桜の奇跡   作:海苔弁

85 / 228
空高く飛ぶドラゴン……

朱いドラゴンの背には、幸人とマリウスと暗輝が、蒼いドラゴンの背には、秋羅とアリサと水輝が乗っていた。


「結局、英国に行かされる羽目になったか」

「文句は国に着いてから、充分に聞きますよ。ウイスキー用意して」

「ソーセージも用意しとけ」

「分かりました。


……それより、大丈夫なんですか?」

「大丈夫?何が?」

「あれです」


マリウスが指差す方向には、エルの背中から飛び降り、ネロの背中へ着地し、ネロの背中から飛び降り、エルの背中へ着地と交互に飛び移りながら遊ぶ美麗と、彼女を見守るようにして、傍でゴルトとプラダが飛んでいた。


「何危ねぇ事してんだ!!

秋羅!!今すぐ止めろ!!」

「いや、無理だろ!!いきなりは!!」

「美麗!!やめろ!!落ちたら死ぬぞ!!」

「平気!平気!」

「平気なわけねぇだろう!!

変人双子、どうにかしろ!!」

「いや、無理だから!!」
「いや、無理だろ!!」


幸人達が騒いでいる間に、ネロの背中に乗っていた紅蓮は立ち上がり、落ちてきた美麗をキャッチした。


『遊びは終わり。

エルの背中で大人しくしてろ』

「え~!もっと~!」

『地上に降りた時、幸人達から雷食らうぞ。それでもいいのか?』

「……嫌だ」

『じゃあ、大人しくしろ』


夜山美麗
霧の都・英国


本部での会議から一週間後。

 

幸人達は、本部から直接マリウスが呼んだ二匹のドラゴンに乗り、英国へと行った。出発直前、エルに乗っていた美麗を、どこからかやって来たネロは銜え、自身の背中へ乗せた。乗せられた彼女の傍へ、ネロの子供のゴルトとプラダが駆け寄り、頬摺りした。

 

 

『……幸人、こいつ(ネロ)に乗って行くわ』

 

『ヘーイ』

 

 

 

ドラゴンに乗り、マリウス宅に着いた頃には辺りは暗くなり始めていた。広い草原に降り立ったドラゴン達は、首を降ろしマリウス達を下ろした。

 

 

「凄え。幸人達の家と同じくらい広いな」

 

「ドラゴン使いは、これくらいの領土を持っていないと、彼等を置いておけませんので」

 

 

遅れて降りてきたネロ……首を下ろす前に、美麗は紅蓮と共に飛び降りた。

 

降りた直後、美麗は幸人から強烈な拳骨を食らった。

 

 

「い、痛い……」

 

「そんな強く殴らなくても良いだろう」

 

「一発で済んだだけでも、有り難いと思え」

 

「相変わらず、厳しいことで」

 

 

痛がる美麗の頭を、水輝は撫でながら彼女を宥めた。

 

 

「しっかし、お前が竜使いだったとは……

 

いつからだ?」

 

「10年前からです。

 

師が亡くなる直前に、ドラゴンの扱い方を教えてくれたので」

 

「ワオー」

 

「弟子はいつからなの?」

 

「同じく10年前です」

 

「へー」

 

「先生ー!早く家へ入りましょー!」

 

 

裏口の門灯を点けたアリサの呼び声に、幸人達は家へと入った。

 

 

「どっかの御曹司の館みてぇな家だな」

 

「我々一族の遺産みたいな物ですよ」

 

「それじゃあ、花琳の奴もここへ来るのか?」

 

「月命日に。

 

彼女のご両親のお墓が、この敷地内にあるんです」

 

「それって、小さい森に立ってた四つの石?」

 

「……えぇ、まぁ」

 

「よく知ってるわね」

 

「空から見えて、気になってさっき行った」

 

「いつの間に……」

 

「でも、何であんな寂しいところに立てたの?

 

ここでもよかったじゃん」

 

「僕の両親も彼女の両親も、静かな場所が好きだったんだよ。だから」

 

「フーン」

 

「それより……

 

椅子の上で膝立ちするのはやめなさい!端たない!!」

 

「相変わらずうるせぇな、そういう所」

 

「あなたの躾が悪いからでしょう、月影」

 

「頭でっかちのテメェみたいに、俺はなりたくないんだよ」

 

「弟子にまで感染させてどうするんですか?」

 

「テメェに言われたくねぇんだよ!」

 

「まぁまぁ、もう夜遅いから喧嘩は明日な!明日」

 

 

暗輝が二人の喧嘩を仲裁している間に、秋羅は美麗を椅子に座らせた。

 

 

「外で膝立てはするな」

 

「家の中でも駄目なの?」

 

「余所の家は駄目だ!」

 

「というより、普通に座りなさい。あなた一応はレディーでしょ?」

 

「なあに?それ」

 

「っ……」

 

「アリサ、あまり気にするな」

 

「あ、は、はい……」

 

 

 

翌日……

 

 

霧が掛かる朝、幸人達は都心へと続く道を歩いていた。

 

 

「流石、霧の都。

 

凄え霧だ」

 

「本当」

 

「これだけ濃いと、どこに誰がいるか分かんねぇな」

 

「ミーちゃんに、紐着けといて正解だったね」

 

 

秋羅の手首に巻き付けられていた紐の先には、紐を腰に縛り辺りを歩き回る美麗がいた。

 

 

「案の定、動き回っている……」

 

「紅蓮達と一緒に、お空のお散歩の方が良かったかな?」

 

「そろそろ都心へ着きます。決して離れないよう、お願いします」

 

 

徐々に霧が晴れ、辺りが見渡せるようになった……それに合わせて、美麗は秋羅の元へ戻り羽織っていたポンチョのフードを被った。

 

 

石畳になった道を歩く幸人達。辺りには、路地裏で煙草を吸う者や、何かを狙っているかのように、ジッと見つめる者がそこら中にいた。

 

 

「この街路は、浮浪者が多くいます。

 

依頼人はこの街路の先にいます」

 

「危険な町だなぁ……」

 

「女子供で歩いてたら、あっという間に餌食になるね」

 

「まぁ、この辺りに殺人鬼が出没したって話は出てますけど?」

 

「ますます物騒だね」

 

「殺人鬼って妖怪なの?」

 

「いいえ。

 

生身の人間よ。5人以上の売春婦が犠牲になっているの」

 

「ばいしゅんふ?

 

それって、女が男に」

「それ以上言わなくて良し!」

 

「着きましたよ」

 

 

そう言って、マリウスはドアノックを叩いた。すると中から、メイドが現れ彼の話を聞き秋羅達を中へ入れた。完全にドアが閉まるのを確認した美麗は、被っていたフードを取り中を見回した。

 

 

「お待たせしました。

 

依頼主のアルフ・オルビーです」

 

「初めまして。祓い屋の海影です。

 

今回は魔犬退治ということで、仲間を数人呼びました」

 

「そうでしたか……

 

あぁ、どうぞ腰掛けて下さい」

 

 

6人が席へ着く中、美麗は部屋から出て行きどこかへ行った。それに気付いた水輝は、すぐに彼女の後を追い駆けた。

 

 

「……どういう躾をしてるんですか?

 

幸人」

 

「俺に振るな」




オルビー宅の中庭……


馬の水飲み場で、エルは水を飲んでいた。その隣で、人の姿となった紅蓮は、退屈そうに大あくびをしていた。

すると、扉が開く音がした。水を飲んでいたエルは、顔を上げ、扉の方を向いた。
中から出て来たのは、美麗だった。彼女の姿に、エルはすぐに駆け寄った。


(何だ……エル達の所に行きたかったのか)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。