桜の奇跡 作:海苔弁
まだ雷がゴロゴロと鳴る中、幸人達は鍵が掛かった森の前に集まっていた。
「雨は降らないのに、雷は本当に凄いな」
「おかげで、美麗の奴はビビりまくりだ」
自身に引っ付き、片耳を塞ぐ美麗の頭に手を乗せがら、秋羅は言った。
「女の大半が、雷怖がるよな?
時雨もあのチビも。
女って、そういう生き物なのか?」
「知らん」
鳥達の鳴き声が、響く森……空からエルに乗った美麗が、辺りを見回していた。その間、森の中を幸人達は別れて、四方を探索していた。
森を抜け、川へ着いた幸人は辺りを見回した。ふと、ある方向を見た。そこには、山が聳え立っていた。
「デカい山だなぁ……
?
おい、美麗聞こえるか?」
耳に着けていた無線機を、手で抑えながら幸人は美麗に声を掛けた。
《ん?どうかした?幸人》
「お前今、どこ飛んでる?」
《エーッと……
山付近だよ》
「山……あぁ、あれか。
美麗、その山どうなってる?」
《ちょっと待ってて。近くに行ってみる!》
エルの首元を軽く叩き、美麗は山の近くまで飛んだ。山頂に降り、辺りを見ながら彼女はエルと探索した。
そして、ある場所を見付けそこへ駆け付けた。
「……凄ぉい……
幸人!この山、火山だよ!!」
《火山!?》
「今、火山口の近くにいるんだけど、スッゴい熱いよ!それに、マグマが凄い活発だよ!」
《……
美麗、すぐにそこから離れろ!》
「え?」
《離れたら、俺の所に来い》
「わ、分かった。
どこにいるの?」
《山から飛んだら、近くに川がある。
そこにいる》
「川だね。分かった」
通信を切り、美麗はエルの背中へ乗るとそこから離れた。
しばらくして、幸人がいる川にエルは着陸した。エルから降りた美麗は、無線機で連絡する彼の元へ駆け寄った。
「そうだ、火山だ。
お前聞いていたか?
は?聞いてない?
そうなれば、雷神様はもしかしたら、味方かも知れないな……
詳しい話は、合流地点で話す。通信を切る」
一旦通信を切ると、幸人は自身に抱き着く美麗の頭を撫でると、彼女達と共に合流地点へ向かった。
合流地点へ着き待っている間、幸人は煙草を吸いながら資料を読み、彼の傍にいた美麗は低級妖怪達と遊んでいた。
「フー、やっと着いた」
ようやく着いた創一郞の声に、美麗と遊んでいた低級妖怪達は、一斉に姿を消しながら去って行った。
「で?話は?」
「資料をザッと読んだが……
この雷神、大昔からこの地にいたみたいだな。
この森は、この雷神の住処。柵を付け鍵を付けたのは、彼のため。ここまではいい配慮だ。
だが、問題は別にある」
「別?何だ?」
「この先にある山が、火山だ。
美麗の話だと、マグマが活発になっていたらしい」
「……まさか」
「可能性は高い。
まぁ、あくまで俺の……!!
美麗!!」
危険を察知した美麗は、素早く跳び上がり枝に手を掛け、一回りし飛び乗った。すぐに、どこからか雷の刃が木の幹に突き刺さり、ビリビリと音を鳴らしてスッと消えた。
瞬時に避けた幸人は、焦げた幹を気にしながら辺りを見回した。
「……特に妖怪の気配は無いな」
「何だったんだ?今の……痛!」
突然自身の首に、何かが刺さったかのような痛みが走り、幸人は思わず首を触った。だが、痛みはすぐに引き首元を触るが、何も異常は無かった。
「ん?どうかしたか?」
「いや、首に何かが……(気のせいか……)」
「幸人、平気?」
「平気だ。それより、猿みたいにぶら下がるな」
「ハーイ。
ねぇ、さっきの雷何?」
「妖怪の悪戯だろう」
「フーン……」
「とりあえず、探索は終了させる。
敬達呼ぶぞ」
「頼む」
創一郞が無線機で、敬達に連絡している間に、美麗は木からエルの背中へ降りた。すると、エルの背中に姿を消した低級妖怪達が、姿を現し再び美麗と遊び出した。
(……妖怪も、人を見るのか)
しばらくして、創一郞から連絡を受けた敬達が戻ってきた。だがその時、突如敬達の背後に何者かが降り立ち、敬の後ろにいた秋羅の後頭部を強く殴った。
「秋羅!!」
「な、何だ!?」
エルから降りた美麗を、幸人は素早く伏せさせその前に紅蓮は駆け寄り立ち、エルは彼女に跨がるようにして立ち、辺りをキョロキョロと見回した。
「これはこれは、懐かしい容姿ですこと」
「誰だ!!」
影から、赤いセミロングヘアに丈の長いコート、編み上げブーツを履いた男が、気を失っている秋羅の背中に足を乗せながら、現れ出てきた。
「ひ、人?」
「ここは立ち入り禁止区域だ。何故いる?」
「ここに住んでいる希少価値のある、動物や妖怪を捕獲しているんです。
闇市では、高く売れますからね」
不敵に笑みを溢す男……エルの足下から見ていた美麗は、その男の顔に見覚えがあった。
(……アイツ、あの時の)
その時、美麗の足を何かが引っ張った。咄嗟に後ろを振り向くと、そこには羽衣を着た妖怪が、身を屈め静かにするよう口前に人差し指を立てていた。
妖怪に手招きされた美麗は、エルの下から恐る恐る出た。完全に出ると、彼女の手を引っ張り抱えると、稲妻のようにそこから立ち去った。その直後、エルの足元に稲妻が当たりエルは、鳴き声を発しながらそこから避けた。
「……おや?
そこに何かがいたように、思えたんですが……気のせいだったようですね」
「さっきから放ってる雷……
まさか、ここ最近起こっている落雷は」
「そう、私。
捕獲しようとすると、あの雷神とか言う妖が私達の邪魔をしてくるんですよ?」
「それで追い出そうと、騒ぎを起こした……
なるほどな……」
「話は分かった。
とっとと、俺の弟子の上に乗せてる汚ぇ足、退かせ」
「それは無理なお願いですね」
「?」
「あなた方には、あの雷神を追い払って貰いたいんです。それがしっかり実行するまで、この者はしばらく預からせて頂きます」
「?!」
「それでは、また。
成功を祈っていますよ?信吾」
煙幕を放ち、男は姿を眩ました。
空から見ていた美麗は、すぐに妖怪に下へ降りるよう頼み、幸人達の元へ戻っていった。
エルが煙を翼で起こした風で払ったが、そこには秋羅達の姿は無かった。
「嘘だろ……」
「おい月影、信吾って誰だ?
アイツ、お前のこと」
「詳しい話は後で話す。
それより……?」
降り立つ妖怪……幸人達に礼をすると、抱いていた美麗を降ろした。降ろされた美麗は、妖怪を気にしながら幸人の元へ駆け寄った。
「雷神だ……」
「雷神は俺達の味方って事?」
「そうだな」
「怪我は……無いみてぇ……だな」
「?」
「幸人?顔色、悪いよ?
あれ?
ねぇ、秋羅は?」
「……」
美麗の問いに答える間もなく、首を押さえながら、幸人は倒れた。
「幸人!!」
「月影!!」
「幸人!幸人!!」
「敬!美麗を離れさせろ!!」
美麗は敬に抑えられ、幸人から離れさせられた。首を押さえる彼の手を無理に退かし、創一郞はその辺りを見て驚いた。
彼の首から背中に掛けて、皮膚が紫色に変色していた。
「毒?いつの間に……」
「そ、それ…大丈夫なのか?」
「知らねぇよ。
俺は医学に関して皆無だ。あの変態が来るまで、手の施しようが無い」
「そんな……」
「ひとまず、宿へ戻るぞ」
「わ、分かった」
宿へ戻ろうと幸人の体を支え、立たせようとした創一郞の前に、雷神は立ち雷を起こし彼等を宿へ送った。
「凄え……
まさしく、稲妻のようなスピード」
彼等を送ると、雷神は稲妻のようにそこから立ち去り森へ帰った。