桜の奇跡   作:海苔弁

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数日汽車を乗り継ぎ、幸人達は目的の駅に着いた。


「クソ~……尻が痛い」

「お、俺も……」

「もう乗りたくない」

「だらしなさ過ぎにも、程があるぞ」


「先輩!」


自分達の元へ男が一人駆け寄ってきた。


「長旅お疲れ様です!

えっと……」

「数日前に話した、祓い屋の月影だ」

「あぁ!そうでしたか!


雨宮梗介(アマミヤキョウスケ)です!大佐の部下兼補佐をやらせて貰っています!」

「あ、あぁ……」

「俺、祓い屋見るの初めてなんです!

もっと厳つい方かと思ってましたが……」

「こいつを含む数名はこんな感じだ」

「え……」

「お前なぁ!」

「言われたくなければ、もっとキチンとしろ」


100年越しの再会

駅から数時間歩き、着いた先は広い庭付きの一軒家だった。

 

 

「無駄に広いな。庭」

 

「そして、綺麗」

 

「曾祖父ちゃん、ガーデニングが趣味なんです。

 

さ、どうぞ!」

 

 

門を開け、玄関の戸を開けると梗介は監察官を呼びながら中へ入った。

 

 

「……お前の部下って、まさか」

 

「監察官の曾孫だ」

 

「……

 

お疲れ」

 

「曾祖父ちゃん、何かいないみたいなんで、とりあえず中に入って下さい」

 

 

梗介に言われ、幸人達は中へ入った。

 

入る前、紫苑は庭から聞こえた音に気付き、庭に続く戸を開けると、庭の方へ行った。彼女の後を、紅蓮は黒大狼の姿になりエルと共について行った。

 

 

色とりどりの花々が咲き誇る中を、紫苑は見ながら歩いた。そして、一本の林檎の木に辿り着いた。

 

 

「……林檎の木だ」

 

 

立派に生えた林檎の木を、紫苑は見上げた。

 

 

その時、何かが地面に落ちる音が聞こえ、紫苑は音の方に振り向いた。

 

真っ白な長髪を耳下で結い、着流しに身を包んだ老人が持っていたであろう林檎が積まれた籠が、地面に転がり落ちていた。

 

 

「……まさか……

 

 

こんな……こんな事が……あるなんて」

 

 

目に涙を浮かべながら、老人はしわくちゃの両手を差し出した。ジッと見つめていた紫苑は、その手に招かれるようにして歩み寄り、彼に抱き着いた。老人は抱き着いてきた彼女を受け止め、しっかりと抱き締めた。

 

 

 

その頃、家の中にいた幸人は棚に飾られたいくつもの写真を見ていた。

 

若かりし頃の写真、家族写真、討伐隊へ入隊した頃の写真等が飾られていた。その中に、一人の女性と写った写真と子供が描いた絵があり、その前には花が添えられていた。

 

 

「……陽介」

 

「?」

 

「この写真に写ってる女って……」

 

 

指差す幸人の元へ、陽介は歩み寄り写真を見た。

 

 

「……あぁ。

 

 

曾祖母だ」

 

「やっぱり」

 

「この写真だと、多分入隊して間もない頃だろう」

 

「じゃあ、この絵は?」

 

「知らん」

 

「……似たようなの、お前持ってなかったか?」

 

「覚えていない。

 

曾祖母が亡くなった後、遺品は全て親戚に引き取って貰ったから。何があったかは」

 

 

「その絵、曾祖父ちゃんが討伐隊にいた頃、世話してた子供に描いて貰ったものらしいですよ」

 

 

茶を入れたカップをテーブルに置きながら、梗介は話した。

 

 

「世話してた子供?」

 

「えぇ。

 

確か、妖怪の総大将の子供だとか」

 

「……ぬらりひょんの子供か」

 

「本名は不明。

 

写真はないが年齢は当時12歳。しかし、それは見た目だけ。中身は3歳から5歳児と同じ精神。

 

この絵から見ると、当てはまるな。精神年齢と」

 

「お前、どこでその情報を取り入れたんだ?」

 

「企業秘密だ」

 

「……」

 

「……なぁ、幸人。

 

紫苑どこだ?」

 

「あ?

 

お前と一緒じゃ……」

 

 

秋羅の方を向くと、そこには彼一人しかいなかった。しばらく二人は無になり、そして事の重大さが分かると、紫苑の名を呼びながらテラスから、庭へ出て行った。

 

 

「どこ行った……あいつ」

 

 

 

「何じゃ?騒々しいぞ!」

 

 

声が聞こえ振り向くと、林檎が積まれた籠を持った男と林檎を食べながら、彼に肩車をして貰っている紫苑がいた。

 

 

(何だ……この光景は……)

 

「曾祖父ちゃん!庭にいたのかよ?!」

 

「丁度林檎が実っておったからな。

 

おぉ!陽介、幸人。よぉ来たな」

 

「ご無沙汰してます。監察官」

 

「堅くなるな。

 

儂は、主等の曾祖母には大変世話になったからな」

 

 

肩車していた紫苑を抱き降ろしながら、籠をテラスに置いていた机に置いた。

 

 

「幸人、この人が……」

 

「あぁ……

 

妖討伐隊前責任者及び監察官の、雨宮蘭丸さんだ」

 

「……色々凄い人」

 

「ほれ、そんなとこに立っとらんで中に入れ」

 

「あ、はい」

 

 

中に入る蘭丸に紫苑は、彼の服の裾を掴みついて行った。

 

 

「凄い懐き様だな」

 

「普段、どういう子なんです?」

 

「知らない奴には、まず懐かない。

 

それに、警戒心強いから自分に何かしようとした瞬間、攻撃されるぞ」

 

「それプラス、そこにいる黒狼とグリフォンから、攻撃を食らう」

 

「……

 

 

それに懐かれてる曾祖父ちゃんって……」

 

 

 

心地良く吹いた風が、庭に咲く草花を揺らした。丁度良い日差しが庭に差し込む中、紅蓮は林檎の木の下で昼寝をし、エルはテラス付近で頭を伏せ眠っていた。

 

 

「ところで幸人、お前の所で保護したこの半妖の名は?」

 

「紫苑って言います。

 

けど、前の主が付けた名で」

 

「付けた名?」

 

「何でも、紫苑には昔の記憶が無いみたいなんです」

 

「……そうか。

 

まぁ、あの様なことをされては、消えて当然かもしれんな」

 

「あの様なこと?」

 

「主等には話してあったじゃろ?

 

昔、討伐隊にいた頃子供の面倒を見ておったと」

 

「一応……」

 

「その子供と紫苑は、同一人物なんですか?」

 

「証拠となる写真は一枚も無いが、正真正銘この子(紫苑)はその時の子じゃ」

 

「え……」

 

「嘘……」

 

「ま、マジ?」

 

「マジじゃ。

 

 

100年振りだわ。この子に会うのは」

 

 

そう言うと、蘭丸は紫苑を自身の膝の上へ乗せた。

 

 

(紫苑が……)

 

(嫌がらない……)

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