桜の奇跡   作:海苔弁

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地下牢へ来た大将……

美麗がいる牢屋の前で見張っていた凛は、軽く会釈をした。


「あの小娘は?」

「まだ寝てますが……」

「牢を開けて」

「え?でも……」

「いいから、早く」

「……」


数個の鍵穴に鉤を差し込み、解錠していき思い鉄の扉を開けた。

中へ入った大将は、扉を閉めベッドで丸まり横になっている美麗に歩み寄った。


「……あなた、名前は?」

「……


聞いてどうするの?


どうせ、お前もあいつ等と同じだろ?」

「あいつ等?誰の事だ?」

「……分かんない」

「……


あなたは、私に会ったことがある?」

「……


良く覚えてない……




でも、お前と同じ奴になら会った」


起き上がりながら、美麗は大将に目を向けた。目に映った彼女の姿が一瞬、別の姿となった。


「……何で、その姿?


お前は、香月じゃない……




李咲だ」


その言葉を聞いた瞬間、香月は美麗を引っぱたいた。

息を乱しながら、香月は倒れた彼女を無理矢理起こすと、睨みながら言った。


「私は香月だ。

人身売人の大将・香月。それが私の名だ。


李咲という名は、とうの昔に捨てた!!」


起こしていた美麗を壁に向けて、投げ飛ばすと香月は外へ出ていった。


「厳重に閉めておけ!

絶対に逃げられぬようにな!!」

「あ、はい!」


香月の正体

「随分と好き勝手やってくれたじゃねぇか?」

 

 

廊下で暴れていた幸人達の背後から、仲間を引き連れた雷戯が武器を持ち現れた。

 

 

『貴様!!

 

美麗をどこにやった!!』

 

「悪いが、特別な牢屋に入れてる」

 

「結構暴れたけどね。

 

まぁ、注射打ったらすぐに大人しくなったが」

 

「注射!?」

 

『何を打った!!』

 

「鎮静剤だ。

 

 

牢屋入れるってだけで、暴れまくって……おかげで、注射打つ如きで、こんなに噛み付かれた」

 

『当たり前だ!!

 

彼女は、注射と牢屋にトラウマを持ってる。暴れて当然だ!』

 

「注射はともかく、何で牢屋にトラウマがあんだよ」

 

『貴様に教える筋合いは無い。

 

とっとと、美麗がいる場所を教えろ』

 

「無理だと言ったら?」

 

『貴様の脳天に、弾をぶち込むだけだ』

 

 

銃声を合図に、雷戯達は一斉に攻撃してきた。その騒ぎの中、人の姿から狼姿へと変わった紅蓮は、踵落としをし伸びた盗賊の上を跳び越え、駆けてきた天花と共に美麗を探しに行った。

 

追い駆けようとする盗賊達を、幸人達は足止めをし、彼等を見送った。

 

 

 

その騒ぎは、地下牢にいる美麗にも聞こえていた。

 

 

(……何の音だろう)

 

 

「こちら凛!

 

何か、凄い音したけど?」

 

 

無線機を耳に着けていた凛の話し声に、美麗は扉の近くへ行き聞いた。

 

 

「え?侵入者が、あの小娘の仲間?!

 

状況は?

 

 

見張りが皆、やられた?!どんだけ強いんだ!

 

 

え?犬と女が、乱戦に紛れて小娘を探しに!

 

分かった!警戒する!

 

女は銃使いの、討伐隊だね!了解!

 

 

 

 

恵まれてるねぇ!アンタ!

 

仲間が助けに来るなんて!しかも、うち等のアジトを突き止めるなんて」

 

「……

 

 

何も分かってないんだね」

 

「?」

 

「何で、皆がアジト突き止められたか分かる?

 

 

神出鬼没のお前等のアジトを」

 

「……」

 

「私の耳に着けてるピアス……

 

これね、小型の盗聴器なんだ」

 

「!!」

 

 

それを聞いた凛は、扉を勢い良く開けると傍に座っていた美麗を叩き倒し、耳に光っていたピアスを引き千切るようにしてもぎ取った。

 

耳たぶから出る大量の血と激痛に、美麗は耳を抑えた。

 

 

「ふざけた真似しやがって!!」

 

 

ピアスを握り潰し壊すと、凛は外へ出ていき扉を閉め施錠した。そして、無線機を取りながら先程のことを話した。

 

 

(……痛い……

 

 

もう、痛い事はしたくない……)

 

 

出ていた血はいつの間にか止まり、傷口も既に塞がっていた……

 

何かを思い出した美麗は、手枷を取ろうと足で力強く押した。

 

 

(……取れない……

 

 

嫌だ……やりたくない……やりたくない!!)

 

 

 

薄暗い廊下を歩く紅蓮と天花……

 

 

『一気に敵が減ったな……』

 

『においが全然無い……

 

 

 

天花、こっち』

 

 

鉄格子が続く道に、一つの木の扉を見付けた紅蓮は、前に止まり天花を呼んだ。

 

 

『この奥から、美麗の気配がする』

 

『ここか……

 

紅蓮、下がってろ』

 

 

下がる紅蓮を確かめ、天花は木の扉目掛けて助走を付けて跳び蹴りを食らわせた。

 

木の扉は粉々に砕け、そこに続く階段に、天花は着地した。蝋燭が照らす階段は下まで続いており、2人はゆっおくりとその階段を下った。

 

 

廊下に響く彼等の足音に、凛は持っていたナイフを手に構えた。

 

そして、廊下の角から現れたのは、狼姿の紅蓮だった。

 

 

「……何だ、ただの犬か。驚かせやがって」

 

 

ナイフを下ろした次の瞬間、背後に降りた天花は彼女が振り向く間もなく首を思いっ切り叩き、気を失わせた。そして、腰に着けていた鉤の束を取った。

 

 

『油断禁物だ。

 

例え動物であろうと、油断するな』

 

『気ぃ失ってるから、聞いてねぇぞ』

 

『だな……』

 

 

扉の鉤を開け、天花は中へ入った。中には、美麗が部屋の隅で手枷を外そうと、必死に足で力強く押していた。

 

 

『美麗』

 

「!!」

 

 

呼ばれた美麗は、体をビクらせながら恐る恐る振り返った。振り返った彼女に、天花は笑みを見せながら手を差し伸ばした。

 

 

「……天花」

 

 

目の前にいる彼女に、美麗は飛び付いた。飛び付いてきた美麗を、天花は受け止めた。

 

 

『お待たせ。

 

 

良く頑張ったな』

 

「ここ嫌だ。

 

早く帰りたい」

 

『分かってるよ。

 

さぁ、手を出して』

 

 

枷の鍵穴に鉤を差し込み、解錠した。手が使えるようになった美麗の傍に、紅蓮は顔を近付けさせ擦り寄った。寄ってきた彼の顔を、美麗は撫でそして首に手を回し抱き締めた。

 

足の枷を外すと、天花は美麗の手を引き外へ出ようとした時だった。

 

 

“バーン”

 

 

『うっ!』

 

「天花!!」

 

 

打たれた腕を押さえながら、天花はその場に倒れた。

 

紅蓮は唸り声を出しながら、2人の前に立ち敵を睨んだ。

 

 

「やはり、見に来て正解だったわね」

 

「!!」

 

 

そこにいたのは、銃を手に持った香月だった。彼女は、腰に着けていた鞭を伸ばすと、それを振り紅蓮を叩いた。寄ろうとした美麗の腕に、鞭を巻き勢い良く引っ張り、自身の足下に倒すと腕を掴み立たせた。

 

 

「悪いけど、この子は渡せないわ」

 

『み、美麗!』

 

『美麗を返せ!!』

 

 

襲い掛かってきた紅蓮に向けて、香月は銃弾を放った。放たれた弾は、足を掠り彼はその場に倒れた。

 

 

「紅蓮!!」

 

「半妖の血を浴びた者は、長生きが出来るって話よね?

 

この子の血は、正にそれ。

 

 

私の実験には、相応しい存在よ」

 

「実……験……

 

 

 

 

嫌だ……嫌だ!!

 

実験は嫌だ!!」

 

 

離れようと暴れ出した美麗に、香月は頬を引っぱたき大人しくさせると、辺りに煙を撒き散らし姿を眩ました。




『美麗!!』


煙が晴れると、天花は腕を押さえながら立ち上がり部屋を見た。2人の姿はどこにも無く、すぐに外へ出て辺りを見た。


『クソ!!どこに行った!!

紅蓮!!早く後を……?』


人の姿となった紅蓮は、ゆっくりと立ち上がった。足の傷はいつの間にか治り、彼は顔をスッと上げ天花を見ると笑みを浮かべた。


『……


まさか……




晃……なのか?』

『久し振り、天花』

『……』

『さぁ、美麗を助けに。

多分、李咲の部屋だよ』

『李咲?


アイツを知ってるのか?』

『……体は確かに香月という子の者だけど……

中身は違うよ。


100年前、僕等に会った事がある』

『え?

美麗も?』

『……100年前、志那国は女性の人が行方不明になっていた。


調べていたら、李咲という名を持った妖怪が、女性の血を浴びて永遠の若さを保とうとしていたんだ』

『つまり、あの女は妖怪……』

『中身はね。

多分、肉体を無くして魂だけで彷徨っていたんだろう。

そして、どういう訳か、香月という子に取り憑いた』

『……』

『とにかく、早く彼女を探そう。

美麗の血を浴びたら、もう終わりだ』

『分かっている』


互いを見合い頷くと、2人は部屋を出ていき駆けて行った。
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