桜の奇跡 作:海苔弁
暗輝と水輝が、部屋へ戻ってきたのは。
「「だぁ~~~
つ、疲れだぁ~~」」
ヘナヘナと、二人は床に倒れた。
「お、お疲れ様です……」
「会議、終わったんですか?」
「お、終わったぁ……」
「長ぇんだよ、決める如きで」
「蘭丸は?」
「あ?あぁ……
もう、来るよ」
「あ~肩こった~」
そう言って、肩を揉みながら戸を開ける大地と肩を回す翔、目薬を差す奏歌が入ってきた。
「全く、話が通じない爺の相手すんの、本当疲れる」
「同感~」
愚痴を言う二人を見ながら、美麗は秋羅の後ろへ隠れた。
その時、開いていたドアを叩きある者が入ってきた。その者は、羽鳥だった。彼の後ろには陽介と蘭丸が立っていた。
「会議の話をする。
弟子達は、会議室へ来るように」
「え?」
それだけを言うと、羽鳥は部屋を後にした。彼がいなくなると、秋羅の後ろに隠れていた美麗は出て行き、蘭丸の傍へ駆け寄った。
「あ、あの……何、話されるんですか?」
「会議の結果、ここじゃ何だしね」
「主等が話をしている間、儂が美麗を見ておるから行ってきなさい」
「あ、はい」
嬉しそうに蘭丸の手を掴んだ美麗は、その手を振りながら楽しそうに何かを話していた。
その様子に微笑みを浮かべながら、秋羅は時雨達と共に会議室へ行った。
『おや?
もう良いのかい?』
園庭へ来た美麗と蘭丸に、地狐は振り返った。中へ入った美麗は、紅蓮の元へ駆け寄った。彼女に導かれるようにして、地狐の傍にいた二匹の竜も寄っていった。
「会議の結果を、秋羅達に話しておるんだ。
その間の子守を、儂が引き受けただけじゃ」
『結果?それって……』
「大丈夫じゃ。
主が望んでいるとおりの結果じゃ」
「え?引き続きって……」
会議室で言った羽鳥の言葉を、秋羅は繰り返し言って彼を見つめた。
「……大佐、後は頼む」
「了解」
無線を手に、羽鳥は会議室を出て行った。彼を見送ると、陽介は振り向き続きを話した
「会議の結果、夜山美麗は引き続き月影の元に置くことになった」
「やったじゃねぇか!秋羅!」
「勘違いするな。
あくまで、彼女は月影の元へ置くだけだ。我々研究員の実験には、応じて貰う」
「それじゃあ、毎回行くの?ここに」
「そんな面倒なことはさせん。
研究員を2名、送ることにした」
「え?それって……」
「心配するな。この変人二人じゃない」
「じゃあ、誰?」
「元研究員である、星野暗輝と星野水輝だ」
「随分と、良い方向にいきましたね?」
「雨宮監察官が、話を付けてくれたんだ」
「ほぼ脅しだったけどね」
「慣れている奴なら、美麗も多少は協力してくれるだろうって」
「何か、あの監察官凄い人だな……」
「一応、元討伐隊の元帥であり、100年前夜山美麗の面倒を見ていた一人だからな」
「一人って……もう一人いたんですか?」
「まぁな……」
「そのもう一人って、今は?」
「当に亡くなっている。
ま、その一人は俺の曾祖母何だかな」
「そういえば、言ってたね。
施設来た頃、『俺等は、ずっと祖母様と一緒に暮らしてた』って」
「と言っても、あまり記憶は無い。
何せ、5歳の時だったからな。亡くなったのは……
話は以上だ。悪いが仕事に戻らせて貰う」
そう言って、陽介は会議室を出て行った。
「全く、ああいう一途な所は兄弟ソックリね」
「兄弟?陽介さん、兄弟いるんですか?」
「あれ?聞いてない?
大佐と幸人は兄弟だって」
「……はい?!」
「マジ!?」
「嘘!?」
「ちょっと大地、その話本当なの!?」
「本当よ。
話してるもんだと思ってたけど……
15年前、実験する前に軽い健康診断をしたの。
その時、採取した血液検査で彼のY染色体と幸人のY染色体が一致したの」
「それって……」
「Y染色体は、本人の父親からしか受け継がない……
つまり、父親は同じ人。だけど母親は別」
「腹違いの兄弟……」
「それ、二人は知ってるんですか?」
「さぁ……」
「多分、知っているだろう……と言うより、聞かされているだろう」
「聞かされてるって……!」
「曾祖母……」
「そう……恐らく、話は聞いている。
けど、あの距離が一番落ち着くんだろうね」
幸人が眠るベッドの前に立つ陽介……
『兄弟?』
曾祖母の手に繋がれてやって来た、幼い幸人……彼を前に、陽介は曾祖母の顔を見た。
『今日から、あなたの弟よ』
『……同い年に見えるが』
『……お前が午前2時で、俺が午前3時に産まれたんだ。
だから……その……』
『あらあら、やっと喋ってくれたわね』
『……』
曾祖母はしゃがむと、幸人と陽介を抱き寄せ頭を撫でた。
『どんなことがあっても、私はお前達を手放したり引き離したりはしないからな』
優しくほんのりと温かみを感じる二人は、曾祖母の胸に顔を埋め抱き着いた。
その数年後、曾祖母は亡くなり遺品は親族が整理し、引き取り手がないまま、二人は施設へとやって来た。
施設へとやって来たその日の夜……急に曾祖母が恋しくなった陽介は、部屋を出て外へ出た。
だが、そこには既に先客がいた……涙を拭く幸人だった。
『……男が、泣きべそか?』
『そういうテメェもだろう』
『……』
隣へ座った陽介は、ふと空を見上げた。空一面に輝く満点の星達……
『凄え……』
『クソ男が、酒で酔い潰れた日とか、よくこうやって星空眺めてたっけ』
『クソ男?』
『お袋の恋人。
お前の親父と恋に落ちて、俺が出来た頃親父を捨ててクソ男に貢いだんだ』
『何で、そんな事を……』
『金だろう?
俺がお前と腹違いの兄弟だって脅せば、多少の金は毎月入ってくる……そう言う考えだったんだよ。
けど、計画は上手くいかず……
祖母ちゃんに会う前日だった……お袋とクソ男が死んだのは』
『……』
『あ、言っとくけど……
死因は、クソ男はただ単に泥酔してそのまま川に転落した溺死。
お袋は、本能の赴くままに妖怪の森を歩き、そのまま妖怪にパクり』
『……随分、悲惨な亡くし方だな……』
『何かもう、涙のなの字も出なかったよ。馬鹿というか……
だから、祖母ちゃんが死んだ時……自分の涙で出てビックリした』
『……』
『お前、将来どうすんだ?』
『将来?
普通に、祖母様と一緒妖討伐隊に入隊するつもりだ』
『わぁ、凄いこと』
『貴様は?』
『俺も一応、討伐隊に入隊しようかなぁ』
『一応とは何だ、一応とは』
『俺、祓い屋になりたいんだ』
『祓い屋……』
『でも、祓い屋になるには祓い屋を探して、そいつに弟子入りしなきゃ行けないから、面倒だなぁって』
『……本当に、貴様は俺の弟なのか?』
『腹違いと一時間違いの弟だ』
『……』
『なぁ、賭けてみねぇ』
『は?』
『同い年だろ?
どっちが先に死ぬか』
『不吉な賭けだな……』
『俺はお前より長生きする。
はい、陽介負け決定』
『俺の方が長生きする!!幸人が負けだ!』
『陽介が負けだ!』
『幸人だ!』
『陽介だ!』
言い争う言葉が、陽介の耳に響いた……スッと目を開けると、部屋を出ていった。
人物紹介11
名前:雲雀大地(ヒバリダイチ)
年齢:34歳
容姿:紫がかった黒の髪を耳下で結っている。目の色は黄色。普段はオネエ系で喋るが、キレると男になる。
名前:藤風翔(フジカゼショウ)
年齢:32歳
容姿:茶髪の短髪。常にゴーグルを着けている。目の色はコバルトブルー。
名前:霧岬奏歌(キリサキカナタ)
年齢:50歳(見た目は20代後半から30代前半)
容姿:ウェーブの掛かった赤茶色の髪を結っている。目は水色と黄色のオッドアイ。
見た目が若く見えるため、よく歳を聞かれる。