桜の奇跡   作:海苔弁

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その頃、梨白は城の中で夜白を探していた。


(……どこ行った、あの女)


「なぁ、姫様がどこにいるか知ってるか?」


廊下の角を曲がる際、ふと兵士達の話が聞こえ梨白は咄嗟に身を隠して、耳を立てた。


「姫様なら、さっき柳遠が探しに行ったが……」

「え?柳遠なら、さっき部屋にいたぞ?」

「え?」


「儂がどうかされましたか?」


兵士の背後から現れた柳遠に、二人は驚き声を上げた。


「何じゃ?お化けを見たような声をあげおって」

「いや、さっき部屋にいなかったから」

「ん?

儂はずっと部屋におったぞい」

「え?

けど、さっき姫様が部屋からいなくなってたから、探しに行くって……」

「何!?

姫様がいなくなったじゃと!?」


その言葉を聞いた梨白は、すぐに森へと向かった。


真実と操作

緊迫の空気が漂う森……

 

 

「ど、どういう事……柳遠なら、部屋にいたはず……」

 

『変装して、中に潜り込んでいたんだろう。

 

 

恐らく、私達が着た時と同時に。

 

町で顔を隠している美麗に目を付けた貴様は、容姿が似ている柳縁に成り済ました』

 

「つまり、城には2人居たって事?」

 

『そうだ……

 

図書室には、柳遠は既にいた。

 

だがどういう訳か、柳遠は外から夜白の母親と一緒に現れた』

 

「でも、窓硝子は外側から割れたよ!」

 

『硝子が外側から割れていたのは、外で仲間に騒ぎを起こさせ、その隙に中から外へ出ていき、天窓を壊した。

 

 

その証拠に、図書室の窓の一部が少し開いていたからな』

 

「頭の切れる女だな?

 

やはり、テメェから美麗を引き離すべきだったな?」

 

『気安く呼ぶでない!!

 

汚らわしい盗賊が!』

 

「汚らわしくて結構!

 

さぁ、姫の命が危ないぞ?」

 

 

そう言いながら、盗賊は夜白の首を締め上げ、首にナイフを突き付けた。ナイフの先に触れた首からは、軽く血が流れ出てきた。

 

 

「夜白!(どうしよう……夜白がいるんじゃ何も出来ない)」

 

 

その時、茂みから紅蓮が現れ背後から盗賊を攻撃した。盗賊の手が緩むと、夜白は素早く彼から離れた。同時に駆け付けた梨白が彼女を抱き抱え、木の枝の上に立った。

 

 

「この馬鹿犬!!」

 

『テメェ、人の主に何命令してんだ』

 

「やっぱり、妖怪か……

 

話では聞いていたが、本当だったんだな?

 

 

黒狼は、許した者には忠実に従うと」

 

『梨白!すぐに姫君を安全な場所に!』

 

「させねぇよ!」

 

 

指を鳴らすと共に、四方から煙の如く現れ出てきた盗賊達……木の枝の上にいた梨白は、夜白を横に抱き天花の傍へ降り、彼女を下ろすと守るようにして武器を構え前に立った。

 

 

「凄い……気配消しのプロだ!」

 

 

盗賊に目をやっている時、上から天花目掛けて麻酔針が打たれた。針は彼女の首に刺さり、天花は素早く針を抜き上に向けて銃弾を放った。弾は針を放った者の胸を貫き、打たれた者は木から落ちた。

 

 

「天花!!」

 

『早く……逃げ(ヤバい……意識が!!)』

 

「これで、仕上げだ!」

 

 

盗賊全員が、一斉に煙玉を地面へ投げ付けた。視界を奪われた紅蓮達の上から、網が掛かり動きを封じられた。

 

 

「美麗!」

 

「夜白、離れるな!!」

 

 

煙の中から、突如強烈な光が放った。咄嗟に梨白達は、目を塞いだ。

 

 

「美麗!どこ!?

 

美麗!!」

 

「夜白、傍にいろ!」

 

 

離れようとした彼女を抱き寄せた梨白は、意識を集中させ気を放った。体に纏うオーラと風が、靡かせ前髪を上げ右目を露わにした。

 

 

左目と違う形と色を持った右目が、禍々しく光り辺りの煙と光を払った。

 

 

煙が晴れた場所には、美麗の姿がどこにも無かった。

 

 

「そんな……

 

美麗!!美麗!!返事をして!!」

 

 

紅蓮達に掛かっている網を、梨白は切った。切った瞬間、紅蓮達はすぐに駆け出し茂みの中へと消えていった。

 

 

「わ、私も!!」

 

「やめろ!

 

奴等の足手まといになる。後は任せろ」

 

「でも、美麗は!」

 

「大丈夫だ……

 

それより」

 

 

ポケットから出した布で、梨白は夜白の首に付いた血を拭いた。

 

 

「良く離れたな。流石だ」

 

 

梨白に褒められた夜白は、緊張が解けたのか涙を浮かべて彼に抱き着き泣き出した。泣き出した彼女を、梨白は黙って泣き止むのを待った。

 

 

 

とある洞窟……

 

 

麻袋に入れられていた美麗は、外へ出され彼女は出ると頭を軽く振り辺りを見た。

 

 

「……洞窟?」

 

「そうだ」

 

「!

 

あ!気配消し名人達!」

 

「変なあだ名つけるな!」

 

「捕まって泣かないとは……

 

中々、肝の据わったガキだな?」

 

「さぁて、縛って大将の処に連れて行くぞ」

 

「縛る?!

 

嫌だ!」

 

 

ロープを持った盗賊を見た美麗は、傍にいた柳遠の変装をしていた盗賊の背後に隠れた。

 

 

「おい!逃げるな!」

 

「嫌だ!!縛られるのは!!

 

絶対嫌だ!!」

 

「訳の分からないこと言うな!」

 

「嫌なものは嫌だ!!」

 

 

叫び声と共に、地面から氷の柱が出て来た。それを見た盗賊達は、後ろへ引き武器を構えた。

 

 

「……普通の人間じゃねぇのか?お前」

 

「……」

 

「頭、どうします?」

 

「腰にロープ縛っとけ。

 

そうすれば、行動範囲は狭まる」

 

「あ、はい」

 

「縛ったら行くぞ。

 

 

こっから距離があるんだから」

 

「アジトか?」

 

「まぁな。

 

テメェも、呑気で居られるのは今の内だ」

 

 

 

彼等の会話を、幸人達は小型の無線機から聞いていた。

 

 

「とりあえず、美麗は無事ね」

 

「あぁ。

 

 

しっかし、いつの間に仕込んだんだ?婆」 

 

 

ベッドの上で、銃弾を仕込む天花に幸人は質問した。

 

 

『図書室で襲撃があった直後、小型の盗聴器をピアスにして、彼女の耳に着けたんだ』

 

「よく嫌がらなかったな?

 

アイツ、耳触ると凄い嫌な顔して嫌がるのに」

 

『緊急だったからな。盗賊団のアジトを見付けるには囮が居るって言ったら、快く引き受けてくれたぞ』

 

「引き受けたというか……

 

婆の頼みだから、断らなかっただけだろう」

 

『それもあるな』

 

「それで、これからどうする?

 

後を追おうにも、紅蓮達は美麗の後を追い駆けていったきり、戻ってこず……」

 

『心配するな。場所が把握できればエルが迎えに来る。

 

それで、アジトへ行けば良い』

 

「相変わらず、漏れの無い計画だこと」

 

『当たり前だ。

 

 

こっちは生前、何百何千と人の命を背負っていたんだからな』

 

「確かに……祖母様の残っている任務録を見る限り、死人が一人も出ていない」

 

「わー、凄ぇ」

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