ゴーグル君の死亡フラグ回避目録   作:秋月月日

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旧約編
第一項 ゴーグルの少年


 最暗部組織『スクール』。

 なんらかの理由で学園都市の闇に堕ちたクズ共が割り当てられる暗部組織の一つで、クズの中でもトップクラスの実力を誇るクズが集結した少数精鋭組織だ。

 リーダーを務めているのは、学園都市第二位の超能力者――『未元物質(ダークマター)』の垣根帝督(かきねていとく)。彼は類稀なるカリスマと実力で『スクール』を完全に指揮し、学園都市の闇で最も怖れられている組織の一つにまで育て上げた。どんな依頼でもこなす使い勝手のいい組織ながら、無関係な民間人には手を出さないという美学を持っているというのも特徴か。

 『スクール』には垣根の他にも三人の正規構成員がいるのだが、その内の一人は基本的に単独行動をとっているので、垣根以外のメンバーはあまり面識がない。専門のスナイパーとして『スクール』に配属されてきたようだが、その姿を見たことがある者は学園都市の闇の中にもほとんどいない。

 そして、他の二人の正規構成員についてだが――

 

「この間の依頼の報酬金についてなんだけど……彼って今更お金とか必要あるのかしら?」

 

「いやいや、流石に垣根さんを除け者にするのは駄目と思うッス。もし垣根さんがそのことでブチギレちゃったら、確実に息の根止められちまうッスからね。……特に俺が」

 

 ――絶賛駄弁り中だったりする。

 赤いドレスを着たふわっとした金髪が特徴の少女の言葉に対し、露骨な後輩口調の少年は顔に影を落として深い溜め息を吐いた。

 黒髪と白髪が入り混じった無造作な髪に、気怠そうな目。黒い長袖シャツの上に襟とフードが同化したような黒白チェックの上着を重ね着していて、下にはダークブルーのジーンズと黒の運動靴を履いている。

 そこだけ見れば凄く普通の少年なのだが、彼には完全無欠に普通ではない奇抜な特徴があった。

 

 

 頭を三百六十度覆った、土星の輪のような形状のゴーグル。

 

 

 金属製のヘッドギアのようにも見えるそのゴーグルの側面からは十本ほどのプラグが垂れ下がっていて、そのプラグは腰に装着されたごつい機械に一本残らず接続されている。周囲に与えるインパクトだけは一丁前なこのゴーグルはどういう原理か、少年の頭に見事なまでにフィットしているようだ。何故滑り落ちないのかとか頭は重くないのかとか様々な疑問が浮かんでしまうような光景だが、そんなつまらないことにツッコミを入れるような変わり者はこの『スクール』には存在しない。彼らにとって一番重要なのは外見ではなく、使えるか使えないかという実力問題だけなのだから。

 そんな異様な見てくれの『ゴーグルの少年』は高級そうなテーブルに置かれた用紙を手に取り、

 

「っつーか、テロ集団一個潰してこの低賃金って……統括理事会って意外とけち臭いッスよね」

 

「ま、私達って言うところの何でも屋みたいなものだからね。彼は『暗部の仕事は慈善事業なんかじゃねえ』とかなんとか言ってるけど、上から与えられた依頼を選り好みせずに全部こなしてる時点で十分に何でも屋感が出てるのよね。ま、私は主に情報収集が仕事だけど」

 

心理定規(メジャーハート)さんはオッサン受けイイッスから――ひぃっ!?」

 

「なんか言った?」

 

「言ってないスけどとりあえずモウシワケゴザイマセンデシタ! 以後発言には全力で気を付けさせてもらう所存ッス!」

 

 ニッコリ笑顔でレディース用の拳銃を突きつけてくる赤いドレスの少女――心理定規(メジャーハート)に今世紀最大の恐怖を覚えながら、ゴーグルの少年は全力で彼女の怒りを鎮めはじめる。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 ゴーグルの少年こと草壁流砂(くさかべりゅうさ)には前世の記憶がある。

 超能力者とか原石とか駆動鎧(パワードスーツ)とかいう『THE未来!』な兵器なんてほとんど存在しない、欠伸が出るほど退屈な前世の記憶。

 普通の家庭に生まれて普通の成長をこなしていき、普通の学校に進学した――そんな普通の人生だった。名前は『草壁流砂』とは違う、凄まじいほどに平凡なものだったと記憶している。

 最初はそれが普通のことだと思っていたし、自分には普通のこと以外は絶対に起こり得ないということは薄々気づいていた。この世界は平凡なことが当たり前で、逆に非凡であることを望むことは異端なのだ――そう若いながらに思いながら、流砂はなんの変哲もない普通で平凡な日常を送ってきた。

 だが、そんな平凡な草壁流砂は――

 

 

 ――至って普通で平凡な交通事故で死亡した。

 

 

 道路に飛び出した子供を庇ってだとか、子猫を助けるためにだとか、そんな大層な理由は全く持ち合わせてはいなかった。

 ただ平凡に信号待ちをしていたところに、ただ平凡に大型トラックが突っ込んできただけ。ニュースや新聞などの一面に載ることなんてそこまで珍しくないような死に方だったハズだ。

 死んだこと自体は悔しかったし、まだ生きていたいなと少なからず叶うことのない願いなんかは抱いてしまってはいた。というか、寿命を全う出来ずに死んでいく人は皆平凡に、そんなことを思いながら死んでいくのではなかろうか。特に何も自慢できるものが無い平凡な草壁流砂は、そんな感じで平凡に死亡した――ハズだった。

 

 

 目を覚ましたら、知らない天井が目の前に拡がっていた。

 

 

 最初は「あれ? もしかしてギリギリ生きてて病院に運ばれたのか?」とかいうことを思っていたが、目を覚まして数秒と経たないうちに彼はその結論が大きく間違っていることに気づいた。

 まず最初に、彼の身体は意識を失う前より確実に退化していた。というか、生まれたばかりの赤ちゃんレベルの体つきだった。なんかヘソからは長い管のようなものが伸びているし、頭も異様に大きくて重い。

 そして次に、どれだけ叫ぼうとも言葉という言葉が出てこなかった。「ここはどこ?」と言おうとしても「おぎゃああああ!」としか叫べないし、「誰か説明求む!」と叫ぼうとしても「ひぎゃぁああああああ!」としか喚けない。いや、後半は言葉というよりも悲鳴だが。

 そして最後に、彼は若い女性に抱えられていた。全く見覚えのないその女性は、心底安堵したような表情で自分を愛おしげに見つめてきていた。最初は困惑していた流砂だったが、女性の様子と自分の退化しきった体を見て、すぐに状況を察した。

 

 

 ああ、この人は俺の母親なんだ――と。

 

 

 平凡な生活から一変して『転生』なる非凡に巻き込まれてしまった流砂は、そんな非凡に反する形でとても平凡に成長していった。

 一歳になり二歳になり三歳になり四歳になり五歳になり――そこまで成長したところで、流砂は自分が生まれ落ちたこの世界の正体に気が付いた。

 東京都西部を切り開いて作り出された街――学園都市についてのニュースがテレビで流れているのを見て、流砂はすぐに気が付いた。

 

 

 ああ、この世界は『とある魔術の禁書目録』の世界なんだ――と。

 

 

 それに気づいてからは、非凡の連続だった。

 超能力に興味を持った流砂は親を説得して学園都市に行き、薬品を身体に入れられたり耳に直接電極を差し込まれたりして、超能力を開発された。

 運の良いことに、発現した能力は学園都市の中でもかなりの強度を誇る『大能力者(LEVEL4)』だった。能力の種類としては『触れた物体に働いている圧力を増減させる』といったとても有り触れたものだったが、それでも彼は嬉しかった。ずっと平凡だった自分が非凡な存在になれたことが、凄く嬉しかったから。

 だが、彼の能力には欠点があった。

 『大能力者』級の演算能力を持っているのに、彼の演算能力はとても不安定なものだった。

 集中力の持続が短いのか脳の働きが悪いのか、とにかく彼の能力は必ず発動されるというものではなかった。十回に一回は能力が不発になり、能力を使用していないときに能力が暴走してしまうなんてことは珍しくも無かった。

 結局のところ、平凡な彼は望まぬ形で非凡になってしまったのだった。

 だが、幸運なことに、彼に救いの手を差し伸べる者がいた。

 その者はカエルによく似た顔を持つ、一人の医者だった。『冥土帰し(ヘブンキャンセラー)』という通り名を持った、学園都市きっての名医だった。

 能力の不安定さに悩む流砂に、彼は一つの打開策を提示した。――脳だけでの演算が不安定なら、外部から演算を補助すればいい。そのための方法を僕は君に与えることができるが、君はどうしたい?――と。

 カエル顔の医者の言葉に、流砂は迷うことなく首を縦に振った。能力が発動しないのはともかくとしても、能力の突然の暴走だけは何とかしたかったから。どんな方法でも構わないから、とにかくこの能力を掌握したい――そう思ってしまったから。

 必死に首を振る流砂にカエル顔の医者は少しだけ微笑みを返し――

 

「ほら。これが君の能力を安定させるための打開策だよ?」

 

 ――土星の輪のようなゴーグルを渡してきた。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

 正直、「あ、これ死亡フラグだわ」と思ってしまった。

 生前の記憶の一つに『とある魔術の禁書目録』&『とある科学の超電磁砲』の知識が結構豊富に残っていたが、その中でも『ゴーグルの少年』は登場人物史上最も不遇な扱いを受けたキャラだったと記憶していたからだ。

 名前不詳、原作での出番僅か二ページ、漫画では垣根に必死の謝罪、二回目の登場は血まみれのゴーグルのみ。――そんな死亡フラグまみれのキャラクターとして生まれてきてしまったことを悟ったら、誰だって泣きたくなるに決まっている。実際問題、流砂はゴーグルを受け取った日に号泣した。

 しかもあろうことか、学園都市上層部に騙されて『スクール』とかいう暗部組織に入れられてしまった。ゴーグルだけならまだ死亡フラグ回避も夢ではなかったかもしれないのに、まさかの『スクール』入りに涙が止まらなかった。いやもう、本気でその日は号泣した(二度目)。

 ――更に悪いことに。

 

「……はぁぁぁ。『ゴーグルの少年』死亡まで、残り二十三日か……」

 

 今宵は九月十六日。

 九月十九日から九月二十五日の一週間にかけて行われる大覇星祭の準備で学園都市が活気づく、学生たちにとっても教師たちにとっても空気がふわふわと浮足立ってしまう――そんなお祭りムードな平日ど真ん中。

 だがしかし、それは流砂こと『ゴーグルの少年』が死亡する十月九日までのカウントダウンが始まってしまっているということだ。素粒子工学研究所での『スクール』VS『アイテム』戦で、『ゴーグルの少年』は第四位の超能力者――『原子崩し(メルトダウナー)』に殺されてしまう――そんな日が、もう目前まで迫ってきている。

 せめて頭がおかしくなって人を殺すことになんの躊躇いも覚えないような下衆になることができれば死ぬ恐怖なんて味合わなくて済んだかもしれないが、基本的にヘタレな流砂は今まで一人も手にかけたことが無い。暗殺の任務なんか珍しくもない暗部においても、流砂はその手を血で真っ赤に染めたことなど一度も無い。というか、殺しの依頼は全てリーダーである垣根帝督(かきねていとく)とか詳細不明のスナイパーとかに任せきりだ。――故に、人を殺せないヘタレ暗部な流砂の主な仕事は、情報収集とか潜入調査とかいう地味なものばかりだったりする。

 だが、そんな地味な仕事をこなすだけで死亡フラグを片っ端から叩き折れるというのなら、流砂は喜んで日陰者で居続けるだろう。死ぬことが決められていようがなんだろうが、流砂はとにかく死にたくないのだ。ビームで上半身と下半身を真っ二つにされるとか、そんな猟奇的な殺され方は真っ平御免だ。

 

「やっぱ二十五歳ぐらいで結婚して二十八歳ぐらいで子供が生まれて、そっから平凡な日常を送るに限るよなー……いやホント、冗談抜きで」

 

 黒一色のリュックサックを背負いなおし、流砂は夜の学園都市を突き進んでいく。全体的に黒っぽい見てくれな流砂は怖ろしいほどに闇に溶け込んでいるのだが、これは『敵が見つけにくい姿をした方が死ぬ確率は低くなるはず』という逃げ腰精神の元にコーディネートされた服装だったりする。黒と白のチェック柄の上着が目立たないのかと言われれば首を傾げるしかないのだが、現にこうして闇に溶け込んでいるのだから何の問題も無い。必要なのはオシャレ度ではなく実用性だ。

 因みに、リュックサックの中には、死亡フラグの象徴である『土星の輪のようなゴーグル』と『精密機械が搭載されたベルト』が収納されている。この二つの機械が流砂の死亡街道を確定してしまったわけなのだが、これが無いと能力をまともに使えないので手放すことが出来ないのだ。

 そんな感じで乱立する死亡フラグを折るどころか回避するために今まで努力してきた流砂は「はぁぁぁ。ま、とにかく腹ァ減ったしファミレスにでも行くかな……」と仕事帰りの中年サラリーマン以上の哀愁が漂っている表情を浮かべつつ、第七学区でそこそこ人気があるファミレスの中へと入っていく。

 夕食の時間の頃合であるせいか、店内はほぼ満席の状態だった。

 

「いらっしゃいませ。おひとり様でのご来店ですか?」

 

「あー……はい。出来るだけ窓際の方の席でお願いするッス。…………なるべく目立ちたくねーッスからね」

 

「はい?」

 

「あーいや、こっちの話ッス」

 

「畏まりました。今日は店内が大変込み合っていますので、相席という形になってしまうのですが、よろしいですか?」

 

「別にイイッスよ? とにかく飯が食えるなら何でも構わねーッス」

 

「ご迷惑をおかけします。それでは、あちらの席へどうぞ。お冷とおしぼりはすぐにお待ちします」

 

 ぺこり、と礼儀正しく頭を下げるウェイトレスに苦笑を浮かべつつ、流砂は指定されたテーブルへと移動する。

 指定された席には彼女が言った通り先客がいた。三人の女性がぺちゃくちゃと楽しそうに会話をしていて、ナンパとか平気でやってそうな垣根ならまだしも、男子である流砂にはかなりハードルが高い相席となりそうだった。

 だが、あの席に座らなければ夕食を食べられないというのもまた事実。ここは覚悟を決めてさっさと席に座ってさっさと夕食を喰って帰ろうではないか。ゴクリ、と固唾を飲み、流砂は窓際のテーブルへと足を進める。

 そして絶賛駄弁り中な女性三人に慣れないながらに声をかけた。

 

「あ、あのー……ここで相席しろって言われたんスけど……座ってもイイッスか?」

 

「ん? ああ、相席ですか。私は別に超構いませんけど、二人はどうですか?」

 

「……南南西から信号が来てる」

 

「別に相席ぐらいいいんじゃない? まぁ、私たちに迷惑をかけないっつーのが条件だけどね」

 

「あ、はい。流石に迷惑はかけないッスよ。食事が終わったらすぐに退散するつもりなんで」

 

 意外と良い人そうな対応をしてくる女性三人に安堵の表情を浮かべながら、流砂はリュックサックを床に置いて席に座る。茶髪のボブとセーターが特徴の十二歳ぐらいの少女とピンクのジャージが特徴の少女が向かいの席に座っていて、流砂の隣には半袖コートとふわっとした長い茶髪が特徴の美人さんが座っていた。全員が全員かなり顔が整っていて、それが逆に流砂に緊張を強いることとなってしまう。

 ――と、そこで流砂は不意に思った。

 

(……ん? この人たち、どっかで見たことがあるよーな……)

 

 出会ったことがあるわけではないが、異様なまでに見覚えのある彼女たち。なんか体が勝手に震えだしているし、これは何か死亡フラグの香りがする。

 セーターの少女。ピンクジャージの少女。半袖コートの女性。――そこまで言ったところで、流砂の顔が瞬間的に青褪めた。

 

(まさ、か。……まさかまさかまさかまさかまさかまさか!)

 

 その予想が的中しているならば、流砂はすぐにここから逃げ出す必要がある。幸いにもまだ注文はしていないから食い逃げと思われる心配はない。逃亡の際に目立つことは避けようがないが、それでもこの死亡フラグを回避するためには必要なことだ。

 嫌な予想が的中していることを祈りつつ、流砂は彼女たちの会話に全神経を集中させる。とあるワードが出てきた瞬間に大地を駆け抜けるため、流砂は身体の重心を出口の方へと傾ける。

 彼女たちは流砂のことなど眼中にないといった様子で会話を続けている。それは結構嬉しいことで、眼中に無かったら逃亡しても不自然には思われないはずだ。彼女たちがただの一般人だったら安心して夕食を食べることができるのだが、果たしてその可能性はどれぐらいのものなのか。

 

「そういえば、今日はフレンダ来てないですね。超何かあったんですか?」

 

「あー……なんかアイツ、『結局、今日はスーパーでサバ缶が特売って訳よ!』とか言って今日の集まりを断ってきたのよね。私達よりサバ缶を優先するなんて、フレンダにはお仕置きが必要なのかしらねぇ」

 

「あはは……まぁ、超殺さない程度にしてあげてくださいよ――麦野」

 

 瞬間。

 草壁流砂は風になった。

 

「三十六計逃げるに如か――ぶげぇ!」

 

 しかし、体重を前にかけ過ぎていたせいで体勢を崩してしまい、流砂は勢いよく床に向かってぶっ倒れてしまった。完全無欠に悪い意味で目立ってしまっているわけだが、流砂はそれに気づかない。

 突然の奇行に店内が騒然とする。流砂は床と激突してしまった額を「いたた……」と抑えながら、テーブルに体重を預けてなんとか立ち上が――ろうとしたところで、目の前に綺麗な手が飛び出してきた。

 半袖コートと茶髪が特徴の女性の手だった。

 

「おい、大丈夫か? いきなり椅子から転げ落ちるなんて、お前はどこの大道芸人よ」

 

「………………はぅ」

 

 ぶすっとした表情で手を差し伸べてくる女性の顔を見た瞬間、流砂は白目をむいて意識を失ってしまった。崩れ落ちる際に顎を強打してしまっていたが、流砂の意識は覚醒しない。

 そんな悪目立ち野郎に訝しげな視線を送りながら、半袖コートの女性はセーターの少女に問いかける。

 

「……なぁ、絹旗。コイツ、私の顔を見た瞬間に気絶したように見えたんだけど、気のせいかしら?」

 

「学園都市第四位の『原子崩し(メルトダウナー)』の顔を間近で見れば、老若男女問わず誰だって超気絶してしまうんじゃないですか?」

 

 学園都市の第四位、『原子崩し(メルトダウナー)』の麦野沈利(むぎのしずり)

 十月九日に『ゴーグルの少年』を抹殺することになる第四位の超能力者は、目の前で泡を噴いて気絶している『ゴーグルの少年』に「おい、大丈夫かー?」と声をかけながら頬をペチペチと叩きだす。

 『ゴーグルの少年』と『原子崩し』が邂逅したこの瞬間、錆び付いていた運命の歯車はやっとのことで動き出した。

 




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 次回もお楽しみに!

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