桜の奇跡   作:海苔弁

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気を失っていた美麗は、目を覚ました。逃げようと体を動かしたが、ビクともせず自身の体を見ると、椅子に手足が拘束されていた。


「暴れない方がいいわよ?


怪我するから」


注射器を手に、香月は美麗の前に姿を現した。


「まさか、また会えるなんて……


あなたも聞いたことがあるでしょう?

半妖の血を浴びると、長生きになれるって。


じゃあ、その血を体に入れたら、どうなるのかしら?」

「……知らない……


そんなの知らない!!」

「ほら、暴れない……


血を採るのに、このブレスレットは邪魔だから外しましょうか?」

「!!

駄目!!外しちゃ!!」

「大丈夫。すぐに返すわ」

「駄目!!駄目!!」


ブレスレットに香月の手が触れた……美麗は何とか逃げようと暴れるが、無駄な行為に終わり留め具が外された。


「!!


嫌だ……




嫌だぁぁあ!!」


額に描かれていた雪の結晶の模様が、美麗の体全体に広がった。


解放した妖力

「!」

 

 

何かを感じた幸人と花琳は、攻撃の手を止め辺りを見回した。

 

 

(……何だ?

 

 

この妖気)

 

「……幸人、この気配」

 

「……

 

とっとと美麗探すぞ」

 

 

弾を補充しながら、幸人達は奥へと進んだ。

 

 

 

その頃、外では異様な空気が漂っていた。その空気を、外で見張りをしていた秋羅と暗輝は感じ取り、警戒するようにして辺りを見回した。

 

 

「何だ?この空気……」

 

「……同じだ。

 

 

美麗が、妖力を発揮した時と」

 

「え?

 

それって、ヤバいんじゃ……」

 

「……?!

 

暗輝さん、あれ!」

 

 

侵入時に倒したはずの、盗賊達が次々と起き上がった……姿を変えて。

 

 

「な、何だ……あれ」

 

「秋羅!戦闘準備しろ!!」

 

「あ、はい!」

 

 

同じ頃、志那国王家に妖怪達が侵入していた。待機していた討伐隊は、全隊員出動し襲ってくる妖怪達を次々と倒していった。

 

城に残っていた梨白は、王室に入ってくる妖怪達を倒しながら、夜白と母親達を避難させていた。

 

 

(……やっぱり、残って正解だった)

 

「お兄様、上!!」

 

 

天井から飛び降りてくる妖怪を、梨白は鉄棍棒で突くと地面へ突き刺した。

 

 

「ここは危険だ。

 

早く避難するぞ!」

 

 

彼等を誘導しながら、梨白は王室から出て行った。

 

外へ出た時だった……

 

 

「お兄様、あれ!!」

 

「?

 

!!何だ……あれ」

 

 

港付近から空へと禍々しい煙が上がっていた。

 

 

「お兄様、美麗達……大丈夫ですよね?」

 

「……大丈夫だ。

 

先生も皆も強い……無事だ。

 

 

(先生……)」

 

 

 

 

(……帰りたい……帰りたい)

 

 

壁に手を掛けながら、美麗は歩いていた……彼女が歩く箇所には、一瞬氷が張るが溶けて水になっていた。

 

 

 

彼女が歩いている頃、幸人達は香月の部屋に着いていた。中には、気を失い倒れた彼女がいた。

 

 

「おい、大丈夫か?」

 

「……」

 

 

幸人の呼び掛けに、香月はゆっくりと目を開けた……

 

彼女は、何かが抜けたような目で彼を見ながら、辺りを見た。

 

 

「……ここは?」

 

「?」

 

「あなた、名前は?」

 

「……香月」

 

「……」

 

「ねぇ、お父さんとお母さんは?」

 

「え?」

 

「あれ?

 

 

お父さんとお母さんが、私を助けに来て……それで……」

 

「香月、そのくらいにしときましょう。

 

さぁ、立って」

 

 

花琳の手を借りて、香月は立ち上がった。何かに怯えているのか、震える手で花琳の腕を掴んだ。

 

 

「大丈夫よ。もうすぐ外へ出られるわ」

 

「本当?」

 

「えぇ」

 

「……」

 

「話がごちゃごちゃになってるな?花琳」

 

「……何か訳があるかもしれない……

 

急いで、美麗を探しましょう」

 

 

その時、ここへ近付く足音が聞こえてきた。幸人と陽介は銃を手に、ドア付近に立ち構えた。足音に怯えた香月を、花琳は宥めながら後ろへ行かせた。

 

近付き、入ってきた者に2人は銃口を向けた。同時に2人にも、銃口が向けられた。

 

 

「婆……」

 

『貴様達か……ビックリしたぁ』

 

「……?

 

後ろにいるのは?」

 

『君の曾孫、君ソックリだね』

 

『からかうな』

 

「……その容姿……紅蓮か?」

 

『まぁ、半分正解だな』

 

「え?」

 

「……まさか」

 

『そのまさかだよ。

 

それより、美麗はどこ?』

 

「この部屋にはいないわ。

 

いたのは……」

 

 

花琳にしがみついている香月に、晃は天花と顔を見合わせた。晃は歩み寄り、怖がっている彼女の頬を撫でながら、目を見た。

 

 

『……彼女からは、いなくなってるよ』

 

『美麗を追い駆けたって事か?』

 

『それか、次の器を探しているか。

 

 

よく頑張ったね。もう大丈夫だよ。

 

僕等といれば、安全だから』

 

 

優しく掛ける晃の声に、香月は薄らと微笑んだ。

 

 

『彼女を早く、外に』

 

「だな。

 

花琳、頼む」

 

「えぇ。

 

香月、一緒に外へ出ましょう」

 

「……うん。

 

ねぇ、私のお父さんとお母さんは?

 

 

この牢屋にいるはずなの」

 

「後で、この人達が見付けたら連れてくるわ。

 

今は、先に外に出ることを優先しましょう」

 

「……」

 

 

頷くと香月は、花琳と一緒に外へと向かった。

 

 

後ろにいた天花は、ふと地面に落ちている物に目を向け、それを拾った。

 

 

『……幸人。

 

 

早く美麗を探し出さないと、ヤバいぞ』

 

「?」

 

 

首を傾げる幸人に、天花は拾ったものを見せた。それは、留め具が壊れたブレスレットだった。

 

 

「……ヤバいどころじゃない。

 

 

下手したら、俺等を攻撃するぞ」

 

『彼女を見付けたら、逃げないように見張っててくれ。

 

後は、僕がやるから』

 

「平気か?

 

妖怪化した美麗は」

『敵味方関係無しに攻撃する…だろ?

 

大丈夫。それはね……そうでもしないと、酷いことをされるって、記憶してるからだよ』

 

「……それって」

 

『無駄話している暇は無い。

 

とっとと探しに行くぞ』

 

『そうだね』

 

 

幸人に一瞬、微笑みを浮かべた晃は先に歩き出した天花の元へ駆け寄り、並んで歩いて行った。




壁に凭り掛かり、座り込む美麗……息を乱しながら、自身の手を見た。


(……周りが……凍ってく……


早く……逃げないと……


また、実験台に……嫌だ……嫌だ)


ふらつきながら立ち上がった美麗は、歩き出そうとした時だった。

目の前に立つ人に、美麗はゆっくりと顔を上げた。


そこにいたのは、雷戯だった……


「テメェ、どうやって……」

「……」

「こちら雷戯。

逃げ出したガキ、見付けた。合流地点へ連れて行く。


と言う訳だ……大人しくして貰うために、こいつを打たせて貰うぞ」


そう言いながら、出した注射に美麗は怯えだし震えながら目に涙を溜めて、後ろへ下がり逃げようとした。

だが、後ろには既に羅臼が待ち構えており、彼は美麗の腕を掴み関節技で拘束し、雷戯の元へ連れてきた。


「テメェ、さっきと何か様子違うな?」

「嫌だ!!嫌だ!!

帰る!!帰る!!」

「悪いが、帰れねぇよ。

連れてくぞ」

「応」

「嫌だ!!嫌だ!!」

「(あんまり、着けたくはなかったが……)

抑えてろ」


床へ倒した美麗の口に、猿轡をした。声が出せなくなった彼女は、さらに暴れ手を縛っていたロープを解こうともがいた。


「しっかし、何なんだ?


この異様な空気は」

「そこら中に、妖気が漂ってるって感じだな」

「流石半妖。

感じるのか?」

「まぁな」


美麗を担ごうとした時だった……彼女を囲うようにして、現れ出た氷の柱。

生え出た柱の一部が、美麗の縄を切り手が使えるようになった。すぐにロープを解くと、一目散に怯んでいる雷戯を横切り、駆けて行った。


「逃がすな!!追え!!」
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