桜の奇跡   作:海苔弁

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夜明け……

ベッドで眠る美麗……傍では天狐と地狐が、狐の姿となり寄り沿って眠っていた。


外が少し明るくなり、暗かった部屋に日差しが差し込んだ。その時、差し込んだ陽射しに照らされた、人影が美麗が眠るベッドの前に姿を現した。


人影は、ソッと手を伸ばし美麗の頭を撫でた。微笑みを浮かべると、人影はスッと消えた。


『……?』


その気配に気付いたのか、天狐は目を覚まし辺りを見回した。


(……死んでも尚、傍にいるとは。


本当、お前は愛されているな……美麗)


半妖の少女

「あ~クソ~……

 

 

体痛ぇ……」

 

 

会議が始まった頃、先に起きた敬は痛む腰を手で抑えながら起き上がった。

 

 

「アンタ、年の割に爺くさいこと言うのね」

 

「寝起きの顔が、酷い状態だぞ」

 

「うっさい!!」

 

「朝から騒々しいですよ」

 

「お前……

 

眼鏡外すとかなりの美形だな」

 

「あんまり、顔のことに触れないで下さい」

 

 

次々と起きる弟子達……時雨は持っていた櫛で髪を梳かしながら、辺りを見回した。

 

 

「ねぇ、秋羅は?」

 

「知らねぇよ。

 

まだ寝てるんじゃねぇの?」

 

「彼のベッドは、もう物家の空ですけど」

 

「ありゃま」

 

「秋羅、昨日私達より遅かったのに……」

 

「それだけ、あのガキが心配なんだろう」

 

「……」

 

 

その頃秋羅は、園庭へ来ていた。そこでは、生えている木に登る美麗と、それを下から見る紅蓮、彼女の傍を飛ぶ二匹の竜が遊んでいた。

 

 

「部屋にいないから、もしやと思ったけど……

 

すっかり元気になったな」

 

『寝たからね。

 

体力は万端なんだよ。紅蓮も元気になってくれてよかったよ』

 

「……そういえば、天狐は?あと、エルも」

 

『姉君なら、今森に戻って妖魔石を準備しているところ。

 

エルはその付き合い』

 

「あれ?あの竜達って、確か……」

 

『いや、行こうとしたんだよ。

 

でもね、ゴルドとプラタが行こうとしなかったんだよ。二匹共、美麗から離れなくて』

 

「それで、エルを」

 

『そういう事……

 

 

蘭丸は?』

 

「……今、会議に出てる」

 

 

 

会議室……

 

 

各々の席に座る陽介達……立っていた奏歌は、資料を読み上げていた。

 

 

「以上、昨日起きた事件、そして半妖でありぬらりひょんの子供、伊吹美麗による情報です」

 

「あの少女が、ぬらりひょんの子供か……

 

随分と長生きするもんだな」

 

「半妖による寿命は、400年から500年それ以上と言われています」

 

「生きていても、おかしくはない」

 

「……だがなぜ、あの少女は小さいんだ?」

 

「恐らく、妖力を抑えているからだと」

 

「抑えている?」

 

「彼女の妖力を100%とします。

 

しかし、実際に使われている妖力は30%。月影からの報告書による、制御装置を外した際の妖力は50%。

 

 

これらを考えると、妖力を抑える要因で体の成長を止めているのかと思われます」

 

「……監察官、あなたが居た頃はどうでした?」

 

「昔も今も、変わらぬ」

 

「つまり、ここにいた頃と全く変わっていないと言うことか」

 

「それで、あの子をどうします?

 

このまま、この本部で保護という考えでよろしいかと私は思いますけど」

 

「羽鳥大将、その案は少しお待ち下さい」

 

「何だね?大空大佐」

 

「伊吹美麗は、このまま月影の元へ置いとくべきだと、俺は思います」

 

「何故だ」

 

「もし、妖力が暴走した際、あなた方は彼女を止められますか?」

 

「……」

 

「報告書に書いてある、彼女の暴走は全て月影の者……

 

月影幸人と愛弟子である月影秋羅の力により、止められています」

 

「暴走すれば、町一つや二つ軽く無くなります」

 

「……」

 

「美麗をここへ置くというのなら、それなりの覚悟は必要になりますぞ?」

 

「覚悟?」

 

「儂が面倒を見ていた頃の彼女は、年齢は12歳。

 

じゃが、精神年齢はまだまだ甘ったれの3歳児や4歳児、5歳児と同じ。

 

嫌なことがあれば、すぐに暴れ泣き喚く。夜は夜で儂の先輩や、今はもう亡き夜山晃を恋しがって、夜泣きはするわ場内を探すようにして徘徊するわでよく問題なった。

 

 

一番の問題は、自身の足で地下へ行き、かつてそこにいた妖怪達と遊んでおったことくらいなのぉ」

 

(流石、美麗)

 

「これら全てを、今の主等で対処できると言うのであれば、ここへ置いても構わぬ。

 

じゃが、置くとなれば彼女が心から許す者を一人か二人用意する必要がある」

 

「っ……」

 

 

 

園庭の戸を開ける時雨……少しだけ開けた戸の隙間から、彼女と一緒に着いてきた敬と奈々は覗き見た。

 

中では、地狐と一緒に草笛を吹く美麗が見えた。傍では、彼女の膝に頭を乗せるゴルドとプラタがおり、その傍で恨めしそうに、紅蓮がチラチラと見ながら伏せていた。

 

 

「……普通に満喫してるな?」

 

「だね」

 

 

「お前等、何コソコソ覗き見してんだ?」

 

 

ドア付近にいた秋羅は、ドアを勢い良く開け3人を入れた。

 

 

「いきなり開けるなよ!」

 

「コソコソ覗くからだろうが」

 

「だって、どう対応すれば良いか」

 

 

戸惑っている二人を見つつ、奈々は彼女達の元へ駆け寄り草を一つ抜くと、見様見真似で吹いた。音が鳴らないのに向きになり、奈々は思いっ切り息を吹いた。

 

 

「強く吹くと、鳴らないよ?」

 

「え?」

 

「こうやって吹くんだよ」

 

 

優しく鳴る音色を聞きながら、奈々は少し弱く息を吹いた。すると、微かに音が鳴りそれに合わせて吹くと、草の音色が鳴り響いた。

 

 

「鳴った!」

 

 

喜んだ表情を浮かべながら、奈々は美麗を見た。笑いを浮かべながら、二人は草笛を吹いた。

 

 

「普通に接してるよ……あのガキ」

 

「普通に接しれば良いんだよ。

 

何も警戒しなくても、アイツはアイツだ」

 

「……」

 

 

美麗の傍にいた紅蓮は、大きくあくびをし体を伸ばした。そして甘え声を出しながら、紅蓮は顔を彼女の頬に擦り寄せた。

 

 

『ゴルド、プラタ。

 

交代。紅蓮の番だよ』

 

 

そう言って、地狐は二匹の鼻先を撫でた。二匹は美麗の頬を舐めると、彼女から離れ地狐の傍へ行った。空いた膝に、紅蓮は頭を置き擦り寄せた。そんな紅蓮の頭を美麗は撫でながら、歩み寄ってきた秋羅の方を向いた。

 

 

「ねぇ、会議まだ終わらないの?」

 

「まだだ」

 

「帰るの、まだ先?」

 

「幸人が起きるまでだ」

 

「ママ達、まだ起きないよ」

 

「それだけ霊力使ったって事だ」

 

「まぁ、幸人の場合今日か明日には目が覚めると思うぞ」

 

「え?何で?」

 

「大怪我負って、全治一週間掛かる怪我を、3日で治す男だぞ。

 

それだけなら未だしも、出血量からして絶対3日は寝てなきゃいけないのに、アイツは2日で平気な顔をして起きてるんだ」

 

「わぁ……あり得そう」

 

「お前の師匠、本当に人間か?」

 

「さぁ」

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