……運営さん、取扱説明書はもう少し分かりやすく書いてくれませんかね?理解するのに三十分以上掛かりましたよ?次話の本文どこで書くの!?ってずっと喚いてましたよ?
ラバ「お前の頭が悪いだけだろ」
苦戦を斬る
「ん、きっつ…。女ってのはほんと苦労するんだな……」
兵士個人に与えられる私室で、俺は一人、下着を身に付ける事に苦戦していた。
前世の記憶を遡りながら、俺の予想を裏切ってデカくなった自分の胸を触ってみる。
「……アカメちゃんと同じくらいか?」
女湯の覗きに失敗しながらも、俺は普段から観察していた女子達の胸のサイズと今の自分のそれを比較すると、そこそこあるアカメちゃんに並ぶくらいの大きさだった。
記憶を思い出してからは、可愛い女の子は今も好きだ。でも、自分が、というのはまた別の話である。
マインちゃんには失礼だと思うが、元男として溜め息を吐いてしまうのは仕方ない。こんなデカい胸をぶら下げた自分なんて見たくなかった、と俺は鏡に映る女物の下着姿の自分を心底恨めしそうに睨む。
鏡の自分とにらめっこしていると、軽いノック音が自室の扉から聞こえてきた。
「え!?ちょっ、ちょっと待って!」
突然の事に驚き、慌てて服を着ようとする。
しかしその次に聞こえてきたのは、昔から大好きなあの声だった。
「ラバ?何かあったのか?」
扉越しに心配してくれるその声の主は、まだ右目と右腕を失っていない、風になびく美しい銀色の密編みがよく似合うナジェンダさんだ。
「なんだ、ナジェンダさんですか……」
男の声ではなく、慣れ親しんだものだとわかってホッと胸を撫で下ろし、そのまま「入ってどうぞ」と伝えて彼女に入室を促す。
「なんだとはなんだ……って、まだ着替え中だったのか」
扉を開けて不満そうな表情を見せるが、俺の状況を見て納得してくれたらしい。
でもナジェンダさんには、俺みたいに前世の記憶はないらしい。それは、兵士になった俺と再会した彼女の反応を見て確信した。
もしあの記憶があれば、彼女は女の俺に驚く筈だ。なのにそんな素振りは一切なく、むしろ妹のように俺を可愛がり、男だった俺に対しての態度とは全く別の対応をしてくれるのだ。それがなんだか虚しい気分にもさせられているのは気のせいだと切に願いたい。
そして気が付くと俺の胸をジッと見ていたナジェンダさんは、俺にとっては深く突き刺さるような爆弾発言を投下してくる。
「ラバ、その下着のサイズ合ってないんじゃないか?」
「……やっぱりそーですか」
はぁ、と溜め息を吐き、観念するように現実と向き合う。
俺みたいなヤツは、マインちゃんくらいの小さいサイズのままだと思っていたのに……。いや、別に事例とかがあったわけじゃないんだけどさ、ただなんとなくね。だから気のせいだと信じて小さいサイズの下着をずっと身に付けていたっていうか……。
「胸が大きくなるのがそんなに不満なのか?全く、贅沢な悩みだな」
溜め息を吐いた俺に、ナジェンダさんはクスクスと意地悪そうに笑いながら俺の背後に回って、窮屈な下着に覆われた胸に触れる。
「ひゃうっ!!?」
「ふむ、やはり少し大きくなったみたいだな」
どうやら彼女は俺の胸をふにふにと触って、大体のサイズを確かめているらしい。
急過ぎて思わず変な声が漏れた自分にも驚いて、咄嗟に口を塞ぐ。前世の男だった時とは違って、今の自分は声が高い事をすっかり忘れていた。
「ナ、ナジェンダさんっ!!触るなら先に言ってくださいよ……!」
「す、すまん」
羞恥で頬を赤らめながら文句を言う。
これで相手がナジェンダさんではなく男だったらクローステールで八つ裂きにしていたところだった。だが生憎その相棒はまだ所持していない。
「そのままじゃ胸が苦しいだろ。下着を買いに行くのが恥ずかしいなら、私が代わりに行こうか?」
どうやらナジェンダさんは、俺が下着を買いに行くのを恥ずかしがっているのだと勘違いしているみたいだ。でも、女物の下着を買いに行くのには少し抵抗があるのもたしかで……。
結局、彼女の言葉に甘えて、後日ピンク色のフリフリした下着を渡された時は自分の舌を噛んで死んでしまおうかと本気で思った。
「__一級危険種の土竜、ですか」
「ああ、ここ最近、また被害が増えたらしくてな」
常に忙しい上司であるナジェンダさんに頼まれた仕事は、馬車で遠出する帝都の貴族サマを、帝都付近で出没する一級危険種の土竜から守って護衛しろという仕事だった。
もちろん俺はこの事も知っていて、持ち前の器用さで苦戦することなく任務をこなしていた。……筈だった。
「うおおおお!!!こっちくんなこのモグラ野郎おぉーッッッ!!」
ただでさえタツミやブラートさんと比べて非力だった俺は、女になってより一層その弱さを痛感する。こんな細腕では、あんなに大きな危険種に傷を与えるのは厳し過ぎたのだ。
ナジェンダさんや姐さん、アカメちゃん達がこれ以上の強敵と戦い続けていた事を思い返すと、改めて凄いと実感した。それと同時に、人間離れしている彼女達が恐ろしくも感じる。
当然、剣を振る訓練も受けてきた。でも実戦というものはそう簡単に上手くいくわけでもなく、それは前世で嫌というほど身に染みている。だからこの程度で音を上げるわけにはいかなかった。
だけど、見た目に反して素早い土竜の攻撃を避けるためにまだ新人であろう護衛達と共に全力で走り続けていると、こんな愚痴が零れてしまう。
「くっそ、こんなハンデがなけりゃお前なんか瞬殺してやるっつーのに…!あー!せめてクローステールがあれば!!」
今は無いものをねだっていても仕方がないとわかっていてるが、これくらいは許してほしい。
しかしそこで、ふと大事なことを思い出す。
「あれ?そういや土竜って、頭が脆かったような……」
それだ。そこを狙えば、仕留める事が出来る筈だ。
そうと決まればあとは実行するのみ。走り続けていた足を止めて、土竜へと振り向く。
そんな俺の行動に、他の兵士達は走りながらも驚きの声を上げていた。
「死ぬ気かお前!?」
「へっ、俺はこんなモグラごときにやられるタマじゃねぇぜ!」
女らしくない発言をしながら、昔を思い出す。
ナイトレイドの仕事と比べたら、一級危険種の討伐なんて簡単だ。本当に怖いものは、人間という皮を被った化け物だけなのだから。
こちらに詰めよってくる土竜の勢いは増すばかりで、他の護衛達はもうダメだと叫ぶ。でも俺は、その勢いを待っていた。
「そんなに急いでるなら、今すぐに逝かせてやるよ!」
言い終えたと同時に、俺を喰らおうと向かってくる土竜の頭目掛けて剣を突き出す。突き出した剣は、向かってきた土竜の勢いによって頭に深く刺さっていった。
土竜は悲鳴のような鳴き声を上げて暴れ回り、血を浴びた俺は反射的に剣から手を離し、その反動で尻餅をついてしまう。
数秒程土竜を見上げていると、断末魔の叫びは収まり、土竜は地面に倒れた。
「……はぁ~、やっと一匹目かぁ……」
土竜が死んだと確認して、安堵する。
しかしこの仕事は貴族サマの護衛が目的なのであって、一匹討伐すれば終わり、というわけではなかった。
「こりゃあ、先行きが不安だな……」
一級でも十分強いとはいえ、危険種ごときで苦戦してしまうなんて。
このままでは革命軍に入る前に死んでしまうかもしれない。そう直感した俺は今まで以上に努力しなければと思い、この先必ず出逢うであろう相棒のクローステールに頼らずとも戦えるように、剣の腕をもっと磨くことにした。
土竜は頭が弱点?
ははっ、なんの話かな?それも僕の捏造だ!((