桜の奇跡   作:海苔弁

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奥へと走った幸人達は、ある場所へ辿り着いた。そこは大部屋で、中に拷問器具がいくつも置かれていた。


「……なるほど。


ここで、痛め付けて大人しくさせて……売りに出してたって訳か」

『こんないくつ物、拷問器具にやられちゃ誰だって精神が崩壊する』

『でも半妖がいた頃は、こんな事日常茶飯事じゃなかった?』

『そんな訳ないだろう』


話をしながら、晃は美麗を降ろした。拷問器具を目にした彼女は、フラッシュバックで次々と思い出した。


「……嫌……」

「?」

「嫌だ……嫌だ」

「どうかしたのか?」


気になった陽介が手を差し伸ばした時、叫び声と共に氷の柱が生え伸びた。咄嗟に手を引っ込めたが、氷の柱の一部が、彼の皮膚を切った。


『美麗!』
『陽介!』

「嫌だ!!嫌だ!!

帰る!!帰る!!」


逃げようとした美麗を、慌てて晃は引き留め自身に寄せると、落ち着かせるようにして宥めた。抱き寄せられた彼女は、晃にしがみ付き泣きながら何かを拒否していた。


「さっきといい、今といい……

ここに来てから、すごい拒否反応だな」

『妖力が開放しているせいで、封印している記憶の一部が蘇ってるんだろう……

それで、自身に見覚えのないことを思い出して、混乱しているんだ。


場所といい環境といい、本部にいた頃の条件とほぼ一致している。思い出して癇癪を起こすのは、当然だ』


施錠される記憶

「へ~、討伐隊の本部って、私のアジトと同じなんだぁ」

 

 

その声に、幸人達は銃を構えながら素早く振り返った。そこにいたのは、武器を持った雷戯と羅臼、さらに容姿が変わった凛が立っていた。

 

彼等の姿を見た美麗は、晃の後ろに隠れ怯えだした。

 

 

「何か、見覚えのない男がいるな?」

 

「別行動していた仲間なんでね。

 

見て無くて当然だ」

 

「……単刀直入に言う。

 

そのガキを寄こせ」

 

「嫌だと言ったら?」

 

「テメェ等を殺して、手に入れるまでだ」

 

 

動き出したと同時に、3人は銃弾を放ち武器から手を離させた。怯え、今にも泣き出しそうになっていた美麗を、晃は抱き締め宥めるようにして頭を撫でた。

 

 

『大丈夫だよ……何も怖がることないよ。

 

 

ちょっとの間、目を瞑ってて』

 

 

晃に言われた通り、美麗は目を閉じた。立ち上がった晃は、手から炎を出し懐に忍ばせて置いたダイナマイトを手にした。

 

 

『これ以上、美麗を傷付けるならこのアジト、爆破するよ?』

 

『晃!!』

 

「テメェ等の命も無いぞ!!」

 

『平気だよ……美麗の氷を使えば、僕等は生還できる。この天井を爆破すれば、上で待ち構えているネロとエルが僕等を運んでくれるよ』

 

「どこまで考えてんだ?アンタは……」

 

 

「調子に乗るのも、いい加減にしなさい!!」

 

 

怒鳴り声と共に、幸人と陽介の間を擦り抜けた何かが、晃の腹部に突き刺さった。

 

 

『晃!!』

 

『ありゃりゃ……刺され…ちゃった』

 

 

そう言いながら、晃は腹部を抑えながら倒れた。

 

倒れる音に、美麗は目を開け倒れた彼を見た。その光景が一瞬、別の場所と重なって見えた。

 

 

「……嫌だ……

 

駄目……駄目……」

 

「美麗?」

 

「駄目……

 

駄目……

 

 

 

 

駄目ぇぇええ!!」

 

 

叫び声と共に、美麗の体から妖気が噴水のように噴き出した。強風を起こす中、立ち上がった彼女は凛目掛けて攻撃した。

 

 

『美麗!!』

 

「いくら肉体を消しても、私は何度でも蘇るわ!!

 

この魂が、消えない限りね!」

 

「だったら、その魂永遠に葬ってやる!!」

 

 

手から黒いオーラを出し、それを凛の胸に当てた。その瞬間、凛の体から黒い魂が飛び出し、それは人の姿へと変わった。

 

 

『己ぇ!!』

 

「100年前も、こうやって人を盗み奴隷として売るって表に出していたけど……

 

裏では、盗んだ人達を殺して、自分の美貌を保つために殺した奴等の血を浴びていた。

 

 

そして、それは今も同じ!!」

 

「!?」

 

『う、嘘だろう……』

 

「そんな事が……」

 

「だからあの時、お前の体を消した!!

 

だがお前は、魂ごと姿を眩ました!!その取り逃がしたお前が、100年の月日を得て、今目の前にいる!!」

 

『……

 

 

 

 

連れはどうした?』

 

「連れ?」

 

 

李咲の言葉が引き金のようにして、次々と美麗の脳裏に自身に見覚えの無い記憶が、フラッシュバックで蘇った。ハッと顔を上げた彼女の目から、大粒の涙が滝のように流れ出てきた。

 

 

「な……何で……何で、こんなに涙が……」

 

『……へ~。

 

あなた、あんなにあの人のこと大事にしていたのに、忘れているんだ~』

 

「……!!」

 

 

脳裏に移る記憶……

 

満開の桜の中、血塗れになった男を抱く自分。男は口から血を流しながら、微笑み言った。

 

 

『僕は……君の中で生きる……

 

 

何……君を好きになる人ぐらい、また現れますよ……

 

 

 

さぁ、お別れだよ……』

 

 

『きっと会える……

 

 

それまで、待っていてくれ……

 

 

必ず、迎えに行く』

 

 

 

 

「……紅蓮」

 

 

彼の名を呼んだ時、美麗の目が赤色に戻り、彼女は力が抜けたかのように、その場に座り込んだ。

 

座り込んだ彼女に手を掛けようとした雷戯に、陽介は銃弾を放ちそれを阻止し、天花は座り込む彼女を抱き上げ幸人達の後ろへ下がった。

 

 

「……紅蓮……紅蓮」

 

『大丈夫。

 

紅蓮は、ここにいるよ』

 

 

腹部を抑え、座り込む晃の傍に天花は美麗を降ろした。立ち上がった天花は、二人の間に立ち手に持っていた銃を挙げ、李咲目掛けて銃弾を放った。飛んでくる弾を、李沙はギリギリで避けたが額に幸人の銃口が当てられた。

 

 

「殺人罪により、テメェの命はここまでだ」

 

『ま、待って!!まだ死にたくない!!

 

 

と言うか、そんな銃で私を』

 

 

“バーン”

 

 

銃弾の音が、中に響いた……幸人達がいる部屋へ続く廊下を走っていた秋羅は、その音を耳にした。

 

 

「(銃声……)花琳さん!!」

 

「もう着くわ!!武器の準備、しときなさい!!」

 

「はい!」

 

 

駆け付け、そこに広がる光景に、二人は息を吞んだ。

 

 

白目を向き、動かなくなった李咲……彼女の体は塵となり、そこから跡形も無く消え去った。

 

 

煙を上げる銃を、3人は煙を消すように息を吹きかけケースにしまった。

 

 

「ったく、何で3人でやるんだよ」

 

「俺と幸人だけでもよかったのに」

 

『可愛い曾孫に、汚れ仕事をさせられるか。

 

死人の私がやった方がいいだろう?』

 

「……」

 

『さてと、貴様等には色々聞きたいことがあるから、一緒に城へ来て貰うよ』

 

「構わねぇよ……

 

 

大将亡くなった今、俺等は用無しだ」

 

 

そう言って、雷戯達は武器を捨てその場に座った。それを見た陽介はポーチから手錠を出すと、3人の手にそれぞれ着けた。

 

 

「私達が来ること、なかったみたいね」

 

 

部屋へ入りながら、花琳は秋羅と共に幸人達の元へ歩み寄った。

 

 

「お前等」

 

「さらわれた人達は、今暗輝が保護しているから大丈夫よ」

 

「……」

 

『そろそろ戻ろう。

 

一応、解決しているし』

 

「だな……」

 

 

美麗がいる方を見ると、いつの間にか晃はいなくなり、そこには紅蓮が人の姿で倒れその隣で、彼に寄り添うように美麗は横になっていた。

 

 

「今は、落ち着いているようだな……」

 

「あぁ……

 

秋羅、婆と一緒に美麗を頼む。

 

 

俺が、紅蓮を運ぶ。陽介はあいつ等を頼む」

 

「分かった」

「了解した」




各々が動こうとした時だった……どこからか聞こえる、何かの鳴き声に彼等は足を止め、辺りを見回した。


「な、何だ?」

「……」


その時、陽介の無線が鳴り彼は耳に着けていた無線機の電源を着けながら、幸人達から少し離れた。横になっていた美麗は、その音でスッと目を開け起き上った。


『美麗、起きたか』

「……李咲は?」

「そいつなら、倒したよ」

「……!




幸人!陽介!そこから離れて!!」


“ドーン”
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