桜の奇跡   作:海苔弁

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とある部屋……壁に下げられていた、美麗のバックからルイが飛び出た。ルイは毛繕いするように前足で頭の毛を撫で、頭を軽く振ると閉まっていたドアを器用に開け、場内の廊下を飛んで行った。


角を曲がった時、ルイは何かにぶつかり床に落ちた。ルイは顔を振ると飛び立ち、進もうとしたが目の前にいた八戒に止められた。


『君、どこに行こうと?』

『キー!!キー!!キー!!』

『コラコラ!暴れない。


……もしかして、総大将曾孫の所かな?』

『キー!』

『それじゃあ、ご案内しますよ。

君のこと、覚えてくれれば良いのですがね』


ルイを抱き、八戒は美麗が寝ている部屋へ向かった。

しばらく歩き、部屋へ着いた八戒はルイを降ろすと、ドアに掛かっている錠に気孔を当てた。すると錠は外れドアが開き、同時にルイは中へ飛び込んだ。


『ここは、僕以外は開けることは出来ません』

『キー?』


部屋の中へ入ったルイは、部屋に置かれたベッドに登り眠っている美麗の頭を撫でた。


『起こさないで下さいよ?

朝まで、寝かせて置かせたいんですから』


掛け布団から出ている彼女の手を、八戒は布団の中に入れた。


『こんな小さいのに、もう闇の力を持っているなんて……』

『キー?』


しばらく見つめていた八戒は、部屋を出ていき錠を閉めた。ルイは美麗の枕元に身を置くと、彼女に寄り添うようにして眠りに入った。


過去の記憶

夜中……

 

 

美麗は目を覚ました。起き上がった彼女は、一緒に起きたルイを抱きベッドから降りた。すると、床に着いた足から氷が出て足の周りを張った。

 

 

「何で……」

 

『キー』

 

「い、嫌だ……」

 

 

咄嗟に美麗は足を引っ込め、ベッドの上で膝を立てて座った。

 

 

「……ここどこ?

 

 

愁は?秋羅は?幸人は?

 

何で……何でいないの?

 

何で夜なの?

 

 

愁……秋羅……幸人」

 

 

不安になった美麗は、ベッドの下へ潜り込んだ。ベッドの上に置かれたルイは、心配そうに鳴き声を上げた。

 

 

(帰りたい……帰りたい)

 

 

その時、部屋のドアが開き外から猪八戒が入ってきた。

 

 

『……あれ?

 

何で、いないんだ?』

 

 

中へと入った猪八戒は、一部の床が凍った箇所を見付けると、ベッドの所へ行き下を見た。

 

 

次の瞬間、氷の刃が彼の頬を掠った。尻を着いた猪八戒の横を、ベッドの下から出た美麗は素早く通り過ぎ、開けっ放しになっていた戸から部屋を飛び出た。

 

 

『あ~あ……

 

やっぱり記憶の封印、解けちゃってましたか』

 

 

場内を走り回る美麗……ルイが誘導する部屋へ行き、中の壁に掛けられたバックを取ると、部屋を出た。

角を曲がった時、何かにぶつかり頭を振り顔を上げようとした途端、手で口を覆い掴み持ち上げられた。

 

 

『危ねぇ危ねぇ。危うく逃げられるところだったぜ』

 

『逃げようにも、こっからは抜け出せないがな』

 

『まぁ、そうだな』

 

『しかし妙だな?

 

八戒の術で、記憶は封じられていたはずだが』

 

 

『解けちゃったんですよ、その封印』

 

 

後からやって来た猪八戒は、傷が出来た頬を親指で撫でながら悟空と沙悟浄はの元へ歩み寄った。

 

 

『あれ、やっぱり時間制限あるのか?』

 

『当然ありますよ。

 

悟浄、目を瞑って彼女をそのまま上げといて下さい』

 

『あいよー』

 

 

覆う手を外そうと、もがく美麗の目を猪八戒は一心に見つめた。見つめる彼の目を見ないように、目を瞑ろうとするが瞼が閉じることが出来ず、その目を見た。沙悟浄の腕を掴んでいた手が、力無く落ちた。

 

 

『眠ったか?』

 

『催眠は成功です』

 

『キー!!キー!!』

 

『暴れるな!』

 

『そういや、こいつ何なんだ?』

 

『彼女のバックに潜んでたみたいなんです。

 

低級の妖怪ですし、彼女の傍にいさせた方が大人しいみたいなので』

 

『成る程ねぇ』

 

『無駄話は良いから、早くこいつの記憶封じろ』

 

『ハイハイ』

 

 

横に抱いた美麗の額に、八戒は気功で光らせた指で触れた。すると目を覚ました美麗は、何事も無かったかのように周りをキョロキョロと見た。

 

 

『はい、封印終わり』

 

『封印しちまうと、大人しいガキだな』

 

 

悟空から離れたルイは彼女の頭の上に飛び乗った。飛び乗ってきたルイを、美麗は嬉しそうに胸に抱いた。

 

 

『本当、大人しいな』

 

『小物妖怪を人形みてぇに、抱いてやがる』

 

『流石、総大将曾孫』

 

『部屋に連れて行くんで、彼女を』

 

『ハイよ』

 

 

沙悟浄から猪八戒に移された美麗は、降りようと足をばたつかせた。

 

 

『こ、コラ暴れない!』

 

『すっかり目ぇ冴えちまったてか?』

 

『屋上に連れて行って、夜風にでも当てるか』

 

『そうですね……

 

ハイハイ、今降ろしますから暴れないで下さい』

 

 

降ろした美麗だったが、足下から氷の刃が彼女を守るようにして生え伸びた。

 

 

『うわ!』

 

『氷?』

 

『彼女の部屋にも氷が張ってありましたが……

 

 

もしかしたら、妖力が暴走しているのかもしれませんね』

 

『さっきの実験でか?』

 

『はい』

 

『それで封印が解けたって事か?』

 

『その可能性は高いです』

 

 

生え伸びた氷を、猪八戒は砕きどこかへ行こうとした美麗を抱き上げた。

 

暴れようとした彼女を、猪八戒はすぐに催眠を掛け眠らせた。

 

 

『フー、小さな子供の面倒を見るのは大変ですね』

 

『こいつは格別だろう』

 

『八戒、あと頼んで良いか?』

 

『えぇ、良いですよ』

 

 

美麗を抱き直し、猪八戒は彼女の部屋へと戻っていった。

 

開けっ放しになっていた部屋へ入った猪八戒は、眠っている美麗をベッドに寝かせた。寝かされた美麗は、目を覚ましベッドから降りようと起き上がった。

 

 

『ベッドから降りない!

 

もう寝る時間だよ』

 

 

寝かせるが、目を瞑ろうとしない美麗に、猪八戒は軽く溜息を吐きながら部屋の戸を閉め、ベッドの横に座った。

 

 

『仕方ありませんね。

 

 

寝るまで、一緒にいますよ』

 

 

美麗は猪八戒の方を向きながら、横になった。横になった彼女に、掛け布団を掛け頭を撫でた。その行為を真似するかのようにして、ルイも頭を撫でた。

 

 

 

『猪八戒は、子供をあやすのが本当上手いよね』

 

 

ふと思い出す過去……旅先で寄った村の子供を、猪八戒が相手していると三蔵は笑みを浮かべながら言った。

 

 

(そういえば、微かに残る記憶の中に覚えのないものがありましたっけ……

 

 

もうずっと……ずーっと昔の記憶)

 

 

『ほら悟空、走ると転びますよ!』

 

『あの、君少しは止めるという事をしては?』

 

『先へ行きなさい……僕は後から行きます……』

 

 

大きくあくびをした美麗は、ルイを抱き目を瞑りしばらくして寝息を立てた。

 

 

(寝ましたか……)

 

 

立ち上がった猪八戒は、部屋の戸を閉め錠を掛けそこを去って行った。




暗く月明かりが照らす荒野……風を起こす勢いで、幸人達は竜達を飛ばしていた。


「ゆ、幸君!!早いわよ!少しスピードダウ」
「無理に決まってんだろ!!


止まれるなら、とっくに止まってる!!」

「愁!!ネロ!!

スピードを落としなさい!!私達の竜が、追い付かないわ!!」


先を飛ぶネロは、花琳に言われてもスピードを落とさず逆に更にスピードアップした。愁に留まっていたアゲハは、飛ばされまいと必死に留まっていた。


「愁!!ネロを止めなさい!!」

「花琳、止めときな!!

彼の耳に、今は誰の声も入らないよ!


美麗が見つかるまでは!!」

「プラダ、スピードを落とせぇー!!」

「秋羅君、すっかり竜に遊ばれてるよ……」

「ゴルド、ネロに合わせようとするな!!」

「あっちもあっちで、災難な事になってるな」

「本当、美麗の言う事しか聞かないんだから……あの3匹」

「イヤッホー!!

大ちゃん、風超気持ちいいよ!」

「明依ちゃん!ちゃんと座って!!」

「す、少し早過ぎませんか?!」

「さっきから僕チンが言っている言葉を、言わないでランス君!!」
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