繰り返される堕天   作:猫犬

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半日投稿中。その為話数注意です。
あと、二話同時投稿です。過去篇というか未来篇が書いてたら二話になっちゃったので。


31 ルーインズ

月曜日。その日もまた平穏な日だと思っていた。

朝練をして授業をして放課後に練習をして、ただただ普通の日。でも、そんな普通も唐突に終わりを告げた。

練習終わりに曜と一緒に雑貨屋さんに寄り、喋りながら一緒に帰っていた。曜はバスで帰った方が早いはずなんだけど、歩いて帰れない距離じゃないからと一緒に歩く。

そして、私に向かってきた車に曜が気付いて私を突き飛ばし、私の目の前で曜が轢かれた。曜は車と建物の壁に挟まれていて、出血していることで地面を赤く染める。目の前で起きた惨劇に私は曜に駆け寄る。周囲の人たちも曜が轢かれたことで、救急車を呼ぶ人、挟まれている曜を助けようと車を退かそうとする人などがいた。私は曜に声をかけ続けていた。

 

「うぅ……良かった、善子ちゃんが、無事で」

「なんで、私をかばったりなんか」

 

曜はひどい有様なのに、私が無事なことに安心した表情をする。どうして、自分が死にかけているというのに私の心配なんてできるのかわからなかった。そして、曜は出血のしすぎか意識を失った。

病院に運ばれると、曜が死んだことが告げられた。曜が事故に遭ったことをみんなに伝えたらみんなすぐ来て、千歌が呼んだのか曜のお母さんも来て、曜の死にみんな涙を流し、私は自分を責めた。

私を助けたばかりに曜が死んだ。でも、誰も私を責めることは無く、もう遅いからとみんな家に帰された。私はその夜ずっと泣き続けた。

曜はもう帰ってこない……。

 

火曜日。曜が死んだのに、学校はある。夜通し泣いたことで寝不足で、ママには心配されたけど、平気だと言って家を出た。外は土砂降りで、まるで私の心を映しているようだった。

バスに乗って、普段曜が乗るバス停に差し掛かるがそのまま素通りして走って行くことで、曜が乗って来ることが無いことを実感して、私はまた泣いた。

学校に着くと集会が開かれ、曜が事故に遭って死んだことが伝えられた。マリーは感情を殺して、いつもの明るさなど微塵もなく淡々と告げた。マリーの目元は赤くなっていたから、私と同じく泣きはらしたのは一目瞭然だった。他の学年の方を見れば、リリーはいたけど千歌の姿がそこには無く、果南の姿も見えなかった。後から聞いたけど、千歌も果南も曜の死によって塞ぎこんで部屋から出てこなかったらしい。幼馴染の死は二人をそうさせるのには十分の物だった。

それから、授業が行われたけど、みんな曜の死によって上の空だった。私も同様で、その日の授業をどうしていたのか思い出せなかった。

練習なんてもちろんできるわけなく、練習は中止になり、小さいながらも体育館で曜の送別会が催された。終わった頃にはだいぶ日が傾き、片づけを手伝った後、マリーとダイヤは仕事をしなくてはならず、私たちは先に家に帰る。

そして、終バスに乗って帰る途中で、雨の影響で倒れてきた木に乗り上げてバスが横転した。私は一番後ろの席に花丸と一緒に座っていて、ルビィとリリーはその前に座っていて、窓際に座っていた花丸とルビィは窓ガラスに頭を打ち付け、私たちは二人の身体にぶつかった。二人の身体にぶつかったおかげでガラスに打ち付けずに済んだ私とリリーは怪我が無かったけど、花丸とルビィは打ち所が悪かったのか頭からは血を流していた。

 

「花丸!ルビィ!」

「うぅ……」

「……善子ちゃん」

 

二人はそう言って気を失い、地面に接したことで窓ガラスが割れ、二人の身体は傷ついていた。リリーが救急車を呼び、私は少しでも出血を抑えようと手当てをする。でも、出血が多すぎたこと、頭の打ちどころが悪かったことで病院に着いた時には手遅れだった。

昨日に引き続き、二人が死んだ。それは私たちの心に深く傷を残した。ダイヤはいつもの凛とした振る舞いなど忘れたように泣き崩れていた。

その日の夜もまた私は夜通し泣いた。

 

水曜日。私は二日連続で睡眠時間が少なかったこと、雨に打たれたことで体調を崩していた。何もする気力がなく、私はただただ寝ているだけだった。その日の放課後、リリーとマリーがお見舞いにやってきた。二人とも辛いはずなのに、私のお見舞いに来てくれて申し訳なくなる。今日もまた二人の死が伝えられたらしい。そして、果南はまだ整理はついてないけど、曜の死にいつまでも引きずられていたら曜に申し訳ないからと、学校に登校したらしかった。千歌はまだ駄目な様で学校に登校していないらしい。

私は布団に寝た状態でそう教えられた。その後、二人は帰り、私はエレベータの前まで見送りに行った。

そして、二人を乗せたエレベータが落下した。

いきなり起きたことに私は放心状態になるも、慌てて階段を駆け降りる。風邪のせいでフラフラした足取りだったけど、身体に鞭打って無理やり降りて行く。

 

「リリー!マリー!どこッ!」

「「……」」

 

一階にたどり着くと、エレベータがグシャグシャになっていた。大声を上げて二人を呼びながらエレベータに駆け寄ると、二人はその中で倒れていて、一目で手遅れだと分かった。

私は目の前の惨状に言葉を失い、騒ぎを聞きつけた人たちがすぐに集まってきた。

その日の夜もまた泣きはらし。いつの間にか気を失った形で眠りに落ちていた。

 

木曜日。風邪は治ったことで、フラフラした足取りで私は学校に行き、マリーがいなくなったことで校長の口から二人の死が伝えられた。

私は呆然とそれを聞き流していた。

その日の放課後、私たちは学校内の倉庫に来ていた。本来ならさっさか帰るべきなのだけど、二人はマリーの分まで生きようとして、学校の為にできることをしていた。私はそんな二人を手伝っていた。

手伝うんじゃなくて止めていれば良かったと後から思った。外では雨と強風が倉庫に打ち付けてガタガタいっており、ひときわ大きな音がなった頃になってようやく危ないと思って倉庫を出ようとして、それと同時に倉庫が崩落した。どうにか脱出しようとするも私は転び、崩落に巻き込まれた。気が付くと、私の身体の上に二人が倒れていた。

 

「なんで私を助けたりなんか」

「うぅ、良かった。善子ちゃんは助けられたんだね」

「理由なんて、身体が動いていただけですわ」

 

二人は崩れてきた瓦礫類から私を護ってくれた。でも、その代償は大きかった。二人の下から出ると、二人の身体には深々と倉庫の柱の残骸が刺さっていた。痛いはずなのに、二人ともそれをおくびにも出そうとしない。私は救急車を呼ぶとどうしようかと悩む。下手に抜くと余計に痛いだろうし、それこそ一大事になるかもしれない。でも、何もしないでいる訳にもいかない。そうして悩んでいるうちに救急車がやって来て、二人は病院に運ばれた。

でも、二人は病院に着く前に息を引き取った。私を助けたばかりに二人は死んだ。二人なら私をかばわなければ多少の怪我で済んだはずなのに。

その日の夜も泣いた。でも、毎日泣いたせいか、それとも私の感情が壊れ始めたのか、涙は次第に流れなくなった。

 

金曜日。二人の死が伝えられた。ネット上にも連日の生徒の死が報じられ、「浦女は呪われている」という噂が広まり、入学希望者は0になった。それと同時に、私にもある噂が囁かれるようになった。連日の死を必ず私は目の当たりにしていることで、「人殺し」「死神」などなど私を侮蔑し、みんな私から距離を取る。先生たちも私が何かしているのではと疑い、面談と表向きは言いつつも、ほとんど取り調べと変わらないものが行われた。私は何もしていないし、その場にいただけなのに、きまって「本当のことを話して」と言われた。

だから、浦女の中に私の居場所がなく、昼過ぎから授業をサボって屋上に私は逃げた。私の言葉を信じてくれる人なんてもうどこにもいない。

ただ一人を除いて。

 

「善子ちゃん、授業をサボるのはどうかと思うよ?」

「千歌だって、サボってるじゃない」

 

屋上の塀に背中を預けて座っていると、屋上にやってきた千歌がそう言った。千歌はまだ立ち直れていないけど、それでも一応学校に今日は来ていた。千歌も私ほどではないけど、みんなと仲が良かったこと、曜が死んで以降休んでいたことから、何か知らないかと疑われたらしい。

千歌は本当に関係ないから、すぐに解放されたけど。

 

「まぁ、私も居心地が悪いからね」

「そう」

 

前までは笑顔が眩しかった千歌の笑顔も、今では無理に作られた物で、もうあの頃の笑顔を見ることは無さそうだった。

千歌は私の隣に座る。

 

「みんな死んじゃったね」

「うん。でも、私のせいよね?私をかばったせいで、曜とダイヤと果南が死んで、私のお見舞いに来たからリリーとマリーが死んだ。もしかしたら、私と一緒に居たからルビィと花丸も死んだのかも」

「そんなこと言ったら、チカだって同罪だよ。曜ちゃんが死んでから、引き籠って。もしかしたら、引き籠らずに学校に行ってたら違う未来があったかもしれないのに」

「それはもしもの話でしょ?」

「善子ちゃんのも、もしかしたらの話でしょ?」

 

結局、私たちは何もできない。

 

「私と居たら、千歌にも何か起きるかも。私って死神らしいから」

「善子ちゃんは死神なんかじゃないよ」

 

もしかしたら、私と一緒に居たら千歌まで死んでしまうかもしれない。だから、私はそう言う。でも、千歌はそれを否定する。どうすればいいんだろ?

 

「学校にいつまでもいても居心地が悪いし、帰ろっか」

「うん」

 

すると、千歌がそう提案して、私は首を縦に振る。しかし、立ち上がった瞬間立ち眩みがして、私は塀に手をつく。でも、それが悲劇につながった。

 

ガコッ

「え?」

 

塀に触れた直後、いきなり触れた周囲が砕けて私は塀の向こうに倒れる。塀の向こうには何も無い。このままだと落下する。でも、私は怖くなかった。これで終われる。私のせいで千歌が死ぬ前に、私が死ねばきっと千歌が死ぬことは無いはず。そう考えれば千歌だけは生きていてくれるから怖くない。

でも、そんな私の想いは裏切られた。私の腕を千歌が握ると、無理やり引っ張る。でも、私も千歌も連日の睡眠不足と、精神的疲労で力が入らず、一緒に落下する。

下は中庭で、木に突っ込んでそのまま地面に落ちる。木が緩衝材になったおかげで、だいぶ衝撃は緩和され、私は生きていた。でも、落下中に私と千歌の位置が入れ替わったせいで、地面についた時には千歌が下敷きとなっていて、意識が無かった。でも、すぐにわかってしまった。

 

「どうして、私を助けたりなんて。それで、あなたが落ちたら……」

「……」

 

千歌は頭を打ち付け即死だった。すぐに騒ぎになり、私は先生たちに囲まれた。校舎からは生徒たちが見ていた。

その眼全てが、私をさげすむように見ている気がして、私はその場にうずくまる。

 

「嫌……なんで、こんなことになるの」

 

結果から言えば、大雨の影響で塀の一部が脆くなっていたことによる事故ということで片付けられた。でも、私が千歌をつき落としたという意見もあり、その日以降、私は家に引き籠った。毎日のように警察が来て事情聴取され、ママもだいぶ疲弊していた。

 

それからすぐに、私たちは沼津を離れ、ママの実家の田舎に行った。そこは内浦以上にのどかで、いわゆる田舎だった。

私たちの噂は全く届いていなくて、お婆ちゃんに事情を説明すると「大変だったねぇ」と言って、すんなり受け入れてくれた。

その後私はただ生きるだけの生活を送っていた。何度か自殺をしようとも考えたけど、その度に皆の顔が浮かんで、死ぬことができなかった。

きっと、今死んでも皆に向こうで怒られる気がしたから。

 

でも、そんな何も無い平穏も唐突に終わりを告げた。

あれから二年ほど経った春。どこから私たちのことを知ったのか、マスコミがわんさかやって来て、私は囲まれた。口々に「あの時の真相は?」とか「一人のうのうと生きてどうなんですか?」とか言われた。ママはちょうど近くの学校で働いていたからこの場にはいなくて、お婆ちゃんも近所の友達と一緒に出掛けていたから、私一人だけ。

これ以上一緒にいたらママにも、お婆ちゃんにも迷惑がかかる。私さえいなければきっと迷惑がかからないはず。

前からいつかはこうなる気がしていたから、私は家からバッグを手に取るとそのまま山の方に逃げた。マスコミたちはそんな私を追いかけてきたけど、構わず逃げる。Aqoursとしてみんなと一緒に練習するまでは体力もあまりなかったけど、今ではだいぶマシになってきたからか、距離はどんどん離れていく。一応こっちに来てからはお婆ちゃんの畑仕事を手伝ってたからそこまで体力は落ちていない。いや、あの頃に比べたら体力が落ちていたかもしれないけど。

 

気づいたら、山の中をだいぶ走っていた。もう自分がいる場所は全く分からない。木々が生い茂り、仮に追って来てもすぐに見失ってしまいそうだった。だから、もうあそこに戻ることもできないと思った。

でも、そんなこと構わずに道をひたすら走ると、雨が降り出した。悪天候と山の地形で追っては撒けて、小さな洞窟を偶然見つけた。とりあえずそこで雨宿りをしようと中に入ると、洞窟は奥まで続いていた。私は入り口近くにいたら見つかるかもしれないからと奥に進んで行く。バッグの中に入れていた懐中電灯をつけて進んで行き、時々分かれ道を適当に選んで進んで行った。そうして奥深くに行くと、部屋のような場所に出た。

その部屋の中心には祭壇のようなものがあって、どうやらここは遺跡のようだった。

そして、祭壇の中心に黒い水晶の付いたペンダントと古びた書物が置かれていた。




ルーインズ、遺跡に着いたからこのサブタイです。
では、ノシ
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