繰り返される堕天   作:猫犬

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近々投稿?しました。さすがに一週間引っ張るのもあれですしね。


5 雨の日2

「いたた……」

 

横転したバスの中私は頭を抑えながら身体を起こす。木に乗り上げたことでバスはそのままスリップして、私たちはバスの壁に転がるようにぶつかった。私の隣にいた二人に被さるように倒れ込んでいて、私は二人のおかげで、多少の痛み程度で怪我をすることは無かった。ハッとして、私は下敷きにしちゃってた二人から慌てて退く。

 

「二人とも、大丈夫?」

「「……」」

 

しかし、二人からは一切の反応が無く、私は困惑した。二人ともあおむけに倒れていて、気を失っているのか反応が無かった。

だから、ただ気を失っているから反応が無いだけだと安堵し、でも、二人が本当にけがをしたりしていないかが心配で一応診ていく。切り傷とかあれば手当ぐらいはできるし。

そんなわけで、ルビィの身体を抱っこして前の座席の方へ運ぼうと、ルビィの背に腕を通した瞬間、私の手に痛みが走った。

 

「いたっ!……え?」

 

痛みをこらえて持ち上げたことでルビィの身体の下の光景が目に入った。

ルビィの居た位置には割れたバスの窓のガラスが散乱しており、血が流れていた。痛みがあるけど、こんな場所にルビィを降ろすわけにもいかず、私は前の座席に移動して同じく割れた窓ガラスを蹴って退かし、安全を確保したうえでルビィの上半身を背もたれに寄りかかるようにして座らせて降ろす。

降ろした後、私は手を見ると切り傷ができ、手が赤く染まっていた。そして、ルビィを見ると、額から血が流れており、それがルビィの血なのだと分かり、私は恐れた。もしかしたら、ルビィは……。

 

「花丸!」

 

私はルビィがこれならと慌てて花丸に近づいて、花丸の身体を持ち上げると、やはり花丸の背も傷ついており、私は割れた窓ガラスを退かして背もたれに寄りかからせる。花丸も同様に額から血を流しており、私は慌てて病院に電話をして救急車を呼ぶ。

二人ともまだ脈はあり、今ならまだ間に合うと思った。二人とも少しガラスで切っただけ。だから二人ともすぐに良くなると信じて傷口の手当てを始める。私はよく怪我をするから手当てする道具を少しは持ち歩いていることが役に立った。

 

「なんで、こんなことに。二人とも、大丈夫よね?」

 

私は嘆きながらも、二人の意識が戻ることを願った。そして、この光景に見覚えがあった気がした理由も今更理解した。昨日見た夢の一部だったことに。でも、あの夢の通りにしてたまるもんか。

 

 

~☆~

 

 

「お二人とも事故の際に頭を強打していたようで、脳に血が溜まっていました。それが死因です」

 

病院に着いて、すぐに医師から結果が伝えられた。二人ともあの事故の時点で手遅れだったようで、どうしようも無かったとのことだった。

 

「そんな……ルビィはもう……」

「嘘でしょ。せっかく仲良くなれたって言うのに……」

 

事故の話を聞き皆はすぐに集まり、そして私たちは二人の死に涙をこぼした。その中でも、ダイヤは今までの凛とした振る舞いなど忘れたかのように、大泣きして泣き崩れた。

 

あの時、私が忘れ物に気付いて戻らなければ、二人が事故に遭うことは無かった。私が戻らなければ……私のせいでまた誰かが死んだんだ……。

あの時……

 

「あっ」

「善子ちゃん?」

「えーと、ちょっと手洗いに……」

 

私は逃げるようにその場を後にした。私は思い出したから。

私はトイレには寄らずに、誰も来なさそうな屋上の扉の前まで行くと立ち止り、制服のポケットの中に入れていたペンダントを取り出す。

全てはこれを取りに戻ったのが原因。そして、これさえあればまだ二人を救うことが出来るかもしれない。曜を救うことができたのだから。

 

花丸とは幼稚園の時からの幼馴染。まぁ、小・中学校は違ったけど、また巡り合うことができた。花丸の第一印象はほんわかした柔らかい感じでなんというか一緒に居ると安心する感じだった……はず。幼稚園の頃の印象なんてあんまり覚えてないけど、再会した時にもそれは変わったりはしていなかった。自分は運動が苦手でだからスクールアイドルに向いていない、Aqoursに入っても迷惑をかけてしまうと思ってたらしいけど、私はそうは思わない。花丸はどんなことにも前向きに取り組めて、だからこそ結果がちゃんとついて来るって。それに、アイドルに向いてるかなんてやってみないと分からないものなんだし。

 

ルビィとの出会いは高校に入ってから。と言っても入学式の次の日には私が登校拒否してたから学校に復帰してからだけど。入学式の時には、ルビィは引っ込み思案でなかなか自分のことを表に出せないから、常に花丸のそばにいてビクビクしているのが第一印象だったでも、私が学校に復帰した時には、あの時とは違ってビクビクしておらず、普通に自分を出せるようになっていた。

花丸と同様に自分がアイドルに向いていないと思ってたらしいけど、ルビィはスクールアイドルが好きなんだからそれで十分だと思う。千歌も言ってた通り、好きな気持ちさえあればいいんだから。そして、そんなルビィが頑張っているのを見ると、私も負けてらんないとやる気が出た。

 

二人とも私が堕天使と言っても呆れたような表情をするくらいで否定することは無く、同じクラスでAqoursメンバーだから一緒に居ることが多くて、私は二人と一緒に居ると退屈しなくて楽しく、気持ちも温かくなった。だから、二人と居る時間が好きだった。流石にそれを口にするのは恥ずかしいから言うことは無いんだけど。

 

「絶対に二人を救ってみせる!」

 

だから、私は決意を固める。二人とのあの日常を取り戻すために。

ところで、私が過去に飛ぶ方法って結局どれなのかしら?もし、水晶以外にも必要だったら戻らないといけないけど。水晶が輝いたのはあの時、最後の言葉で願った時。だから、きっと。

 

もしあの時、私が忘れ物をしなければ、こんなことにはならなかった。

もしあの時、取りに戻らずに一緒に帰っていればよかった

 

「我願う。故に我乞う。花丸とルビィの居る日常を!」

 

二人と一緒に居る日常を願った。直後、水晶からまばゆい輝きが放たれ、私は光に包まれた。

 

 

~☆~

 

 

「うーん……ここは?」

 

目を覚ますと、私は自分の部屋のベッドの上で寝ていた。時計を見ると、二人が死ぬあの朝だった。身体を起こし、成功したのだと安堵すると、私は早速動き始める。

二人を絶対に救って見せる。私は改めて気持ちを固めると制服に着替えてリビングに行く。すると、ちょうど学校に行こうとしていたママを見送り、私は朝ごはんを食べて家を出た。傘が壊れるのはわかっているから靴下とタオルを入れ、傘を二本持って行く。これで壊れてももう一本でどうにかなる……はず。

私は準備を整えると家を出た。

 

「善子ちゃん、おはよう……って、どうして傘二本持ってるの?」

「ふっ、天界からの疾風攻撃で我が(アンブレラ)は破壊されたわ」

「あー、風で傘壊れちゃったんだ……」

「確かに今日は風が強いですわね。それを見越してもう一本持って来たわけですか」

 

浦女に着き、昇降口でびしょ濡れになった靴下を履き換えると、ルビィと花丸とダイヤがやって来た。傘があってもこの強風だから雨で濡れるのは変わらず、私はタオルで拭きながらそんな会話をする。

私が傘二本持っていることにダイヤは最初疑問に思うも、一本が壊れていると分かると納得していた。

 

「それにしても、今日は大荒れよね。午後の授業無くなったりして」

「さすがにそれはないよ……そんな天気になったらバスどうなるんだろ?」

「さぁ?言ってみただけよ。どうせ、速度を落として安全運転で走るでしょ」

「だよね。ルビィたちはまだ歩けない距離じゃないけど、善子ちゃんたちは厳しいよね」

 

ダイヤは生徒会室によると言って別れて、私たちは教室に着くと席に着いて、午後の授業が無くならないかといった話をしていた。二人は単純にこの雨だから私が面倒だと思っているみたいで、でも私はそれとは違う理由でそんなことを言った。

もし午後の授業が無くなって早く帰れれば、事故に巻き込まれることは無くなると思うから。

 

「それよりも善子ちゃんはちゃんと乾かすずら」

「平気よこれくらい」

「ダメだよ。身体を冷やしたら風邪ひいちゃうよ」

 

髪が湿っていることで、二人はそんな心配をし、断っても花丸は無視してタオルでごしごしと髪を拭いてきた。私は為すがままにされ、私は抵抗としてタオルで花丸の髪を拭きにかかる。二人も私ほどではないにしろ濡れていたから。ルビィも髪の拭きあいに混ざり、終わった頃には三人ともだいぶ湿り気が無くなっていた。代わりに私は体力を持っていかれた気がするけど。二人も体力を持っていかれたのか、そんな表情をしていた。

 

「ふふっ」

 

でも、不思議と嫌な気分にはならなかった。きっと、二人とこんなバカなことができることがうれしいから。

 

「善子ちゃんが不敵にほほ笑んだずら」

「まさか、まだやる気なの?」

「いや、もうやらないわよ。あと、ヨハネ!」

「あっ、やっと善子ちゃんがツッコんだ」

「うんうん。やっといつもの調子に戻ったずら」

 

私が今更ながらツッコむと二人はなんでか笑顔になる。それで私は気づいた。そう言えば今日はずっと二人を救う方法を考えていて、何かあればすぐに動けるように気を張っていた。二人からすれば今日会ってからずっと張り詰めた表情の私に困っていたんだと思う。だからこそ、今日の二人はいつもと違って拭きにかかってきたのね。いつもなら無理やり拭こうとはしないだろうし。

でも、私ははっきりと意思を固めた。事故は放課後に起こると分かっている訳だから、そのタイミングをずらす。それ以外に方法はない。

 

「ちょっと考え事をしていただけよ」

「そうなの?」

「ええ。でも、もう大丈夫よ」

 

もう前回のようなミスはしない。そもそも、今回は鞄を部室に干さないでおく。そうすれば、忘れることは無いだろうし。そもそも忘れる要素もないわね。

それから、私たちは普通に一日を過ごした。

残念ながら午後の授業が休講になったりはせずに、普通に行われてしまったけど。

 

 

~☆~

 

 

「さて、雨も一向に止みそうにありませんし、今日は早めに解散しましょうか」

「そうね。この天気じゃ暗くなったら危なそうだしね」

「そうだね。私はそれでいいかな?」

 

授業終わりに部室に行くと、次の曲をどうするかという話をしていた。本当はさっさか帰りたかったけど、上手くは行かずに今に至っている。体調が悪いと言っても皆が早く帰る訳ではないので、いい方法が浮かばない。

そうして、皆は曲のイメージ案を上げて行き、一段落したところで前回同様ダイヤが提案して帰ることになり、皆で帰り支度を始めた。

 

「さて、ちょうどバス停に着く頃にはバスが来そうだし、いこっか」

「そうだね」

 

私たちは支度を終えると部室を出た。今回はペンダントも鞄の中に入れているから忘れ物はない。だから、九人全員であの時より一本早いのに乗れて事故に遭うことも無くなる。

私は二人を救えることに安堵する。でも、まだちゃんと救えたという確証もないから、気持ちを切り替える。もしもの時は私が絶対に助けてみせる。

 

「あれ?あっ、部室にシャーペン忘れちゃった」

 

昇降口に行くと、ルビィは思い出したかのようにそう言った。前回と違ってルビィが忘れ物をするという事態に私は困った。このまま取りに戻れば間に合わずに、あのバスにルビィが乗ることになってしまう。それだけはどうにか避けないと。

 

「別に明日でもいいんじゃないの?」

「うーん」

「そうですよ、ルビィ。家にもシャーペンはありますから」

「うん。そうだね」

 

なんとかルビィが取りに戻るという事態は避けられ、私たちはバス停に行った。すると、ちょうどバスがやって来て、それに乗り込む。

 

「それにしてもすごい雨だね」

「そうだね。東京だったら遅延が起きちゃうかも」

「そうなの?よかった。バス止まんなくて」

「そうだね。この雨の中バスなしで帰るのは相当厳しいし」

「曜ちゃんたちの場合は雨じゃなくても厳しいでしょ」

 

バスの中では皆いつも通りの会話をしており、私は窓の外を見ながら頷く程度だった。もし木が倒れて来たら、すぐに注意を促せば最悪の事態だけは避けられるはず。

そうして眺めているうちに、あの時事故が起きた場所に差し掛かる。あの時の木は風でグラグラ揺れていて、いつ倒れてもおかしくなかった。でも、バスは何事も無く通り過ぎ、ルビィたちが降りるバス停までたどり着く。

 

「では、私たちはここで」

「またね、皆」

「バイバイずら~」

 

三人は手を振って降りていき、バスは再び走り出す。

 

「ふぅー」

「どうしたの?急に安堵したみたいな表情をして息ついて」

「いや、なんでもないわ」

「そうなの?まぁ、いいや」

「よーちゃん、次の衣装どうしよっか」

 

二人が無事バスを降りて行ったことで安堵の息を漏らすと、隣に座っていた曜は首を傾げてそう言った。さすがに、二人が無事だからなんて言える訳もないから、誤魔化すと千歌が曜に声をかけてそっちに顔を向けて行った。

果南と鞠莉は喋りあっているから、私は窓の外を見ながら黄昏る。

 

二人の死は回避できた。

これで私の悩みは一段落した。でも、まだ終わらない。昨日起きるはずだった曜の死。そして、今日起きるはずだった二人の死。これだけ揃えばわかってしまう。まだ死の運命は終わった訳じゃない。

 

あの夢で死んでいたのは三人だけじゃなかったんだから……。まだ五人も死ぬ可能性があるのだから。




もう二人のルートが終わりましたが、先は長い?次回はいつになるか?
では、ノシ
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