桜の奇跡 作:海苔弁
叫び声に、秋羅と幸人は飛び起きた。部屋を飛び出し外へ出ると、町の広場に無数の妖怪達が群がっていた。
「何じゃこりゃ!?」
「とっとと片付けるぞ!」
幸人に襲ってきた妖怪を彼は、銃弾を放ち倒した。それに続いて、妖怪に襲われている人の所へ秋羅が駆け寄り槍で突き倒した。
「早く逃げろ!」
「は、はい!」
「そういや、紫苑と紅蓮は?!」
「知らん!」
寺院に入り込む数匹の妖怪……気配に気付いた巫女達は、すぐに妖怪を攻撃した。その内の一匹が、紫苑が眠る部屋へ入った。中へ入り、鼻を動かしながら妖怪は、眠る彼女に近付いた。
そして、口を大きく開け食らおうとした時だった。
「気配消せ」
『バレバレだ』
起きた紫苑は、大きく開けた口から小太刀で刺し、後ろにいた紅蓮は、背後から後頭部を鋭い爪で突き刺した。
妖怪は白目を剥き、そのまま倒れてしまった。口から引き抜いた小太刀を手に、紫苑は狼の姿になった紅蓮のと傍へ駆け寄った。
「凄い数の妖気……侵入してるの?」
『らしい』
写真を元の位置戻すと、紫苑は紅蓮と共に部屋を出て行った。寺院を出て行き、広場へ着くとそこでは秋羅と幸人が、妖怪達と戦っていた。
自身も戦いに参戦しようとした時だった。背後から肩を掴まれ、そのまま後ろへ紫苑は倒された。彼女を倒した者は、前へ出ると矢を放った。
「……」
「ハーイ!いっちょ上がり!」
キョトンと座っていた紫苑を、背後から寄ってきた男は持ち上げた。
「君、どっから来たの?」
「……」
持ち上げた男の顔面を、紫苑は回し蹴りを食らわせた。手が緩んだ隙を狙い、彼から飛び降りると傍にいた紅蓮の背に乗り、茂みの方へ逃げていった。
「あらあら、随分警戒心強いのね」
「鼻血出ました。
ティッシュ」
「はいよ」
数時間後……
一通り退治し終え、その場に腰を下ろす幸人と秋羅。彼等の元へ、紫苑達は駆け寄った。
「紫苑!?
どこにいたんだ?!紅蓮も」
「寺院の方に行ってた」
『俺は迎えに』
「そっちにも出たか?」
「うん」
「……?」
何かの気配を感じ取った幸人は、顔を上げ辺りを見た。
「幸人?どうかしたか?」
「……紫苑と一緒に、中に入ってろ」
「え?」
「早くしろ」
「あ、あぁ」
小屋へ行こうとした紫苑を連れ、秋羅は宿の中へ入った。紅蓮は人の姿になると、小屋の中へ入りエルを落ち着かせながら、幸人の方を見た。
しばらくすると、彼の前に先程の二人が現れた。
(……あいつ等、確か)
現れた内の一人は、右目に垂らしていた前髪を上げながら、幸人に話し掛けた。
「久し振りですね?幸人先輩」
「何でテメェがここにいる」
「あれ?聞いてないですか?
私、今こいつと一緒に旅してるんですよ」
「とっとと巣に帰れ」
「その内帰りますよ。
そういう先輩は?」
「用があってここにいるだけだ」
「フーン……!
先輩、見せて下さい」
「あ?何を?」
「半妖の子供!」
「……」
「興味あるんですよ。私!」
八重歯が見えるように微笑みながら、その者は言った。
「帰れ。
俺も帰る」
「そう言わずに……あ!
じゃあ、仕事手伝って下さい!」
「嫌なこった」
「そんな事言わずに~!
報酬の半分、あげますから!」
「断る。
早く帰って、風呂に入りてぇんだ」
「じゃあいいです!
先輩の弟子に頼みますから!」
「そんな勝手、許すわけねぇだろう!!」
「じゃあ引き受けてくれますかぁ?」
「……」
「という訳で、このクソ馬鹿ガキ達の依頼を引き受けた」
「変な名前付けないで下さい!!」
「どういう訳だよ!!」
宿の食堂にいた秋羅は、状況が読み込めずに幸人に疑問をふっかけた。彼の傍で、林檎を食べていた紫苑は、幸人の隣にいる者に軽く会釈し、目を逸らし手に持っていた林檎を囓った。
「……あ!!
お前、俺に蹴り入れたガキ!!」
「何だ?会ってのか?」
「……さっき、さらおうとしたから」
「誰がさらうか!!
親の所に連れて行こうと思っただけだ!」
「……」
「何でそんな警戒した目で見るんだよ」
「こないだ、腹に肘鉄食らって拘束されたばっかりなんで、俺等に近付く人間ただいま警戒中」
「正確には膝蹴り」
「膝蹴り……
創一郞先輩に会ったんですか?」
「仕事先でな(何でこうも、会議で会った奴等にまた会うんだ?
しかも、仕事先で……例外はいるが)」
「ところで、その女性誰?」
「こいつは」
「初めまして!
私、木影翠(コカゲミドリ)。幸人の後輩で祓い屋、よろしくね!」
「はぁ……」
「もう少し真面な自己紹介して下さいよ……」
「何よ~」
「(こんなのが、師匠って言うのが格好悪)。
俺は木影邦立(コカゲクニタツ)。この……女の……」
「……む、無理に言わなくていいよ」
「悪い……」
「何でそこ言わないの!?」
「そりゃあ嫌だろう。お前みたいなガキが、師匠なんて」
「ちょっと!そういう事言うの、本当に止めて!!
マジで気にしてんだから!」
「何だ?身長をか?」
「うるさい!!黙れ!!」
顔を真っ赤にしながら、翠はポカポカと幸人を叩いた。
「群れの退治?」
席に座り、朝食を食べながら翠は依頼内容を、幸人達に話した。だが、食べながら喋るため上手く聞き取れず、彼女に呆れた邦立が、代わりに話をした。
「この辺りの森に、棲み着いてしまったみたいで……
その妖怪の退治を、ここの人から依頼されたんです」
「巫女がいるのに、何でまた」
「妖力が強く、とても適わないと言っていました。
本当かどうかは、定かではありませんけど」
「要するに、仕事放棄って事か?」
「でしょうね。
調べたけど、ここ数年巫女達の力が弱まってるわ」
「ったく、ろくな修業してねぇな。あの巫女共」
「そんで、いつ住処に行く?」
「検討着いてんのか?」
「当たり前でしょ。
この通り!」
食べ終えた食器を退かしながら、翠は森の地図を広げた。地図には、赤いペンで印が付けられていた。
「住処はここ!
夜にでも、襲撃を」
「やめた方がいいよ」
林檎を食べながら、紫苑はボソッと言った。
「え?何で?」
「今回襲ってきた妖怪、夜行性だと思う。
寺院襲ってきた妖怪の死体、目に遮光板が無かったから」
「し、死体って……
触ったの?」
「見ただけ」
「話が本当なら、今からでも行くぞ」
「え~!
さっき戦ったばっかりなのに~」
「なら、この話は無かったことに」
「しないでしないで!!
邦立、行くよ!」
「あ、はい!」
「お前等も行くぞ」
「ハーイ」
「ねぇ、先輩。
さっきから気になったんですけど、この女の子誰ですか?」
「テメェがさっき会いたいって言ってたガキだ」
「さっき言ってた……あ!!」
自分がさっき言ったことを思い出した翠は、先に行った紫苑の元へ駆け寄り質問詰めし始めた。鬱陶しくなった彼女の顔を見て、小屋にいた紅蓮は狼の姿になると、翠に吠えた。
「ギャア!何この犬!!」
「こいつの相棒、名は紅蓮」
「凄え……狼を相棒にするなんて」
「じゃあ、あの狼君が許さない限り」
「話すのは無理だな」
「そんな~……」