桜の奇跡   作:海苔弁

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うたた寝する水輝……


ベッドで横になっていた愁は、アゲハを連れて音を立てず部屋を出た。


小屋の戸を開け、中にいるエルを外へと出した愁は、エルに乗ると彼を飛ばし森へ向かった。


過去の依頼

それから数時間後、幸人達は宿へ帰ってきた。部屋へ入ろうとした瞬間、戸が勢い良く開き開けようとした迦楼羅の顔面に思いっ切り当たった。

 

 

「どうした水輝?そんな慌てて」

 

「愁が消えた!!」

 

「は?!」

 

 

すぐさま、小屋へ行くと中は物家の空になっていた。

 

 

「アイツ、まさか森に……」

 

「マジかよ……

 

すぐに戻るぞ!!」

 

「了解!」

 

 

暗くなっている道中、幸人達は再び森へ向かった。

 

 

 

 

「土影……」

 

「奴のせいで、不治の病が流行り全員死んだ。

 

運良く、俺は掛からなかった……だから生き残った」

 

 

創一郞の姓を聞いた美麗は、驚きの余り動けないでいた。

 

 

その時、突然地面が揺れ始めた。リーチュは美麗を背に乗せると、そこから離れた。彼等と共に黒装束の男も、その場から避難した。

 

揺れる地面と共に、聳え立つ山がユラユラと揺れ、それはやがて空へと上がり出した。

 

 

「山が動いた!?

 

 

って事は……」

 

「出やがった……八岐大蛇」

 

 

山は崩れ、それは丸まった7つの頭だった。そして、地面からもう1つの頭が抜き出てた。8つの頭は森に響くように、咆哮した。

 

 

耳を塞ぎ、何とか耐えた美麗はフードを被りながら、山を見上げた。

 

 

「……大蛇だ」

 

「早く来い、テメェを捧げる」

 

「妖怪に贄をやったって、太陽が顔を出すわけ無いじゃん!!

 

リーチュ!幸人達を案内してきて!」

 

 

リーチュから降りた美麗は、ブレスレットを外し小太刀を手に持ちながら、彼を行かせた。

 

 

「何をする気だ?」

 

「ちょいと足止め。

 

 

悲しき光の精霊よ、我が失いし心の傷よ、古き契約に従いて、わが意に従い、嵐を運べ !

 

明瞭たる光よ、闇夜を照らせ!!」

 

 

手に浮かぶ光の玉を、美麗は空高く投げた。光の玉は強烈な光を放ち、辺りを照らした。

 

 

その光に導かれるようにして、空を飛んでいたエルはスピードを上げ、鳴き声を発しながら美麗の元へ降り立った。

 

 

「あ!エル!」

 

 

エルの元へ駆け寄った美麗だが、彼の背中から降りた愁の姿を見ると、彼女はすぐに飛び付いた。

 

 

『怪我は?傷は?』

 

「無い、平気。

 

愁は?平気?」

 

『……俺は』

 

 

“ドーン”

 

 

地面に激しく落ちる物体……愁は美麗をエルの背に乗せると、飛び乗り空を飛び出した。

 

地面へ落ちたのは、八岐大蛇の尾っぽだった。大蛇は咆哮すると、尻尾をブンブン振り回し攻撃した。

 

 

大蛇の攻撃を避ける彼等を、男は地上から眺めていた。

 

 

(……何者なんだ、あいつ等は)

 

 

 

咆哮を耳にした幸人達は、その咆哮を頼りに歩いていた。その時、茂みからリーチュが現れ、鳴き声を発すると彼等を案内した。

 

 

激しく揺れる地面に、幸人達は驚き足を止めた。

 

 

「な、何だ!?」

 

「地面が揺れてる!?」

 

「地震?!」

 

 

すると、空からエルの鳴き声が聞こえ、彼は幸人達の元へ降り立った。

 

 

「愁!!テメェ、何……!?

 

 

美麗!!」

 

 

愁に降ろされた美麗の元へ、3人はすぐに駆け寄った。真っ先に駆け寄った水輝は、美麗に抱き着き頬摺りした。

 

 

「ミーちゃん!無事でよかったぁ!」

 

「水輝、苦しい……離して」

 

「さっきから、この地面の揺れは何だ?!」

 

『アイツ』

 

 

愁が指差す方向には、光に照らされた大蛇が8つの頭を動かしながら、移動しようとしていた。

 

 

「デケぇ、蛇」

 

「あの山、アイツの背鰭だったのか……」

 

 

「アイツを鎮める。

 

とっとと、その子供を寄こせ」

 

 

そう言って現れ出たのは、あの男だった。幸人と秋羅は、水輝と美麗の前に立ち武器を構えた。

 

 

「贄を捧げたところで、あの妖怪は鎮まるのか?」

 

「やらなきゃ、分からない。

 

ずっと……俺達は、あの妖怪に苦しめられた。

 

 

 

 

だから、そこにいる土影に依頼した八岐大蛇を倒して欲しいと!

 

 

それなのに……テメェは」

 

 

覆面を取り外しながら、男は目に涙を溜めながら言った。男の顔半分は、黒く石のようになっていた。

 

 

「!?」

 

「その顔……」

 

「皮膚の病さ。

 

 

俺は、黒くなり固くなるだけで症状が終わってるが、死んでいった奴等は……

 

 

高熱に魘され、体中の皮膚が黒くなって硬くなって、吐血しそして死んだ……親も兄弟姉妹も妻子も友も……皆、この奇病にかかって死んだ。

 

 

 

 

あの時、お前が八岐大蛇を退治してくれれば、死なずに済んだんだ!!土影!!」

 

「!?」

 

「まさか仕事放棄したのか?」

 

「……」

 

「祓い屋は、如何なる時でも、依頼を決して断ってはならぬ……」

 

「え?」

 

「祓い屋の掟だよ」

 

「断ったんじゃねぇ。

 

俺は、無理だと言ったんだ」

 

「そんなの、言い訳にしか過ぎない……

 

テメェのせいで、皆は……

 

 

 

 

!?」

 

 

男の胸を貫く剣……咆哮した大蛇は、口から炎を吹き幸人達を攻撃した。すぐに転がり避けた幸人と創一郞、敬は銃弾を大蛇目掛けて放った。

 

 

「秋羅!封印の準備!」

 

「分かった!」

 

「火那瑪も!!早く!」

 

「はい!」

 

 

秋羅達が動き出すと共に、水輝の傍にいた美麗は、彼女から離れた。そしてフードを脱ぎながら、氷の刃を大蛇目掛けて投げた。

 

1つの頭に当たった大蛇は、咆哮すると美麗を襲おうと向かってきた。

 

 

「ミーちゃん!!」

 

 

美麗はすぐに駆け出した。すると茂みから、リーチュに連れられ現れた紅蓮は、大蛇に向かって炎を吹いた。大蛇が怯んだ隙を狙い、美麗を自身の背中へ乗せると、距離を置いた。

 

 

「紅蓮!」

 

『この大型妖怪、どうする?』

 

「秋羅が結界張ってる。

 

奴を弱らせる!」

 

 

大蛇の攻撃を跳び避けた紅蓮の背から、美麗は飛び降り大蛇の背中に着地した。

 

 

彼女を振り払おうと、大蛇は頭を振り回し暴れ出した。

 

 

「美麗!!

 

秋羅!!火那瑪!!結界は?!」

 

「もう少しだ!」

 

「月影!火影!

 

奴の目を潰せ!敬、テメェもだ!!」

 

「テメェに命令されなくとも」

 

「準備できてるよ!

 

 

火術!鬼灯籠!!」

 

 

無数の火の玉を、大蛇目掛けて迦楼羅は放った。それに続いて、幸人達は大蛇達の目に銃弾を放った。弾は大蛇の目に当たり、彼等は苦しみの咆哮を上げながら暴れ出した。

 

 

「大人しくしろ!!」

 

 

大蛇の頭の上に乗っていた美麗は、暴れ回る大蛇の頭に小太刀を突き刺した。すぐに小太刀を抜き、次の頭へと移動し同じ行為を次々と美麗はしていった。

 

 

『小賢しい真似を!!』

 

 

どこからともなく聞こえる声……すると、大蛇の尾っぽが切れ、それは巨大な一体の蛇の形となった。蛇は鳴き声を放つと、地面へ着地した美麗目掛けて襲ってきた。

 

小太刀をしまいながら、彼女はすぐに茂みの中へ逃げていった。

 

 

「美麗!!」

 

「愁!彼女を頼む!!」

 

 

走り出すエルに跳び乗りながら、愁は逃げていった美麗の後を追い駆けた。

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