桜の奇跡   作:海苔弁

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岩場を歩く盗賊団……


「凄ぉ……

ねぇ!ここって自然に出来たの?」

「いや、10年掛けてこの道を作った。

それまでは、別の道を通っていた」

「別の道?」


盗賊が指差す方向を、美麗は向いた。そこは、断崖絶壁だった。


「あそこを登りながら、崖を歩きアジトまで向かっていた」

「さらった奴は?」

「麻袋に入れて、俺等が担いでた」

「フーン……」


壁を見る美麗……見た方向の、崖の上にある森の中に氷の花を作った。


(……目印に気付けば良いけど)


国の掟

『さてと、そろそろ真実を聞かせて貰いましょうか?

 

女王陛下』

 

 

会議室へ来た天花は、夜白の母親を見つめながら話した。傍には、梨白と彼にしがみつく夜白が立っていた。

 

 

「真実って、どういう事?」

 

『人身売買をしている盗賊団を、何故今になって盗伐を紅影の元へ依頼したんです?』

 

「……」

 

『時間はありましたよね?タップリと。

 

なのに、王が代わるこの時期に、何故?』

 

「……

 

 

娘に、外の世界を見せたかったからです」

 

「え?」

 

『それで……

 

 

 

 

自分の息子が居る、紅影の元へ依頼した。

 

外の世界を見せることはもちろん……

 

 

もう一度、夜白に兄を会わせたかったから』

 

「え?つまり、夜白と梨白は兄妹?」

 

『100年前、私はあなたの祖母である真白から、この国のことを聞きました。

 

 

大昔、この国は男を王として成り立っていた。

 

だが、ある時期の王が欲望と傲慢に満ちた者だった。町の者から金を取り、自分が満足するまで贅沢をしまくった。

 

そのせいで、国は崩壊寸前まで及んだ……けど、その王は病に伏せそのまま、亡くなった。

 

そして、崩れだ国を正したのが、真白の曾祖母であった』

 

「曾祖母?

 

男じゃなかったのか?」

 

『曾祖母は、一人っ子だった。

 

だから、準備をする前に王が亡くなった……仕方なく、王家は彼女を女王として継承させた。

 

 

そこから、曾祖母は国を但し始めた。

 

まず始めに、人々から金を取るのを辞めた。そして、国で物資を用意し、それらを全て貧しい者に配った。

 

そのおかげか、国の中で争いごとがなくなった……

強盗もなくなった……殺し合いもなくなった……

問題だった事項が、徐々に消えていった。

 

 

数年掛けて、国はようやく昔のように平和になった。それ以降、この国の王は女性がやることになった。

 

 

私が聞いたのはここまでだ』

 

「……全く、その通りです

 

祖母から聞いたのと、同じです」

 

「女王様!」

 

「良いんです、柳遠。

 

 

それに、良い機会です。あなた達にも話しましょう」

 

「……」

 

「盗賊団が現れたのは、白優が産まれる前でした」

 

「白優?」

 

「梨白の本名よ」

 

「……」

 

「私はすぐに対策を練りました……

 

しかし、どうしても彼等を捕まえることは出来ませんでした。そうこうしている内に、白優が産まれました……

 

 

この国として、最悪のこと……それに彼には、妖の力が宿っていた」

 

「妖の力?」

 

 

右目に掛かっていた前髪を、梨白は上げその目を見せた。紅い瞳に黒い十字の模様と、周りに見たことも無い字が書かれていた。

 

 

「……な、何だ……その目」

 

 

その目を見た天花は、彼に歩み寄り顔を自身に近付けさせ、その瞳を見た。

 

 

『……妖眼か』

 

「妖眼?何それ」

 

『極稀に、妖怪と関わったことの無い者から、妖怪の力を以て産まれる子供が居ると聞いたことがある。

 

 

倭国でも、数名が確認されている。

 

本部でも研究員が総出で調べたが、詳しいことは何も。今はどうなっているんだ?』

 

「現時点で、確認されているのは20人程度……しかし、皆邪眼だと言ってくり貫いたと報告されています」

 

「くり貫いたって……」

 

「その方が、幸せを掴みやすくなるからな」

 

「……」

 

「城の者には、彼の目を隠しました。

 

先天性の病で、片目を失ったと伝えました。彼の目を知るのは、ここにいる柳遠と一部の者達だけです」

 

『なるほど』

 

「いつから分かったんですか?

 

彼が……梨白が、私の息子だと」

 

『城に着いた時からです。

 

彼が廊下や庭を歩く度、そこにいる兵士達……新人ではなく、上の者達が彼を見ると必ず動かしていた手を止め、見つめていました。頭を下げることもなく、会釈することもなく、ただジッと見ていた』

 

「……良く見ていらっしゃるんですね。

 

 

この国では……王家の者に男が産まれると、すぐに殺されます。

 

しかし、それが一人目だった時は、女が産まれるまで生かされます。

 

 

白優が5歳の時、夜白が産まれました。

 

しかし……私はどうしても、殺すことが出来なかった」

 

 

目に涙を溜めながら、母親は2人の方を向いた。

 

 

「だからお兄様は、10歳になるまでずっと……」

 

「……けど、すぐにバレた。

 

 

殺され掛けた時、先生が助けてくれた」

 

「スラム街の噂話で、聞いたの。

 

邪眼を持った皇子が居るって……それを聞いて、私は彼を引き取ったの」

 

「でも、俺は国を離れることが出来なかった……

 

だから」

 

「国の外から、2人を守ることにしたの。

 

城の傍の森は、私の所有地。そこから、城を見下ろすことが出来る」

 

「……国の掟として、16の誕生日を迎えた娘がこの国の女王になる……

 

 

けど、その前に……なる前に、どうしても外を見ていて欲しかった……だから」

 

「盗賊団を盗伐しようと、願い出た…か。

 

 

理由はどうであれ、売られる前にアジトを突き止めるぞ」

 

「……少尉、ここは任せる。

 

俺は、この者達と一緒に盗伐をする」

 

「大佐!」

 

「貴様の能力なら、大丈夫だ」

 

「……大佐の言葉、快く承りました!

 

ご武運を!」

 

 

敬礼する榊に陽介は敬礼をして返し、2人に続いて天花、幸人も敬礼した。




話が終わり、皆が会議室を出た……部屋には、梨白、夜白、母親の3人だけとなった。


「……顔見せて、白優」


涙を浮かべながら、母親は梨白の頬に手を添えて顔を近付けさせた。


「……お父さんにソックリ。

白優……良かった、元気で」


梨白を抱き締める母に、梨白はスッと涙を流すと彼女を抱き締め返した。


「追い出されてからずっと、俺はアンタを恨んだことなんか、一度もなかった……


少しの間とはいえ、俺を夜白の傍にいさせてくれた……殺さずに、ずっと傍に……」

「白優……ごめんなさい……

母親らしいことを、何もしてあげられなくて」


頭を下げる母親に、梨白は彼女の頭に手を置き頭を振った。隣で見ていた夜白は、2人に抱き着き涙を流しつつも笑顔を見せた。

彼女に釣られて、二人は笑い少しの間だけその部屋に賑やかな声が響いた。
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