桜の奇跡   作:海苔弁

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保奈美の言葉に、村人一同が顔を強張らせた。その顔付きに、保奈美の傍にいた奈々は順々に彼等の顔を見ていき、そして言った。


「この村って、元々大鳥様と、柊の家族が住んでたんじゃないの?」

「!!」

「そ……それは」

「こんな雪の国、普通の人間じゃ何の対策もしなきゃ、住めないよ?

それに……




何で美麗見た時、半妖だって分かったの?」

「!!」

「半妖が最後に目撃されたのは、約50年前。

お前等の歳から言って、ギリギリ誰も生まれてない。または生まれて間もない頃だ」

「……」


口を一文字に結ぶ、村人達……痺れを切らした幸人は、前に置かれていた机を蹴り倒した。


「選択肢与える。


今すぐに、この村の事を全て俺等に話す。
何も喋らないのであれば、俺等は仲間を助け出し、妖怪退治をせず柊を連れて、この村から去る」

「そ、そんな!!」

「じゃあ話せ」

「っ……」

「話の内容によっては、我等討伐隊から罰を与えることもあるから、それなりの覚悟をしておけ」

「……」


大鳥村と秘密

「50人?

 

そんなにいたの?」

 

 

ベッドに座った美麗は柊の手を握り彼を落ち着かせながら、話を聞いていた。

 

 

「元々、ここは雪の多くて、人が近寄らない場所だった。

 

そこで、僕等半妖とこの村の守り神である大鳥様だけが村に住んでいた……

 

 

毎日が幸せだった……

妻がいて、子供達がいて、友がいて……1日も、暇な日なんて無かった……毎年、夏と冬になれば祭壇に果物やお酒をお供えして、その前で大鳥様の感謝を込めてお祭りをやった」

 

「……パパが死んだ後も、ずっと続いてた?その幸せ」

 

「もちろんだよ。

 

100年前、この辺りにはまだ線路は通ってなかったから。僕等半妖と大鳥様だけで、互いに助け合って暮らしていた」

 

「柊達の他にも、半妖はいたの?」

 

「もちろんいたよ。

 

と言うより、僕等一族ともう一つの一族が一緒に暮らしていたから。

 

 

僕等一族は、草木に命を与える事が出来る

もう一つの一族は、水を作り出すことが出来る」

 

「その二つの一族が、一緒に暮らしてたの?」

 

「そうだよ……

 

 

でも、20年前突然その幸せは壊された」

 

 

その言葉を発した柊は、閉じていた目を開き美麗の手を強く握った。

 

 

「……20年前……

 

 

人の集団が、この村へ来た。ここは辺境。調査隊ですら、入らなかった場所。

 

だから、僕等はてっきり討伐隊の者かと思っていた。

 

 

でも、それはすぐに違うって分かった……彼等の仲間の一人が、僕の娘の脳天に銃弾を入れた。

 

それが始まりの合図だった……

 

 

 

僕等は一斉に、あいつ等に攻撃した。水、草、木と……自分達が使える技を使って。

僕等だけじゃない。大鳥様も合戦してくれた。

 

 

だけど、あいつ等は……」

 

 

黙る柊……彼の頬に一筋の涙が伝った。その涙を流しながら、柊は隣にいた美麗を抱き締めた。出ようとする声を、彼は必死に止めながら泣いた。

 

 

 

柊と同じ話を、幸人達は村人達から聞いていた。

 

 

「酷い……

 

人の村を盗るなんて」

 

「人の村って……

 

 

妖怪の村だろう?別にいいじゃねぇか」

 

「妖怪は妖怪でも、半分は君等と同じ人間。

 

君等も、妖怪から自分達が築き上げてきた村を奪われて、どんな気持ちだった?

 

 

怒りや悲しみ、悔しさがあっただろう?」

 

「……」

 

「陽介、こいつ等どうする?」

 

「やむを得ん。

 

 

柊はこちらが保護をする。もちろん、大鳥様と呼ばれている天狗もだ。

 

そして、この村を閉鎖した後、貴様等を殺人罪として拘束させて貰う」

 

「殺人罪って……」

 

「どうしてよ!!妖怪を倒しただけなのに!」

 

「半妖だって、立派な人間だよ!!」

 

「ガキが偉そうなこと言うな!!

 

何が人間だ!見た目だけじゃねぇか!!

 

 

中身は化け物のくせして……」

 

「化け物じゃないもん!!普通の人間だもん!!」

 

 

目に涙を溜めた奈々は、村人達を睨みながらそう怒鳴った。傍にいた保奈美は、すぐに彼女を宥めながら、幸人達の顔を順々に見ていくと、彼女を連れて外へ出た。

 

 

「半妖だって、お前達と同じ人間だ。笑ったり、泣いたり、怒ったりして普通に生活して……

 

お前等、それを妖怪に壊された時、どう思った?

 

 

悔しくなかったのか?自分の家族は救われたけど、自分達が築き上げてきた家が壊されて、住み慣れた土地を壊されて……

柊も、お前等が敵だって言ってる天狗も……お前等に壊されて怒ってんだろ!!」

 

「……」

 

 

 

 

「……

 

 

 

 

ねぇ、柊」

 

 

全てを話した柊に、美麗は静かに彼の名を呼んだ。呼ばれた彼は返事をしながら、彼女の方に顔を向けた。

 

 

「柊は、パパがどうして亡くなったか知ってる?」 

 

「え?」

 

「誰も教えてくれないんだ……

 

事故で亡くなったてことしか聞いて無くて……でも、皆が話す内容と違うんだ」

 

「違う?」

 

「……パパは、事故で死んだんじゃない……

 

 

 

 

人に殺されたって」

 

「……」

 

「ねぇ、柊は何か……?」

 

 

自身を抱き寄せる柊……何か言おうとした美麗を、彼は優しく頭を撫でた。

 

 

「……柊?」

 

「美麗」

 

「?」

 

「……立派なぬらりひょんになって、皆をまとめてね」

 

「え?」

 

 

何かを言おうとした美麗の額に、手を置き淡い光を出した。その瞬間、彼女はフッと意識を無く柊に凭り掛かるようにして倒れた。

 

倒れた美麗を、ベッドへ寝かせ一撫でした。

 

 

(……麗桜、君の子供は死なせないし殺させない。

 

僕は大鳥様と一緒に全てを使って、この村を壊すよ……もう疲れたよ、生きるのは。

 

 

噂は本当だったんだね……君が人に殺されたって言うのは。

 

 

 

 

よかった……最期に、君の子供に会えて。

 

目が見えないから、顔は見られなかったけど……

 

 

 

 

 

 

彩愛……皆……僕も、そっちへ逝くよ。

 

 

 

 

全てを、片付けて)

 

 

 

 

宿のベッドで眠る奈々に、保奈美は毛布を掛け直した。そこへ、幸人と陽介が戸を叩き入ってきた。保奈美は二人をチラッと見ると、すぐに目を逸らした。

 

 

「……奈々、やっと落ち着いて今は眠ってるわ」

 

「そうか……」

 

「保奈美……」

 

「分かってるわ……

 

この子が、何であんなに取り乱したか……聞きたいんでしょう?」

 

「……」

 

「……奈々は、12年前依頼主から引き取った子なの」

 

「引き取った?」

 

「奈々の産まれた所は、小さな町でね。

 

ご両親は、彼女を産んだ後妖怪に殺されてしまって、引き取り手がなくて、仕方なく町長が引き取って育てていたの。

 

 

でも、その有様が酷かった……

 

妖怪の血が通っているからと、その辺にいる野良猫や犬と同じ扱いをして……依頼内容を町長から聞いてる時、彼女が何か失敗しただけで暴力を与えて……」

 

「半妖には、偏見を持つ奴等がいたからな……」

 

「依頼を受けながら、私は奈々のことを調べた……

 

確かに、奈々は半妖……だけど、クォーターなのよ。

 

 

奈々の高祖父が妖怪で、そこからずっと人。目が赤いだけで、それ以外は何も継いでいなかったわ」

 

「赤?

 

彼女の目は、青だが……」

 

「半妖っていう事を隠すために、私が渡した御守りの力で、青になっているの。

 

外せば、美麗と同じ赤よ」

 

「それで、任務完了後奈々を引き取ったって事か?」

 

「えぇ……」

 

「奈々がお前のこと『ママ』って呼ぶ理由が、話で分かった。

 

 

陽介」

 

「金影奈々は、引き続き金影の元に置いておけ。

 

彼女が半妖だという事は、極秘にしておく」

 

「……ありがとう、陽介」




紅蓮、後は頼んだよ……
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