糸使いちゃんの逆行物語   作:96ごま

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二週間以上も遅くなってしまい、大変申し訳ございませんでした…!!(汗)

最初のスタートダッシュからの失速ェ……(白目)
まぁそのスタートダッシュした1、2話を修正したり番外編も書いたりしてたから余計に更新が遅れたってのもあるんですけどね!((

ラバ「無駄な言い訳してないで反省しろよ。そして早く書け」

はい、ごもっともです。本当にごめんなさい(土下座)


どうでもいい話ですが、連載開始前からこのサブタイをいつか絶対に使いたいってずっと思ってました(笑)


修羅場を斬る

数少ない休日の早朝。兵士達がそれぞれ休暇を過ごし、兄も仕事探しで外出している為、今は誰も居ない筈の詰所。

 

どっかの女王サマに虐められたせいで寝不足の俺は、自分の兄が寝床にしているソファーを前に苛々している。その理由は……

 

「おい、なんでここに居んだよシュラのダンナ……」

 

目の前のソファーに、見慣れたゲス野郎が寝ていたからである。

 

「んあ?……ああ、お前か」

 

「ああ、お前か、じゃねぇよ。こっちはなんであんたがここに居んだっつってンの」

 

「なんでって……俺は暇だからここに来ただけだぜ?」

 

ですよねー。知ってたようん。なんかもうこいつの事だからなんとなく暇潰し目的だって察してた。

 

「ここはお前の遊び場じゃねぇ、早く帰れ」

 

「お前が居る時点でここは俺の遊び場だろ」

 

「ぶっ殺すぞてめぇ」

 

やはり俺は完全に玩具扱いされている模様。

 

俺を強姦したのはこいつだと昨夜エスデスにバレずに済んで思わずホッとしたけど、機嫌悪い時にこの態度されるといつも以上に殺意が沸くね。やっぱりバラしてこいつに然るべき罰を与えて貰うべきだったな。

 

「俺はお前の玩具じゃねぇ!そして今すぐそのソファーから降りろ!それは俺が今使う予定なの!」

 

「言ってる台詞がガキみてぇだぞお前」

 

「普段からガキみてぇに玩具玩具言ってるてめぇにだけはガキって言われたかねぇよ!はよ退け!」

 

エスデスへの抵抗は失敗したが、今度こそは。こいつにだけはギャフンと言わせてやりたい。一方的にやられっぱなしでいられるかっつーの!だから折れる気はねぇ!

 

威嚇するように全力で殺気を向けると、シュラは若干引くように冷や汗を流す。

 

「今日はやたらと機嫌悪ぃみてぇだな。……生理か?」

 

「ぶっ殺す」

 

自分でも驚く程低いトーンで宣言する。もうこいつ死刑確定だわ。

 

「煮る、斬る、焼く、裂く、埋める。さぁどれがいい?それとも全部フルコースにしてやろうか?」

 

「おい、それに似た台詞どっかで聞いた事あるぞ。てめぇ知らねぇ筈だろうが」

 

お前の記憶なんて知らねぇよと適当に流しつつ、腰に差してある剣を抜く。

 

「ああそうだ、良い事思い付いたぜ。あん時はてめぇにタマ一つ潰されたからなぁ……まずはその倍返しで二つ共潰す。その次は目ん玉くり貫いて…あと耳と鼻だっけか?」

 

最高にゲッスい笑顔で、前世でシュラにやられた、そしてされそうだった拷問を述べる。すると先程まで余裕があった筈の彼の顔は、少し引き吊って歪み始めた。

 

 

「ははっ、そんな物騒な冗談言うなよラバック。それは一周目ン時の話だろ?今は敵じゃねぇんだし、もっと平和的に済ませようぜ?」

 

「は?例えアレがなくてもてめぇには恨みしかねぇよ。今までお前が俺にやってきた事全部振り返ってみろよ」

 

シュラの言葉を一刀両断。こいつに貸す耳など持たん。

 

「それに敵じゃないからって味方でもねぇから平和もクソもねぇよこのゴミクズ野郎。って事でここがてめぇの墓場だ死ねェッ!!!」

 

叫び声に合わせて、ソファーで寝転がっているシュラの急所に目掛けて剣を突き立てる。

 

が、相手はやはり手強いようで。シュラはそれをギリギリのところで躱す。

 

結果的にリネット兄さんが使用しているソファーは一部破けてしまい、綿も出てきてしまった。

 

「あっぶねぇ!?てめぇ!マジで殺す気かよ!?」

 

「当たり前だろうがこんにゃろう!避けんじゃねぇ!今日こそてめぇを血祭りにあげてやらぁっ!!」

 

血走った目で何度も斬り掛かるが、全部避けられてシュラは無傷。おかげで俺の怒りのボルテージは上がっていく一方だ。

 

「早くこの安息の地から出てけ!こちとらあの部屋の地獄っぷりが増したせいでまともに寝れてねぇんだよ!!」

 

安眠したいが為に剣を向ける。傍目から見たらくだらない理由だが、ドS様に情事の後も身体中に赤い跡を大量に付けられたりとしつこく愛撫されたせいで1、2時間程度しか寝れなかった俺としてはとても重要な話である。

 

「あの部屋?……あー…まーたエスデスの姉ちゃんになんかやられたってのか?」

 

また振り回されたのか、と同情の目を向けてくるシュラ。

 

大体当たってはいるんだけど、こいつに同情されるとなんか腹立つ。

 

「うるせぇ!いいからそこ退けって言っ……っ!!」

 

再び文句を言おうとしたが、何かに気が付いた様子のシュラが上体を起こし、俺の頬に触れてきた。

 

男の手って、こんなに大きかったっけ?と俺が思うくらいに大きく感じる。それに、意外と真面目に鍛練をしているのか、マメのようなものがあって少しゴツゴツしていた。

 

でもその男らしい大きな手に対して、帝具を使って自室に忍び込まれた時みたいにドキッとしてしまったのは気のせいだと信じたい。

 

「……よく見たらお前、思いっきり隈出来てるじゃねぇか」

 

まるで俺の事を心配するように、隈が浮き出ている目元を指でなぞられて思わず目を瞑る。

 

「そんなビビんなって。さっきの殺しに掛かってきた勢いはどこ行ったンだよ」

 

「べっ、別にビビってねーし!急に触られて驚いただけだっつーの!」

 

至近距離で顔を見られている恥ずかしさで、頬が紅潮していく。

 

びっくりしたから。そう、驚いたからである。そうに違いない。それ以外に心音が速くなってる理由なんて無い筈だ。

 

「ったく、しゃーねぇな、退いてやるよ」

 

「なんでお前がそんな偉そうに言うんだよ!?」

 

我が物顔で寛いだりといい、何様なんだとツッコむ。

 

でも本当に退いてくれたので、俺は鞘に仕舞った剣をそのソファーの横に立て掛けてからダイブする。

 

先程破けたところは違和感があって気になるけど、今はそれよりも眠気が勝ってるから我慢した。

 

「変な事したらぶん殴るからな」

 

「へいへい」

 

全く信用出来ないシュラに、念の為釘を刺す。

 

そして俺はソファーに置いてあったクッションに顔を埋めて、限界だった眠気をすぐに受け入れた。

 

 

 

 

 

__眠ってから、どれくらいの時間が経過しただろうか?

 

気が付くと騒ぎ声のようなものが聞こえてきて、少しずつ意識が覚醒していく。

 

「寝てるラバに手を出そうとしてる曲者め!今すぐそこから離れろ!!」

 

「だから誤解だっつってンだろ!!俺は何もしてねぇ!」

 

……声や気配的にもどうやら二人のようだが、どっちも聞き覚えのある声だ。

 

「嘘こけ!!いくらうちのラバが可愛いからって君みたいな怪しい男が触るのは許さないよ!帰れ!!!」

 

「おわっ!!?今何掛けやがったてめぇ!?」

 

「ここの厨房に置いてある塩だよ!包丁を投げないだけ有難く思え!だから早く出てけ!!」

 

「俺は悪霊か何かだって言いてぇのかこの野郎ッ!!!」

 

「招かねざる客はみんなそうだよ!!!」

 

罵倒を浴びせられているのは、俺が寝てからもまだここに居たらしい悪霊ことシュラ。そして室内で塩を撒くという奇怪な行動をしている男はシスコン兄貴ことリネットだった。

 

除霊感覚で追い出す気かよと兄さんに言いたい。それとシュラにはお前はお前で包丁云々は無視しといて塩には文句言うのかよ、と叫んでこの二人を全力でツッコミたい。

 

つかなんだこの口喧嘩。漫才か?漫才でもやってンのかお前ら?んなこたぁどうでもいいけど五月蝉いからもうちょっと静かにしてくれないかな?側で人が寝てるんだから静かにしよ?ね?

 

睡眠中の俺に気を使ってくれる様子が一切ない二人に対して、苛々が募っていく。そりゃそうだ。やっと休めると思ったらこれなのだから。

 

でもまだ寝ていたいからあいつらの事は無視しようと怒りを堪える。が、

 

 

「さっさと成仏して出て行けこの……あっ」

 

「あ」

 

リネット兄さんが飛ばした大量の塩が、ソファーで寝ている俺の頭に掛かった。

 

それを切っ掛けに、何かがプツリと切れたような音が鳴り、俺はむくりと起き上がった。

 

「あ、あれれ!?い、いつの間に起きてたんだねラバ!一応言っとくけど今のはわざとじゃないよ!?これはちょっとした事故で……」

 

「あ゛?」

 

「アッ、ナンデモナイデスゴメンナサイ」

 

滝汗を流しながら兄さんが言い訳をしようとしたが、俺のドスの利いた声ですぐに縮こまった。

 

完全にぶちキレてしまった妹に頭が上がらないとは、本当に情けない長男だ。もはや兄の威厳が無……いや、そんなものは最初から無いか。

 

「さっきからギャーギャー騒ぎやがって……人の安眠の邪魔すンじゃねぇよてめぇら」

 

わなわなと肩を震わせながら、蟀谷に青筋を浮かべる。

 

すると二人は少し後退り、恐る恐る口を開いた。

 

「えーっと……あの、ラバック…さん?」

 

「お、おい…いくら機嫌悪ぃからってそこまでキレなくても……」

 

「寝不足だっつってンのに寝てる横で騒がれたら誰だってぶちキレるに決まってンだろうがッ!!!」

 

ダンッ!!と怒りを込めてソファーを思いっきり殴る。その衝撃で先程破けた場所から再び綿が……。

 

「ちょっ!?それ僕の寝床なのにぃっ……!」

 

唯一の寝床としてこのソファーを愛用しているリネット兄さんがショックを受ける。だがしかしそんな事はスルー。

 

「こっちは朝からずっと苛々してンだよ……てめぇらが喧嘩しようとしまいがどうでもいい…が。静かに出来ねぇってンなら二人揃って他所行け!!」

 

「ラバ待って!?危ないからその剣仕舞って!?一旦落ち着こう?ね?お願いだから落ち着いて!?」

 

再び剣を手に取って怒りを露にすると、兄さんが必死に俺を宥めようとする。

 

けれどその一方であいつは怯えた素振りを見せず、ボソリとこう呟く。

 

「やっぱ生理か……」

 

刹那、俺は瞬時に奴の股間を蹴り上げた。

 

「~~~~~ッッッ!!!!」

 

シュラは蹴られた場所を押さえて倒れ込み、その場で蹲る。

 

声も出せないのは当然だ。アレは想像を絶する程の激痛が走るのだから。

 

でも本当なら気絶してもおかしくはないレベルの痛みな筈なんだが、彼の場合は潰れなかっただけまだマシだ。どちらにせよ暫く動けない事には変わりないが。

 

前世でアレ以上に酷い経験をした自分が一番よくわかっているのに、何故躊躇無く蹴ったのか。それはこいつへの復讐心と今の爆発した怒りが重なったからである。慈悲は無い。冷静になったら多少は反省すると思うが、後悔はしないと断言出来る。

「~~~ッ!!(殺す…!ぜってぇ殺してやるこのクソアマ……ッ!!)」

 

因みにシュラの後ろでは、リネット兄さんが口を押さえてガタガタと戦慄していた。

 

「(悪いのは明らかに彼だけど……痛い!見てるだけでも痛過ぎるよそれは…!!ラバック、恐ろしい子ッ!!)」

 

そして溜まりに溜ったストレスを発散出来た俺は爽やかな笑顔に変わり、

 

「あー、スカッとした!さぁて、昼寝の邪魔されちまったし、とりあえずシャワーでも浴びよっとー」

 

とだけ言い残して、二人を放置したまま部屋を出た。

 

しかし俺が退出していた間、この詰所に訪れた兵士達が、悶え苦しむ大臣の息子と酷く怯えた様子の炊事係を見て暫く唖然としていたらしい。

 




作者は今回の事を『復讐鬼ラバックの逆襲』と呼んでいる←

ラバ「なんか厨二臭くてヤだからそれやめろ!!」

そして一番の被害者はソファー()

シュラ「あ?どう考えても俺だろ」

だってソファーは何も悪くないのに破かれたり殴られたりしたんだよ!?自業自得のシュラと違って可哀想やろ!

シュラバ「「そうさせたのは作者のてめぇだろうが!!」」

ラバ「おいこら名前表記ッ!!」

サブタイが『修羅場を斬る』だからね!((

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