桜の奇跡 作:海苔弁
ワカラナイ……
『氷華……
必ず仇は討つ』
『消して許さない……
この恨み、一生消えることは無い』
『ねぇ、母上……父上は、どこに行ったの?』
『すぐに帰ってくるわ。
それまで、待ちましょう』
『麗桜』
大事な人……守らなければ、ならない人……
『僕の……とあなたの……』
『美麗……
この子の名前、それでいいかしら?』
ミレイ……
ミレイ……
ミレイミレイミレイミレイミレイ……
お前は、誰だ……
翌朝……
帰路を歩く秋羅。すると、背後から討伐隊の馬車が、一台通り過ぎていった。
「……あれって」
先を走る馬車が気になり、秋羅は急いで帰った。
家へ着くと、馬車は門前に止まっていた。馬の世話をする隊員に会釈しながら、秋羅は中へ入った。
中には、ソファーに不機嫌に座る奏歌と彼女の隣に座る大地、彼等の後ろに梗介立っていた。
動かない彼に気付いたのか、向かいのソファーに座っていた幸人が後ろを振り向いてきた。
「おぉ、帰ったか」
「あぁ……
なぁ、これどういう状況?梗介達はともかく、何で本部の人が?」
「それはな」
「あなたの師匠が、貴重な研究材料を逃がしたのよ」
「け、研究材料?」
「言い方を考えろ。通じるわけねぇだろうが。
美麗がいなくなった」
「え……」
「今朝、部屋を見に行ったら物家の空になってて……
近くを探し回ったが、結局。
エルは小屋にいたが、紅蓮の姿が無い」
「な、何でいきなり……」
「恐らく、昨日会ったぬらりひょんが原因かも知れない」
「え?どういう事?
ぬらりひょんって……」
「説明は後だ。話を進める。
翔から連絡を貰って、速攻捜索隊を出した。すぐに見つかればのいい話だがな」
「え…」
「まぁ、そうよね。
すぐに見つかれば、苦労はしないもの」
「ど、どういう事?なぁ、幸人」
「考えても見ろ。
100年間、討伐隊が血眼に探していたんだぞ。
その討伐隊が見付けられず、途方に暮れていた時に、闇市で売られているって情報が入ってきたんだ。
今回、それで見付けられるか?」
「……無理に一票」
「そういう事だ」
「私はまだ仕事がある。
陽介、しばらくここに滞在しろ。見付け次第、連絡を寄こせ。元帥には私から話を通しとく」
「分かりました」
「雲雀、藤風、帰るぞ」
「え?俺も?」
「当たり前だ。
文句でもあるのか?」
「……ありません」
前に止められていた馬車に乗り、4人は去って行った。
いなくなると、陽介と幸人は同時に煙草を吸い出した。
「あ~、ムカつく。
何なんだよ、あの態度」
「そう怒るな」
「そんで、どうするの?
ミーちゃん、早く見付けないと討伐隊に取られちゃうよ」
「んなモン、百も承知だ。
秋羅、そのまま来い」
「え?」
「水輝、暗輝、小屋の掃除手伝ってくれ」
「了解」
「応よ」
「イヤイヤイヤ、美麗を探しに」
「先に行っている」
首根っこを掴み、陽介は秋羅と共に小屋へと行った。2人に続いて、水輝と暗輝も小屋へ行った。
しばらくして、身支度を整えた幸人は、小屋の中へ入り手綱を手にしながら口を開いた。
「……誰もいないな」
「あぁ」
「え?何、どういう」
「盗聴器……
仕掛けられている可能性が、高かったからこっちに来たんだよ」
「……」
「美麗が行くとしたら、恐らく北西の森。
だが、討伐隊が出した捜査隊の現状は?」
「北西の森を調べたが、美麗は発見されなかった」
「と言う、状態だ」
「だったら、探しに行っても」
「一部は、まだ調べていない」
「え?」
「北西の森といっても、調べられる場所は限られている。
捜査隊が調べたのも、その一部だ」
「さらに奥を調べるとなると、所有者の許可が必要になる。それに、噂で奥には昔討伐隊が捕らえていた西洋妖怪が、棲み着いているって聞いた」
「……まさかとは思うけど、その奥を」
「調べに行く」
「許可は?」
「たった今、出した。
ほら、許可証だ」
「応」
「……え?!
所有者って、陽介さん!?」
「北西の森は、曾祖母が若い時に町と山、川を含む全ての土地を買ったんだ。
今は俺が引き継ぎ、誰も入れないようにしている」
「天花さん、どんだけ金持ちだったんですか……」
「その他の詳しい説明は、空の上でする。とっとと乗れ」
「陽介さんは、どうするんですか?」
「汽車に乗っていく」
とある森に入った幼い兄妹。泣きながら、薄暗い森を歩いていた時、突如妖怪が現れた。2人は泣きながら、逃げ出しその後を妖怪は追い駆けていった。
走る2人だが、妹が地面から突き出ていた木の根に引っ掛かり転び、兄は立たせようとしたが、既に妖怪の牙が2人に近付いていた。
「だ、誰か助けてー!!」
次の瞬間、妖怪は横へと飛ばされ倒れた。
2人の前に降り立つ、紅蓮と美麗……美麗は、2人を立たせ紅蓮の背中へ乗せると、指示を出しそこから離れさせた。立ち上がった妖怪は、咆哮を上げて美麗を睨んできた。彼女は睨み返し、妖気のオーラを放ちながら妖怪を睨んだ。
「『2人は子供だ。
お前の住処を荒らしたのか?
荒らしていないだろう。襲う必要は無い』」
禍々しく出るオーラと現れる男の姿に、妖怪は怯みそしてそこから去って行った。
妖力を抑えると、深く息を吐きその場に座り込んだ。
『日に日に、妖力が高まってるな?』
子供を人里へ送り届けた紅蓮は、美麗の元へ寄りながら頬摺りした。
「妖魔石が、全然抑えてくれない……
やっぱり、あいつに会わないと駄目なのかな」
ふと首から下げていた黒曜石のペンダントを、美麗は持ち上げ手に取った。
「……先急ごう」
『あぁ』
紅蓮の背中へ乗り、美麗は森の奥へと姿を消した。
人は嫌いだ。必ず争いをする、そして住処を奪う。
人というのは、良いな。少し、気に入った。
やはり……人は……嫌いだ……
必ず……必ず、人を滅ぼす!この命尽きようと、この身が闇に蝕まれようと!!
こんな事して、あいつが喜ぶとでも言うのか!!
天狐、母様と父様はどこに行ったの?
その内、帰ってくるさ。
自分だけでなく、息子にまで……何という、愚かなことを。
天狐、泣かないで。
私の子供……ううん……
私の孫が、必ず彼等を救ってくれるわ。
桜……
私は大好きよ、桜。それじゃあ、桜が沢山咲いている所へ行きましょう。
麗桜さんが……殺された……
ママ、パパはどこに行ったの?
その内、帰ってくるわ。大きな猪と沢山の林檎を持って。
ママの隣で寝んねしたい。
美優さんは病気だから、僕と寝ようね。
早く元気にならないと、パパが心配するよ。
そうね……治さなきゃね……
ママ、お花がいっぱい咲いてるよ!
……美麗
?
お花……見たいわ……
摘んできてくれない?
うん!
それから……晃を呼んできて頂戴。
ハーイ!
晃ー!ママが来てーって!
ママー!お花、摘んできたよ!
……
ママ?どうしたの?
……
ママ?
美麗、美優さんは眠ってるから……ソッと……!!
晃、ママお花置いてるのに全然、目開けないよ?
前は置いてたら、においで目が覚めたのに……何で?
晃……どうしたの?
何で、目から水を流してるの?
晃?ねぇ、苦しいよ……晃。