桜の奇跡 作:海苔弁
「ぬらちゃーん!早速検査」
「させるかー!!」
突然飛び込んできた大地に、後ろから暗輝は跳び蹴りを食らわせた。もろに食らった彼は開けてあった裏口から外へ飛び、木の柵に顔面を当てた。
「……な、何なんですか?
一体」
「長期出張で、この変態がこっちに来ることになった」
「マジ…かよ……
?
ここ泊めるの?」
「泊まらせて貰うわよ!秋ちゃん」
鼻血を止めながら、大地は中へ入ってきた。そこへ、幸人と陽介が到着したのか、銃口を彼に向けながら煙草をの煙を吐いた。
「陽介、俺右目やるわ」
「それじゃあ、俺は左目」
「待て待て待て!!僕チンを殺すな!!」
「この家の中では、この俺が頭だ。
逆らったら、問答無用で銃弾を放つ」
「はい……分かりましたから、その銃口を降ろして下さい」
秋羅が剥いた林檎を食べる美麗は、幸人の隣に座っていた。そんな彼女に、向かいの席に正座した大地は手を合わせながら、様子を窺っていた。
「ぬらちゃ~ん、林檎食べ終わったら検査」
「嫌だ」
「陽君、何とかして~!」
「自分でどうにかしろ」
「そんな冷たくしないで!」
「だから、会議中に言っただろ?
美麗の検査は、引き続き水輝と暗輝に任せとけって。それをお前が
『心配することないわ!何回も会っているんだから、流石に僕チンに懐くはずよ!』
とか言って、強引に来たんだろうが」
「幸人達が何回も言っただろ?
貴様と翔は、美麗から敵視されているから、例え頼んでも断られると……」
「それを聞かねぇ、お前もどうかと思うよ」
「そ、それは……
って、何知能テストやらせてんのよ!?」
後ろから水輝に教えて貰いながら、美麗は紙に書かれている問題を、次々に解いていた。
「本当、2人の言う事は素直に聞くな」
「ねぇ、次の問題!」
「えーっと、これはね」
「水輝!そこ、僕チンの立ち位置!」
「欲しければ、自分で取るんだな?じ・ぶ・ん・で!」
「キー!!」
「終わった!」
「よーし、そんじゃあこの問題行ってみよー!」
「オォー!」
「その問題やるなら、この機械着けて!!」
「脳波測ろうとすれば……
ミーちゃん、機嫌損ねちゃうよ?」
「うぅ……」
「そんで、いつまでここにいるんだ?」
「ふぇ?」
「とっとと帰れ、変人野郎」
「ぬらちゃん!!口の利き方!!」
「ほらな、効果的だろう?」
「ホントだ」
「暗輝!ぬらちゃんに変な事教えないで頂戴!!」
「林檎ご馳走様!」
「ぬらちゃん、早速!」
「ヤーダ!」
「ぬらちゃん!」
「ぬらじゃないもん。美麗だもん」
そう言って、美麗は裏口から外へ出た。その後を追い掛けようとした大地を、陽介は首根っこを掴み阻止した。
「これじゃあ検査が出来ないじゃないの!!」
「ギャーギャー騒がしいなぁ」
「何?発情期?」
「違ぇよ!!」
「お!男に戻った」
「オッスー!幸人!」
突然玄関の戸を勢い良く開ける音と共に、誰かが中へと入ってきた。リビングへ来たのは、迦楼羅達と保奈美達だった。
「あら?迦楼羅と火那瑪君に保奈美と奈々ちゃんじゃん。どうかしたの?」
「ゲッ……キモいオッサン、いたんだ」
「オッサン言うな!!」
「何の用だ。一体」
「依頼。ちょっと、人手が必要なの」
「?」
馬小屋にいるエルの傍で、美麗は紅蓮の毛をブラッシングしていた。
「うわぁ……毛玉スゴ」
『俺もういいから、エルをやってやれ。
まだかって、尻尾振ってるぞ』
「ホントだ。
今やるから、待ってね」
立ち上がり、箱座りしているエルの毛を美麗は撫でるようにして梳かした。エルは気持ち良さそうに鳴き声を発しながら、美麗の頬を舐めた。
「エル、くすぐったいよ!」
笑う美麗に、紅蓮は安堵するように大あくびをしながら、地面に伏せた。
「妖怪退治?
それ、本当だろうな?」
「本当よ。
数が多くて、とても私と奈々だけじゃ駄目だと思って。
一応、他の皆にも声を掛けたんですが……手を挙げてくれたのが、迦楼羅だけだったので」
「迦楼羅以外の祓い屋は?」
「他の祓い屋さん達、皆仕事が入ってて無理だって」
「それで、こいつか」
「どうかしら?引き受けてくれる?」
「……まぁ、久し振りの妖怪退治だし、無条件で引き受けてやるよ」
「あら、嬉しい」
「ヤッター!美麗と一緒だぁ!」
「そういえば、美麗は?」
「ぬらちゃんなら、お外に行ってるわよ」
「なぁ、何でこいつここにいてこんなに不機嫌なんだ?」
「緊急会議が終わった直後、あなたと帰ったかと思ったら」
「ぬらちゃんの検査しようと思って、来たのに……」
「来たのに?」
「……ぬらちゃんに、拒否られました」
「やっぱりな」
「もう、どうして僕チンには懐かないのよ!
同じ職に就いてる、水輝や暗輝には懐いてるのに!!」
「お前と違って、俺等は毎日のように会ってるから懐かれて当然だ」
「そうそう」
「水輝なんて、初め変な行為したせいで一時期距離置かれてたもんな」
「うっ……」
「まぁ、最近は懐くようにはなったみてぇだな?」
「変な行為が、収まったからな」
「暗輝!!」
「じゃあ何?変な行為を直せば、僕チンも懐く」
「懐かない」
「何でハッキリ言えるのよ!!」
その時、裏口から美麗が中へと入ってきた。入ってきた彼女に、大地が近寄ろうとした。その瞬間、彼の頭上に小さな妖怪が落ち彼に攻撃した。
「あら?妖怪?」
「低級霊の妖怪だな」
「害は無いの?」
「悪戯する程度の妖怪よ。
でも不思議ね。祓い屋の家に、すんなり入ってくるなんて」
頭を抑え蹲る大地を、美麗は無視しながら低級霊の妖怪を肩に乗せ、再び外へ出た。彼女の後を、奈々は追い駆けていった。
「低級霊の侵入は、美麗が来てからだよ」
「え?それって……」
「彼女の妖気が、低級霊共のを呼び寄せてるんだ。
結界を張っても、美麗の周りには結界なんて無意味みたいでな」
「それで、そのままって事か?」
「あぁ。
別に動物や俺等に攻撃するわけでもないし、害をもたらすような真似も、したことは無い」
「そうなの」
「妖気を抑えることは、出来ないのか?」
「ぬらちゃんの場合、まだ幼い子供だから自分で抑えることができないのよ。
でも、妖魔石だっけ?あれで少しは抑えてるけど、やっぱり漏れてるみたいでね」
「フーン……」
「それで、話戻すが……
依頼は、いつからなんだ?」
「明日行こう思っているけど、どうかしら?」
「だってさ。
陽介、お前等は?」
「残念だが、俺は本部へ戻って遠征の準備をするから、無理だ」
「僕チンは行けますけど!」
「幸人、俺等も行って良いか?
この変態を野放しにしておけない」
「あぁ、来い来い」
「どうして僕チンを信用してくれないの!!」
「信用するわけ無いだろう」
「テメェの実験で、何度死にかけたことか」
「本当本当」
「キー!!」