「……ここは?」
気が付くと私は真っ白な世界にいた。たしか、最後は心臓発作が起きて、その後気を失って……。
「あっ、ここはあの世なのね」
ここが何処なのかはそれ以外に思いつかなかった。結局間に合わなくて私は死んでしまったと言う訳ね。みんなには悲しい思いをさせちゃうんだろうけど、元からこうなる結末だったのよね?
もうちょいで七時だったのにこれはやっぱりつらいなぁ。でも、みんなを死のループからは解放できたのだろうから、今までのことにも意味があったのかな?
「えーと。一人納得してるところ悪いけど、死んでないよ」
「わっ!」
いきなり声が聞こえたから驚いてしまった。声がした方を見ると、そこには消えたはずの未来の私が頬を掻いて立っていた。
もしかして、あれかしら?創作物でよくある転生物の転生するワンシーンとか。未来の自分の姿で登場されるのは意外だった。普通女神とかだろうし。
「転生もしないからね。ここはそうだね。私の夢の中。言い換えるなら不思議な夢――デイドリームってところかな?今は眠っているだけ。いやー、結構ギリギリだったよ。あと少し早く発作が起きてたら間に合わなかったし」
どう言う訳か、未来の私は私が思っていることに対してそう言う。口にしていないのに私の考えていることを読んで言うあたり、ここが夢の世界なのだと実感させられる。あの世の可能性もまだ拭いきれないけど。
「まぁ、とりあえず。おめでとう。無事、全員生きた状態で日曜日を迎えたよ」
「そうなの?」
「うん。ここで嘘を言う必要も無いでしょ?ここがあの世なら、私がここにいる理由もないし。本来なら絶賛未来で生きてるし。今は過去の世界に留まっている状態だけど」
「過去に留まっている?」
未来の私の言っている意味が分からない。あの時消えたはず。それは私が目の前で見ていたこと。だから、ここにそもそも未来の私がいる理由もわからない。
それに、今更ながらわからないことが。
「どうやって私助かったの?あの場にみんなは来れなかったはずだし」
「うん。そうだね。校舎内にいたみんなは地震の影響でドアがゆがんでそれぞれその場から出られなくなってたから。それに加えて、予備バッテリーもダウンして連絡が取り合え無くなっていたから、私の状況は誰も知らなかった」
「そんなことが。じゃぁ、余計に私が生き延びる方法ないじゃない」
「うん。一回私の心臓は止まったよ。でも、そんな意識のない私の中に私が入ったことで、無理やり動かした。まぁ、流石に心臓とかの器官を動かすので手いっぱいだったから、這い出ることはままならなかったけど」
苦笑いを浮かべてそう言う未来の私。
それからも話されるその後のこと。その後は、みんながどうにか校舎から出て来て、私を発見してどうにか校庭に引っ張り上げてくれたらしかった。私を見つけた頃には七時を回ってたらしいから、特にみんなに被害が及ぶことも無かっただとか。
七時を過ぎたら事故が起こらなくなるというのは本当だったらしく、その後は何事も無く私は病院に運び込まれただとか。
で、今私は病院のベッドの上で眠っているだとか。
「はぁー。にわかに信じられないけど、本当なのよね?」
「もちろん。嘘つく理由が無いでしょ?それに、おおかた私の事にも気づいてるんじゃないの?」
「まぁね」
本当のことのようだからそこは安心。みんなで生きて明日を迎えるという目標は叶った訳だし。でも、まだ私が目を覚まさないと完全にとは言えない。みんなからすれば、目を覚まさないから死んでいるかもという不安はあるだろうし。
本当のことであればだけど。
そして、未来の私は肩を窄めて逆に私に問う。未来の私の事。途中で気づいたけど、想像の域を出ない。でも、未来の私が色々知っていた理由は、今ではそれ以外想像がつかない。
「みんなが生きた場合の未来の私。それがあなたよね?」
「正解。どうしてそう思ったの?」
未来の私は笑みを浮かべてそう言った。
この結論に至ったのは、あの時話した内容が全て正しかったから。過去に飛べないのかの真実は知らないけど、三時から七時までの間に起きたこと、花丸と一緒に居たら一緒に潰されかけたことから、二つともあっていたと言える。
でも、それだけならまだ皆がいない世界の可能性があったけど、未来の私がみんなの生きている世界の私だと思った一番の理由は別のところ。
「そもそも、明るすぎだわ。皆がいない世界ならそんなに明るくできないわ。みんなのことを忘れたというのならそもそもこんなことしないだろうし」
まるで、みんなが死んでいないんじゃないのかと思う明るさ。それにみんなが死んだ世界の私だと、色々知りすぎている。その世界の私は今の私がやってきた過去の繰り返しをやっていないはずなのだから。
「そうだよね。二人の姿を見たら懐かしくてつい抱きついちゃったけど、今思えばおかしかったわね」
「未来の私は果南に触発されたの?」
「さぁ、どうでしょう。それは私自身が知ることよ」
未来の私がどんな生活をしているのか気になるところだけど、それは教えてくれないらしい。まぁ、生きていればそのうち私自身が知ることになるんだろうけど。そうなると、他に気になることを聞こうかしら?
「どうして、みんなが生きてる未来から来たって言わなかったの?」
「それを言って、安心した結果誰かが死んだなんてことになったら目も当てられないでしょ?みんなが死んだ未来から来たと思った方が、全力で当たれるって思ってね。それに、私はみんなが死んだ未来から来たなんて一言も言ってないし。言ったのも、そう言う未来があったって話だし」
一応、未来の私の言っていることは間違っていない。日曜日に現れた私がみんなの居ない未来の私だったってだけで、今日現れた未来の私がどんな未来から来たかは言っていない。あの時は日曜日に現れた方って思っちゃったけど。
それに、みんなが無事に生きられると聞いたら気が緩んでしまう可能性があるかもしれない。ここで頑張らなくてもどうにかなるかもという楽観が無いとは言い切れない。
「でも、そのせいで疑われたのよ?」
「知ってる。でも、結果的にはその疑いも保留になって、全員で協力してどうにかなったでしょ?」
「確かにそうだけど……そう言えば、あなた消えたのにどうして助けられたの?あの時未来に帰ったんじゃないの?」
「うん。そうなるはずなんだけど、ちょっと心配事があって無茶したよ」
「無茶?」
続いての疑問を投げかけると、未来の私はそう言った。無茶したって何をしたっていうの?
未来の私の言っている意味が分からず首を傾げると話を続ける。
「ペンダント使え無くなるって言ったでしょ?」
「ええ。どうなのかはわからなかったけど」
「私はその水晶の中にいたって訳。その結果一時的に過去に飛ぶ能力を代償にしてね」
「なんで、そんなことを……」
「だって、色々今までと違うことがあった訳だし。私が呼ばれて無かったら、わかっている範囲で頑張ってたんだけど、私は一年程昏睡状態になってたの」
「そんなことがあったの?」
「うん。あの時、ぎりぎりみんなが私を見つけて病院まで運ばれたんだけど、状態は最悪だった。結果から言えば、八人でラブライブに挑んで地区予選で敗退した。そして、浦女は廃校になった。それを後で聞いた時はほんと最悪だったわ。みんな私が戻って来ると信じて私の居るスペースを空けて練習してたらしいから」
未来の私の世界のことを聞いて、私は言葉を紡ぐ。結局予選を敗退して廃校になってしまったらしいから。
「まっ、そんなわけで、私は賭けに出た。もし失敗すれば、私が水晶から出て行けば過去にまた飛べただろうしね。でも、私は私の居た未来にしたくないから、こうして足掻いたってわけ。あれだけはずっと後悔してたから」
悲しそうな顔でそう言うと、私がこの世界に留まれていた理由はわかった。そして、私の気持ちも。
「結局、私のわがままだよね。私は病院で起きてからずっと後悔してたから、暇さえあれば水晶のことを調べてきた。だから色々知ってた。いつかはこういうことが起きるかもって、期待して。そして、私の期待をあなたが、みんなが叶えてくれた」
「そう」
「そして、結果は全員無事。これで心残りも無いかな?もうすぐあなたは目を覚ますはずだよ」
「そう。なら良かったのね?」
「うん。良かったよ」
そうして話していると世界は徐々にゆがみ始める。未来の私が言った通り、そろそろ私が目を覚ます時が迫っているんだと思う。
「ありがとね、私。私が来てくれたおかげで、足掻いてくれたおかげで私も皆と一緒に生きられる未来が来る」
「ううん。私の方こそ、ありがとう。みんなと願ってくれなかったら私はずっと後悔の気持ちを抱えたまま過ごしていたと思うから」
互いにお礼を言い合うのは変な感じだけど、変なことは今に始まったことじゃない。そもそも、私と話している時点で変な感じだし。
「みんなでラブライブの地区予選を突破してね」
「うん。頑張って突破。ううん優勝してみせるわ!」
「うん。その調子だよ。じゃぁね、私」
「うん、じゃぁね、私」
そう言って、私たちはハイタッチをして、この変な夢――未来の私が言うデイドリームは閉じられたのだった。
~☆~
「ん、ん~」
目を開くと視界には白が広がってた。寝ぼけ眼を擦りながら周りを見回すと、そこは病院の病室のようだった。未来の私に病院に運ばれたと聞いていたから驚きはさして無い。
私の格好は病院着で、包帯とかは巻かれていないから外傷はないみたいだった。落下した時に腰を打ち付けたはずだけど、それも大きな怪我にはいたらなかったみたい。
これなら、すぐに退院できるはず。
「すぅ、すぅ」
「ん~」
時計を見ると時刻は十時で日曜日を表示しているから半日近く眠っていたらしい。だいぶ寝たおかげで最近溜まっていた疲れは無くなっていた。退院したら未来の私との約束を果たすためにも、練習をいっぱいしないと。
「「すぅ~」」
さて、いつまでも無視しているのもダメよね。
椅子に座った状態で上半身はベッドで寝ている花丸とリリーを見る。二人とも私服を着ているからお見舞いに来てくれたらしい。しかも、ここで寝ているってことは面会時間が始まったばかりから来たんだと思う。
「Oh、目を覚ましたのね」
すると、病室のドアが開いてマリーがやってきた。その手には花瓶があるから、水を入れに行っていたみたいだった。
「ん、マリーおはよ」
「おはよう。調子はどう?」
「特に異常はないと思う。変な感じはないし」
「そう。なら安心ね。特に外傷はないからじきに起きるって言ってたから。それにしても、二人は寝ちゃったのね」
「みたい」
マリーは二人に目を向けてそう言ったから相槌を打っておく。
「まぁ、二人は特に心配してたからね。たぶんあんまり寝ていないだろうし、面会可能になった直後に病院に来たからね」
「そして、眠気に負けて寝たって訳ね」
「善子が気持ちよさそうに寝ていたから眠気に誘われたんでしょ。ほら!」
「ちょっ、なんで写真を撮ってるのよ!」
マリーは私の寝顔を撮った写真を画面に映して私に見せた。ツッコむも、マリーは普通に私の手を避けてみせる。ベッドで寝ていたらマリーを捕まえられない。
「その写真消しなさーい!」
「嫌よ。せっかくこんな可愛い寝顔を撮れたんだから。それに、みんな持ってるわよ?」
「え?」
「「ん~、なに~」」
病室で大声を出していたら、その声で二人が目を覚ました。まだ意識は完全に覚醒していないみたいだった。
でも、起きている私を認識すると、二人とも目がぱっちり開く。
「よっちゃん!」
「善子ちゃん!」
で、二人同時に私に抱きついてきた。私は手をワタワタさせるも今の今まで寝ていたせいで動けない。
「おはヨーソロー!あっ、善子ちゃん起きてる!」
「おはよー。ほんとだ。二人に続けー!」
すると、病室のドアがまた開いて、みんなも入って来る。と言うか、今更だけど、ここ個室だし八人が入れるって大きくない!?
曜と千歌は、二人にもみくちゃにされてる私を見るや加わって来る。
「やめて!私病人!」
「良かった!よっちゃんが起きて!」
「善子ちゃんが目を覚まさないから心配だったずら~」
「人の話聞けー!」
四人にもみくちゃにされて、助けを求めるべく抱きついてきていない四人に目を向けると、優しい目でこっちを見ていた。
果南は加わろうか悩んでいそうで、ルビィはどうした方がいいのか悩んでいるように見えるけど。
「で、私は無事だけど、みんなも無事ってことでいいのよね?」
それから数分間もみくちゃにされて、四人が離れた時にはせっかく無くなったはずの疲労感に包まれた。せっかく回復したのに。
みんなは特に何事も無かったらしかった。あえて言えば、一向に目を覚ます気配が無かった私を心配していたくらい?
「一応、この後に検査をして異常がなければ退院できるそうよ」
「そう。なら、退院したらさっさか練習しないといけないわね。昨日はまともに練習できなかったわけだし、まだ新曲の案が浮かんでない訳だし」
「あっ、それなら問題ないよ!なんと、善子ちゃんの話を聞いたことで、一気に歌詞が思い付いたからね」
「千歌ちゃんが書き終えてくれたおかげで作曲もやっと終わって」
「衣装案も完成したであります!」
一通り聞いた後、私がそう言うと、千歌は自信満々にそう言って、リリーと曜もそう言った。
あれ?私が寝てたのって半日よね?それで完成するって、あんまり心配されて無かった?
「まぁ、善子ちゃんがすぐ起きるって信じてたから」
「それに、何かしてないと不安で」
「そして、完成した歌詞がこれ!」
と思ったらそんな感じだった。
そして、千歌は鞄から歌詞を書いた紙を取り出して私に見せたのだった。
~☆~
「みんな。今日のライブ絶対に成功させようね!」
「うん。せっかくここまで来たんだから」
「それに、これは廃校を防げるか否かの大切なライブなのですからね」
あれから一週間が経った日曜日。今日は第二回説明会がある日。急ピッチで衣装を仕上げて、ダンスの練習をして今日という日を迎えた。
曜の考えた衣装はワンピースというかドレスのシンプルなもので、それぞれのイメージカラーになっていた。今までと違うけど、これはこれでありだと思う。それに、私のには堕天使の羽もついてるし。
練習時間が少なかった感が否めないけど、この一週間はとにかく練習に明け暮れたおかげで、来てくれた人に見せるには申し分ない出来になったと思う。
「よっちゃん、大丈夫?」
「ええ。問題ないわ」
「みんな一緒だからね?」
「うん。みんなを、リトルデーモンを信じてるわ」
「じゃぁ、次の曲に行こっか」
一曲目の一回目の説明会の時にも歌った“君のこころは輝いてるかい?”を歌い終え、みんなが次の曲の立ち位置につく。
みんなが毎日のようにいなくなったあの過去。そして、私は日記から手がかりを探し続けた。探しながらも、本当は見つけたくないものに目を背けたりもした。それを認めるのが怖かったから。でも、見つけてしまえば私は認めざるを得なかった。自分が
どうしてそうなったのかはわからない。どうして、みんなが次々に死んでいくのか。本当のことなんて誰にもわからないのだから。だから、こんなことは悪い夢なんだと思いたかった。夢なら覚めて欲しかった。
“
待ち受けていたのはみんなを失っていく日々。みんなのやさしさ、愛情を失っていく辛く重い日々。後悔ばかり募った。
でも、あの日々があったおかげで、みんなの優しさを知ることもできた。みんなと一緒に生きたいと思えた。
だから、私はそんなみんなの優しさを忘れたくないから、一緒に生きたいから終わりにしようと決め、みんなの力を借りて、みんなと一緒に終わりにした。
「聴いてください。Daydream Warrior」
~☆~
あれから二年の年月が経った。私は沼津の高校を卒業した春休みに久しぶりにAqoursメンバー九人がそろい、とある場所に来ていた。
未来の私との約束通り、私たちはラブライブの地区予選を突破した。でも、浦女の廃校は覆せなかった。もっとがんばっていればと後悔もした。
でも、まだ未来の私との約束は続いていた。せめてそれだけは果たしたかった。みんなと一緒にラブライブを優勝する。
簡単な物じゃないことはわかっていた。でも、後悔はしたくない。だから、みんなで決意した。そして、私たちはラブライブに優勝した。
「別にこんな場所にみんなで来なくても、私一人でもよかったのに」
「いいの、せっかく集まったんだからね。それに、私たちがこうしていられるのは未来のよっちゃんが水晶を持ってきてくれたおかげなんだから」
「あれ?あの洞窟かな?」
「みたいね。さて、adventureの始まりね」
「冒険か。九人ならなんでも楽しいかもね」
「鞠莉さん、果南さん。そんな気楽に構えないでください。何が起こるかわからないんですから」
「全速前進ヨーソロー!」
「曜ちゃん、言ったそばから走らないで!」
「あー、マルを置いてかないで~」
みんなで頑張って掴んだ今。
辛いこともあった。でも、楽しいこと、うれしいこともあった。
こんな未来を掴めたんだから、次は私の番。いつかの日の為に。
私は首にかけたペンダントを握り願う。
「私は願う。故に私は乞う。このみんなとの日常がいつまでも続きますように」
これは“
繰り返される堕天 完
これで【繰り返される堕天】完結です。
だいたい三ヶ月の間ありがとうございました。ノシ