カァカァとカラスが鳴き、日が傾き空がオレンジ色に染まる時間帯。東崎莉紅は学校が終わり帰路についていた。
友人の"祝!失恋"で何故かこちらも色々と精神的に辛かった為か東崎の顔には疲れが見えていた。
「あ゛ぁ゛ーただいま………………」
「おう、帰ってきたか。随分と疲れているみたいだな?」
すると出迎えて来てくれたのはライダースーツとジーパン、サングラスと如何にもワイルドそうな男性だ。
「あぁ、次狼さん。今日もメイド喫茶?飽きないね」
「違う。今日は桃園モモのグッズを買いに行って来ただけだ」
「なんだ。いつもの次狼さんか」
東崎は何故か納得したような表情だ。そんな中キバットは二人のやり取りに呆れている。
「ったく、俺達が学校に行ってる間コイツらはマジで何やってんだよ………」
「まぁまぁキバット。これくらいは大丈夫だよ」
「鞄くらいは運んでやる。お前はやる事をやれ」
「お、ありがとうございます!」
東崎は鞄を持ってくれた次狼にお礼を言うと靴を脱ぎ出し、そのまま走っていくように自分の部屋へと行く。キバットも遅れて東崎の自室へ向かう。
東崎が自室を開けるとそこには大きなテーブルを中心とした作業室が広がっていた。
ここが東崎莉紅の部屋であり楽器の修理、製作をする為の作業部屋だ。
「よし………」
「相変わらず散らかってんな。掃除くらいしておけっての」
キバットはそう言うと、壁に飾ってあるバイオリンのようなオブジェの中に入りコウモリらしくぶら下がる。
どうやらこのオブジェがキバットの部屋の役割を果たしているらしい。
東崎はテーブルの上にある工具を使い木材を削る。
バイオリンを製作する為の準備であり、バイオリンの形にしているのだ。
「にしても、全部独学とは莉紅の才能には惚れ惚れするぜ」
キバットはそう一言呟くと「クー」と息を立てながら寝てしまう。本来コウモリというのは夜行性の為なのか、それとも単に疲れていただけなのかキバットはぐっすりと寝ている。
東崎はキバットの寝息がまるで聞こえてないかのようにバイオリンを作るのに集中している。
しばらく作業が進むと東崎はふぅと息を吐き、"出来上がったばかりのバイオリン"をその場に置く。
「………なんか駄目だな」
と一言。
東崎は出来上がったばかりのバイオリンをそのまま天井に吊るしてある大量のバイオリンに紛れるように引っかける。
「最高のバイオリンって………そう簡単に出来るわけ無いんだよなぁ………」
と言うと東崎はガクリと項垂れる。すると丁度良くキバットは目を覚まし、東崎の頭の上にとまる。
「オイオイ、これで何度目だよ。いい加減にしないと木材を切らしちまうぜ?」
「そう言ってもさ………」
「ったく……あー、アレだ。一旦気分転換しようぜ?ほらイッセーの奴にお菓子の詰め合わせプレゼントすんだろ?もう決まってんのか?」
とキバットは落ち込んでいる東崎を励ますように言う。
長い付き合いの為、話題を変えればすぐに立ち直るという事を知っているキバットはイッセーの事を話した。
「うん勿論だよ。前に搭城さんから教えてもらったお店でさ、あそこ閉店時間が早いから夜になる前に行かないt━━━━」
と、東崎の言葉が途中で止まる。キバットはなんぞや?と東崎の周りをグルグルと飛んでいるが、次の瞬間
━━ガタッ!!
東崎は急に立ち上がりその勢いでキバットを吹っ飛ばしてしまう。
「っで⁉︎……何すんだよ!」
「やばい………閉店時間って……もうすぐじゃん!!」
東崎はそう言うと玄関へと走り出す。行ってきますと言いながらガチャリと玄関のドアを開け、そのまま庭へ向かい意図的に隠されているようにシーツが被された物の元へ駆け寄る。
シーツをバサリと取るとそこには真紅に輝くバイクが設置されていた。
このバイクの名前は【マシンキバー】
キバット族の工芸の匠・モトバット16世によって産み出されたという『鋼鉄の騎馬』と呼ばれるキバ専用のオートバイだ。
東崎はバイクと共に置いてあったヘルメットを被り、エンジンを起動させる。するとキバットが遅れてやってくる。
「ハァ⁉︎まさか今から行くのか⁉︎」
「時間が無いんだよ!明日になって『ごめーん、お菓子の詰め合わせはまた今度ね☆』なんて絶対に言えないよ!!」
「いや、別に明日でもいいだろ!!」
と東崎はキバットと言い争いながらもバイクのアクセルを回し、発進させる。キバットは苛立ちながらも東崎について行く事となった。
「やばいやばいやばい!これ間に合わないかも!」
「だーかーら!明日でもいいったってんd「変身!」………うん?」
「だからキバット、変身だって!」
キバットは数秒、思考が停止した。
「え、いや莉紅お前何言ってんの?頭おかしくなった?」
「いや改めて考えると高校生が暗い時間帯でバイクに乗ってるのおかしいじゃん」
「うん、それで?」
「正体がバレないように変身しよう」
「ふっざけんじゃねぇぞ!!!キバを軽々しく使おうとしてんじゃねぇよ!!」
東崎の言葉にキバットはツッコミを入れる。
このままではキバの初変身がまさかの買い物目的という仮面ライダーにあるまじき事態になってしまう。
頑張れキバット、お前だけが頼りだ!
「お願いだよキバット!!好きなもの沢山食べさせてあげるから!!」
「いや、ンなこと言われてもだな………」
「トマト!トマトジュースでどう?」
「え、いや………」
「1ヶ月分!!1ヶ月分でどう⁉︎」
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「ガブッ!!!!」
キバットが折れた!!!この人でなし!!!
まさかのトマトジュースで折れてしまったキバット。そんな事を無視するかのように東崎は出現したベルトにキバットを装着する。
「変身!!!」
そして、東崎の姿はみるみる内に仮面ライダーキバへと変身したのだった。
キバとしての、ファンガイアとしての実力が発揮された状態でのバイクアクションを駆使し狭い道路や路地をスイスイと進んで行く。
「よしっ!!!間に合うこれなら絶対に間に合う!!」
「あーあ、俺達何やってんだか」
「あ、そうだ。確かこの公園を突っ切ればかなりの近道になるんだっけ?」
「おいおい、誰かいたら危ねぇぞ?」
「大丈夫だって。流石にこんな時間に遊んでいる訳無いと思うよ?」
「まっ、確かにな」
ハハハと一人と一匹は笑いながらバイクに乗っていると公園に入った辺りだろうか何処からともなくチラシが飛んでくる。東崎はそれに気付くと体を傾け難なく回避する。
「ナイス回避!!!」
「ありがとう」
とキバットに褒められた東崎は気分を良くする。
しかし調子に乗ってしまった所為なのか、それとも飛んできたチラシを避けバランスを崩してしまった所為なのか一人と一匹は目の前にいた人物に気付かなかった。
「どうやら改めて己の死を受け入れたらしいな。ならば死ぬg━━━━」
ドゴォッ!!!!!!
(バイクがおっさんに衝突する音)
「グボォア!!!??」
「「あ」」
ザパァン!!!
(おっさんが噴水に突っ込む音)
「「あ」」
東崎達が目にしたのは謎の中年男性が東崎が運転していたバイクに撥ねられ錐揉み回転しながら美しく噴水に突っ込んでいる姿だった。
そして東崎とキバットは汗をダラダラと流し始める。
(これってヤバい奴だよね…………)
(ヤバい奴だな…………)
(え、えっととりあえず見ている人はいない見たいd━━━)
東崎達の目の前には何故か足から血を流し、混乱している状態の兵藤一誠の姿があった。そして、東崎は仮面越しに一誠に話しかける。
「え?えっと………」
『忘れて欲しい(ものすごい低音)』
『先程見たことは忘れてくれ(念には念を入れて二回目)』
それだけを言うと東崎はバイクを走らせる。公園を抜けた後、東崎はすぐさま携帯電話を取り出し叫ぶ。
「メディーーーーーーーック!!!」
とにかく救急車を呼ぶことにした東崎であった。
今回、こんなに短くなってしまったのは私の責任だ。
だが私は謝らない。