桜の奇跡 作:海苔弁
中には、既に創一郞と敬、先に行っていた翠と邦立がいた。席にチャイナパオを着た男とチャイナ服を着た女、窓際にスーツ姿にスカーフを巻いた男とゴシック服を着た女がいた。
「遅いですよ、月影」
「来る前に色々あったんだよ」
「本当か?」
「寝坊とかじゃないんですか?」
「黙ってろ!」
「おー怖」
「翠、お前サイズのスーツあったんだな……」
「本当に怒りますよ!!」
「相変わらず、うるさいチビですね」
「マリウス先輩、チビとか言わないで貰えます?」
「これは失敬」
「あのですね!!」
「どうでもいいから、早く席に着きなさいよ」
「花琳先輩!!どうでもよくないです!!
もう、皆して私をいじめて!!酷い!!」
「文句言いながら、俺を盾にするの辞めて貰います?」
「騒いでないで、とっとと席に着け!
元帥が来るぞ!」
“ガチャ”
「?」
大扉が開く音に、皆目を向けた。入ってきたのは、白衣を着た大地と翔だった。二人の姿を見た途端、紫苑は蘭丸の後ろへ隠れた。
「おっ久し振り~!皆、勢揃いしたみたいだね!」
「……
陽介、俺翔の脳天ぶち抜くわ」
「それじゃあ、俺は大地の脳天ぶち抜くとしよう」
「待て待て待て!!
人を殺そうとしないで!!」
「先輩!!人殺しは最低です!!」
「竜を売ってる君に、言われたくないんだよ。
幸人、心臓は僕に撃たせて」
「あぁ」
「ぎゃー!!殺されるぅ!!」
「コラコラ!!やめなさい!!
今回の会議は、ぬらりひょんのクローンとぬらりひょんの妻と、幸君が見付けてくれた初代祓い屋の結果報告なんだから、僕チン達がいなきゃ話にならないでしょうが!!
早く銃をしまって!!」
「なら、今手に持っているその注射針をしまえ」
「さもなくば……
幸人、俺の合図で撃て」
「了解」
「ぎゃー!!しまう!しまう!!」
「てか、陽介先輩までやめて下さい!!」
「貴様の後始末を、一体誰が片付けていると思っているんだ?あ?」
「すみません……もう文句は言いませんので、その不敵な笑みはやめて下さい」
「やれやれ……
お前達は、静かにできないのか?」
その声に、陽介はすぐに反応し敬礼した。他の者達も顔に引き締め、その者に目を向けた。
片腕を無くし、左目に眼帯をした男がそこに立っていた。その姿に、秋羅の傍にいた奈々は、怯え彼の後ろに身を隠した。
(凄え迫力……)
(こ、怖い……)
「お疲れ様です。元帥」
「お、お疲れ様です!元帥さん!」
「大空大佐、これで全員か?」
「はい」
「そうか……
弟子達は、別室へ行きなさい。ここからは我々と祓い屋の話だ」
「別室って……
俺等も一応、祓い」
「敬、黙ってろ」
「っ……」
「雨宮一等兵」
「は、はい!」
「弟子の方々を、案内しなさい」
「は、はい!!」
ぎごちない動きをする梗介に、陽介は軽く背中を叩いた。叩かれた衝撃により、いつも通りになると、彼は秋羅達を連れて会議室を出て行った。
「そういえば……
幸人、例の子は?」
「あ?」
「例の半妖の子よ!
どこにいるの?」
「知らない奴等ばっかだから、怯えて隠れてる」
「えぇ~」
「ここにいるのか?」
「まぁ、一応」
「監察官、そこを退いて頂けますか?」
蘭丸の前に、元帥は仁王立ちした。彼は眉毛をぴくりとも動かさず、ただただそこに立っていた。二人が睨み合っている間に、蘭丸の後ろから出て来た紫苑は幸人の傍へ駆け寄った。
「……綺麗な子だ……」
「真っ白な髪……それに、真っ赤な目」
「顔色、良くなっているね」
「こないだ、こいつの知り合いに治して貰ったんだ」
「そう」
「ご年齢は?」
「15だ」
「あら。てっきり10歳くらいかと思ったわ」
「15にしては、チビだもんな」
「木影よりはデカいだろ」
「先輩、少し黙ってて貰います?」
「お披露目はこれでいいだろう」
幸人の傍にいる紫苑を、元帥はジッと見つめそして歩み寄った。彼女は彼の気配に怯え、幸人にしがみついた。
「これが半妖か……
資料通りの容姿だな。赤い目に長く真っ白な髪」
「……」
「あまり近付かない方が良いです。
まだ、人に慣れていないんで」
「そうそう。
一緒にいるグリフォンに、突っ突かれるぞ」
「それはテメェだけだ」
「っ」
「……」
「して、この子の血液は採取したのか?雲雀副所長」
「……いいえ。まだです」
「随分前に、会いに行ったのでは?」
「行きましたが、本人が拒否をしたため採取できませんでした(所長に伝えたはずだけど……)」
「なら、今すぐに採取しろ」
「……分かりました。
藤風室長、手伝って下さい」
「りょーかーい」
歩み寄ってくる二人に、紫苑は怯え差し伸べてきた翔の目の前に、氷の柱を出した。瞬時に彼は、手を引っ込め後ろへ下がった。
「び、ビックリしたぁ……」
「今はやめた方が良い」
後ろで腕を組み、元帥に歩み寄りながら蘭丸は言った。
「知らぬ者ばかり故に、緊迫とした空気……
いくら半妖でも、怯えて当然じゃ」
幸人の元へ歩み寄ってきた蘭丸に、紫苑は駆け寄り彼にしがみついた。
「どれ……会議が終わるまで、儂がこの子の面倒を見ておる」
「なら、案内人を一人」
「別に良い。
部隊を退いて40年は経つが、この建物は何一つ変わってはおらん。内装はしかりと頭に入っておる」
そう言って、蘭丸は紫苑を連れて会議室を出て行った。彼の態度に、元帥は不満な表情を浮かべ、陽介は帽子の鍔を掴みながら、軽く溜息を吐いた。
「全く、大したお方だ」
「あれで100歳超えなんだよなぁ」
「紫苑、大丈夫かしら?」
「平気だ。
相当、監察官のこと気に入っているみたいだからな」
「僕チンなんて、会って早々狼君に噛まれ掛けたよ」
「俺なんて、見付けた早々に氷の刃食らいましたから」
「お前等二人は、自業自得だ」
「っ」
「無駄話はそこまでにして、早く会議を始めましょう」
「だな」
花琳の言葉に、一同は各々の席へ着いた。
庭園へ着た紫苑と蘭丸……
草花と木々が生い茂る光景を見た紫苑は、蘭丸から離れどこか懐かしむようにして、中へ入って行った。
そんな彼女の様子に、蘭丸は微笑みながらゆっくりとついて行った。
草花を見ながら、中を歩いていた紫苑は、後ろにいる蘭丸に笑顔を見せながら、先へ先へと歩いた。
(昔と変わらんのぉ……)
ふと思い出す過去……
庭園へ着た蘭丸は、連れて来た紫苑と瓜二つの容姿をした美麗の、手と足の枷を外した。外された彼女は、籠に閉じ込められていた鳥が、飛び出したかのようにして庭をグリフォンや他の妖怪達と駆け回った。
(今はもう、縛る枷も鎖も無い……
本当に、自由になったんだのぉ)
目に涙を溜めた蘭丸に、紫苑は気付いたのか彼の元へ駆け寄り、顔を覗き込んだ。蘭丸は何も言わず、覗き込んできた紫苑を抱き締めた。そんな彼の行為に、紫苑は大人しくし彼女自身も、蘭丸に抱き着いた。