桜の奇跡   作:海苔弁

49 / 228
森を駆ける秋羅……


茂みを抜けた先にいたのは、倒れた男に馬乗りになり銃口を向けていた。


「幸人!!止せ!!」


秋羅の声に、幸人は引き金を引こうとした手を止めた。


「お、俺平気だから……なぁ!

その銃、下ろして……」

「……」


振り向いた幸人は、秋羅を睨んだ。秋羅は怖じ気着けながらも、ゆっくりと歩み寄りそして幸人が握る銃を、自分の胸に当てた。


「下ろさねぇなら、今ここで俺の胸を撃て」

「……」

「どうした……撃てよ」

「……」


震える手で持っていた銃が、自然と離れた。顔を上げると、幸人は秋羅の頭に手を置き銃をしまった。


「撃つわけねぇだろう……バーカ」

「……馬鹿はどっちだ!」


軽く幸人の胸を殴りながら、秋羅は彼に凭り掛かり嬉し泣きをした。


もう一匹の敵

木にぶつかり、口から血を出す敬。逃げようとした彼の足を、暴走した紫苑は凍り付けにした。

 

そして動けなくなった彼に向かって、紫苑は氷の刃を顔スレスレに突き刺した。

 

 

「お前がさっき、私にやったことだ。

 

次は外さない」

 

 

突き刺そうとした瞬間、追い駆けてきていた保奈美が、彼女の手を掴み止めた。

 

 

「止めなさい……戻れなくなるわよ!」

 

「戻る?何に?」

 

「……」

 

「同じ事をして、何が悪いの?

 

何でこいつがやったことは許せて、私は駄目なの?」

 

「あなたも、同じ道を歩みたいの?その人と」

 

「……」

 

 

見つめ合う二人の隙を狙い、敬は銃口を向け弾を放った。弾は、紫苑の肩を貫通し保奈美の頬を掠った。肩を撃たれた彼女は、肩を抑えながらその場に座り込んだ。

 

次の瞬間、紫苑の脳裏にある映像が流れた。

 

 

とある草原……そこに生えていた桜の花弁が散り、それらと共に傍にいた者が、自分の前から消えた。

 

 

「(何……これ……

 

 

分からない……分からない!!お前は、誰なの?!)

 

 

アアァァァァアアア!!」

 

 

頭を抑え、苦しみ出した紫苑。激しい頭痛の中、彼女は撃ってきた敬目掛けて、小太刀を振り下ろした。

 

振り下ろした先にあったのは、男の腕だった。彼と共に茂みから秋羅達が姿を現し、動揺していた紫苑はすぐに我に戻ると、彼等から離れ睨んだ。突き刺さった小太刀を抜いた男は、それで敬の氷を砕いた。

 

 

「先生!」

 

「ヘマするな!」

 

「すいません!!」

 

「あれがあのガキか?」

 

「あぁ。

 

言っとくが、資料にも書いた通り敵味方関係無しに攻撃してくるからな」

 

「どっちにしろ、俺等はもうあいつの敵だろう?」

 

「まぁ、そうだな」

 

 

二人が話す間、秋羅は保奈美の元へ歩み寄り質問した。

 

 

「あの人、誰なんですか?

 

全然、分かんないんですけど」

 

「彼は私達と同じ、祓い屋の一人……

 

土影創一朗(ツキカゲソウイチロウ)」

 

「祓い屋……

 

 

あれが祓い屋ですか!?」

 

「そうよ。

 

やり方は荒く汚いけど、れっきとした祓い屋よ」

 

「……信じられねぇ(って事は、あの敬って奴があいつの弟子?

 

うわ~……)」

 

 

手に氷の刃作り出した紫苑は、地面を勢い良く蹴りそして、幸人達に襲い掛かった。二人はすぐに避けると、創一朗は紫苑を海へ蹴り飛ばした。宙を舞った紫苑は、海の一部を凍らせその上に立った。

 

 

「わお、凄え」

 

「感心してる場合か!!

 

テメェが蹴ったせいで、離れちまったじゃねぇか!」

 

「悪い悪い」

 

 

二人が言い争っていた時、突如海に立っていた紫苑目掛けて、海坊主が攻撃をしてきた。

 

紫苑が張った氷は、粉々に砕けた。

 

 

「紫苑!!」

 

「保奈美!こいつと一緒に、封印術を完成させろ!!」

 

「分かったわ!」

「ヘーイ」

 

「秋羅は二人の援護だ!」

 

「了解!」

 

 

飛んできたエルの背中に、幸人は乗り空へと上がると海坊主目掛けて、銃弾を放った、海坊主は悲鳴を上げながら、海の触手を伸ばしエルを攻撃していった。エルは、飛んでくる攻撃を難なく避けていき、そして封印術が行われている場所へ誘導した。

 

 

「今だ!!」

 

 

秋羅の合図に、二人は手を合わせお経を唱え始めた。お経に反応するかのようにして、陣は光り出しそこから光りの触手が伸び、海坊主を拘束するとそのまま引っ張り、壺の中へと封じた。

 

一段落着いた保奈美達の元へ、エルは寄り幸人は背中から飛び降り、彼等の元へ歩み寄った。

 

 

「やれやれ。とんだ任務だった」

 

「そりゃこっちの台詞だ」

 

「……?

 

エル!どこ行く!?」

 

 

高く飛んだエルは、そのまま海まで急降下し中へ潜った。しばらくして、紫苑を銜えて上がってきたエル。地面へ降りると、彼女を自身の前に寝かせ嘴で、突っ突き体を揺らした。

 

駆け寄ろうとした時だった……

 

奈々が見ていた傍で、紅蓮の体から青い炎が上がった……炎は人の姿となり、地面に落ちていたブレスレットを手に取り、横になっている紫苑の元へ歩み寄った。

 

 

「な、何だ……あれ」

 

「……」

 

「幸人、あれあの時の」

 

「あぁ……」

 

 

歩み寄ったそれは、横になる紫苑の前にしゃがみ、彼女の手にブレスレットを着けた。

 

するとブレスレットが光り、その光に反応するかのようにして、体に広がっていた模様が収まった。

 

それを見て、傍にいたそれは紫苑の頭を撫で、立ち上がるとエルの嘴を撫で、そしてそこから煙のように姿を消した。

 

 

 

「……」

 

 

目を覚ます紫苑……傍にいたエルは、嘴で彼女を突き擦り寄せた。寄ってきた嘴を、紫苑は撫でながら起き上がった。

 

 

「体は、大丈夫そうね」

 

「……海坊主は?」

 

「この通り、封印しましたよ」

 

 

創一朗と敬の姿を見た紫苑は、傍にいた幸人の後ろへ隠れ、二人を睨んだ。

 

 

「ありゃりゃ、嫌われちまったな」

 

「当たり前です。

 

普通に考えて、気を失わせるために腹に膝蹴り食らわせて、手を縛って口塞がれれば、その人を警戒しますよ」

 

「何で腹に膝蹴りを入れたことを、テメェが知ってんだよ」

 

「あなた、欲しい物を手に入れる時、いつも相手の腹に膝蹴りを入れてたじゃない」

 

「っ……」

 

 

その時、何かの気配を紫苑は感じ振り返った。

 

地へ降り立つ妖怪……その存在に、幸人達も気付きその妖怪を見た。

 

 

「何です?あの妖怪」

 

「……!

 

 

伏せて!!」

 

 

紫苑の声と同時に、妖怪は紫苑を攻撃した。すぐに避けた彼女は、地面に転がっていた小太刀を手に、襲ってきた妖怪に攻撃した。

 

 

「紫苑!!」

 

「何だ!?あの妖怪は!」

 

「知るか!

 

秋羅!保奈美と一緒に、紅蓮達の所に戻ってろ!!」

 

「わ、分かった!」

 

 

弾を追加した幸人は、銃を持って紫苑の後を追い彼に続いて創一朗も弾を追加しながら、ついて行った。

 

 

浅瀬に倒れた紫苑は、妖怪の攻撃を小太刀で受け止めた。

 

 

(つ、強い!)

 

 

その時、倒れていた地面が崩れ、紫苑は海の中へ沈んだ。慌てて海面に顔を出そうとしたが、妖怪が彼女の顔を押し出させないようにした。

 

 

(い、息が……)

 

 

全ての息を吐いた時だった……突然、妖怪が彼女から手を離した。そして、腕を掴まれ海面へ引きずり出された。

 

 

「ゲホ!ゲホッ!」

 

「フゥー……息はあるか」

 

「……!!」

 

 

掴まれていた創一朗の手に、紫苑は小太刀を突き刺そうとした。

 

 

「平気だ、紫苑」

 

「?」

 

「今は、俺がいる」

 

「……」

 

 

遠くから紫苑達を見る妖怪……不敵な笑みを浮かべると、スウッと姿を消した。

 

 

「何だったんだ?あの妖怪」

 

「紫苑の知り合いじゃ……ないよな?」

 

「あんなの、知らない」

 

「だよな。

 

さてと、一旦村に戻るか」

 

「そっちの村行って良いか?」

 

「別に構わないが、そっちの任務はいいのか?」

 

「報酬ケチって少ないから、こっちに移る」

 

「あっそ」

 

 

創一朗の手を振り払った紫苑は、幸人の元へ駆け寄り隠れ睨んだ。

 

 

「本当に嫌われたな、お前」

 

「ほっとけ」




人物紹介6


名前:土影創一郞(ツチカゲソウイチロウ)
年齢:34歳
容姿:焦げ茶色の天パ。普段カウボーイハットを被っている。目の色は黒。肩に火傷の痕がある。

名前:土影敬(ツチカゲケイ)
年齢:20歳
容姿:黄土色の髪に黄色の目をしている。基本チャラチャラしてる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。