糸使いちゃんの逆行物語   作:96ごま

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お待たせしてすみません、第10話です。

やー、1.5巻とヒノワを読んだら1巻からまた読み返し始めてしまった……大声で叫びたい…!!((
まだ買ってないアカ斬るファンの方は絶対に買うべきですよ!!


さて、今回は三人称視点。そしてあいつらがやっと出ます。

それと、今回とはあまり関係ありませんが、ちょっと面白そうな展開も思い付いたので、ナイトレイド編はまだまだ先になりそうです。


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『外伝物語』に投稿したクリスマス番外編、『聖夜を斬る』はR指定無しなので、気になる方は是非((


猜疑心を斬る

「うーむ……」

 

阿鼻叫喚が響き渡る拷問部屋。その一角に佇む一人の将軍は、手に持った手帳とにらめっこをしていた。

 

「どうしたのエスデス様?何かお悩み事でも?」

 

唸る将軍に声を掛けた三獣士の一人、ニャウは上司である彼女を不思議そうに見上げる。

 

「いや、大した事ではないのだが……絵を描くというのは難しいものだな」

 

「絵…ですか?」

 

敬愛している上司の口から、思わぬ言葉が出てきて驚きを露にせざるを得ないニャウ。エスデスの一歩後ろで待機しているリヴァとダイダラも、動揺を隠せていなかった。

 

三人は、彼女が絵に興味を持つような人間ではないのを知っている。だからこそ何故急にそんな事を言い出したのか、全く理由出来なかった。

 

「ニャウ、私が知る限り、芸術面ではお前が一番詳しい筈だ。それ故に一つ訊ねたいのだが……どうすれば絵は上手くなる?」

 

「えっ?あー、えーっとぉ…エスデス様に頼って貰えるのはとても嬉しいんですけど、僕はそっち方面の芸術は専門外、です……」

 

主としても慕っている上司からの唐突な質問に、ニャウはかなり困った様子である。

 

そりゃそうだ。彼は自身が所有している帝具、軍楽夢想スクリームを奏でる演奏者だが、その他の芸術面も長けているとは一言も言っていないのだから。

 

「ニャウでも難しいか……」

 

「エスデス様。なんで急に絵を描こうと?」

 

気になって仕方ないと言わんばかりに、今度はダイダラがエスデスに問い掛ける。

 

「そうだな……。あいつと一緒に居ない時間も、あの笑顔をずっと見ていたいから、かな」

 

うっとりとした表情で彼女が脳裏に思い浮かべているのは、無邪気に笑うラバックの姿。

 

エスデスは、最初はただ、才能の芽があると感じたラバックを自分の軍に加えて育て上げたいとしか思っていなかった。しかし、共に生活をしている間に、彼女の無邪気な笑顔やころころと変わる豊かな表情に、少しずつ惹かれていたのだった。

 

そんなエスデスは、今自分が夢中になっている少女ラバックの話を、時折彼ら三獣士にも自慢のようによく語っていた。

 

「……エスデス様。失礼ですが、よくお話に聞いているその女は、本当に貴女様に相応しい者なのですか?」

 

不満を隠さずに重たい口を開いたのは、三獣士のリーダー、リヴァ。それは、彼がエスデスに心酔しているからこその言葉。リヴァのその気持ちは、他の二人も同じである。

 

三人に見つめられているエスデスは、顎に手をやり、少々考える仕草をする。

 

「……そんなに気になるというのなら、お前達もラバックに会ってみるか?」

 

「「「!!」」」

 

そういえばお前達とラバックはまだ対面していなかったな、と納得しながら、彼女はそんな提案をした。

 

すると三人は……。

 

「エスデス様を夢中にさせてる女の人かぁ……えへへっ、どんな顔なのかなぁ?凄く気になるね、ダイダラ、リヴァ!(エスデス様のお気に入りは僕らだって証明するついでに顔も剥ぎたいなぁ……!)」

 

「おう!早く拝んでみてぇぜ!(エスデス様も認める人間……こりゃたっぷり経験値を持ってるに違いねぇ!)」

 

「(……相変わらず考えている事が分かり易いな、この二人は)…そうだな。だが焦るなよ。下手な事をすれば、エスデス様のお顔に泥が付いてしまう」

 

表情を見ただけでニャウとダイダラの思考を読んで呆れたリヴァは、彼らに釘を刺す。

 

しかし、話題の中心人物に猜疑心を抱いている彼自身も、その人間が主の横に立つ者として相応しいのかを試してみたいと思っていたのだった。

 

 

 

 

 

「__っと!あっぶね!」

 

宮殿内の訓練場にて。剣を片手に、同僚達と汗を流すラバック。

 

まだ前世の頃程ではないが、それでも彼女は自分なりに日々努力し、剣の腕は以前よりは上がっていた。

 

「今度はこっちの番だぜ!」

 

「女のお前に力比べで負けるかっての!」

 

刃がぶつかり合う音が訓練場に木霊する。二人の熱気は、周囲で観戦している他の兵士達にも届いていた。

 

「ラバックー!今回はお前に賭けてやったんだから負けんじゃねぇぞー!」

 

「ラバ頑張ってー!」

 

その声援には、女性兵士の声も混ざっていた。それにすぐさま反応したラバックはその

子に振り向いて、目を輝かせる。

 

「おう!任せろ!!可愛い女の子からの応援があれば俺の全ステータスは100倍アップするぜ!!」

 

「それどういう理屈だよ!?」

 

少しずつ力負けしているのにも関わらず元気なラバックに、練習相手の同僚はツッコミを入れざるを得なかった。

 

やがて押されていたラバックは押し返す……事はなく。むしろその逆。

 

突然刃の角度を変え、力を抜いて相手の剣を受け流すようにして自身は横へと避けた。

 

「隙ありっ!!」

 

自分の体重を掛けるように剣を交えていた同僚は、前へと転がりそうになる身体を止められず。その隙に彼の背を狙うラバックには、当然対応出来なかった。

 

ゴツン。

 

「あだっ!?」

 

柄で背中を叩いたその鈍い音が、練習試合の終わりを告げる。

 

「ほい、俺の勝ちー!」

 

観戦していた仲間達に意気揚々と手を振る勝者はラバック。

 

これはただの練習試合だが、男女の差で負けると思われていた彼女には拍手喝采が送られていた。

 

しかし彼女は拍手よりも欲しいものを求める為に、年上の女性兵士達の元へと駆け寄る。

 

「お姉さぁーん!!俺勝ったよー!ご褒美ちょうだぁーい!!」

 

「はいはい、ラバはほんと甘えん坊なんだから……」

 

「よしよ~し、よく頑張ったねぇ、ラバックちゃん」

 

美女達に囲まれて撫でられるラバックは、この人生で数少ない至福の一時を味わう。

 

「(柔らかい肌と甘い香り……!!それをこうして難なく味わえる事だけが、女の身体になって良かったと心の底から思える瞬間だぜ…!)」

 

普段は色んな意味で異色の人間達に振り回されている苦労人ラバックは、思わず感涙してしまいそうな勢いだった。

 

「全ステータス100倍はどうしたんだよお前……。そこは押し返して俺に勝つ流れじゃね…?」

 

「いやいや、あれはただモチベ上げる為の演出だし?」

 

「お前なぁ……」

 

敗者である同僚に、ラバックはへらへらと笑って誤魔化す。しかし彼はそれ以上文句を言う事はなく。呆れながらも彼女の緩んだ笑顔に免じて許してしまった。

 

「おーい、ラバック!ちょっとこっち来い!」

 

試合を終えたばかりで汗だくのラバックは、一人の先輩兵士に声を掛けられる。

 

よく見ると、その兵士は険しい顔付きをしていた。それに対して少し不安を募らせながらも、ラバックは小走りする。

 

「何かあったんすか?」

 

「……帝国最強の女王サマが、またお前に用があるんだとよ」

 

「あ…そーゆう事ね。てっきり、もっと重大な任務か何かの話かと……」

 

帝国最強の女王サマ……エスデスからの呼び出しだと聞いたラバックは深い溜め息を吐く。

 

目で促す先輩の視線を追うと、案の定そこにエスデスは居た。他にも、彼女の後ろには三人程人影があった。

 

憂鬱そうにそれを見ているラバックに、先輩兵士は、帝国最強の将軍サマからの呼び出しは相当重大な事だろうが、と思わずツッコミそうになる。

 

しかしそんな事は露知らず、ラバックはエスデスが待っている訓練場の一角へと向かう。

 

「わざわざここに来るなんて珍しいですね、エスデス将軍。俺に何か大事な用でも……っ!」

 

いつも通り気楽に声を掛けた途端に、こちらを射抜くような視線……殺気を感じ取ったラバック。

 

その殺意の正体は、エスデスの後ろに控えている三人組、三獣士のものである。

 

「そう殺気を出すな、お前達。ラバックが警戒してしまうだろう?」

 

「……申し訳ございません、エスデス様」

 

三人の代表として、年長者リヴァが一礼する。

 

「私はエスデス様に仕える僕、三獣士のリーダーを勤めているリヴァ。そしてこちらが同じく三獣士のニャウ、ダイダラだ」

 

「!!」

 

三獣士、というワードを耳にしたラバックは、一瞬目を見開く。が、

 

「へぇー…あんたらが噂の……」

 

スッと目を細めるラバックに、今度は三獣士達が驚いた。

 

素人では見抜けないような静かな殺意。けれど確かな矛先を表す殺意が、彼女の瞳の奥から垣間見える。要するに、ラバックの殺気の隠し方は、常人のそれを遥かに上回っていたのだ。

 

「(まるで、エモノが糸に絡まるのを待つ蜘蛛のようだな……。エスデス様が気に入ったのも頷ける)」

 

表情を変えずに納得するリヴァと同じように、他の二人もエスデスのお気に入りである彼女の事をほんの少しだけは認めようと思えた。

 

「私が話した通り、良い目をしているだろ?実力こそはまだまだ未熟だが、頭も冴えてる。育て方によっては芽を摘んでしまうが、私が開花させれば将軍級になるのも夢じゃない」

 

「それは流石に買い被り過ぎですよ、エスデス将軍。俺には器用さしか取り柄がないんですから」

 

「その天性的な器用さもお前の強みだ。お前はもう少し自分を誇れ」

 

過大評価するエスデスに苦笑いしてしまうラバック。

 

しかし彼女は自分に自信が無いわけではない。むしろ、殺し屋稼業の中ではこの手先の器用さを自慢しているのだから。

 

「ねぇエスデス様。このお姉さんがどれだけ強いのか、試してみてもいいかな?」

 

「え」

 

「うむ、それはちょうど良いな。先程のような低レベルな訓練では、今のラバックの実力はまだ測れんからな」

 

「ええっ!?」

 

ニャウの申し出を承諾したエスデスに、ラバックは口を大きく開けて驚愕する。

 

彼女の顔が引き吊ってしまうのも無理はない。なにせ彼はエスデスの直属の部下、三獣士の一人。自分との力量差なんて想像出来ない程大きいものだと、遠い過去の昔から悟っているのだから。

 




三獣士の中ではリヴァさんが一番好きです……ダンディな雰囲気が素敵。

エスデスに無条件で気に入られたラバックに嫉妬するニャウからの突然の申し出!挑まれたラバックはどうなるのか!?

皆さんはどっちが勝つと思いますか?答えは次回を待て!!(
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