桜の奇跡 作:海苔弁
「ミーちゃん、ちょっと頬触るよ」
頬を触りながら、水輝はポケットからペンライトを取り出し頬を照らした。
(……鬱血してる……
相当強い力で、口を塞がれていたか……
こりゃあ、普通に我が儘になるわけだ)
頬を触り終えると、水輝はバックから湿布を取り出し美麗の両方の頬に貼った。
「はい、終わり。
さ、ミーちゃん部屋に戻ろう」
「……嫌だ……愁と一緒がいい」
「何で愁と一緒に居たいのかな?」
「……怖いから」
「何が怖いの?」
「……あいつ等」
「あいつ等?
ミーちゃん達を襲った妖怪?」
「うん……」
「どうして怖いの?
ミーちゃん、今まで何度か妖怪や人間に襲われて、捕まったりしたよね?」
「……あいつ等、妖怪だけど妖怪じゃない」
「妖怪だけど……妖怪じゃない?」
「藤閒……
曾祖父ちゃんと同じ力感じた」
「そっか……」
「だから、愁と一緒がいい」
自身の服を掴む美麗に、愁は着ていた上着を肩に掛けさせた。寝惚けていた美麗は掛けられた上着を握りながら、目を閉じ眠ってしまった。
「眠っちゃったか……
愁、ミーちゃんを」
眠った美麗を愁は、水輝に渡した。眠る彼女の前髪を、愁は撫でる様にして分けた。
「さ、部屋に戻ろう。
明日も早いんだし」
『うん』
翌朝……
準備をしながら、水輝は幸人達に昨晩の事を話していた。
「妖怪だけど妖怪じゃない……
本当に美麗の奴、そう言ったのか?」
「そうだよ。
それに昨日襲ったその3匹、ミーちゃんの曾お祖父さんの藤間と同じ力を感じたって」
「同じ力……」
「闇の力か?」
「可能性は高い」
「あのさ、何なの?その闇の力って」
「さぁな。
詳しくは分からねぇ」
「そもそも、詳細が書かれた書物や資料が無いから調べようがないのよねぇ」
「そうそう。私も調べようとするんだけど、全然何もないんだよねぇ」
「やっぱり?」
「そうなの!
闇の力について、調べようと頑張って資料かき集めるんだけど、全然見つからないのよ!」
「分かるわ~!」
話し合う大地と明依の姿に呆れながら、幸人達は溜息を吐いた。
全ての荷物を詰め終えた幸人達は、ネロ達の背に次々と乗った。
「ヤッター!竜に乗れるなんて最高!」
「はしゃぐな!
美麗、プラダをこっちに」
綱を付けたプラダを、美麗は宥めながら幸人に綱を渡した。
「明依ちゃん、どの子に乗ればいいの?」
「花琳の竜だ。
ランスはプラダに俺と乗って貰う」
「あら、水輝はどうするの?」
「1人でエルに乗って貰う」
「何か、いつの間にか勝手に決められていたんだけど……」
「ひょっとしてぬらちゃん、愁君にベッタリ?」
「まぁな。
今朝起きてからずっとだ」
「あら、可愛い!」
「美麗と愁、陽介とテメェの2人だけ、別ルートで行って貰う」
「……はい!?
聞いてないんだけど!?」
「さっき陽介と話して決めた」
「ちょっと幸君!!そういう話は、もっと早くしないと!」
後ろでギャーギャー騒ぐ大地を背に、幸人は陽介の傍へ行き小声で話した。
「俺達は地上から近い所を飛ぶ。
何かあったら、すぐに彩煙弾を打て」
「了解した。
そっちは任せたぞ」
「了解。
そっちも任せた」
陽介の肩を軽く手を置き幸人は、プラダの元へと行った。
空を飛ぶプラダ達……コミュニケーションを取るようにしてプラダとエルは鳴き声を発していた。
「今日はやけに騒がしいな、あいつ等」
「主の姿が見えないから、自分達はここにいると合図を送っているんだろう」
花琳の後ろに乗っていた明依は、空から見る地上を眺めながら大きく息を吸った。
「空の上は気持ちいいね~!」
「それはよかったわ」
「まさか、人生で空の散歩が出来るなんて!
やっぱ、繋がりは大事ね!」
(騒がしい女)
「ねぇ、日本の妖怪は今どういう状況なの?」
「どういう状況と言うと?」
「被害数って言うのかな。
こっちは、村は亡くならないけど……人が消えるからね」
「消える?」
「元々人だったのが、妖怪化するの」
「……」
「悲しいわよね。
目の前で、愛する人が家族が突然妖怪化して、更にその人達を襲うのよ」
「妖怪化ね……
日本では、妖怪化なんてしないわ。その場で皆、殺されるのよ。彼等の話だとね」
「それはそれで嫌ね……
本で読んだんだけど、この地は昔人が妖怪化したり人と一緒に暮らしていた妖怪が狂暴化する地で有名だったらしいよ。
だけど、三蔵一行が牛魔王を倒してくれたおかげで、それらは無くなりまた妖怪と人が楽しく暮らせるようになった……
はずだったんだけど、ここ数百年の間同じ様な事が起こり始めた。それだけじゃない……人の子供が1人、また1人といなくなる日々」
「それだったら、日本も同じよ。
妖怪を仕切っていた総大将が亡くなったせいで、あそこは酷い有様よ。
詳しいことは、幸人に聞いてみる事ね」
「幸人?
それって、あの月影の人?」
「そうよ」
別ルート……
ネロに乗っていた美麗は、フードを深く被った状態で愁に寄り掛かるようにして、胸の中で眠っていた。
「ぬらちゃん、ずっと寝てるわね~」
ネロの下を飛んでいたゴルドに乗る大地は、上を見上げながら言った。
「話だと、最初は寝ていたが明け方早く起きたらしく、そこからずっと起きていたらしい」
「あらま。
そういえば、前に読んだ本に書いてあったわね」
「?」
「ぬらりひょんと桜の守は、昔から縁があってね。
親友として終わる組もいれば、妻または旦那として迎えた組もあったらしいわよ」
「ぬらりひょんは、美麗の家系だけではないのか?」
「えぇ。
ぬらりひょんは、もっと沢山いたらしいわ。
日本のどこかに、彼等がいてもおかしくないのに……
何故か、その姿を見た者はいない。
目撃証言があるのは、ぬらちゃんの曾お祖父さんである藤閒から」
「……彼等に、何かあったと言うことか?」
「可能性は高いわね。
まだ調べ途中だけど、ぬらちゃん以外のぬらりひょんがいてもおかしくないわ」
「……」
その時、大人しく飛んでいた竜が何かを感知したのか、耳を立てながら辺りを見回した。
「あら?どうしたの?」
「……何かおかしい」
「へ?」
「上を飛んでいる竜の傍に行ってくれ」
陽介の指示に従い、ゴルドはネロの元へ飛んだ。竜から飛び降りネロの背中へ移った陽介は、傍にいた愁と美麗の顔を交互に伺った。
『陽介、どうかしたか?』
「嫌な気配を感じたが……(気のせいか?)
美麗の様子は」
『まだ、寝てる』
寝息を立てる美麗は愁の服を掴みながら、気持ち良く眠っていた。
「俺達は下にいるから、何かあったらすぐに呼べ」
『うん』
寄ってきた竜に飛び移り、陽介は定着へと戻っていった。
陽介が戻ってしばらくすると、眠っていた美麗は目を覚まし、あくびをしながら目を擦った。
『美麗、起きた?』
「うん……皆は?」
『下に陽介達がいる。
あと、別の場所に幸人達が』
「……紅蓮は?」
『後ろでまだ寝てるよ。
寝られた?』
「うん……
ねぇ、愁」
『?』
「愁は、死んだ人を蘇らせたいって思ったことある?」
『……俺には、そういう人がいたっていう記憶にないから、分からない』
「あいつ等、主を救いたいって言ってた」
『あいつ等?』
「昨日襲った奴等。
主を救うには、私の力が必要だって」
『……』
「私の力って、何なんだろう……
氷の技のことかな?それとも、精霊達から借りている力のこと?」
『どちらでもないと思うよ。
美麗の中にある、美麗だけの力を彼等は欲しているんだと思うよ』
「私だけの力……
じゃあ、あいつ等は何で私の力を」
『それは彼等に聞かないと分からないよ』