桜の奇跡   作:海苔弁

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病院へ着いた水輝達……中へ入り、受付で手続きを済ますと、水輝は鍵を持ち3人を案内した。


地下へ続く階段を降り、戸の前に立ち鍵を開け部屋の電気を点けた。中では点滴を打ち体に包帯を巻いた紅蓮が、静かに眠っていた。


「紅蓮!」

「出血の量は多かったけど、命に別状はない」

「そうですか……

眠ってるのは?」

「体力回復のため。

次期に目は覚めるよ。


ちょっと暗輝の所に行ってくるから、ここお願い」

「あ、はい」

「秋羅、2人をよろしくね」

「はい」


底知れぬ恐怖

とある墓場へ来た幸人とマリウス……

 

マリウスは、翡翠のリングを覗きながら辺りを見回した。

 

 

「湊都、何か見えるか?」

 

「その名前で呼ぶの、やめて下さい。

 

 

そうですね……何もいませんね」

 

「そうか……」

 

「おかしいですね」

 

「?」

 

「この墓場には、必ず一体の幽霊はいるはずなのに、それが1人もいない……

 

 

オマケに、ここにいたはずの妖精までいなくなっている」

 

「魔犬と何か関係でもあるのか?」

 

「可能性はありますね……

 

?」

 

「何だ?」

 

 

辺りを包み込む霧……

 

濃くなっていく霧の中、そこにそれは姿を現した。

 

 

銀色の毛並みをした魔犬……

 

 

魔犬は、幸人達をしばらく見つめると霧の中へと入り、姿を消した。

 

 

「……な、何だったんだ……今の」

 

「さぁ……?

 

 

月影、あれ」

 

「?」

 

 

マリウスが指差す方向に、人影があった。

 

霧が晴れていき、それに合わせてその人影に近付いた。そして、その姿を見て二人は目を見開き驚いた。

 

 

 

紅蓮の傍で寝息を立てる美麗……眠る彼女に、秋羅は傍にあったタオルを掛けた。

 

 

「すっかり安心して、眠ってますね」

 

「普段、紅蓮と離れることないからな。

 

昨日、いなくて寂しくなって……それで夜中、エル達の所に行ったんだろう」

 

「美麗は、寂しがり屋なの?」

 

「さぁ……

 

本部で会った晃の話だと、何か抱いてないと寝られないって」

 

「……そういう所、小さい子と変わりませんね」

 

 

紅蓮の胴に、顔を埋めながら気持ち良さそうに眠る美麗をアリサは見つめた。

 

 

「まぁ、母親を早く亡くしたって話だから……その反動で、甘えがまだ残ってんだろう」

 

「……そう考えると……

 

何故、美麗は晃さんと離れたんでしょう」

 

「え?」

 

「本部に残ってた一部の資料に、本部へ来た頃の美麗は当時12歳。けど、精神年齢は3歳から5歳と記載されてました。

 

そう考えると、育て親であり大好きな人だった晃さんからそう簡単に離れられるわけ無いのに……」

 

「その辺りのことは、天狐達口堅かったなぁ。

 

聞いても、何にも答えてくれなかったし」

 

 

その時、眠っていた紅蓮はスッと目を開けた。ムクッと起きると、自身の胴で眠っている美麗の頬を舐めた。

 

 

「……?

 

あぁ!紅蓮が起きた!」

 

 

嬉しそうに声を上げながら、美麗は紅蓮に抱き着いた。彼は頭を、抱き着いてきた彼女の頬に擦り寄せた。

 

その様子を見て、秋羅はホッとした。すると、無線機が鳴り彼は無線を取りながら部屋を出た。

 

 

「分かった。

 

アリサ、連れてそっち行く。

 

 

 

アリサ!連絡入ったから、幸人達の所に行くぞ」

 

「あ、はい!」

 

「美麗、お前…も……」

 

 

嫌そうな顔をした美麗は、紅蓮に抱き着きながら秋羅を睨んだ。

 

 

「……お前はここに残って、紅蓮の傍にいろ」

 

「うん!」

 

 

嬉しそうに返事をすると、美麗は紅蓮に頬摺りした。二人を見つつも、秋羅はアリサを連れて上へと上がった。

 

そのすぐ後だった……警察官達が、部屋へ入ってきたのは。二人を見て、美麗は警戒しながら紅蓮を抱いた。彼は様子を窺うようにして、二人をジッと見た。

 

 

「怖がらなくていいよ。

 

おじさん達、本官だから」

 

「ほんかん?

 

 

警察の人?」

 

「そうそう。

 

お嬢ちゃんに、聞きたいことがあるんだけど、良いかな?」

 

「何?」

 

「昨日の夜、何があったか教えてくれるかな?」

 

「昨日の夜?」

 

 

その言葉に、美麗の脳裏にフラッシュバックで記憶が蘇った。

 

刃物から滴る血……それを持った者の前には、腕と腹から血を流す暗輝と紅蓮が倒れていた。前にいた者は、振り返ると不敵な笑みを浮かべて、自身に近付いてきた。

 

 

記憶はそこで途切れ、美麗は我に返り二人を見ると、底知れぬ恐怖に見舞われ、すぐさま紅蓮の胴に顔を埋め、怯えだした。

 

 

「あ、あれ?」

 

「オイ、人が話」

「嫌だ!!嫌だ!!」

 

 

嫌がり怯えだした美麗に触れようとした時、突如紅蓮は唸り声を上げながら二人に吠えた。警察官は、伸ばしていた手を引っ込め紅蓮を睨んだ。

 

 

「な、何なんだ、この犬は!」

 

 

「何やってるんですか!?」

 

 

騒ぎに駆け付けたのか、水輝は二人を睨み怒鳴り彼等を部屋から追い出した。鍵を掛けると、水輝はすぐに美麗の元へ駆け寄った。

 

 

「ミーちゃん」

 

「嫌だ……嫌だ……」

 

「もう何もしないよ。

 

だから、ちょっと顔を上げて。ね」

 

 

優しい声で水輝は、怖がる美麗に話し掛けた。彼女は泣きながら、ゆっくりと顔を上げた。

 

 

「もう大丈夫だよ、ミーちゃん」

 

「……あいつ等は?」

 

「追い出したよ。

 

だから、安心して」

 

 

そう言いながら、水輝は傍にあったタオルを美麗の頬に当てた。彼女はそのタオルを掴むと、紅蓮の胴に顔を埋め丸くなった。それを見た水輝は、立ち上がると部屋を出て行き、外で待機していた警察官達を睨んだ。

 

 

「誰の許可を得て、ここへ入ったんです?」

 

「そ、それは……」

 

「私の許可が無い限り、この部屋には入らないで下さい。無論、あの少女との接触も禁じます」

 

「本官に、そんな事言っていいと思っているのか?!」

 

「事件解決のために、罪のない子供を傷付けていいんですか?

 

これが、自身のお子さんでも?」

 

「っ……」

 

「……さぁ、もう用はないでしょう。

 

お引き取り下さい」

 

 

何かを言おうとしたが、警察官は水輝のオーラに負けそそくさと出て行った。

 

 

姿が見えなくなると、水輝は中に入った。紅蓮に抱き着いたまま、美麗は眠っていた。

 

 

(落ち着いてるか……よかった。

 

そんじゃ、早速)

 

 

懐からカメラを取り出し、水輝は美麗の寝顔を撮った。

 

 

「さてと……

 

 

紅蓮、ここ閉めるからミーちゃんの事、お願いね」

 

 

そう言って水輝は立ち上がり、紅蓮を見た。彼は何の反応も示さず、鼻先で美麗の頭を撫でていた。その様子に、水輝は疑問を持ち彼の元へ歩み寄りしゃがんだ。

 

 

「……紅蓮?

 

アンタ、言葉どうした」

 

『……』

 

「紅蓮……」




王が帰ってきた!

王じゃない。女王だ!

女王が帰ってきた!

女王様!




あの子の血が欲しい……

あの子の妖力が欲しい……

あの子の……あの子の……


そうだ……


記憶を辿り、彼女を地獄から救ってやろう。

そのお礼に、僕が欲している物を貰おう。
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