桜の奇跡   作:海苔弁

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白い花弁

秋羅達の元へ急ぐ猪八戒……その時、牛魔王が再び雄叫びを上げた。

 

 

すると、部屋に無数の妖怪達が集まり、幸人達に攻撃していった。

 

 

「クソ!!敵が増えやがった!」

 

 

襲ってくる妖怪達を、花琳と梨白は向かい撃ち、幸人は銃弾を放ちながら秋羅達の元へ駆け寄った。猪八戒も気功術で、自身に襲ってくる妖怪達を攻撃していった。

 

 

 

その時、外から水輝と愁が駆け付けた。愁は弱っている美麗を見ると一目散に彼女の元へ駆け寄ろうとした。だが、目の前に2匹の妖怪が降り立ち彼の道を塞いだ。

 

 

「何これ!?どうなってんの?!」

 

「牛魔王が復活したんだよ!!」

 

「見りゃ分かるよ!!」

 

 

弓矢を手に、愁は襲い掛かってきた2匹の妖怪の体を貫いた。地面へ倒れる2匹を背に、彼は美麗の元へ駆け寄った。

 

 

『美麗!!』

 

 

猪八戒に守られながら、水輝は肩にルイを乗せて彼と共に美麗の元へ駆け寄った。猪八戒はすぐに、枷に気功を当て外させた。

 

 

『美麗!美麗!』

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…

 

し、愁?」

 

『美麗……』

 

「愁!」

 

 

フラフラで起き上がろうとした美麗を、愁は抱き寄せた。遅れて駆け付けた幸人は、美麗が無事だという事を確認すると、台に繋がれている既に外された枷を銃弾で撃ち壊した。

 

 

「秋羅、水輝達連れて先にこっから離れろ」

 

「幸人達はどうするんだよ!?」

 

「あとから行く。

 

ただでさえ美麗が危険な状態だ、とっとと行け」

 

 

愁に抱かれた美麗は、疲れ切った表情を浮かべて浅く息をしていた。

 

 

『逃しはしないと言ったはずっすよ!』

 

 

姿を変えた如意真仙は、どこからか出した如意鉤を手にして秋羅達に攻撃してきた。

 

彼の攻撃を、牛魔王と戦っていた沙悟浄が駆け付け降魔の宝杖で防いだ。

 

 

『悟浄!』

 

『悟空からの伝言だ!

 

ここにいる人間、全員逃せとさ』

 

『だから!逃さないって、言ってるじゃないっすか!』

 

 

沙悟浄から離れた如意真仙は、白衣のポケットに手を入れ何かのスイッチを入れた。次の瞬間、壁の一部が開きそこから矢が飛び愁の太股を刺さった。

 

 

『痛!!』

 

「愁!!」

 

 

膝から崩れる愁に抱えられていた美麗は、地面に座り込みながら彼に寄り添い名前を呼び叫んだ。

 

 

『まだ隠し球があったのかよ!!』

 

『念には念をッス。

 

君等が裏切るなんて、想定済み……』

 

 

ただならぬ気配を感じた如意真仙は、咄嗟に振り返りながら避けた。頬に傷を負い、そこから出る血を手で抑えながら目の前にいる者を見て驚いた。

 

紫掛かった黒い髪を下ろし、前髪から見える鋭く光る黄色い目をした者が、持っていたナイフに付いた血を軽く舐めて立っていた。

 

 

「避けるなんて、流石妖怪」

 

(な、何すか……この、居たたまれない恐怖は……

 

本能で分かる……こいつとやり合ったら確実に死ぬって!!)

 

「陽介、退路を開くからとっととそいつ等誘導しろ」

 

 

襲い掛かってくる妖怪を、ナイフ一本で次々と倒しながらその者は言った。彼に続いて、幸人と陽介は自身の背後から襲ってくる妖怪に、銃弾を放ち倒した。

 

 

「花琳!!退路を開く!!

 

お前等2人先に行って、竜達を連れて来い!!」

 

「分かったわ!梨白」

 

 

棍を妖怪に突き刺した梨白は、すぐに花琳と共に実験室を出て行き竜達の元へと急いだ。

 

 

動けなくなっている愁を襲おうと、次々と妖怪達がか彼目掛けて飛んできた。飛んでく彼等を、秋羅と沙悟浄、猪八戒はすぐに対応し倒していった。

 

 

「クソ!キリがねぇ!!」

 

 

戦闘中、水輝は愁の傷の手当てをずっとしており、その傍ら美麗は2人を交互に見ていた。

 

 

「水輝、愁死なないよね?」

 

「大丈夫大丈夫、死なないよ。

 

(とは言え、ここで出来るのは応急手当と痛みを緩和させるための鎮痛剤しかない……)」

 

 

その時、彼等の元に悟空が牛魔王に吹っ飛ばされてきた。2人はハッと牛魔王の方を見ると、彼は武器を振り回し悟空達目掛けて突いてきた。

 

 

“パリーン”

 

 

飛び散る割れた氷の破片……何かが落ちる音と共に、愁の傍にいた美麗が立ち上がった。その時、彼女を覆うようにして白い花弁が舞い上がった。

 

 

「……み、ミーちゃん?」

 

「美麗?」

 

 

覆われた花弁から出て来たのは、容姿の変わった美麗だった。

20歳前後の容姿に、腰まで伸びた白髪を下ろした彼女は立っていた。美麗は手から無数の氷の刃を作ると、それを牛魔王に向かって放った。怯む牛魔王を見た悟空達は互いを見合うと、各々の筋斗雲に飛び乗り攻撃を開始した。

 

 

牛魔王と同じく怯む妖怪達に、秋羅達は反撃を開始した。彼等と同じく、美麗は攻撃の手を止めなかった。

 

水輝に支えられながら、愁は立ち上がり攻撃する美麗の手を止める様にして、彼女を自身の方へ向かせた。

 

 

『美麗、もういいよ』

 

 

そう言いながら、愁は美麗の額に自身の額を当てた。

すると、額にある模様が光り彼女を包み込んだ。光が消えると、美麗は元の姿に戻り地面に膝を付き倒れた。

 

愁を座らせた水輝は、彼女の元へ寄り抱いた。薄らと目を開けた美麗は、辺りを見た。

 

 

「……愁は……」

 

「すぐ傍にいるよ、ミーちゃん」

 

「……」

 

 

顔だけを動かした美麗は、力を振り絞りながら愁に向かって手を伸ばした。愁は伸ばしてきた彼女の手を握り、微笑を浮かべた。薄く笑った美麗は、手を下ろし眠りに付いた。

 

 

『美麗!』

 

「大丈夫だよ、愁。眠っただけだ」

 

『……』

 

 

傍へ寄ってきた紅蓮は、彼女の頬を鼻で軽く突くと頬摺りした。その様子を見て、水輝はホッと溜息を吐き美麗を撫でた。


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