繰り返される堕天   作:猫犬

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3 壊れ始めた日3

「どういうこと?あれは夢だったってこと?」

 

スマホを見てもあの日を表示し、私は訳が分からなかった。

 

「善子ー、そろそろ起きなさーい」

「今起きたわー」

 

すると、ママが部屋の向こうから呼びかけ、返答をすると首を傾げながらも、とりあえずいつも通り着替え始める。あれはきっとただの不幸な夢。不幸な私にはよくあることよ。

制服に着替え終えてバッグを持ってリビングに行くとママは食べ終えたお皿を洗っていた。

 

「おはよう、ママ」

「おはよう、善子……って、具合でも悪いの?」

「え?どうして?」

「いや、なんだか表情が暗いから」

「ちょっと変な夢を見ちゃったからかな?」

「そうなの?それでどんな夢だったの?」

「あんまり話したくない内容だから。それよりも学校行かなくていいの?」

「あっ、もうこんな時間。戸締りよろしくね」

 

ママは時計を見ると、手をタオルで拭いてソファーに置いてあった鞄を持って、そそくさと家を出た。

私は忙しないなぁと思いながら椅子に座る。

 

「あれ?」

 

そこで私はママとの会話に既視感を覚えた。前にも一度まったく同じ会話をしたような。

確かあの夢でも、ママと会話をして、テレビをつけて……

 

「確か、最下位だったわよね?」

『まずは十二位の発表です。今日の十二位は蟹座のあなた――』

「え?……いや、偶然なだけで。青いニット帽がラッキーアイテムで……」

『――唐突な不運に見舞われるかも?ラッキーアイテムは青色のニット帽です』

「嘘……」

 

私は占いを見て驚いた。後とき見た夢と全く同じ内容だったから。本当にあれは夢だったのか?私はそんな疑問に駆られた。もしそうなら、今日曜は事故に遭うことに……。

私は朝ごはんを食べ終えると、部屋に戻った。

机の上には、あの時使った水晶のペンダントがあり、私はそれを手に取る。

 

「確か、私はこれを持って願ったっけ?」

 

水晶を日の光に透かして見るけど、向こうが見えるだけでこれといった特別な感じはしなかった。

 

「我願う。故に我乞う。全ての真実を……って、何も起こる訳無いわよね」

 

あの時の言葉を呟いてみるも、あの夢の最後のように光り出すことは無かった。だから、きっとあれはただの夢だったのだろうと思うと、時計がもうすぐいつものバスが来る時間を差していたから家を出たのだった。

そして、いつものバスに乗ると、途中で曜が乗り込んでくる。

 

「善子ちゃん、おはヨーソロー」

「おはよう、曜」

「あれ?今日はヨハネってツッコまないの?」

「……」

「善子ちゃん?」

「あっ、少し考え事をしてて」

「そうなの?悩みがあるのなら私が相談に乗るよ」

 

曜は私のそばに寄ると、いつも通り敬礼をしながら挨拶をし、私の隣に座る。やっぱり、あの夢の内容が引っ掛かって黙って考え込むと、曜は不思議そうな表情をしていた。それで、慌てて取り繕うと、心配そうにそんなことを言う。

でも、流石に言えるわけがない。今日曜が死んでしまうという変な夢を見たなんて。

だから、私は作り笑いを浮かべて誤魔化す。すると、曜は「ならいっか」と言ってこの話は終わった。

 

「そう言えば、次の衣装どうしよっか?」

「そうね。私としては堕天使のように漆黒の衣装かしら?」

「うーん。黒かー。確かに今までなかったけど、またあの時みたいなのはダイヤさんが“破廉恥ですわ!”って言うかもよ?」

「確かに、言われそうね。でも、あの時と違ってもう少し布面積を増やせば……」

 

ダイヤがツッコむ未来が見えた気がしたから、妥協案としてそう伝えると曜は少し考える素振りをする。

てか、あの時の衣装だってよくよく考えればゴスロリに似た感じだったから問題ない気もするんだけど。それに、スカート丈は他のとあまり変わらないし……。

 

「確かにもう少し変えれば問題は無いかもね。問題は需要があるかだけど」

「あー、そう言えばすぐにランキングは下降したっけ?」

「うんうん。九百位台に上がったのにすぐに千五百位台になっちゃったよね」

「じゃぁ、他の案も考える必要がありそうね」

 

私たちはそんな話をしながら過ごした。時々あの夢のことを思い出したりしたけど、また考え込んだら曜に心配されそうだから頭の隅に追いやっておいた。

ルビィたちは一本早いのに乗ったのか遅いのに乗るのか乗り込んでくることは無く、浦女に着いて部室に行くとルビィと花丸がそこにいた。

 

「ルビィちゃん、花丸ちゃん。おはヨーソロー」

「おはようございます。曜ちゃん、善子ちゃん」

「おはよう。曜ちゃん、善子ちゃん」

「おはよう。二人とも」

 

マリーは理事長の、千歌を除く四人は生徒会の仕事をしているらしかった。そして、練習着に着替えているうちに、千歌がやって来て、それに続いてダイヤたちも戻って来た。

 

「さぁ、朝の練習を始めますわよ」

「うん。説明会に向けて練習を進めて行かないとね」

 

千歌はぎりぎり戻ってくる前に着替え終えたからか、小言を言われることは無く、そのまま練習が始まったのだった。

 

 

~☆~

 

 

「やっぱり、この度々起こる既視感……」

 

昼休み。私は手洗いに行くと言って席を外して、トイレから出てくると呟いた。今日の授業の内容は全てあの夢の内容と同じであり、私は既視感を覚えていた。どうして、こんなにあの夢と被るのかしら?

まさか、遂に能力が覚醒したとか?曜を救えるのは私だけみたいな……いや、それは無いわね。だったらなんでこんなタイミングなのよ。もっと前からあれば良かったわけだし、そんな能力がこの世にある訳がない。

私は首を振って変な考えを振り払うと、二人がいる教室に戻る。もし、この後の授業も同じだったら、一応気を付ければいいだけのことよ。

私は決心を固めると教室に入った。

 

「善子ちゃん、おかえり」

「ええ。戻って来たわ」

「善子ちゃん、早く食べよ?」

「わざわざ待ってなくてよかったのに」

 

二人はわざわざ私が戻って来るまで弁当を食べずに待っていてくれた。でも、そうなると二人に悪いからそんなことを言うと、二人はなんでかにやける。なんでそんな反応?

 

「善子ちゃん、素直じゃないね」

「うんうん。待っててくれてうれしそうなのにね」

「別にそんなこと……」

「照れてるずら」

「もう、茶化さないで!さっさか食べるわよ!」

 

二人にいじられそうだから、話を打ち切って私は弁当を食べようと促す。二人はそれでこれ以上はやめたのかおとなしく従って、ようやく私たちは弁当を食べ始めた。

 

 

「善子ちゃん、この後暇?よかったら一緒に雑貨屋さんに行かない?」

 

午後の授業と放課後の練習を終え、みんなバスを降りて行ったことで、曜と二人きりになり、いろんな話をしていると曜がいきなりそう言った。

午後の授業もやっぱり夢と同じ内容で、練習風景も一緒だったことで、私はこのままだと曜が轢かれてしまうのだと理解していた。だから、もしこの話題が出たらどうしようかすでに決めていた。

 

「明日じゃダメなの?もうこんな時間だし」

 

私は曜が早く帰って家にいれば事故に遭うことを未然に防げるはずだから。だからこそ、曜が早く帰るようにそう言う。

 

「確かにこんな時間だけど、少し見るくらいだし、明日は天気が崩れるらしいし。善子ちゃんがダメなら一人で行くけど」

「私も行くわ。どうせ帰っても暇だから」

 

しかし、曜は日を改める気は無いようだから、雑貨屋に行くのを止めることを諦め、私も一緒に行くことにする。一人で行かせて事故に遭うかもしれないから、私が絶対に護ってみせる。

そんな気持ちで一緒に行くことを伝えると、曜は笑顔になる。

私はどうやれば曜が事故に遭うことを回避することが出来るか考えながら雑貨屋の小物を見て回った。

案としては、事故が起きる時間以降までここに引き留めてしまえばいいと思った。

 

「善子ちゃん、だいぶ見たことだしもう帰ろっか」

「もう少し見て行きたいんだけど……」

「そっか。じゃぁ、私は先に帰るね」

「っと、思ったけどやっぱり私も帰るわ」

 

しかし、曜は先に帰ろうとしてしまい引き留めることができなかった。

ならば、喫茶店に引き留めようと画策する。

 

「曜、そこの喫茶店に寄って行かない?」

「あれ?善子ちゃんから誘ってくれるなんて珍しいね。でも、今お金があまりないからできればパスかな?」

「私が奢るわよ」

「あはは。流石に奢ってもらうのは悪いから。ごめんね善子ちゃん」

 

しかし、この作戦も失敗に終わる。というか、なんでお金がないのに雑貨屋に行くのよ。行かなければ私も一安心だったのに。

心の中で毒づきながら、ならば曜をバスに乗せようと考えるも、これも不発に終わってしまい、次はどうしようかと考える。そうしているうちに事故が起きたあの場所が見えてくる。このままでは曜がまた轢かれてしまう。きっと、私が気を付けるだけでなんとかなるとは思えない。どうすれば……。

 

「善子ちゃん、あの信号が変わっちゃいそうだから走ろ?」

「ええ……ってちょっと待って」

 

そう考えていると、信号が点滅し始めて曜は走ろうと提案する。あの時私は頷いて走り、結果車が突っ込んできた。だから、私は別の道を選ぶ。

私は曜にそう言うと、別に靴紐が解けているわけではないけど、サッと解いて、解けた振りをする。曜はそれを見て足を止めて待ち、結果信号が赤に変わった。

 

「悪いわね。靴紐が解けたせいで渡り損ねさせちゃって」

「ううん。いいよ。あのまま走ってたら、善子ちゃんが靴紐を踏んで転んでたかもしれないしね」

 

私のせいで信号を渡り損ねたのに曜はこれといった文句を言わず、私は胸が痛んだ。でも、こうでもして時間を少しでもずらさないと……。こんなに優しい人が死ぬのはどうにかしてでも回避しなくちゃ。

 

キキッー!ドンッ!

 

信号が赤から青にもうすぐ変わろうとすると、あの時と同様にあの場所に、あの時と同じ自動車が突っ込んだ。今回は車線上には誰もいなかったことで、けが人はなく、すぐに周囲の人たちがわらわらと車に近づく。

 

「事故だね、善子ちゃん」

「ええ。乗ってる人が無事ならいいんだけど」

 

曜は目の前で事故が起きたことに驚き、私は引かれる事態を未然に防ぐことが出来て安堵した。そして、一応運転手が無事なのか心配する。一応あの時轢いたわけだけど、発作が原因で意識が無かったから完全に悪いと責められる訳もなく、知らない人とはいえ誰かが死ぬのは嫌だった。

すると、周囲の人たちは運転手が気を失っていることに気付き、救急車を呼んだり、救出しようとしたりし始めるのだった。

 

 

~☆~

 

 

曜の死を回避できた。

家に帰った私は夕飯を食べて、お風呂に入り、その後ベッドの上で安堵していた。それと同時に、私はあの夢が本当は夢なんかじゃなくて、あったかもしれない未来の光景なのではないかと思い始めていた。

それくらい今日一日の出来事は一致していた。

そして、私は黒い水晶のペンダントを持って、それを見る。

 

「たぶん、これで過去に飛んできたのよね?」

 

まだ半信半疑ではあるけど、このペンダントが光ったことで過去に飛んできたのだと思う。でも、私自身が過去に飛んだというよりは、意識のみ過去の私に移った感じなのかしらね。もう一人私がいる訳ではないみたいだし。

まだまだ謎は多いけど、とりあえず謎解明は追々行っていくことにする。

今日はずっと気を張っていたからいつも以上に疲れた。だからこそ、これ以上考えても、わかる物もわからない気がしたからこそ後に回す。曜が死ぬ運命は回避できたのだから。

 

 

~~~

 

 

私は気づくべきだったんだ……。

 

あの夢で死んでいたのは曜だけじゃなかったことに……。




もう曜ちゃんは救われちゃうの?と思われたかもしれませんが、この話はまだまだ先が長いので。

次回の投稿はちょっと開きます。ある程度書いてから投稿していきたいと考えていますので。ちなみに今書き貯めは“0“ですので・・・。
では、ノシ
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