繰り返される堕天   作:猫犬

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気付けばUAが1000突破。ありがとうございます。
という訳で、第6話です。


6 風邪をひいた日1

「完全に昨日雨に打たれたのが原因ね。今日はおとなしく休みなさい。学校には連絡しておくから」

「ゲホッ、ゲホッ。はーい」

 

二人を救った翌日。私は見事に昨日の発言のフラグを回収して風邪をひいて熱を出した。最初は平気なふりをしたけど、ママが私の顔を見た瞬間、体調が悪いことがばれてしまった。そして、瞬く間にベッドに寝かされて今に至る。

一昨日、昨日と誰かの身に危険が迫っていたから、今日もあるのではないかと私は思い、だからこそ学校に行かないといけないというのに行けない。まぁ、私がこの調子じゃ、もしかしたら私が次かもしれないという恐れがあるんだけど。

 

「さて、ただ寝てるだけは嫌なのよね。これで風邪をひく原因をどうにかできるのかしら?」

 

私は特にすることが無くて、ペンダントを眺めながら一人呟く。風邪をひく事態をどうにかできれば、学校に行ける訳でもしもの事態への対処をすることも可能になる。あと、ただでさえ登校拒否してた時期があったせいで出席数もピンチなのよね。

 

「我願う。故に我乞う。私が風邪をひく前まで戻れ」

 

過去二回と同じように口に出してみるけど、水晶が光り出すことは無く、何も起こらなかった。

流石にこうも都合よく行くわけもないわけで、あまりこの現実に落胆することは無かった。これは「できたらいいな」ぐらいの気持ちで願ったものだから。それに、この願いが叶えば下手すれば二人の事故の前まで戻されかねない訳だからで、風邪の原因は登校の時に雨で濡れたせいだろうしね。

そう言う訳で、私は風邪をひく前に飛ぶという案は捨てる。

これによって、水晶の力が発動する条件の情報が追加されたわけかしら?たぶん、これは誰かの死が必要になっていそうね。正直、それならもう過去に飛ぶことが無ければいいんだけど。

 

結局、水晶のことなんてわからないことばかりだからこれ以上の情報収集も無理そうで、私はまた寝ることにする。こうなれば、さっさか体調を戻さないと。

だから私は寝るその時まで、皆に何も起こらないことを祈るのだった。

 

 

~☆~

 

 

ピンポーン

「ん、ん~。だれよ?」

 

あれから私は眠りに落ち、インターフォンの音で目を覚ました。ママは出かけている訳だから、今は誰もいない訳で、私が出る以外に選択肢は無かった。でも、身体は寝てもまだだるく、できれば動きたくなかった。

 

ピロンッ

 

すると、私のスマホに通知が入る。誰だろうと見るとリリーからで、今の時刻が普段の練習時間が終わった頃だから、今日も早めに切り上げたようだった。それとも、練習の合間なのかしら?そして、長いことスマホを見ていなかったわけだけど、皆から大量の言葉が飛ばされていた。

 

『善子ちゃん、起きてる?今鞠莉ちゃんと家の前にいるんだけど』

「え?」

『お見舞いに来たデース』

 

リリーに続いてマリーからも連絡が入る。どうやら練習を早くに終わらせて二人が来たようで、流石に二人がお見舞いに来てくれたのに居留守を使うのも悪い気がして、フラフラした状態で私は部屋を出て、玄関の扉を開ける。

 

「ゴホッ、ゴホッ。いらっしゃい」

「Hello、善子。具合は……悪そうね」

「ごめんね、よっちゃん。そんな状態で出て来てもらっちゃって」

「いいわよ。それと、別に来なくてもゆっくりしてれば治ったわよ」

「照れてるわね、善子」

「うん。素直じゃないね」

 

二人は笑みを浮かべてそう言うと、いつまでも外にいさせるのも悪いから家にあげる。流石に、来ちゃったから追い返すのも悪いし、こんな風に誰かがお見舞いに来てくれるのもうれしいし。

家にあげると、フラフラしている私の手を引いてリリーは部屋まで連れて行ってくれた。

 

「さて、病人の善子は寝てなさいな」

「二人が来なければ寝てたわよ」

「本当はうれしいくせに」

 

今日の二人は少し意地悪で、すぐに隠した本心を見抜いて茶化してくる。うーん、どうも体調が悪いからかいつもみたいにはいかないわね。

とりあえず、私はベッドに座ると、二人は絨毯の上に座る。

 

「それにしても、この組み合わせは珍しいわね」

「そうかしら?ギルキスだから珍しくはないわよ。それに、私たちが来たのはお見舞いに行くじゃんけんで負けた結果よ」

「負けた結果って、私のお見舞いは罰ゲームなの?」

 

二人がじゃんけんに負けた結果来たのだと聞いて、私は地味にショックだった。そんなに私のお見舞いに行くのは嫌だったわけ?

すると、私の表情を見てリリーは慌てて言葉を続ける。

 

「あっ、よっちゃん。勘違いしないでね。いつもよっちゃんがじゃんけんに負けているっていうだけの理由で、あえて負けた人が行くことになっちゃったの」

「誰よ。そんな紛らわしい事考えたの」

「発案者は私デース」

「なんでよ!」

「いや、勝ったらだと、やたらと運がいい花丸とかちかっち辺りになりそうだったからね」

 

なんというか、それでいいのかという理由に私は呆れた。でも、別に嫌だから負けたらという訳じゃなくて安心はした。理由には納得がいかないけど。何よ、いつも私が負けてるからって。いや、負けてるのは事実だけど。

 

「あぁ、そうだ。今日の授業のノートだって。花丸ちゃんとルビィちゃんからよ」

「そう言えばこれお見舞いの品よ」

 

リリーはそう言って、数枚のルーズリーフを鞄から取り出し、マリーは林檎や苺といった果物の詰め合わせという見舞いでよく見るようなものを取り出す。ちょっと待って、マリーの鞄の大きさをゆうに超えてるような?

 

「どうやって鞄の中に入ってたわけ?」

「シャイニー!」

「答える気ないのね」

 

マリーへの追及を諦めると、渡されたノートをぱらぱらとめくる。そこには今日やったであろう内容が書かれていた。たぶん、自分たちのノートに書いたものを休憩時間にでも写したかのような感じだった。別にそんなことしなくても、行った日に見せてくれればよかったのに。

 

「ありがと」

「お礼は二人に言ってあげてね。私は頼まれただけだから」

「そう。それで、マリーは何キョロキョロしてる訳?」

 

ルーズリーフを受け取ると、私はキョロキョロと部屋の中を見回しているマリーに声をかける。すると、マリーは私の声に反応する。

 

「ああ、善子の部屋に来るの初めてだから、どんな感じなのか気になってね。ぬいぐるみが散乱してて意外だったけど」

「散らかってて、悪いわね。ゲームセンターのクレーンゲームで取れそうだから取ってたらこうなってたのよ」

「取れそうだからで取れちゃうんだ……」

「まぁ、中学の頃は友達付き合いがあんまなくて、一人でゲーセンに入り浸ってたから」

「あれ?なんか、暗い話に行こうとしてない?」

 

気づけば私が中学の頃のことを話し、二人は反応に困っていた。そこで、自分自身どうしてこんなこと言ってるんだろと思い、それ以上はやめた。きっと、熱のせいね。気分が暗くなってるからこんなことを言っちゃったんだろうし。

 

「まぁ、そんなことは置いといて」

「それを鞠莉ちゃんが言っちゃうんだ」

「調子はどうなの?」

「今更ね。ずっと寝てたから朝よりはマシよ。まだ完全ではないんだけどね」

 

今日はほとんど寝て過ごしていたからか、朝よりはだいぶマシになってきていて、この調子なら明日には登校できそうだと思う。二人はそれで安心したような表情をすると、私は逆に気になっていたことを聞く。

 

「そう言えば、今日は練習なかった訳?こんな時間だけど」

「ああ。全員集まってないと合わせられないからね。それに、よっちゃんの事心配だったから」

「悪いわね。こんな状態になっちゃって」

「ううん。昨日の雨はすごかったから仕方ないよ」

「そう言ってもらえると、気が楽になるけど。何か学校であったりしなかったの?」

 

私はここいらで今日学校であった出来事を聞く。もしかしたら、今日もまた誰かの身に危険が迫っていたかもしれないからね。まぁ、何かあったらもう言ってると思うんだけど。

 

「特には……あっ、昨日の雨でいつもの道に木が倒れてて、危うく朝練を遅刻しそうになったことかな?」

「そうね。綺麗に道を塞いでいて、危うくバスを使う生徒の皆がほぼ遅刻する事態になるところだったわ」

 

あの時の事故の原因だった木はやっぱり倒れていたらしく、でも特にけが人は出ていないとのことで私としては良かった。これで何かあれば今の状態の私じゃどうにもならない訳だし。

 

「しそうになったってことは、遅刻しないで済んだの?」

「うん。木の前で降ろされて、そこから歩いたらギリギリね。その後、地元の人たちが撤去して朝練のない子たちは普通に来れてたよ」

「さすがに、昨日の雨の中撤去はできなかったし、早朝に撤去も厳しかったから仕方がないものね。私もまさか木が倒れてるとは思わなかったわ」

「まぁ、木が倒れてるなんて普通は思わないわよね。他には特に何もなかったの?」

「ええ。特に何もなかったよ。よっちゃん、どうかしたの?」

 

私は私の知らないところで何か起きていないか気になって、他の質問をすれば、二人は疑問顔をする。今更ながら、こんなに聞けば不思議がられるのも普通だと気づくも、良い言い訳の方法が思いつかない。流石に誰かが事故に遭ってるかもしれないからとか言う訳にもいかないし……。

 

「なんでもないわ。昨日の雨がすごかったから、浦女に影響が出てないのか気になっちゃって」

 

だから、私はそれっぽい理由を即座に考えて口にした。実際、浦女にも何らかの影響は出ている可能性はある。嵐の日に停電した過去がある訳だし。

 

「校庭がぐちゃぐちゃで運動部が使えないことくらいかしらね。特に設備の破損は見受けられなかったわ」

「そう。ならいいんだけど」

 

マリーの話を聞く限りはこれといった問題は起こっていないようで、私の心配はどうやら杞憂のようだった。まぁ、流石に三日連続で死傷者が出るなんてことは無いわよね。二日連続でそういうことが起きたから、少し気を張りすぎたかしら?

 

「そう言えば、善子は本当に今日、ずっと寝てたの?」

「ん?ええ……」

ぐぅぅ

「そう言えば、お昼に何も食べてなかったわね」

「よっちゃん!ちゃんと三食食べないと治るモノも治らないよ!」

「と言う訳で、マリーたちでLet’s cooking!」

「鞠莉ちゃん、人の家で勝手にやっちゃ――」

「少しでいいわ。今日はマ……お母さんが早めに帰って来るって言ってたから普通に夕飯を食べるだろうし」

「って、善子ちゃんが許可出しちゃった」

 

リリーは時々お弁当を作っているらしいし、マリーも変な食材さえなければ普通に料理だってできる……はず。だから、頼んでみる。というか、ママが何も用意せずに仕事に行ったとは思えないけど。

そう言う訳で、二人は部屋を出て行き、

 

「よっちゃん、汗かいてるだろうから拭いとかないとね」

「リリー、だいぶ治ってるから一人でできるわ」

「いやいや、ここはおとなしく拭かれなさい!」

「嫌よ!堕天使は他者に素肌をさらさないわ!」

「私とよっちゃんの仲でしょ!他者なんかじゃないわ!」

 

タオルを持って戻って来たリリーは何がなんでも私の身体を拭こうとして来る。なんで、そこまで拭こうとして来るのよ!

なにがなんでも肌を見せたくない私と何がなんでも拭こうとして来るリリー。私たちは一歩も引かずに討論をし合う。

その結果、

 

「冷蔵庫に冷や飯と細かく切られた野菜があったから、簡単なおかゆができたわよ……Oh、これは失礼しましたってやつね」

 

おそらく、私でもすぐにできるようにほぼ準備が出来ていたおかゆを温めたマリーが戻ってきて、私たちの状況を見てそんなことを言った。

マリーなら割り込んできかねないけど、何故か割り込んでくることは無くて助かった。流石に二人相手にするのは無理だろうし。

 

「梨子。善子が嫌がってるでしょ!」

「でも……」

「梨子わかってないわね。善子がここまで拒む理由を」

「拒む理由?」

 

あれ?なんか変な方向に進もうとしてない?

 

「家に一人。そんな状況の善子は誰かをオ――」

「ストップ!変なことを言おうとしてない!?」

「sorry。冗談よ。ただ単に気恥ずかしいのでしょ。六人で銭湯に行った時も入るのに渋ってたし」

「ああ、なるほど。それなら納得かも」

「もういいでしょ。それより、お腹が空いて……」

「はい、あーん」

「へ?」

 

何故かマリーはスプーンで取ったおかゆをあーんしようとしていた。普通に皿ごと渡してくれれば、普通に食べるんだけど。

 

「善子、冷めちゃうわよ?」

「あー、もう!」

 

マリーがさっき割り込んでこなかった理由を今更理解した。マリーは最初からこれを狙ってたわけね。はぁー、どうせ引かないんだろうなぁ。

と言う訳で、諦めてあーんされる。その瞬間気付いた。できたてをあーんされるのって。

 

「No problemよ。マリーに抜かりはないわ!」

 

熱々なのではという心配をすると、マリーは人の心を読んだかのようにそう言い、私の口の中におかゆが入り……

 

「あれ?普通にいい温度」

「運んでいる間にフーフーして冷ましておいたわ!」

 

マリーはドヤ顔でそう言うと、さらにもう一口あーんしようとし、

 

「ひゃっ!」

 

いつの間にか背後に回っていたリリーは服の中に手を入れて私の背中を拭き始めて、いきなりのことに変な声が出てしまった。

 

「見なければ、問題ないでしょ?」

「なんか、ライラプスの時以来、リリーが私に対して遠慮が無くなった気が……」

「梨子も善子が心配なのよ。じゃんけんだって、絶対に負けてやるってオーラが立ち込めてたし」

「リリー……」

 

 

~☆~

 

 

「じゃっ、また明日ね」

「くれぐれも今日は安静にね」

 

おかゆを食べ終え、結局背中は綺麗に拭かれてしまった。前は何がなんでも自分でやれるからと死守をしたけど。

そして、私たちはエレベータ前にいた。私は外に出ない方が本当はいいんだけど、少し外の空気を吸いたかったから外に出て来ていた。

今はエレベータが来るのを待っている状態で、私は何か重大なことを失念している気がするんだけど、風邪のせいか思い出せない。

うーん。なんだったのかしら?

 

「あっ、エレベータが来たね。よっちゃん、また明日」

「see you」

 

二人はエレベータに乗り込み、ドアが閉まるその瞬間まで、二人は手を振り続け、ドアが閉まった。

その瞬間、視界がゆがみ……

 

瓦礫に埋もれた二人の姿が脳裏に映った。

 

「あっ!」

 

私は外に出てからあった違和感の正体に気付き、急いでボタンを押すも、すでに降り始めていて……。

 

キキィッ!

ガシャーン!!

 

周囲に何かが激突する衝突音が響くのだった。




次回はいつだろ?
では、ノシ
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