桜の奇跡   作:海苔弁

101 / 228
岩山の上空を飛ぶ幸人達。


「花琳!いつになったら、国に着くんだ?!」

「もう少しよ!

この山を越えたらすぐだから!」

「随分、山奥にあるんだな?」

「まぁね!」

「全く、何でまた数日間もの間ドラゴンの背中に乗らなきゃいけねぇのか」

「ドラゴンじゃなくて、竜よ!竜!」

「同じだろ?」

「同じじゃないわよ!

東洋の竜と西洋の竜は、そもそも姿が違うわ。

東洋は私達が今乗っているような、蛇の姿に鱗を纏い、そして四つの脚がある。
西洋はマリウス達が乗っていたような、二足歩行のトカゲの姿に、巨大な翼を生やし二本の腕を持っている」

「東洋の竜がその姿なら、美麗が乗っているネロは何なんだ?」

「あれは特異よ。

東洋の竜は、時々翼を生やした竜が産まれることがしばしばあるから」

「へ~」

「さすが、委員長」

「その呼び方、やめて」


志那の王国

岩山を超えた先にあったのは、城がまるで町を見下ろすように建つ場所だった。その近くにある森に、花琳達は竜を下ろさせた。

 

 

「こんな所に、竜を置いといて良いのか?」

 

「この森と土地は、私の所有地だから平気よ」

 

「でも喧嘩は絶えないね」

 

 

花琳達の竜は、ネロ達に向けて鳴き声を放ち、ネロ達も負けじと鳴き声を放っていた。

 

 

「他の竜とは仲良く出来てるのに、何であの子だけ」

 

「ネロ、竜の総大将みたいだから」

 

「総大将?」

 

「日本にある、竜の里にいるある奴の話だと……

 

 

100年前、日本にある竜谷を作ったとされている伝説の竜で、俺等人と手を取り合い助け合い、この地で生活をし生きていた。だがある日、伝説の竜は人間の手によって連れ去られ、それ以降目撃されていなかったそうだ」

 

「だそうだって……

 

ただの伝説じゃない。それが何で竜の総大将なのよ!」

 

「その竜の里いた竜達が、ネロを見た時頭を下げていた。主の命令を無視して」

 

「……」

 

 

睨むネロを美麗は自身に向かせ、頭と頬を撫でた。それを見たゴルドとプラタは、彼女が着ていたポンチョの裾とスカートの裾を銜え引っ張った。引っ張られた美麗は、その場に尻を着きそれを狙ってか、二匹は甘え声を出しながら彼女に擦り寄った。

 

 

「よく懐かれてるわね。この子」

 

「北西の森にいた頃からの仲だそうだ」

 

「ふ~ん」

 

『無駄話いいから、早く行こう。

 

日が暮れる』

 

「だな。

 

花琳、案内頼む」

 

「ええ。

 

けどその前に……」

 

 

ネロの頭を撫でていた美麗の傍へ、花琳は歩み寄りった。そして、彼女のポンチョのフードを頭に被せた。

 

 

「あの町は人身売買の目的に、外から来た者を誘拐する。そして、商品として他国へ売られてしまう。

 

その被害者が、主に女子供。特に子供は値段が高く付くから」

 

「一番狙われやすい……」

 

「そういう事。

 

あとで、顔が隠せる物をあげるわ」

 

 

浅く被されたフードを、美麗は深く被ると天花を見上げ笑顔を見せた。その笑顔に釣られ、天花も微笑み彼女の頭に手を置いた。

 

 

 

森を歩き抜けると、幸人達は花琳を先頭に城下町を歩いた。賑やかな声と、家と家の間の上に提灯がいくつも下がっており、周りには華やかで豪華な飾りが飾られていた。

 

 

「凄ぉ……」

 

「王位継承式があるから、町はそれで賑わっているのよ」

 

「まぁ、賑わってるのはここにいる奴等だけじゃねぇみてぇだな?」

 

 

裏路地へ続く道や、建物と建物の間の道には怪しげに満ちた者達が、何かを窺うように身を潜めていた。彼等の目を美麗は、フードの裾を持って見ないようにしながら、傍にいた天花の手を握った。

 

 

「一部は孤児達だが、過半数は」

 

「人身売人か」

 

「そういう事」

 

「近くに施設とか、ないんですか?」

 

「この国には、孤児を育てる施設はないわ。

 

お金がそこまで行き届いてなくてね。子供を雇ってくれる、仕事も見つからないし」

 

「じゃあ、どうやって」

 

「主に、私の職や探偵、城に仕えている者の駒として、お金を稼いでいるわ。

 

城では特に、城と国を守る兵士からすれば、外部の情報は貴重」

 

「情報を持っていけば、それ相応の金が貰えるってわけか」

 

「そう。

 

 

でも、それは危険がつき物。

 

 

情報を取りに行ったきり、帰って来なかった子供が、この町には多数いるわ」

 

 

どこか悲しい目で、花琳は路地裏から顔を出し人々の目を気にしたり、物乞いをする子供達を眺めた。

 

 

城門前へ付くと、門番に話を付け花琳は幸人達を手招きし、城の中へと入った。

 

 

中は綺麗な草花と木々が咲き誇っていた。道の脇には、いくつもの小さな噴水と池があり、中を覗くと気持ち良さそうに鯉や魚が泳いでいた。

 

 

「外と比べて、中は凄ぇな」

 

「王族だからな」

 

 

「天花、金魚!」

 

 

噴水の縁に膝を乗せ、美麗は水の中を泳いでいる金魚を指差しながら、傍にいる天花に話した。

 

 

「すっかり溶け込んでいる……」

 

「まぁ、外より中の方が安全だからな」

 

 

使用人に案内され、幸人達は応接室へ入った。扉が閉まると、美麗はフードを取りバルコニーへ出て行き、外を眺めた。

 

 

「ワァー!天花!町が見渡せるよ!」

 

「美麗!外に出るなら、フードを被れ!」

 

「風で脱げるから嫌だ!」

 

 

すると、バルコニーへ紅蓮を乗せたエルが降りてきた。エルから降りた紅蓮は、すぐに姿を大黒狼へ変わった。

 

 

「エル達も着いたか」

 

「あまり、私達の前以外では人と狼の姿を交互に見せない方が良いわ。

 

この国じゃ、妖怪も売り物にしてるみたいだから」

 

『分かった』

 

「……?」

 

 

町を見渡していた美麗は、何かに気付いたのか手摺から身を乗り出し下を見た。

 

 

「……幸人!あれ!」

 

 

彼女に呼ばれ、幸人はバルコニーへ出て行き、指差す方向を目にした。

 

 

中庭にいる、数人の討伐隊の制服を着た者達……

 

 

「あれは……討伐隊(だが、制服が少し違う)」

 

『ほぉ、特別部隊か。

 

まだあったとは』

 

「特別部隊?」

 

『海外で妖怪の被害があった時、討伐隊の中で最も優秀な隊員を集め、特殊な訓練をし海外へ出動する部隊だ』

 

「へ~。

 

そんな隊があったのか」

 

『知るのは、少尉になってからだ』

 

「そんじゃ、俺が知るわけねぇか」

 

 

「幸人!

 

城の人が話始めるって!」

 

「分かった!」

 

『私はここにいる。

 

討伐隊がここにいるとなると、私の説明が面倒だ』

 

「そうだな。

 

美麗は連れて行くぞ」

 

『構わん』

 

「美麗、行くぞ」

 

「ハーイ」

 

 

エルと紅蓮の頭を撫で、天花に手を振りながら、幸人と共に部屋へ入った。寄ってきたエルの頬を撫でながら、天花は話した。

 

 

『約束果たしたんだな……幸輝は』




部屋へ入ると、席にはすでに数名の男と討伐対の者が1人座っていた。幸人は軽く礼をすると、美麗を秋羅の隣に行かせ、自身の席に行った。


「全員座りましたので、お話を」

「はい。

では、先に依頼内容の確認を。


我が国は、祓い屋である紅影花琳様とそのお弟子・梨白様に二つの依頼を申しました。

今回王位継承式で、正式にこの国の女皇となる姫様の護衛と、人身売買をしている盗賊を潰す事です。


ここまではよろしいでしょうか?」

「変わり無い」

「皇女様の護衛はするのに、国の護衛はしなくていいの?」

「国の護衛は、こちらにいます倭国から派遣していただいた、妖討伐対の方々にお任せします」


男の隣に座っていた男は、軽く礼をしながら口を開いた。


「今回の任務責任者である、榊真一郎少尉です」

「後で、お時間いただけます?

少々、お話がありますので」

「無論です」

「話を戻させて貰います。


姫の護衛は、どなたが就くおつもりで」

「うちの愛弟子、梨白と月影の子供、美麗を就けさせるつもりです」

「花琳!!てめぇ!!」

「静かにしなさい。

まだ話中ですよ」

「っ……」

「では、姫様をこちらへ連れてきますので、その間榊少尉とお話の方を」

「えぇ」


一部の男は部屋から出て行き、少尉だけとなった瞬間、幸人は花琳の首根っこを引っ張り、バルコニーへ出て行った。


「依頼内容を知っている人が、連れて行かれた」

「先生は、何を考えているんだか……」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。