桜の奇跡   作:海苔弁

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目の前にいる者は、赤黒い長髪に白目の部分が黒く時間が経った血の色の目をしていた。

会議室に置かれた円卓の中心に、その者はつま先で立っていた。丈の長い黒と赤の羽織をなびかせて……


「な、何……こいつ」

「妖怪の気配はしたか?」

「し、してない……です」

(ど、どこから侵入した?!

出入り口であるドアには、見張りがいる……


どうやって)


『闇に溢れかえってはいるが……消す者は蘇ったようだな?』


一瞬姿が消えたかと思いきや、愁の目の前にその者は現れた。討伐隊の隊員達は一斉に銃口をその者に向け、祓い屋である幸人達は各々の武器を構えた。


『……まだ、生まれたばかりか?』

『……(美麗と同じ、妖気感じる。

でも違う……何だ、この禍々しい気は)』

『して、藤間の子孫はどこだ?』

「?!」

(藤間を知っている!?)

(何者だ……こいつ!!)


望まぬ後継者

廊下を歩く梗介……目に涙を溜め、鼻を啜る美麗の手を引きながら。

 

 

「ほら、もう少ししたら会議室着くんで泣き止んで下さいよ」

 

「……うん」

 

(1時間半もほったらかせてたら、限界来るよなぁ……

 

小さい子は特に)

 

 

会議室の前に着くと、見張っていた隊員が無線機で何かを言いながら、慌てふためいた。

 

 

「(……何だ?)

 

何かあったんですか?」

 

「中から物音が聞こえて、無線機で呼びかけているんだけど、誰も応答しないんだ!」

 

「……」

 

「こちら、会議室前!応答お願いします!」

 

「応答ないなら、開けて下さいよ!!」

 

「しかし」

 

「緊急事態だ!早く開けろ!」

 

「あ、はい!」

 

 

会議室の隣部屋である応接室に、梗介は美麗とアゲハを入れた。

 

 

「ちょっと、ここにいて下さい。

 

すぐ戻るんで!」

 

 

戸を閉めた時、頬に生暖かい液が当たった。飛んできた方向に目を向けると、そこには怪我を負った隊員が床に倒れ、破壊された戸の前にあの赤黒い長髪の者が立っていた。

 

 

(よ、妖怪?

 

何で……どうやって、この中に)

 

 

呆気に取られている梗介の前に、その者は立った。

 

 

(い、いつの間に……

 

ヤバい……震えが止まらない……

 

足が竦む……銃が出せない)

 

『藤間の子孫はどこだ?』

 

「……し、知らな…ガハッ!」

 

 

その者は梗介の首を手で掴み、ゆっくりと持ち上げた。握られる手を剥がそうと、手を掛けた梗介は息を吸おうと必死にもがき苦しんだ。

 

 

『知らぬなら、ここで死ね』

 

(い、息が……)

 

 

“バーン”

 

 

肩にかする銃弾……痛みから、その者は手を離し肩を抑え膝を着いた。床に尻を着いた梗介は、咳き込みながら駆け寄ってきた陽介の手を借りながら、その者から離れた。

 

 

「梗介、大丈夫か?!」

 

「な、何とか……ゲホ…

 

 

あれ、何なんですか?先輩」

 

「分からん。突如現れた妖怪だ」

 

「……」

 

「美麗は今は?」

 

「今、応接室に」

 

「何でそこにいる!?」

 

「す、すみません!!

 

泣き出してしまったもので、会議室に連れて来てそれで……」

 

「現在に至るという事か……

 

 

まだ場所はバレてない」

 

「幸人?」

 

 

後ろを振り返り、会議室から出て来た葵達に目線を送った。彼等は各々の武器を手にして、陽介達を含む討伐隊員の前に立った。

 

 

「陽介、こいつは俺等が相手する。

 

 

隊員の手当を優先的にしろ。今水輝達が手当に当たってる」

 

「今回は弟子達も参戦か?」

 

「あぁ。

 

こいつ、俺等9人だけじゃ無理だ」

 

「了解した。

 

 

死ぬなよ」

 

「そっちこそな」

 

 

幸人の肩を軽く叩くと、陽介は梗介と共にその場を離れた。

 

息を整えた幸人達は、一斉に札を取り出すと印を結び札から鎖を出し、その者の身柄を拘束した。

 

 

(な、何この力)

 

(強い)

 

(気を緩めれば、瞬殺される)

 

 

 

会議室に戻ってきた陽介は、怪我をした隊員の手当をする暗輝と翔の元へ駆け寄った。

 

 

「こいつ等の様態は?」

 

「怪我はしてるけど、命に別状は無い。

 

問題なのは」

 

 

腹部と首から血を流す元帥……首からの出血を、奏歌は止血しようと白衣を強く押し当てた。その間に水輝は腹部の傷口を縫っていた。同時に腕から大量の血を流す蘭丸を、大地は手当てをし止血をしていた。

 

 

「曾祖父ちゃん!!」

 

「(あっちは無理か……)

 

暗輝、少し付き合え」

 

「分かった。

 

翔、ここ頼む」

 

「あ、はい!」

 

 

会議室の奥にある書棚に行くと、陽介は一冊の本を取り出し何かを回した。すると書棚が動きドアのように開き、とある部屋に着いた。

 

そこは会議室の隣部屋である、応接室だった。部屋の隅に隠れていた美麗は、陽介を見ると一目散に駆け寄り抱き着いた。

 

 

「こんな所に、続いてたなんて」

 

「隠し通路だ。

 

以前、監視官に教えて貰ってな」

 

「流石、蘭丸さん」

 

「怖い妖気感じる……外で何かあったの?」

 

「少しな」

 

「愁は?

 

幸人は?秋羅は?」

 

「大丈夫だ」

 

 

美麗を抱き上げた時だった……破壊されたドアの破片と共に、応接室に置かれた家具が飛ばされてきた。飛ばされた家具の中には、傷だらけになった幸人と秋羅だった。

 

 

「幸人?秋羅?」

 

(……まずい!!)

 

 

危険を察知した陽介は、美麗を暗輝に渡すと彼等を会議室の方に押し入れ戸を閉めた。

 

銃を持った陽介は、無傷でそこに立っている敵に向けて銃弾を放った。

 

頬に当たった敵は、スッと陽介の方に振り向くと手から妖力玉を放った。当たる寸前に、起き上がった幸人は陽介を押し倒し、その攻撃をギリギリ避けた。

 

 

会議室に押し戻された暗輝は、応接室から聞こえる爆音に驚き呆気に取られていた。

 

 

「嘘だろ……」

 

「暗輝……さっきの」

 

 

その時、アゲハは何かを察知したのか怯える美麗から離れどこかへ飛び去って行った。

 

 

「アゲハ!待って!」

 

「美麗!!ここを動くな!」

 

 

飛んでいくアゲハを追い掛け、会議室から飛び出た美麗……応接室から出て来た敵は、彼女を見つけると床に黒い糸を巡らせ動きを封じた。

 

 

「な、何……

 

!?」

 

 

目の前に立つ敵……禍々しい空気に、美麗は目に涙を溜め恐怖から震えだした。

 

 

『藤間の子孫は、汝か?』

 

「……」

 

『汝は……

 

 

 

 

望まぬ後継者だ』

 

「……え?」

 

 

振り下ろされる刀……美麗は咄嗟に小太刀を抜き構えたが、小太刀は真っ二つに折れ避けた拍子に、床に尻を付き何とか攻撃をかわした。

 

 

(本気で美麗を殺そうとしてる!?)

 

「……て、天花の……小太刀が」

 

『刀では駄目か……

 

なら、これで楽になれ』

 

 

手に妖力玉を溜めた敵は、それを美麗目掛けて放った。

 

 

“ドーン”

 

 

「美麗!!」

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