

『ピギッ!』

 

善子ちゃんは呪文のようなことを言い、善子ちゃんの持っているペンダントの水晶を中心に輝き出した。ルビィはその眩しさに悲鳴を上げた。

 

 

~~

 

 

「ピギッ!」

 

悲鳴と共に私は目を覚ました。よかった、やっぱり夢だったんだ。そうだよね。ルビィと花丸ちゃんが死んじゃうなんてないよね。

外を見ると雨が降っていて、あの夢でも雨が降っていたから不安になる。

 

「ルビィ。どうしましたか?」

 

すると、ドアの向こうからお姉ちゃんが声をかけながらドアを開ける。普段は朝声をかけずに先に朝ご飯を食べて、時には先に行っちゃうのに、声をかけてくれるのは珍しいかも。

 

「おはよう、お姉ちゃん。なんでもないよ」

「おはよう。なら、早く支度をしてしまいなさい。それと、果南さんたちと話して今日の朝練は中止にしますわ」

「うん。わかったよ」

 

頷くとお姉ちゃんは部屋を出てドアを閉めて居間の方に行く。

変な夢を見て声を上げたなんて言えば呆れられちゃいそうだし、誰にも言わないでおこっと。

ぱぱっと制服に着替えてスマホを確認すると、さっきお姉ちゃんが言っていた通り、朝練を中止することが伝えられていた。そして、

 

ヨハネ『お見舞いは来なくていいわ。うつしちゃったら悪いし』

 

善子ちゃんが体調を崩したみたいだった。やっぱり、昨日のが原因なのかな?

 

「『確かにうつっちゃう可能性もあるね』っと」

 

とりあえず、皆の会話に合わせてそう打つとお姉ちゃんを追いかけて居間の方に行く。あんまりゆっくりしていると怒られちゃいそうだし。

 

「おはよう、お母さん」

「おはよう、ルビィ」

 

居間に行くとお母さんとお姉ちゃんが食器を運んでいて、一緒に手伝う。

 

「お父さんは?」

「自治会の集まりで出ていますよ」

「そうなんだ。こんな雨の日に」

 

お父さんの姿が見えない理由もわかり納得すると、朝ご飯を食べ始める。

 

「そう言えば、さっきの悲鳴はなんだったんですか?」

「お母さんまで聞こえてたの?なんでもないの」

「嘘ですね。なんでもないのなら悲鳴など上げないでしょう」

「……起きた拍子にベッドの角にぶつけちゃっただけだよ」

 

適当な理由をでっちあげてそう言うと、なんとも言えない空気になる。食事の時はテレビを点けないのが普通だから誰もしゃべらないとしーんとする。今日は雨が降ってるから雨の音はするけど。

 

「それで、ダイヤは今日も早めに出るのですか?」

「あれ?話が変わった?」

「いえ。朝の練習は雨が降っているから中止しようと先ほど果南さんたちと決めたので。まぁ、生徒会の仕事がありますので少ししたら出ますけど」

 

いつの間にかルビィの話は終わってた。たぶん、あまり掘り下げない方がいい話題だと思ったのかな?

それから朝ごはんを食べ終え、少し時間があるから天気予報を見ようとテレビを点ける。

 

『今日の十二位は……魚座のあなた』

「あっ、花丸ちゃんの星座が最下位だ……」

 

花丸ちゃんの星座が最下位で、もしかしたらあの夢が正夢になるんじゃないか心配になる。そんなこと無いと思うけど。

占いコーナーが終わって天気予報になると、今日は一日中雨みたいだった。あーあ。これじゃ、放課後の練習もできないかも。

 

「ルビィ、行きますよ」

「うん」

 

 

~~

 

 

「さて、雨も一向に止みそうにありませんし、今日は早めに解散しましょうか」

 

放課後。ルビィたちは部室に集まって曲作りを進めていた。今日一日善子ちゃんが居なかったから、一学期のあの頃を思い出した。最近は三人で居ることが多いから、一学期の頃に戻った気分かも。

ルビィはお姉ちゃんと曜ちゃんと一緒に衣装の案を考えていた。デザインがいくつかあれば、すぐに作り始められるし、千歌ちゃんがそれを見て思いつくかもしれない。

そうして時間が過ぎて、時計の時刻を見てお姉ちゃんがそう言った。

千歌ちゃんは完全に思いつかなくなって突っ伏していて、これ以上は無理そうだからという判断だと思う。

それに、この後も雨が弱まるどころか強くなる恐れもあると天気予報で言っていたのもあると思う。誰も反対意見が出なかったから帰り支度を整えると部室を出て昇降口まで行く。

昇降口に着いたところでそう言えばシャーペンを部室に置いたままにしていたことを思い出したけど、家にも数本あるし、ここで戻ったらバスに乗り損ねそうだからそのまま歩く。それに、ここで戻ったら、夢みたいに事故に遭うような気がしたから。

 

 

~~

 

 

結局、あの日は夢で見たような事故に遭うことは無くて、何事も無く帰れた。ルビィたちが乗った後に木が倒れたという話を聞いた時は、戻らなくてよかったと思った。戻ってたらそこから歩かなくちゃいけなくなってたかもしれないしね。もしかしたらその木がバスに直撃なんてことが起きてたかもしれない。流石にそんな偶然は無いか。

 

土曜日の放課後。千歌ちゃんたちが泊まり込みでやるって言ってたから、ルビィも花丸ちゃんと一緒にお泊り会をしていた。善子ちゃんも誘ったんだけど、やることがあるとかで帰っちゃった。やることって何だったんだろ?生放送かな?

 

「お姉ちゃんと花丸ちゃんも見たの?」

 

µ’sのライブ映像を見て衣装の案を考えようと準備して、“ユメノトビラ”を聴いている時に、

 

「夢かぁ。そう言えば前に変な夢見たなぁ」

 

と特に考えること無く呟いたら、二人が反応し、どんな夢だったのか聞かれて、まぁ言ってもいっかと思って話した。

その結果。二人も自分が死んで死ぬ夢を見ていたらしい。

 

「うん。しかも、ルビィちゃんの話を聞く限り全く一緒ずら」

「わたくしは木曜日にあった倉庫の崩落に巻き込まれる夢でしたわ。この通り、無事ですけど」

 

内容も花丸ちゃんとは一緒で、お姉ちゃんとは自分の死という点で一緒。なんというか怖くなってきたよ。

すると、いきなりスマホに通知が来たのか振動する。手に取って見ると、曜ちゃんからだった。

 

「あっ、曜ちゃんからだ」

『善子ちゃん、そっちいる?』




次回も他メンバー視点でいきます。
では、ノシ
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