繰り返される堕天   作:猫犬

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半日投稿中。その為話数注意です。

評価が赤になったり、お気に入りが増えたりとビックリ。
でも、すぐにみかん色とか黄色になるんだろうなぁ。

今回は善子ちゃんと鞠莉ちゃんの視点です。まぁ、ほぼ鞠莉ちゃん視点ですけども。


26 笑顔の為に

「ん、ん~。ふわぁ」

 

土曜日。私はいつも通り目を覚ました。

今日はいつも通りに過ごそう。それが昨日決めたこと。どうやったって、私の事故は回避できないだろうし、回避する理由ももう無い。

布団から出てベッドから立ち上がると、制服に袖を通す。今日でこれを着るのも最後ね。

 

「おはよ、ママ」

「おはよう、善子」

 

リビングに行くと、ちょうど朝ごはんを運んでいるママと会い、挨拶を交わすとテレビを点けて椅子に座る。朝ごはんを食べていると、テレビはいつも通り占いコーナーになる。見なくても大体今日の最下位はわかってるけど。

 

『今日の十二位は……蠍座のあなた。予想外のことが立て続けに起こるかも?』

「え?」

「どうかしたの?」

「ううん。なんでもない」

 

占いの結果を見て驚きの声を漏らすとママに聞かれたから誤魔化す。

どうして、今回は蠍座なの?土曜日は決まって蟹座だったのに。よりによって、誰の星座でもないなんて。この場合はどうなるかわからない。

まぁ、やることは変わらない。みんなと一緒に居なければ皆に危害が加わることは無い。最悪、どんな手を使ってでも。

私は静かに心に決める。

きっと、ママを悲しませることになる。でも、私がいなくなる以外には皆を救うことはできない。そもそも、私が生きて越えられる確証はないし、仮に超えてもその日以降も皆に死の危機が訪れないという確証はない。最悪、ずっと続くかもしれない。

 

「ありがとね」

「ん?どうしたの急に?」

「ううん。なんとなく言いたくなっただけ」

 

だから、せめて気持ちを伝えておく。きっと、私の本当の気持ちは伝わってないけど、これは伝わったら困る。だからこれでいい。

ママは気になるのか首を傾げるもテレビに映った今の時間を見て慌てて残りを食べると、食器を置いて鞄を手に取る。

 

「皿洗いお願い。いってきます」

「はーい。いってらっしゃい」

 

ママは慌てた足取りで出て行き、座りながらそれを見送る。一人になると、テレビの音だけが響く。

そんな空間で残りを食べると食器を運び、ママの分も一緒に洗う。

 

「さて、集合まではまだ時間があるけどどうしよ。ママに手紙は……いっか。それだと遺書にしか見えないし。少し早いけど、もう学校行こ」

 

特にすることも無いから家を出ることにする。もしかしたら生徒会の仕事とかで誰かしら居るかもだし、手伝えることはしておきたい。

そう言う訳で、鞄の中に飲み物やお弁当を入れるとそれを肩にかける。これは……まぁ、使う気は無いけど持っておこ。

家の鍵をかけると家を出る。エレベータはまだ復旧してないから階段で下に降りる。十階だから結構降りるけど、Aqoursの練習でのおかげかそこまで疲れることは無かった。

階段を降りてバス停に行くと、バスが来るまではまだ少しありそうだった。というか、バスが少し遅れてるみたい。

数分待つとバスがやって来て、乗り込むといつも通り後ろから二個目の座席に座る。いつも出る時間よりも早いからたぶんこのバスに乗る人はいないはず。いや、もしかするかもしれないけど。

 

曜が乗るバス停に差し掛かるけど、そこには誰もいないから素通りする。やっぱり、いつもより早めに出たからいないわよね。わかってたけど、最後の日な訳だからその分たわいのない話をしたかったかも。

それから、淡島前、千歌達の最寄りのバス停、ダイヤたちの最寄りのバス停を通過する。結局、みんなが乗って来ることは無く、バスは浦女前に着く。やっぱりもう少しゆっくりするべきだったかしら?

そんなことを思いながら、バスを降りて坂を上って行く。この時間だと他の部活の生徒もまだ練習に来ていないからか、静かな空間が続く。

坂を上り切って、校門前に着くと、何故か校門は開いていた。昇降口はまだ開いていないけど、どうせ休日の練習だと直接部室に行くから問題は無い。

部室に着くと、

 

「あっ。善子ちゃん、おはよー」

「おはよ……う?」

 

そこには八人全員そろっていた。てっきり、私が一番乗りだと思っていたから、意外だった。特に、千歌やルビィが私より先に来ていることが珍しいし。

 

「善子ちゃん、そんなところに立ってないで中に入りなよ」

「あ、うん」

 

千歌に言われて中に入ると、そのまま椅子に座らせる。

 

「さて。普通に考えたら少し世間話でもしてから切り出すべきなんだろうけど」

「まどろっこしいのは面倒ですので単刀直入に行きましょう。あなた何か隠しているますわよね?」

「……ッ!」

 

マリーとダイヤにまっすぐに見据えられてそう言われたことで息を呑む。なんで、私が隠していることを知ってるの?ううん。まだ聞かれてるってことは、疑問がある段階。きっと最近の私の様子を見て気になった程度のはず。巻き込むわけにはいかないから、隠し通さないと。

 

「なんのこと?隠し事なんて特には……」

「はぁー。OK、なら聞き方を変えるわ」

 

マリーはため息をつくと、一呼吸置く。

 

「あなた、今何回目の一週間を迎えたの?」

「え!?」

 

 

~鞠莉~

 

 

気が付くと、私は自分の部屋のベッドにいた。確か、屋上で願って……!

 

勢いよく身体を起こしてスマホを手に取り電源を点ける。そこには土曜日の朝――願ったあの時の朝を示していた。つまり、過去に飛ぶことができたってこと?

 

ブゥーブゥー

カナン『鞠莉、ダイヤ。起きてる?』

 

すると、スマホが振動して画面を見ると果南から連絡が入る。グループの方では無くて三年メンバーだけの方だったけど、気にすること無くそれに目を通して返事を返す。

 

マリ『ちょうど起きた所よ』

ダイヤ『おはようございます。お二人とも』

カナン『おはよ。それで過去に飛べたみたいなんだけど……』

 

どうやら果南も過去に飛べたようで、あの時の記憶もある様子だった。じゃぁ、他の皆も過去に飛べて覚えているってことでいいのよね?私たちがやることは、きっと生きている善子に会うこと。その為に過去に飛んだのだから。

 

マリ『私もあの時の記憶があるわ』

ダイヤ『わたくしも覚えていますわ。となると、あの場にいたメンバーは覚えていると考えるべきなのでしょうね』

カナン『じゃっ、みんなにも連絡して善子ちゃんに会わないと!』

ダイヤ『そうですね。それが目的ですし、全てを聞かないと』

 

善子ちゃんに会って、あの日何が起きたのか聞こうということになった。それと今まで起きていたことも。

でも、気がかりが一つ。

 

マリ『真正面から聞いて話すかしら?』

カナン『どういうこと?』

マリ『だって、私たちに相談してくれなかったのよ?今の善子はきっとかたくなに一人でやろうとすると思う』

ダイヤ『確かにあり得ますね』

カナン『でも、何もしなければまた同じことの繰り返しだよ?』

 

どこまで行ってもどうするべきかわからない。なんの策も無しにやるのは得策ではないだろうけど。

どうすればいいのかしら……。

 

カナン『まっ、いつまでも三人で言い合ってても埒があかないし、みんなに相談しよっか』

ダイヤ『ですね。善子さん以外の八人で』

マリ『そうね。まずはみんなで共有しないと』

 

今後の方針を固めると、それぞれに連絡をする。さしあたって、今日の練習前に早めに集まって考えようということになった。でも、集まるのが決まっただけで、善子にどうやって聞くかは決まっていない。

 

「とりあえず、準備しよっと」

 

だから、どうしたものかと考えながら支度を始める。あんまりのんびりしていたら善子が来るまでに十分話し合えないからね。

支度を済ませて家を出ると、船着き場で果南が待っていた。果南はなんでかダイビングスーツを着ていて、その手にはもう一着あった。

 

「おはよ、鞠莉」

「おはよ、果南。で、その格好はどうしたの?」

「ん?バスで行くより、あの時みたいにこれで一直線に行った方が速いでしょ?」

 

私の疑問に果南は海の方に浮いているそれを見てそう言った。海には果南の家で使っているマリンバイクが浮いている。まぁ、言いたいことは分かるけど。

 

「確かに速いわね」

「正直、バスが来るまで待つのもあれだし、こっちの方が私たちにあってるでしょ?それに、理事長さんが許可してくれれば浦女のそばに止められるだろうし」

 

果南は悪戯っぽく笑みを浮かべてそう言う。確かに、バスで行くよりも海から一直線に行った方が圧倒的に速い。それに、私なら、

 

「いいわ。特別に許可しちゃうわ」

 

理事長特権で許可も出せちゃうし。というわけで、果南の手に持っているダイビングスーツを着ると、荷物をシート下にしまい、果南がマリンバイクにまたがり、私はその後ろに乗る。

 

「飛ばすからちゃんと捕まっててね」

「ええ。絶対に離さないわ」

「じゃぁ、しゅっぱーつ」

「Let’GO!」

 

マリンバイクは勢いよく走り出す。私は海に落ちないように果南のお腹辺りに手をまわしてしっかり抱きつく。Oh役得でーす。

 

「鞠莉、抱きしめ方がいやらしい……」

「え~、なんて言った~?」

 

聞こえてるけど、エンジンと波の音で聞こえないふりをする。

 

「聞こえてるよね?」

「これはハグでーす」

「聞こえてるじゃん……」

 

でも、こっちからの声ははっきり聞こえてたみたいだから開き直って、腕にさらに力を込めてハグする。果南は呆れた声を出すけど、気にしなーい。

 

「ふぅ、着いた」

「ええ。でも、もっと果南に抱きついていたかったわ」

「はいはい」

 

浦女近くの止めておけそうな場所に止めると、ロープで波に流されないように固定してダイビングスーツを脱ぐ。訴えられることなく抱きつけるからもっと抱きついていたかったわ。果南は軽くあしらうと、坂を上り始めてしまう。荷物を持って追いかけると、ゆっくり上ってくれてたから追いつけて、隣に並んで上って行く。

 

「今日の鞠莉はなんだか明るいね」

「そう?」

「うん。あんなことがあった後なのに……無理してない?」

 

心配そうな目で私を見る。確かに、善子の死やら私たちが何度も死んでいたかもしれないことを知って、まだ全てに整理がついたわけではない。

 

「少しはね。でも、暗くしているのは私に合わないわ」

「そっか。たしかに気持ちを明るくしてないとやってられないよね」

「それに、暗い顔してたら皆も不安になっちゃうでしょ?」

 

年長者だから。理事長だから。せめてみんなの気持ちを楽にしてあげたい。皆不安な気持ちがあるだろうから、私にできることはできる限りやりたい。そんな気持ちから、私は今日はそう振る舞うことに決めていた。

 

「じゃぁ、私はそんな鞠莉を支えてあげないとね」

「ありがとう、果南。お願いね」

 

果南もいつも通りに振る舞うと、私たちは校舎前に着く。今日は文化部が活動する話は聞いていないから昇降口を開ける必要は無い。もし必要になれば、教師・来賓用の入り口から入れば済むしね。そういう訳で、外から部室の方に行き、部室の鍵を開けて中に入る。近道してきたからまだ誰も来ていない。

 

「さてと。みんなが来るまでどうしよっか?」

「果南はどうなの?善子から話を聞くの?たぶん……」

「私は……聞きたいよ。誰かの死に関わってる話だから」

 

果南は普段の調子でそう言うから、思ったことを口にする。この話題はみんなが来てからするつもりだったけど、二人しかいないし、果南がどう思っているのか気になったから。

 

「そう。私もよ。何かあると知っていて聞かないなんて私はしたくない。まぁ、短い付き合いとはいえ、善子は一人で抱え込んじゃう子だからすんなり話してくれるとは思えないけどね」

「うん。私も一筋縄じゃ行かないと思ってるよ」

「私もそう思うかな?」

 

すると、いきなり果南の言葉に同意する声が響き、声がした方を見ると千歌っちがいた。その後ろには五人もいて、どうやら同じバスに乗って来たみたいだった。

 

「おはようございます、お二人とも。バスに乗っていなかったから一本遅れてくるものだと思いましたよ」

「まさか先に来てるとは思わなかったよ」

「でも、善子ちゃん以外はそろったね」

 

部室に八人がそろったことで、全員椅子に座る。

 

「それでどうするの?善子ちゃんが簡単に話してくれると思えないけど」

「それよね。でも、その前に意思確認しておくわ。皆善子から話を聞くでいいのよね?あの日記の内容からしてそうとうHardな内容になると思うけど」

「マルは聞きたいよ。そうしないと、繰り返されちゃう気がするから」

「わたしも。よっちゃんが抱え込んで困っているのなら助けてあげたい」

 

私の問いに、みんな聞きたいという意思を口にする。なんだ。みんなやっぱり強いわね。

 

「しかし、どうやって聞き出すかですね」

「うん。善子ちゃん、たぶんはぐらかすと思うし」

「でも、できれば強引な手段はやりたくないよね」

「うーん。やっぱり、なんの小細工もしないでまっすぐにぶつかるのがいいと思うかな?チカたちが善子ちゃんのことを知りたいって気持ちをちゃんと伝えたいよ」

「そう……でも、うまく行くかしら?せめて、どうして相談してくれないかわかればいいんだけど」

 

千歌っちの意見はたぶん的を射ている。でも、必ずしもそれでいいとは限らない。善子が相談しない理由が分からないことには……。そう思って呟くと花丸が恐る恐る手を上げた。

 

「マル、その理由知ってるよ」

「そうなの?」

「うん。最後まであの日記を読んでね――」

 

花丸はそれから日記に書かれていた、相談しなかった理由を話した。相談された人に危険が迫る?だから相談しなかった、いや出来なかったのか。となると、余計に話を聞くのが難しいわね。

 

「でも、私は怪我をしただけなんでしょ?だったら、偶然そうなったってことも」

「うん。そうも考えられるけど、たった一回あったことだから、言い切れないよ」

「それは……」

「私はそれでも聞きたいよ」

「曜?」

 

聞けば危険が迫り、それが偶然のモノなのかわからないからどうすることが最善なのかわからない。でも、曜ははっきりと「聞きたい」と言葉にした。どうして、迷うこと無くそう言えるのかわからなくて、呟くように名前を言う。

 

「だって、結局わからないんだもん。それに、もう私たちは相談されたという内容の一部を知っちゃってるんだよ?だったら、全部聞いても変わらないよ」

「あはは。それもそうだね。もう危険に足を突っ込んじゃってる訳だね。みんな、過去に死んで善子ちゃんがやり直しているって知ってるわけだし」

「うん!そうだね。みんなはどう?」

「それもそうですわね」

「マルも聞きたい」

 

全員がやっぱり聞きたいという結論で固まった。だったら、もうやることは決まったものね。

 

「さっき千歌っちが言った通り、もう下手な小細工なしで、私たちの気持ちを伝えましょ?」

「うゅ。ルビィもそれがいいと思う。善子ちゃん最近無理してる気がした。笑顔も無理に作っているようにしか見えなかったよ」

「マルも思ったずら。だから、善子ちゃんの前みたいな笑顔を取り戻したい。その為にもちゃんと話を聞きたいな」

「うん!善子ちゃんが話してくれるようにみんなの気持ちを伝えよぉ!」

『『『おー』』』

 

私たちは意志を一つにする。とにかく、まっすぐにぶつかって聞いて見せる。それが今できることだから。

 

「あっ。善子ちゃん、おはよー」

「おはよ……う?」

 

それからしばらくして、善子が部室にやってきた。それまで私たちは練習着に着替えて、どうやったら善子が話しやすくなるか、私たちの気持ちが伝わるか考えて過ごしていた。

善子は私たちがすでに集まっていることに対して驚いている様子だった。まぁ、そう思うのも仕方がないけど。さてと、どう切り出すのが無難かわからないけど、下手な小細工は無しってことになったことだし。

 

「あなた何か隠していますよね?」

「……ッ!」

 

私が言う前にダイヤが善子の目をまっすぐに見てストレートに言葉をぶつける。まさか、ダイヤから切り出すとは思ってなかったけど、ダイヤのその言葉は、常にまっすぐなダイヤらしいわね。

 

「なんのこと?隠し事なんて特には……」

「はぁー。OK、なら聞き方を変えるわ」

 

でも、わかってはいたことだけど、やっぱりはぐらかした。となると、一歩踏み込むしかないかしら?

 

「あなた、今何回目の一週間を迎えたの?」

「え!?」

 

私たちは善子が隠していることの一部を知っていることを明かす形で。




コミックだと果南ちゃんがマリンバイク(正式名がわからぬ故マリンバイクってことで)で登校している描写があったので使用しました。直線距離的にこっちの方が速そうなので。

そして、暗くなってたからここはほのぼのも入れたかった。

次回妙な事します?
では、半日後に。ノシ
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