桜の奇跡   作:海苔弁

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翌朝、幸人の元へ入った……三人の少女がいなくなった。歳は皆13歳から15歳。

村長から受け取った村人の名簿を見る幸人は、まさかと思い持ってきていた一冊の本を開き、何かを調べた。


「……ヤバい」

「何がヤバいんだ?」

「思い過ごしならいいんだが……


禁断実験、やろうとしてる奴がいるかもしれない。この村に」

「禁断実験?

何だよ、それ」

「数多くの犠牲者を出した実験の一つだ。


黒魔術とも言われていて……生きた血と引き替えに、口寄せの術を使うと妖怪を呼び出せるものがあるんだ」

「……聞いたことある。

確か、祓い屋達の中で、一時期流行ったって」

「確かに流行った……だが、その欲望のための実験のせいで、幼い命が数多く奪われた。

庶民からの訴えで、その実験は法律上特別な理由が無い限り禁止となった。


もしこの実験が行われようとしてるなら……四人の命が危ない」

「でも、どうするんだ?

助けようにも、前みたいに道案内してくれる蛍も何もいないんだぞ」

「……妖精か何かが、ここへ来て俺等に道案内してくれないかなぁ」

「ふざけたこと言ってねぇで、策考えろ!!」


禁断の実験

牧場へ来た紫苑……彼女の姿を見たグリフォンは、立ち上がり駆け寄ろうとしたが、首に付けられていた鎖が邪魔をし一定の場所までしか行けなかった。

 

 

グリフォンの元へ歩み寄った紫苑は、グリフォンの頬を撫でながら近寄り、体を撫でてやった。

 

 

「……あれ?紅蓮は?

 

紅蓮!紅蓮!」

 

 

名を呼ぶが、紅蓮の姿はどこにも無かった。

 

 

「どこ行ったんだろう……

 

ねぇ、知らない?……って、知るわけ無いか」

 

 

その時、グリフォンは紫苑の腰に着けていた小太刀を嘴で突いた。彼女はグリフォンの嘴を手で抑えながら、空いている手で小太刀を抜き見せた。

 

小太刀を見たグリフォンは、首に付けられていた鎖を目一杯引っ張り、何かを訴えるかのようにして鳴いた。

 

 

理解した紫苑は、辺りを見て誰もいないことを確認すると鎖を切った。自由になったグリフォンは、紫苑を銜え勢いを付けて自身の背中に乗せると、助走を付けてそのまま飛んでいった。

 

 

 

「いなくなった!?」

 

 

牧場へ駆け付けた幸人と秋羅は、柵を跳び越え辺りを見た。隅に生えている木に繋がれていたグリフォンの姿はどこにも無く、同じように紫苑の姿も無くなっていた。

 

 

「どこに行ったんだ……あいつ」

 

「グリフォンの奴もいなくなってる……

 

誰か、見た奴いないのか?!」

 

「いるもいないも、この時間は皆畑仕事や自分の仕事をやっているんで、そこまで面倒は見切れません!」

 

「第一、あの化け物は祖父さんが世話してたのよ!

 

何で孫である、兄や私が面倒を見なきゃいけないのよ!ただでさえあの化け物は、皆から嫌がられているのに!!」

 

「……」

 

 

その時、茂みから血を付けた紅蓮が飛び出し、二人の方へ駆け寄った。

 

 

「紅蓮!」

 

『紫苑が危ない!来い!』

 

 

それだけを言うと、紅蓮は駆け出しその後を二人は追い駆けていった。

 

 

 

数分前……

 

森の奥へと来たグリフォンと紫苑。とある屋敷に降り立つグリフォンから、紫苑は辺りを警戒しながら飛び降りた。

 

 

(嫌な臭い……血のにおいが混じってる)

 

 

グリフォンの嘴を一撫ですると、紫苑は警戒しながら屋敷の戸を開けた。中は夥しいにおいが漂っていた。

 

中へ入った瞬間、戸が勢い良く閉まり何も見ることが出来ずに、背後から何かで頭をぶたれた紫苑は、床に倒れそのまま意識を失った。

 

中の異常に気付いたのか、グリフォンは鳴き声を上げ森中に響かせた。その声にいち早く気付いた紅蓮は、屋敷の裏から柵を跳び越え、幸人達の元へと急いだのだ。

 

 

 

「……?」

 

 

目を覚ます紫苑……起き上がろうとしたが、体が固定されているのか手足が動かせなかった。

 

 

「動かせないよ。

 

これから、血を採るから」

 

 

注射を手にして、不敵な笑みを浮かべ名が現れたのは男だった。

 

 

「ようやく、俺の実験をあのイカレタ野郎達を見返せる」

 

「実験?」

 

「妖怪を呼び出す方法を見つけて、イカレタ野郎達に見せようとしたら、そんなの想像に過ぎないとか言いやがって……

 

だから、ここで妖怪を呼び出してあいつ等を攻撃しようかと思って」

 

 

ふと周りを見ると、檻の中に入れられた行方不明になった女の子達が涙を浮かべて、そこにいた。

 

 

「……!!」

 

 

突然腕を掴まれた……次の瞬間、ある映像がフラッシュバックで、頭に流れた。

 

 

(……嫌だ……

 

嫌だ……嫌だ…嫌だ…!!)

 

 

腕に注射針が刺さった……それ共に声が聞こえた。

 

 

 

『やめて!!痛いの嫌だ!!

 

嫌だ!』

 

『返して……

 

お家に返して……』

 

『……帰りたい……

 

 

帰りたい……』

 

 

 

証明の灯りが照らす場所に、突如黒い煙が漂い始めた。そして、そこから出て来た……白い長髪の男が。

 

 

「な、何だ!?あいつは?!」

 

『……』

 

 

首だけを動かし、その男を紫苑は見た。すると男は、彼女の元へ歩み寄った。彼から逃げようと、紫苑は手足を動かすが逃げられず、目の前に立った男を見上げた。

 

紫苑の前に来た男は、手を伸ばした。彼女は頑なに目を閉じ体に力を入れた。

 

 

「……?」

 

 

頭を撫でる男……体に力を入れていた紫苑は、目を開けながら力を抜き男の顔を見た。

 

透き通った青い目が、紫苑の顔をジッと見つめていた。

 

 

「やった……ついにやった!!

 

よし!このまま、この子の血を!」

 

 

注射針を腕に刺そうとした次の瞬間、彼の手に何かが当たった。投げられた方向に目を向けると、そこには槍を持った秋羅と幸人、さらに紅蓮がいた。

 

 

「紅蓮……」

 

「やっぱり、禁断実験やってたか……

 

秋羅は、そこにいる女達を解放しろ!」

 

「分かった!」

 

 

懐から出した銃を、男は二人に向けた。次の瞬間、紅蓮は台に跳び乗り、彼に襲い掛かった。倒れたと同時に、注射が紫苑の腕から離れ、それを見た男は持っていた刀で、彼女の腕を拘束していた枷を叩き切った。

 

片方が自由になると、紫苑は腰に挿していた小太刀を抜き、もう片方の腕の枷を切った。

 

 

「逃がすか!!」

 

 

どこからか、リモコンを出した男はスイッチを押した。次の瞬間、紫苑が乗っていた台に電流が走り、彼女は体から煙を上げながら倒れた。

 

 

「紫苑!!」

 

『貴様ぁ!!』

 

 

炎を身に纏い、男に襲い掛かろうとした瞬間、彼の後ろにいた男が刀を振るい上げ、彼を真っ二つに切った。

 

 

「!?」

 

「キャァア!!」

 

「見るな!!」

 

 

噴水のようにして、血を吹き出した男の死体は力無く倒れた。紅蓮は炎を消し、男を見上げた。

 

刀に付いた血を払い鞘に収めると、男は紫苑に近付き彼女の頬を撫でた。

 

 

『……イ』

 

『?』

 

 

「紅蓮!!紫苑を連れて来い!!

 

この屋敷を燃やす!!」

 

『分かった!』

 

 

紫苑の手に持っていた小太刀で、彼女の足枷を切り抱え持った。その時、紫苑の手首に着けられていたブレスレットが光った。それを見た途端、男は黒い煙を上げてその場から姿を消した。

 

 

『……何だったんだ……あいつ』




燃え上がる屋敷……


外に座っていた女の子達に、秋羅は持ってきていた水を与えていた。


「もう少し休んだら、村に行こうね」

「はい……」

「お家、帰れるんですよね?」

「大丈夫。

俺達が責任持って、家まで送るよ」


その言葉に、暗かった女の子達の顔がパアっと明るくなった。そんな賑やかな声で、紫苑は意識を取り戻した。

目を覚ました彼女に、グリフォンは寄り嘴で顔を突いた。突いてきたグリフォンを、紫苑は起き上がり頬を撫でた。


「平気そうだな」

「?

あ、幸人」

「体は調子どうだ?」

「少し重い……

ねぇ、あの男は」

「死んだ。

今火葬中だ」

「……あれも?」

「あれって?」

「……私の傍にいた……長髪の男」

「さぁな。

紅蓮の話だと、消えたらしい」

「……」

「どうした?」

「……あの妖怪、私のこと撫でた」

「撫でた?」

「うん。

それに、あの男から私を助けようとしてくれた」

「……」

「撫でられた時、何か懐かしく感じた」


自身の頭を撫でながら、紫苑は幸人に話した。話をしている最中、彼女の顔はどこか嬉しそうな表情になっていた。
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