桜の奇跡 作:海苔弁
馬繋ぎ棒に、エルと紅蓮を繋ぎその傍で暗輝は美麗と愁と外で待機し、その他は中で話を聞いていた。
「鬼退治と聞きましたが、この町によく現れるんですか?」
「いえ、ここに現れるんじゃ無くて……
この町の外れにある、森に棲み着いているんです」
「森?
あぁ、あそこか」
「あそこから、嫌な妖気は感じなかったけど」
「今は休息しているのかと……
とにかく、すぐにでも森へ入って鬼を退治して下さい」
「退治は保留にします。
鬼達が町を襲う原因を、突き止めてからです」
「そ、そんな……」
「祓い屋と言っても、問答無用でやるのはちょっとね。
ちゃんと原因を突き止めてから、祓いますよ」
「……しかし」
「心配でしたら、この町に二人置いときます。
あとの者で、森を偵察します。これでよろしいでしょうか?」
「い、いえ、そこまでしなくても……
まぁ、いいでしょう」
外で待っていた美麗は、首輪を嫌がる紅蓮を宥める様にして撫でていた。その時、向こうから笑い声が聞こえ、彼女は気になりその声の元へ駆けて行った。
そこでは、子供達が地面に丸を書きそこに、石を投げて遊んでいた。そんな中、遊んでいた1人が美麗の存在に気付き一緒に遊んでいた仲間に呼びかけ、話をした。すると、その1人が彼女に向かって手招きをした。美麗は嬉しそうに、その中へ入り遊びだした。
「ハァ、面倒な依頼内容だな」
怠そうな声を上げながら、幸人達は町長の家から出てきた。転寝をしていた暗輝は、口から出ていた涎を拭きながら大あくびをし、体を伸ばした。
「あれ?
暗輝さん、美麗と愁は?」
「ん?その辺にいねぇか?」
「いませんよ」
「……」
「テメェ、寝てたからいなくなったとか言うんじゃねぇよな?」
「……すいません」
「阿呆!!」
「スゴォイ!!」
子供の驚く声に、秋羅達は耳を向け声のへ行った。そこでは、町の子供達と美麗が、楽しそうな声を上げながら遊んでいた。その様子を、愁は離れたところから見ていた。
「すっかり溶け込んでるな……アイツ」
「でもこうやって同い年の子供と遊んでると、美麗ちゃん普通の子ですね」
「……そういや、うちの近所に子供いねぇもんな」
「いつも誰と遊んでるの?」
「手伝いさせながらだから、大抵エルか紅蓮、馬と牛達。あと、今愁の頭に乗ってるアゲハと、時々遊びに来る低級霊の妖怪達だな」
「人と遊ぶって言う選択肢は、無いんだね。幸人」
「仕様がねぇだろう。
祓い屋だから、町や村から離れるんだろう」
「まぁ、そうだけど」
「暗輝より、愁の方がずっと美麗を面倒みてくれてるね」
「こっちは徹夜続きだったんだよ」
「ヘイヘイ」
「美麗!仕事いくぞ!」
秋羅の呼び掛けに、美麗は遊びを中断し、手を振る子供達に手を振り返し秋羅の元へ駆け寄った。
「遊んでるの中断して悪いな」
「全然平気!話、終わったの?」
「あぁ。これから隣の森に行くんだ」
「森?
森に鬼が住んでるの?」
「らしい」
森へ来た幸人達。入る前に、秋羅達は中にいる妖怪達が逃げないよう四方に結界を張った。
「幸人!結界張ったぞ!」
「あぁ!
さて、入る準備は出来たが……」
「随分と、入り組んでる見たいね。
入ったら迷いそう」
「そうだね。
誰か1人、入り口付近で待機して貰って、あとは2人組んで中を調査って感じかな」
「幸人!先行ってる!」
「愁、捕まえろ」
森の中に入ろうとした美麗を、愁はヒョイと抱き上げ幸人の元へ連れて行った。
「先に行くな。それで何度酷い目に遭った?
今作戦会議中だ。大人しくしておけ」
連れて来られた美麗の頬を、幸人は引っ張り怒りの笑みを浮かべながら言った。引っ張られた頬を撫でながら美麗は愁から降り、紅蓮とエルの元へ駆け寄った。
「本当に躾けはしているんですね」
「してるって言っただろ」
「そうでしたね」
幸人達が話している間、美麗はふと森から視線を感じ森の方を見た。
「……」
『どうかしたか?』
「誰かいる……」
『……さっきの奴等か?』
「分かんない」
「美麗!森に入るぞ!」
「はーい!
エルはここで、愁と待ってて」
紅蓮と一緒に、美麗は先に行く幸人達の後を追い駆けていった。彼女の後を追い駆けようとしたエルの手綱を、愁は引き宥めるようにして頬を撫でた。
森の中へ入り、しばらく歩いていると薄らと霧のようなものが出て来た。美麗はすぐに幸人の服の裾を掴み、小太刀の柄を握り辺りを警戒した。
「霧が出て来たね」
「あぁ」
「……
!?
幸人、避けて!!」
掛け声と共に、美麗は幸人を突き飛ばし突っ込んできた何かを、小太刀で受け止めた。舞い上がった雪の中にいたのは、金砕棒を担いだ鬼だった。
「鬼?!」
「美麗!!」
「まだ来る!!
8……!!上から来る!」
言葉通り、8人の鬼が舞い降りるやいなや、幸人達に攻撃した。彼等はすぐに武器で、対抗し攻撃を避けた。
「どこから湧いた?この鬼共」
「全く、気配を感じませんでした」
「こんなにいるなんて、聞いてない!」
「妖気は感じてないのに、どうして」
「もしかしたら、鬼達は妖気を消せるのかも知れないね」
「嘘!?」
交戦する幸人達……振り下ろした金砕棒が、美麗に当たろうとした。当たる寸前に彼女は転がり避け、転がった拍子に被っていたフードが脱げた。態勢を整えた美麗は、勢い良く鬼に小太刀を差そうと振り下ろした。
その瞬間、鬼の体が煙のようにして擦り抜け、そして消えた。
「え?!」
「き、消えた?」
幸人達を攻撃していた鬼達が、煙のように消えていった。
「何で?
どうなってんの?」
戸惑っている彼等の前に、またしても霧が掛かった。辺りを白く包み込んでいき、美麗は慌てて幸人の元へ駆け寄ろうとしたが、既に周りが見えなくなるくらいまでに濃くなっていった。
「あ……
幸人!秋羅!」
『霧が濃い……美麗、背中に乗れ』
「うん」
紅蓮の背中に乗り、美麗は辺りを警戒した。頭に乗ったアゲハは、触角を下げ怯えるようにして体を震えさせ、鳴き声を放った。
『キー……』
「何にも見えない……ねぇ、幸人達の気配が感じないんだけど、においある?」
『いや、無い。
動いてないはずなのに』
「……」
『お久し振りです、大将』
霧の中を歩く秋羅……やがて、霧が晴れ何かにぶつかった。
「痛っ!
な、何だ?」
鼻を押さえながら、顔を上げた。ぶつかったのは、エルの体だった。
「え、エル?何で」
「あれ?秋羅、お前どうした?」
「え?暗輝さん?
何で?」
「キャ!」
自身にぶつかってきた者の方に目を向けると、そこにいたのは鼻を押さえる時雨だった。
「し、時雨?」
「痛った~……え?秋羅!何で?」
「あれ?変なところに……
あら?秋羅に時雨!」
「アリサ!」
「ここは?」
「梨白!?何で?」
「おいおい、何で弟子のテメェ等が森から出て来てんだ?」
「いや、霧が深くて」
「その中を彷徨ってたら」
「ここに……」
「師匠達は?」
「あれ?ここって」
「何だ?ここ」
「どうなってんの?」
「変なところに、出ましたね?」
「何4人仲良く出て来てんだ!」
暗輝が幸人達の元へ駆け寄っていた時、エルの手綱を引いていた愁は、辺りをキョロキョロと見回した。
「……?
愁、どうかしたか?」
『……美麗、どこ?』
「幸人達の所だろ?」
『……』
「秋羅!美麗は?!」
「え?幸人達と一緒じゃねぇのか?」
「は?テメェと一緒だろ?」
「いや一緒じゃねぇし。
つか、幸人の傍にいたじゃん。アイツ」
「……」
「傍にいないって事は」
「置いてきたんですね。彼女を」
「というより、追い出されたんじゃ無いの?
私達」
「……」
エルの背に飛び乗った愁は、エルを飛ばさせ森の方へ行った。
「愁!!戻ってこい!」
「……?
雪?」
突然と、雪が降ってきた。雪は次第強くなっていき、それと共に霧が出て来た。
「マズい……
幸人、一旦町に戻ろう。吹雪が来る」
「町つったって、この霧じゃ」
「それでは、野宿ですか?」
「馬鹿!
こんな寒いところで野宿何てしたら、皆凍死よ」
「あんた方、こんな所で何やってんだ?!」
ランタンを手にし、大型犬を連れた年老いた男性が幸人達に、声を掛けてきた。
「もうすぐ吹雪になるぞ!」
「仲間がまだ、この森にいるんです!」
「何?!
と、とにかく俺のアトリエがすぐそこだから!こんな所で待ってたら、皆凍死するぞ!」
「……」
「幸人、ここはあの方のお言葉に従いましょう」
「だな」
「お言葉に甘えさせて頂きます」
「こっちだ、離れるな!」