桜の奇跡 作:海苔弁
激しく揺れる地面……同時に山から、巨大な爆発音が鳴り響いた。
「な、何だ!?」
「……!!
幸人!!あれ!」
「?……!!
ふ、噴火だ!!」
黒い煙と燃え盛るマグマが、山の口から上がり広がっていた。
噴火の様子は、町の人々も目の当たりにしていた。
「や、山が噴火した!!」
「皆逃げろ!!」
「キャー!!」
町は逃げ惑う住民で、溢れかえった。森から出て来た幸人達は、逃げ惑う人混みを駆け抜け、町長の家へ向かった。勢い良く戸を開け、中にいた町長を見付けると、創一郞はすぐに、状況を話し自分達が対処するから、すぐに住人を安全な場所へ避難させろと言い、外で待っている幸人達と、再び森へ行った。
「お、お気を付けて!土影様!
守部!直ちに、避難所を作れ!!」
「はい!」
森へ戻ってきた幸人達……
森では、奥から逃げてくる動物達が、次々と柵の外へと出て行った。
「凄い動物の数……」
「こんなのが、今逃げてる人達と出会したらヤバいんじゃねぇの?!」
「紅蓮!すぐにラルの所に、案内させて!」
『分かった!
おい、来い!』
傍にいた白狼の子を呼び付けながら、紅蓮は先に逃げていく動物達の前へ立ち、咆哮を上げ大人しくさせると自身を先頭に、町の外へ出て行った。その群れを待っていたかのように、ラルと白狼達が待ち構え動物達を誘導した。
「凄え、的確な指示……」
「流石、森に長年住んでるだけのことはあるな」
「感心してる暇があんなら、テメェ等お得意の土でマグマをどうにかしろ」
「ヘイヘイ。
敬、行くぞ」
「ウース」
「私は避難所へ行って、怪我人の手当てをするよ」
「頼む。秋羅、手伝えに行け」
「あぁ」
水輝と共に、秋羅はその場を後にした。
「……さぁて」
「幸人?」
「……
美麗、エルに乗って空から氷を放て。それでマグマを凍らせろ」
「うん、やってみる」
エルの背に飛び乗り、美麗は空へと飛び立った。一人残った幸人は、深く息を吐くと禍々しい妖気を放った。そして大剣を作り出し、赤い目を光らせた彼は、そこから森の中へと入った。
空を飛ぶエル……火山から出るマグマを見た美麗は、エルをその場で待機させ、背中の上に立つと息を整え意識を集中させた。
「悲しき氷の精霊よ、我が失いし心の傷よ、古き契約に従いて、わが意に従い、嵐を運べ!!
凍える冷気の衣よ、覆い尽くせ!!」
冷気を放つ美麗……冷気は大気を冷やし、そしてマグマを凍らせていった。だが、マグマの熱に耐えられず、氷は溶けマグマは再び流れ出した。
「まだまだ!!
蒼き水の波紋よ!我が足元に広がれ!そして、針と成せ!!」
地面に向けて氷の刃を、美麗は投げ付けた。氷は地面を凍らせ無数の針を生えさせた。
針に絡まれたマグマは、所々止まったもののまだ止まらずに流れていくものが多かった。
「全然、止まらない……」
息を切らす美麗に、エルは心配そうに鳴き声を放った。
その時、美麗の目に何かが通った。直後、エルは痛々しい鳴き声発しながら、バランスを崩したかのようにして空から彼女と一緒に落ちた。
木がクッションとなり、美麗とエルは掠り傷程度で済み、地面へ落下していた。
「エル!!」
エルに駆け寄ると、広げた翼に焦げた後があった。
「何、これ……」
「命中しましたね?
あなた方に怪我がなくて、よかったですよ」
聞き覚えのある声に、美麗は小太刀の束を握り振り返った。そこにいたのは、怪我を負ったウルスだった。
「な、何で……あの雷に当たって」
「死んだはず……と思っているみたいですが、大間違いです。
現に、私は生きています」
「……!」
モクモクと向こうの茂みから、煙が上がっていた。エルは落ち着きを無くしたかのように、美麗の周りを歩き回り、心配そうに鳴き声を発した。
「噴火ですか……
!!
逃しません!!」
逃げようとした美麗に、ウルスは雷の刃を放った。刃は途中で砕け、火花のように舞った。舞った火花は、腕に突き刺さった。
痛みで地面に倒れる美麗……ウルスが、もう一発雷の刃を放とうとした時だった。突然作り出したはずの刃が、跡形も無く消えた。
空から舞い降りる、羽衣を靡かせた雷神……
「ら、雷神……」
「またあなたですか……」
「……
?」
何かを察知した美麗は、エルの傍へ行き辺りを警戒した。彼女と同様に、何かを察知したエルは落ち着きを無くし、鳴き声を上げた。
「エル!大丈夫だよ!!」
宥めようと、手綱を引き美麗はエルを落ち着かせようとした。その時、地面が激しく揺れ地割れが起きた。
地面が大きく割れ、足下の土を無くした美麗は出来た穴に落ちた。落ち掛けた瞬間、瞬時に駆け付けた創一郞が、彼女の腕を掴み一気に引き上げた。
地割れに気を取られていたウルスの前に、大剣を持った幸人が現れ出た。問答無用に、大剣を幸人は思いっ切り振り下ろした。ウルスはすぐにそれを避け、雷の剣を作り出すと、それを武器に幸人と一戦交えた。
「幸人!!」
「奴の事はいいから、早くマグマを止めてこい!」
「でも!」
「行け!!
雷神、早く連れてけ」
美麗を抱き上げ、雷神は空へ飛んだ。
空から見ると、一部のマグマが町へ流れ出ていた。
「そんな……」
何かを決意したかのように、深く息を吸った美麗は手首に着けていた妖魔石のブレスレットを一つを外した。
外した瞬間、溢れんばかりの妖気が美麗を包み込んだ。何とか抑えた彼女は、氷の板を宙に作りその上へ立った。
「エル達の所に行って。ここは私が何とかするから」
目付きを変えた美麗は、手に冷気を溜め始めた。雷神は心配しつつも、そこから離れエル達の元へと戻った。
息を整え、美麗は力をため始めた。手から冷気を放ち、彼女は天に大きな玉を作り出した。
「悲しき氷の聖霊よ……我が失いし心の傷よ……
古き契約に従いて、我が意に従い嵐を運べ!!
大地の水よ、氷河となり全てをを凍りつくせ!!」
玉から出る、巨大な氷の波がマグマを飲み込んだ。街に出ていたマグマは、氷の波にのまれ動きを止め凍った。