糸使いちゃんの逆行物語   作:96ごま

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遅くなってすみません、第12話です。

あ、そういや確か原作キャラで誕生日が判明してるのってチェルシーだけですよね?
でもチェルシーが飴の日なら、ラバは糸の日…つまり1月10日の今日説……!!

ってことでラバック誕生日(非公式)おめでとう!!!
プレゼントは君のお兄さん(非公式)だよ!!

ラバ「ねぇ、これどっから突っ込めばいいの?」


兄を斬る

シュラに拉致られた翌日。帰りは俺を拉致った張本人である彼が帝具で送ってくれた。

 

けどあの後とはいえ、なんであいつは俺を大臣から隠そうとしたんだろうか?それが少し引っ掛かって疑問に思う。

 

……まぁそれはさておき。痛む身体に鞭を打つように急いで仕事の準備をした俺は今詰所に着いたところなんだけど……。

 

「遅れちゃってすいません、ナジェンダさ…ん……?」

 

ガチャリと扉を開けると、そこにはナジェンダさんと、彼女に詰め寄って手を握る男性が居た。

 

「帝都は本当に素晴らしいところですね!まさか貴女のような美人なお方にお逢い出来るだなんて……!」

 

「そ、そうか…それはありがとう……」

 

相手は後ろ姿で顔がよく見えないが、褒められているナジェンダさんは困ったように苦笑いしている。しかし、その男の声には聞き覚えがあった。

 

「ん?ああ、ラバックか。ちょうど良かった、この方がお前を……」

 

「え、ラバック!?」

 

こちらに気が付いたナジェンダさんが俺に声を掛けた途端に、緑髪の男がバッ!と勢い良く振り返る。そしてその青年の正体は……。

 

「いっ!?リ、リネット兄さん!?」

 

俺の兄……我が家の長男、リネットであった。

 

「に、兄さんだと…!?た、確かに髪と目の色は同じだが……」

 

ナジェンダさんが狼狽するのも無理はない。なにせ、はっきり言うと俺らの容姿はあまり似ていないのだから。もちろん、性格も全く違う。

 

いや、今はそんな事どうでもいい。それよりなんでこの人が帝都に!?前世ではこんな事態は起こらなかったのに…!これはマズい…マズ過ぎる……!!

 

「やっと見付けたよラバ~!!」

 

「ちょっ!?抱き付くな!つかなんで兄さんが帝都に居るんだよ!?」

 

「いやぁ、ラバックが心配で心配で……。君が頑張って働いてる姿も見たかったからつい一人で……」

 

「ついじゃねぇよ!なんだその下らねぇ理由は!?」

 

えへへ、と柔らかい笑顔でマイペースに喋る彼は、やはり俺のよく知る兄である。唯一の救いは家族全員ではなく、リネット兄さんだけというところか。

 

俺や他の二人の兄と違って、この人は本当に気が緩いというかなんというか……とにかく、俺達四人兄弟の中で一番似ていないのだ。そういうところは前世の頃から変わらない。

 

でも、この世界線で一つ。それもかなり変わってしまった部分がある。それは……。

 

「ところでラバック。帝都に来てから変な男に絡まれたりしてないかい?君は自分が思っている以上に可愛いんだから気を付けなきゃダメなんだよ?それから……」

 

「あー!あー!わかったわかった!もういいからはよ帰れこのシスコン兄貴!!」

 

そう、彼は弟ではなく妹になった俺の影響を受けたのか、重度のシスコンになっていたのだった。

 

「ナジェンダさん!なんでこいつがここに居るんですか!?」

 

「ねぇ、今こいつって言ったよねラバック?僕は君のお兄ちゃんなんだよ?昔は兄様って呼んで……」

 

「シャラアアアァップ!!!!」

 

「いったああぁっ!!?」

 

ガッ!!という鈍い音が響く。

 

何が起きたのかを端的に説明すると、俺の黒歴史を暴露しようとしたクソ兄貴様に鉄槌を下してやった。頭を思いっきりチョップした。ただそれだけだ。

 

すると緑の垂れ目尻尾野郎は頭を押さえて蹲まる。ナジェンダさんや他の兵士達が心配そうに彼を見つめているが、そんな事は知ったこっちゃねぇ。

 

まだ前世の記憶を取り戻していなかった頃の話は掘り返さないで欲しい。ふりふりのドレスを着ていた可愛いもの好きな女の子だったあの俺はもう思い出したくもない。

 

「さて…コレがここに居る理由を説明してもらってもいいですか?ナジェンダさん」

 

「え?あっ、いや……そ、そうだったな」

 

爽やかな笑顔で問うと、戸惑ったナジェンダさんはコホン、と咳払いする。

 

どうやら俺らの兄妹関係については触れない事にしたらしい。流石後のナイトレイドボス、正しい判断だ。

 

「実はだな、彼は昨日から警備隊に……それも女性を中心にお前の事を聞いて回っていたらしくてな。怪しいから、お前と面識があるのかどうかを確認する為にここに連れて来てもらって、ちょうどお前も呼ぼうとしていたんだが……」

 

「なるほどそうでしたか。…で済むわけがねぇな。さりげなく女の子ナンパしてんじゃねぇよこのタラシ野郎!」

 

「ラバック、それ以上はやめてやれ!流石に彼が可哀想過ぎる!!」

 

もう一発殴ってやろうと身構えると、ナジェンダさんがガタリと立ち上がって俺を制止する。

 

まぁナンパといっても、常に下心丸見えの俺と違って、こいつはタツミみたいな天然タラシでもあるからナンパをしたつもりは一切ないと思うが。恐らく、たまたま通りすがった警備隊が女性ばっかりだったんだろう。

 

だがしかしタツミ同様、自然と女の子にモテまくるこいつは昔からムカつくから絶対に許さん。モテ男は存在自体が罪だ。いや悪である。つまりモテ男は滅ぶべき。

 

「ううっ……暴力はダメだっていつも言ってるじゃないか、ラバ。もう少し女の子らしくしないと、母さん達が悲しむよ?」

 

「うっさい、余計なお世話だ!」

 

ここで親という存在を挙げてくるとはなんて卑怯なヤツだ。

 

前回と変わらず親不孝な俺は、家族に対してなんとも言えない罪悪感を感じている。それを知ってるのかと疑うくらいに、こいつは何かあると両親が悲しむだのなんだのと言ってくるのがどこか狡い。

 

「はぁ……そういや、今日泊まる宿とかは決まってんの?」

 

「いや全然?宿を探そうとは思ってたんだけど、その前にいつの間にか知らない人にお財布取られちゃっててさー」

 

あはは、と呑気に笑う彼に、この場にいる全員が唖然とする。

 

「あんたマジで何やってんだよ!?バカなの?死ぬの!?っていうかそんな目に合ってンのによく平然としていられるな!?今の自分の状況わかってンのか!?いやバカだから全然わかってないのか!?」

 

「ラバ落ち着け。その気持ちはわかるが正気に戻ってくれ…!!」

 

溜まりに溜まったフラストレーションが爆発して怒鳴っていると、まだ正気でいるナジェンダさんに宥められた。

 

うん、やっぱりなんか最近色々と疲れちゃってるみたいだな、俺……。でもとりあえずはこいつをどうにかしないと。

 

荒くなった呼吸を整えて、これからこのどうしようもない兄をどうするかを考え始める。

 

「あ、せっかくならラバの部屋に泊めさせ……」

 

「却下!」

 

例えエスデスと同居してなくても、こんな変態兄貴と同室で寝るのは絶対に嫌だ。

 

「ラバ、もういっそこの詰所に彼を泊めてやるのが一番良いんじゃないか?」

 

「んー、確かにそうっすね……でもここに泊めちゃって大丈夫なんですか?」

 

「一日程度だったら多少は平気だろう。仕事の邪魔さえされなければな」

 

邪魔をしなければ、という言葉を聞いて、チラッと問題の本人を見る。

 

「いや、そんな疑いの目で見ないでよ。邪魔する気なんてこれっぽっちもないし、下手に首突っ込んで余計な事をするつもりもないから。だから問題児みたいな扱いしないで?」

 

いや、あんたは今まさにここの人間に迷惑掛けてる問題児だろ。なんてツッコミはもうキリが無いから飲み込んで。

 

「んじゃ、お金渡しとくから、明日になったらすぐに帰れよ」

 

「え?僕は帰るつもりないよ?」

 

「……は?」

 

兄の帰らない発言に、ドスの利いた声で、何言ってんのお前?と威圧を放つ。しかしそれを全く気にしない様子で、彼はナジェンダさんの方を向いた。

 

「ナジェンダ将軍、暫く僕をここに居させてくれませんか?」

 

「そ、それは難しい話だな」

 

「そこをなんとか!炊事洗濯でしたら自信があるので、ここで働かせて下さい!元々帝都に来たら仕事を探そうと思ってたんですけど、一文無しだと寝床もなくて仕事どころじゃないんですよ…!」

 

ナジェンダさんの手をギュッと掴んで懇願する自分の兄に、俺は思わずイラッとくる。

 

「おい、何サラッとナジェンダさんの手掴んでんだよてめぇ。早く離せ」

 

「え、嫉妬してるの?大丈夫だよラバ、お兄ちゃんは妹一筋だから!」

 

「こいつここで斬って良いですかナジェンダさん?」

 

「落ち着けラバ。とりあえず一旦落ち着け。ほんとに頼むから詰所を血で染めようとしないでくれ」

 

そんなしょーもないやり取りをした後、ナジェンダさんはこう言った。

 

「リネット殿、貴方がラバックの事を心配しているのは充分過ぎる程わかった」

 

蟀谷を押さえる彼女を見る限りだと、この流れは断る雰囲気だ。と俺は思っていたのだが……。

 

「それに、この詰所に寝泊まりする者のほとんどはなかなかしっかりした食事をしてくれないからな。あまり休養を取れない兵士達に英気を養ってもらう為にも、ここで家事をやってくれないか?」

 

仕方なさそうな表情で告げたナジェンダさんに、パァッと明るくなった彼は頷いて、

 

「もちろんです!!」

 

と、かなり張り切っていた。

 

でも俺からしたら、

 

「なんでこうなったんだ!!?」

 

と叫ぶくらいに最悪な展開である。

 

女になっただけで、こんなにも前世とは違う展開に変わってしまっているとは……先行きが不安で仕方がない。

 

離反の事も考えると、やっぱりすぐに実家に帰ってもらいたい。彼がいると色々と面倒だ。予測不可能な事態が続く中、あいつが何か余計な事をしないか心配だからな。

 

……これは決してフラグではない。伏線なんかじゃないからな…!?

 




リネット

ラバック一家の長男。
垂れ目で、腰まで長い髪は低いところで緩く結んでいる。
年齢はナジェンダさんと同い年くらい。

彼について何か質問がありましたらお気軽にどうぞ。
今後のネタバレにならない範囲内でしたらお答えします。

リネ「主人公じゃないから影薄くなると思うけど宜しく~」
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