桜の奇跡 作:海苔弁
暗い空が、段々と明るくなっていた。
飛ばす幸人達の目に、炎に包まれた城が目に入ってきた。
「何だ!?あの城!!」
「あれが牛魔王の住処だと言われている、城です!!」
「炎に包まれてるじゃねぇか!!」
「丸焦げになって、入らなきゃ行けないの!?」
「一旦竜を止めて!!
消す方法を……って、愁!!ネロ!!」
口に妖力玉を溜めたネロは、ゴルドとプラダと共に玉を放った。玉は炎を一瞬で消し去り、ネロ達は空いていたバルコニーに降り立った。
「消すなんて……」
「流石、伝説の竜とその子供達」
彼等に続いて、花琳達の竜とエルもバルコニーへ降り立った。梨白の竜から降りた大地は、ヨロヨロになりながら降り、地面に倒れ込んだ。
「し、死ぬかと思った……」
「もう一回乗りたいなぁ」
「明依ちゃん!!そういう怖いこと、言わないで!!」
「とりあえず、二手に分かれて探した方が良さそうね」
「だな……
幸人、秋羅と愁、水輝連れて美麗を頼む」
「分かった」
「他は牛魔王の復活を阻止するぞ」
「りょーかい!」
「陽君、出来れば僕チンもぬらちゃん捜索に」
「大ちゃん、行っくよー!」
「明依ちゃん!腕を引っ張らないで!!」
明依に引っ張られ、大地は彼女に言われるがまま中へ入って行った。愁はネロ達を撫でると、先に行った幸人達と共に中へと入った。
幸人達が着いた音に、悟空達は気付き別の所からバルコニーを見ていた。
『竜でやってくるとは……流石だな』
『足止めするか?』
『やっちゃって下さい』
あくびをしながら、如意真仙は紙を手にして悟空達に命令した。
『足止めと言うより、彼等を実験室に近付けさせないで下さい』
『……分かった』
『最終確認だが……本当に三蔵を蘇らせることが出来るんだよな?あのガキを使えば』
『もちろんですよ。
猪八戒、彼女を実験室に』
『……分かりました』
場内に響く騒動に、部屋で寝ていた美麗は目を覚ました。起き上がった彼女は、傍にいたルイを抱きベッドを降りた。その瞬間、床が凍り付き彼女の周りに氷の柱が立ち囲った。
丁度猪八戒が中へ入ってきた時、美麗は柱の隙間から彼の方を向いた。
『また氷……
藤閒の奥さんは、雪女か氷を使う妖怪だったんでしょか?』
氷を砕き、中にいる美麗を抱き上げた猪八戒は、部屋を出て行き実験室へ向かった。
場内の中を駆ける幸人達……美麗のにおいを辿り、紅蓮は閉められていたドアを炎で燃やした。だがそのドアは何かに覆われており、焦げた後がどこにも無かった。
「炎が効かない!?」
『効くわけねぇだろう?
それには、ちょいと仕掛けがあるんだからよ』
半月型の刃が棒の先に着いた降魔の宝杖を持った沙悟浄と、如意棒を持った悟空が姿を現した。
「テメェ等……」
『さっさと美麗を返せ!』
『残念ながら、総大将曾孫は今手元にはございませーん』
「どこにいる……言え!!」
『言う訳ねぇだろう』
『俺等だって、三蔵に会いたいんだよ』
「何だテメェ等?三蔵が蘇るとでも、思ってんのか?」
『どういう事だ……』
「死者は蘇ったりしない」
『……』
「どんな手を使っても、死んだ人が蘇る」
『黙れ!!』
如意棒で地面を叩く、悟空……顔を上げた彼は、怒りに満ちた目突きで、彼等を睨んだ
『それ以上デタラメを言うなら、たたじゃおかねぇ』
「……やり合うしかねぇみてぇだな。
水輝、この中に美麗がいるのは確実だ。秋羅達と一緒に探しに行け」
「分かったけど……1人で平気?」
「平気だ……いざとなれば、あれを使う」
「……頼むから、無理はしないでね」
「ヘイヘイ。
秋羅、水輝と愁達を連れて探しに行け」
「けど」
「良いからとっとと行け!」
怒鳴られ、秋羅は水輝達を連れて先を急いだ。銃に弾を補充した幸人は、2匹目掛けて銃弾を放った。素早く避けた悟空は、先に行った秋羅達を追い駆けていった。
「幸人!!
水輝さん、先に行ってて下さい!」
「あ、秋羅君!?」
槍を抜いた秋羅は、襲い掛かってきた悟空に対抗した。
「……愁、行くよ!」
戦う秋羅を気にしながらも、水輝達は先を急いだ。
実験室……
台の上に座る、美麗の足に枷を着ける猪八戒。彼女は不安そうにしながら、着けられた枷を触った。
すると寄ってきた如意真仙は、美麗が抱いていたルイを奪い取り、檻の中へ入れた。
『如意真仙、子供相手に乱暴過ぎます!!』
『邪魔なんですよ、小猿。
猪八戒、君が掛けてる封印解いて下さい』
『え?
そんな事したら、大暴れしますよ?』
『手の枷を着けたらっすよ。
彼女、幼いくせして相当な闇を持っているんですよ。
封印した状態だと、完全ではないので』
『……』
自身の腕にしがみつく美麗を台の上に寝かせ、彼女の手に八戒は枷を着けた。そして、頭と腰をベルトで動きを封じた。気孔を纏った指で、八戒は美麗の額に触れた。
「……な、何ここ……
何で……」
『お!一気に闇の力の数値が上がりましたね』
「嫌だ……外して!!これ!!
外して!!」
『さてと、復活の儀式といきますか。
猪八戒、そこから離れて下さい』
美麗の言葉を無視して、如意真仙は機械のスイッチを入れた。体に電気が流れ、美麗は苦痛な叫び声を上げながら暴れ出した。
『キー!!キー!!キー!!』
檻に入れられたルイは、扉を開けようと必死にドアを弄ったり檻の中を駆け回った。
『凄い闇の量……これなら、兄君の復活もすぐっす』
『……本当に、彼女の力で三蔵は生き返るんですか?』
『さぁ、どうでしょうね』
『さぁって……』
“バン”
突然開く扉……外から陽介が中へ入ってきた。
「これは一体……」
「ぬらちゃん!!
ちょっとアンタ、早く機械を止めなさい!!こんな事したら、命が」
『別に良いっすよ。
子供1人の命なんて』
「……」
『……ご苦労様ッス。
君等3人、本当よく働いてくれたっすね』
『どういう事ですか……』
席から立った如意真仙は、体を少しずつ動かす牛魔王を見上げながら話した。
『兄君を蘇らせるには、闇の力を持った者が必要……
持った者は、倭国……つまり日本にいる妖怪の総大将ただ1人。
とある人から、日本に知り合いがいるからその人に頼んでみると言われ、実現したのが今』
『……まさか、僕等を使っていたのって』
『牛魔王……兄君復活のためっすよ』
『じゃあ、三蔵は……』
『三蔵?
あんなクソ坊主、蘇るわけ無いじゃないっすか』
高笑いする如意真仙……猪八戒は絶望し、その場に立ち尽くした。
『やっぱり、引き留めて正解でしたね。
君等を天界へ行かせるの、僕が妨害したんですよ。
君等、数百年の間だけ寝かせといて、良い時期を見て起こしたんすよ。よく働いてくれましたねぇ』
「……1つ聞きたいが、貴様が言うとある人とはどの奴だ」
『いるじゃないっすか……傍に』
「傍?」
“バーン”
放たれる銃弾……弾は、ランスの腕を貫いた。振り向いた先にいたのは、銃を持った明依だった。
「ランス!!」
「明依ちゃん、どうして!?」
「ごめんね、大ちゃん。
アタシ、もう駄目だったの……」
「駄目って……」
歩みながら、明依は苦しむ美麗をチラッと見るとすぐに振り返り、陽介達を見た。
「アタシね、妖怪化した弟を救いたかったの。
それで、あらゆる分野の書物を読み漁った……でも、良い方法が全然なかった。ヒントも手掛かりも何も……
そんな時、彼がアタシを救ってくれたの。
自分の研究に手を貸してくれるなら、弟を人に戻してあげるって……」
「明依ちゃん、それ本気で言っているの?」
「弟を助けたいの……
仁を……助けたいの!!」
「それで弟さんは喜ぶの!?
1人の命を犠牲にして、人に戻った仁は?!」
「もう嫌なのよ!!
大事な人が……大事な人が、妖怪化して自我を失って人を襲って、殺されていくのなんて……見たくないのよ」
一筋の涙を流す明依……大地はズカズカと彼女の元に歩み寄りそして……
“パァン”