桜の奇跡 作:海苔弁
「ネロ!」
飛び起きた美麗は、ネロに抱き着いた。ネロは鳴き声を発しながら、彼女の頬を舐め顔を擦り寄せた。傍で寝ていたゴルドとプラダは鳴き声を上げながら、ネロの背中に乗り頬を舐めた。
美麗の騒ぎ声に、先に愁は起き彼女達の元へ駆け寄った。彼に続いて、幸人と陽介、秋羅、水輝と次々に起きた。
「愁、ネロが起きた!」
駆け寄ってきた愁にネロは顔を寄せ頬を舐め、彼は舐めてきたネロを撫でてやった。様子を見に来た幸人達にネロはチラッと見るがすぐに顔を背け、美麗の方に擦り寄った。
「相変わらず、俺等には興味ないって感じだな」
「花琳、こいつの容体どうだ?」
「昨日まであった傷、全部完治してるわ(一晩で何があったの?)」
「それじゃあ、目的地に行けるね」
「そうね。顔色も良さそうだし」
空を飛ぶ幸人達……ネロは幸人達が飛ぶ位置より高い所を飛んでいた。
「やはり、一緒に行動した方が安全だな」
「だね。
すぐに対応できるし」
「き、気持ち悪い……」
「ちょっと大地、吐かないでよこんな所で」
「吐かない吐かない……」
「陽介はもうピンピンしてるのに、お前だけ何でそんな治りが遅いんだよ」
「し、知らないわよ」
「……?
あれ、何かしら」
「?」
花琳が見る方向に、砂の渦が数個でき活動していた。
「砂の竜巻か?」
「そうみたいね……全員、一旦降りて!
岩の影に隠れるわよ!」
近くの岩場に降りた花琳達は、岩の影へと竜達を誘導した。誘導している最中、砂の竜巻はこちらへ近付き、それにより風が強くなっていった。
「こ、こんな強い砂嵐初めてー!!」
「喜んでんじゃないわよ!!」
「やっぱり変態だな、研究員」
「変態研究員がいるのは、うちの管轄だけだ」
「あぁ、言われてみれば」
「納得するんじゃないわよ!」
「納得するんじゃないよ!」
吹き荒れる風……砂を巻き込み、辺り一面の視界を奪った。砂嵐が強くなっていく中、美麗は薄らと目を開けた。
「……え?」
砂嵐の中にいたと思われる場所は、いつの間にか嵐が収まり静けさが広がっていた。
「何で……砂嵐は?
愁、砂嵐は?」
後ろにいたと思い、振り返ったがそこに愁達の姿はどこにも無かった。
「愁……秋羅……幸人!
陽介!水輝!
何で……さっきまで近くにいたのに」
『異空間に入ったからですよ?』
聞き覚えのある声……振り返った瞬間、美麗は意識が遠退いた。倒れる彼女を、いつの間にかいた沙悟浄が横に抱き上げた。
『フゥー、相変わらず八戒の幻術は優れてるな?』
『お褒めの言葉、どうも。
早かったでしょ?幻術を掛けて、彼等から引き離すのは』
『確かにそうだな。
砂嵐を起こせって言われた時は、何のことかと思ったが』
『これで、三蔵を蘇らせるのが早まるでしょう。
さぁ、悟空の所に戻りましょう』
『だな』
彼等が去った後、砂嵐は徐々に収まっていった……
目を開いた愁は、傍にいたはずの美麗がいなくなっていたことに、彼は岩陰から飛び出し彼女の名を呼び叫びながら探した。
『美麗!!美麗!!』
「どういう事?何で、美麗がいないの?」
「知るか。
秋羅、この辺り周辺をエルに乗って見てきてくれ」
「分かった」
「ぬらちゃんが消えたー!!どうしよう!!」
「総大将が消えたら、牛魔王復活しちゃうじゃない!!」
「何でそっちの方向にいくのよ!!」
「明依さんが言ってる事は一理あります。
彼女の妖力を牛魔王を復活させる為に利用されれば、すぐに復活しますよ!」
「かなりヤバいな、それ……」
「さっきの砂嵐、もしかしたら奴等の仕業かもしれないわね」
「可能性は高いな」
『幸人、美麗探してくる』
「愁、お前はここにいろ!
紅蓮、探せるか?」
『さっきから鼻を利かせてるが、全然においが無い』
「え?」
「彼等の方が上手だったって事かしら」
「花琳、どういう事だ?」
「3人の中に、幻術を使える子がいるみたいね。
特殊な幻術でね、狙った獲物を別空間に行かせてそこで捕まえるって方法が1つあるのよ」
「美麗は、それに掛かったって事か?」
「おそらくね」
『幸人、早く美麗を探しに!』
「分かってるから、落ち着け!
いや、探すよりも先に進んだ方が早い」
「!?」
「確かにそうだな……
奴等の目的地も、俺達が向かっている目的地も同じだ。
牛魔王の所へ行けば、美麗は必ずいる」
「そうと決まれば、花琳。
目的地まで、後どれくらい掛かる?」
「猛スピードで行けば、明日には着くわよ」
「それで行く」
「よ、酔いそう……」
「酔い止めなら、タップリあるよ」
「大ちゃん、頑張ろう!」
「お、応……」
テンションMAXの明依を余所に、テンション駄々下がりの大地は顔色を悪くしていた。
「アイツ、顔色悪いぞ」
「明依のテンションに、完全に押されてるわね」
「心の準備終わったら、とっとと竜に乗れ。
ゴルド達が早くしろと、俺の服を引っ張ってくる」
幸人の服の裾を、ゴルドとプラダは引っ張っていた。2匹だけでなく、愁の頭に止まっていたアゲハも、幸人を持ち上げようと服を引っ張っていた。
「信頼されてるのね、幸君」
「変なこと考えてると、テメェの脳みそぶち抜くぞ」
「そういう怖いことを言わないの!」
「秋羅が戻り次第、出発するぞ」
悟空……悟空……
やっと起きた。
『……三蔵?』
あなた、違えた道には歩んじゃ駄目だよ。ちゃんと八戒と悟浄を導いて、正しい道を行きなさい。
私はいつも、あなた達を見ていますから。
『……』
目を開ける悟空……目の前に、美麗が覗き込むようにして見ていた。
『……ワァッ!な、何だ!?』
『お?起きたか?』
起き上がった悟空は、寄ってきた八戒に抱き上げられた美麗を驚愕した表情で見つめた。
『ちょいと記憶封じてんだよ』
『記憶を?』
『こっちが仲間と認識させてるんです。
アジトに戻るまで眠らせるのは、流石に無理があるので』
『……時間を食ったな。
すぐに行こう』
『体はもう大丈夫ですか?』
『何とかな(俺と対等にやれる人間がいたとは……油断した)』
口笛を吹くと、空から黄色の曇と青い曇、更に赤い曇が飛び寄ってきた。
3つの曇に各々が乗ると、彼等はその曇を飛ばした。