桜の奇跡   作:海苔弁

224 / 228
眠っていた竜達は、スッと目を開けると頭を起こし天井を見上げた。

同時に水を飲んでいたエルは、顔を上げると美麗の元へ駆け寄り傍に座った。


(大人しくしてたと思ったら、またこの子の傍に……

変なの侵入したか?


まさかな)

「梗介、続き!」

「あ、はい!」


役割

「次の本題に入る。

 

所長」

 

「えぇ……

 

 

既に耳に入っている者もいると思うが……

 

先日、絶滅したとされていた妖怪・桜の守の生存が確認されました」

 

「桜の守?」

 

「確か、花咲か爺さんみたいな妖怪だよな?」

 

「……陽介、こいつ等知能下がったか?」

 

「天海、テメェ」

 

 

他人を馬鹿にするような表情を浮かべる幸人に、陽介は拳骨を食らわせた。

 

 

「口を慎め」

 

「痛……」

 

「失礼しました。続きを」

 

「分かったわ」

 

「桜の守と断定した根拠は?」

 

「特徴である漆黒の髪に、紅色の瞳を持っている。

 

そして、決定付けたのは闇に染まった妖を正気に戻した事だ」

 

「正気に戻したって……」

 

「メアの森に住んでいた鬼の仲間が、闇の力を手にして襲撃してきた。襲われる寸前、桜の守である愁がその力を消し去った……」

 

「愁って誰?」

 

「天海さんの隣にいる方ですか?」

 

 

そう言いながら向いた先には、キョロキョロと辺りを見回し落ち着かない愁を秋羅は落ち着かせようとしていた。

 

 

「綺麗な子ね」

 

「真っ黒な髪に真っ赤な目……西洋でいう悪魔ってやつか?」

 

「悪魔と彼を比べないでくれませんか?」

 

「おっと、これは失敬」

 

「何か、落ち着きがないようですけど……」

 

「ぬらりひょんのガキがいなくて、不安がってんだよ」

 

「お子さん、今は?」

 

「自分の部下である、雨宮梗介伍長が面倒を見ている」

 

「あら、来ているの?」

 

「お目にかかりたかったわ」

 

「どんなガキか、見ておきたかったのに。

 

連れてこられねぇのか?」

 

「ジッとしてられねぇんだよ。

 

それに、ここに来た途端泣くぞ」

 

「そうなれば、会議にならなくなる。

 

以前の会議でも、怯えすぎたあまり力を発動し危うく怪我人が出るところだった」

 

「総大将の子供にしては、案外臆病者なのね」

 

「話途中悪いが、会議を続けるぞ。

 

 

霧岬」

 

「えぇ。

 

桜の守に関しては、引き続き月影の元に置く」

 

「了解した」

 

「最後の本題に入る。

 

夜山美麗の事だ」

 

「……」

 

 

その言葉を聞いた途端、幸人を含む祓い屋達の目の色が変わった。

 

 

「先程話した痣の事もあるため、本部での保護を求める」

 

「それに関しては、保護はよろしくない……

 

引き続き、月影の元に置いておくのがベストかと」

 

「何故?」

 

「以前からのデータを見る限り、夜山美麗の力が暴走した時、止められるのは月影だけかと思われますが?」

 

「前の会議で、そこにいらっしゃる監察官が仰っていたと思いますが……

 

保護するなら、彼女が心から許している者を2人以上用意する必要があると……ですよね?監察官」

 

「いかにも」

 

「言い分は分かるが、もし下手に痣が発動し妖怪を呼び寄せてしまったらどうします?

 

今現在でも、低級の妖怪が月影の家に滞在しているという報告がある」

 

「悪さは一切してねぇ」

 

「獣妖怪を飼う家なら、悪さとかしてても分かんねぇんじゃねぇの?」

 

「あ?」

 

「そこ、私語を慎め!」

 

 

怒りで体を震えさせる幸人の肩に、陽介は手を置き小声で話した。

 

 

「抑えろ」

 

「お前いなかったから、多分八つ裂きにしてるところだ」

 

「幸人、何か今回怖い」

 

 

「所長、お話途中少しよろしいでしょうか?」

 

「何かしら?副所長」

 

 

眼鏡のブリッジを上げながら、大地は隣に座っている翔から資料を受け取った。

 

 

「西領域の任務後、李明衣の調査物をこちらで独自に詳しく調べました」

 

「いつの間に……」

 

「知っていたか?」

 

「全く」

 

「その調べ物の中に、気になる書物が見つかった。

 

室長」

 

「あ、はい!

 

その書物は、闇の力に関しての物でした」

 

「?!」

 

「書物があったのか?!」

 

「えぇ。その書物を解読するのに、数ヶ月掛かりましたけど……」

 

「書いていた内容は?」

 

「闇の力は、妖怪の世界では禁忌の力。

その力を手に入れたら最後、二度と元には戻らない。

破壊と殺戮を糧にして、この地を滅ぼす妖怪と化する。

 

ここまでが、自分達が知っている情報。

 

 

ここからが、俺達が調べて分かった事があります」

 

 

目の色を変え鋭い目つきで、大地は全員を見回した。彼の変化に幸人達はいち早く気付き、目を向けた、

 

 

「……

 

妖怪は、元々闇の力を持ってこの世に生まれる。

 

その闇の力は、本人達には抑えきれない。その為、その闇を吸収する者がいる。そしてその闇を吸収し、自身の中で抑えきれなくなった所で、闇を消す力を持った者がその闇を消す……」

 

「闇を消す力を持った者は、桜の守だと思うが……」

 

「闇を吸収する者は?」

 

「それが……

 

 

 

 

総大将の役割なんです」

 

「!?」

 

「この件について、夜山美麗の家系図を詳しく調べました。

 

 

初代総大将・伊吹藤間には、雅という男性の桜の守が傍にいました。

そして、2代目総大将・伊吹李桜莉には、妻である麗奈という女性の桜の守が傍に」

 

「美麗のお父さんには、誰が?」

 

「伊吹麗桜には、短期間だけ静葉という女性の桜の守が傍にいました。しかし彼女は、麗桜に会って数ヶ月後に死去。

 

その後は、彼女の孫である夜山晃が彼等の傍にいました」

 

「妖狐に聞いた通りだな」

 

「えぇ」

 

「だが、その晃も何者かにより殺害され死去。

 

残された美麗には、桜の守はいなかった……約103年もの間」

 

「……」

 

「その間、美麗は妖怪達の闇の力を吸収してたの?」

 

「恐らくしていない。

 

その結果が、今の妖怪達に影響しているかと」

 

「それじゃあ、今目撃されている黒いオーラをまとった妖怪達は、闇の力を制御できなくなった奴等って事?」

 

「そう捉えていいと思う」

 

 

 

 

『ホォー、人の世界には禁忌の力に犯された妖怪達で溢れかえっているのか』




報告書1


伊吹藤間
初代総大将。雪女である氷華を妻に迎え入れ一人息子・李桜莉と共に幸せな日々を過ごす。
数年後、氷華を人に殺されその復讐心から闇の力に手を染める。


初代総大将・藤間の傍にいた桜の守。

伊吹李桜莉
2代目総大将。妖狐や他の妖怪達に育てられ立派な大将となる。自身に仕えていた雅の娘・麗奈に惚れ妻に迎え入れ、一人息子の麗桜が生まれる。
数年後、自身の中で闇を抑えきれなくなりその力に手を染め2人の前から姿を消した。

麗奈
2代目総大将の傍にいた桜の守。長年李桜莉に仕えていたが、妻として迎えられた。

伊吹麗桜
3代目総大将。母・麗奈から溢れるばかりの愛情を受けて育った。美優を妻に迎え入れた数日後、麗奈は死去。
麗奈は死ぬ間際に、静葉の事を麗桜と美優に伝えた。2人は彼女の元へ行くが、彼女もまた病にかかり持って数ヶ月の命。静葉の死後、既に死去した彼女の娘夫婦の一人息子である晃を、義理の息子して引き取った。
数年後、愛娘・美麗が生まれるがその1年後、忽然と姿を消した。森に晃と共に入っていたが、森の中で彼のものと思われる血が散乱していたという晃の証言がある。

夜山晃
亡くなった静葉の孫。父が人間、母が桜の守という半妖として生まれる。ほったらかしにされて育ったせいか、親の愛や家族愛というものに飢えていた。その為、義理の妹に当たる美麗を溺愛していた。
経緯は未だに明かされていないが、何者かの手により銃殺され死去。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。