糸使いちゃんの逆行物語   作:96ごま

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今回また兄さんの視点があります。

ナジェンダさんとエスデス様の視点はまだ一回だけなのに、こいつもう三回目かよ……。

シュラ「解せぬ」(←まだ一度もない人)


待ち合わせを斬る

昼だというのに周りの木々によって薄暗い廃屋。周囲に人の気配がないその場所に集まった男女が、三者三様の反応を見せていた。

 

「……なぁ、兄さん。ここで俺とあんたが合流するまでは予定通りだけどよ……」

 

「……なんだい?」

 

「なんでシュラが一緒に来てんだよ」

 

一人は顰め面。一人は困惑の色が混じった苦渋の表情。最後の一人はどこ吹く風と聞き流している。

 

この廃屋に集まる約束。それはラバックとリネットの二人だけの筈だったが、そのタイミングを図ったかのようにリネットと共に現れたのは、彼女達にとっては招かねざる客、シュラ。

 

彼がここに居る理由は、数分程前に遡る。

 

 

 

 

 

~リネットside~

 

準備を済ませ、お世話になった人達に別れの挨拶を終えた後。旅路に必要な荷物を抱えた僕は、宮殿の敷地から出るまで顔見知りの兵士達に見送って貰おうとしていた。

 

「なんか、凄く罪悪感を感じるなぁ……」

 

周りに聞こえないようにボソリと呟く。

 

予定通り実家に帰ると告げた時は、みんな驚きつつも寝不足でやつれた顔の僕を見て無理もないと言んばかりに慰めてくれた。でも妹とその上司の為とはいえ、親しくなった彼らを騙しているのには変わらない。その罪悪感は恐らくずっと拭えないと思うと、胸が苦しい。

 

きっと、彼らは僕の寝不足の原因はショックによるものだと思い込んでいるんだろうけど、本当はただ緊張して眠れなかっただけ。そのおかげであまり怪しまれずに上手くいったっていうのもなんだか申し訳ない……。

 

緊張や罪悪感、そして帝都で出来た友人達との別れという寂しさで、もうよくわからないけどとにかく押し潰されそうな気分に陥りながら重い足を前に運ぶ。

 

するとその時、宮殿の奥から大きな爆発音がした。

 

「な、何事だ!!?」

 

「おい!あの煙が出てる場所って謁見の間じゃないか!?」

 

突然の出来事にざわめく中、側に居た兵士の一人が遠目で見える黒煙が上がる場所を指差し、騒然とする。なによりも驚きなのは、そこが皇帝陛下が居る謁見の間だという事。

 

僕はというと、突然起きた騒動に頭が追い付かず、ただただ目を張るだけだった。

 

しかしその視線の先…謁見の間で割れた窓の先に、人影のようなものが見えた気がした。

 

と思ったのも束の間で。それは僕の真横を通り過ぎるように勢い良く吹っ飛んできた。早い展開に驚きの声すら出ず、思わず立ち止まったまま唖然とする。

 

「~~っ!!あンのカミナリジジィ…邪魔しやがって…!!」

 

吹っ飛んできた何かの呻き声にハッとし、反射的に振り向く。するとそこに居たのは、

 

「シ、シュラさん!!?」

 

最近探してもずっと見つからないと頭を抱えていた妹の悩みの種の一つ、銀髪の掛かった褐色肌の顔に付いた十文字の傷跡が特徴的なシュラさん。

 

そんな彼は今、大の字で倒れた状態でかなり辛そうに表情を歪め、そこが痛いのか腹を押さえている。怪我でもしたのかと心配した僕は彼の元へと駆け寄った。

 

もしかしてさっき飛んできたのってこの人!?すんごい勢いだったけど、あそこで一体何があったんだ!?

 

気になってもう一度先程の爆発現場を窺う為に振り向こうとしたが、その方向から感じるビリビリとした静電気のような殺気によって、横目で見る事すら出来ない。

 

「んあ?あー、リネットの兄ちゃんか。ちょうど良い、探す手間が省けたぜ」

 

「えっ?探す手間ってどういう意味……」

 

「っと、ンな事よりさっさと逃げねぇとな。行くぞ」

 

「は!?え、ちょっ!?」

 

まだ苦痛の表情は消えてないが、彼は軽い身のこなしで起き上がった。かと思えば、有無を言わさずに僕の襟を掴み引き摺っていく。

 

けれどよろよろとした足取りで数歩歩いたところで、彼はすぐに立ち止まってポケットから何かを取り出した。

 

「じゃあな、親父ィ。次会う時はそのどてっ腹に派手な穴開けてやるぜ」

 

シャンバラ発動。彼がそのワードを告げた瞬間、足元に漫画で見た事のある魔法陣に似た不思議な円が浮かび、そこから放たれる光の眩しさに思わず目を覆う。

 

その光が収まった頃に目を開けてみたら、そこには驚いた様子のラバックが居て、冒頭に至る。

 

 

 

 

 

~ラバックside~

 

「__……以上、僕の回想はこれで終わりデス」

 

「……なんだそれ」

 

正座で俯き、懺悔するように経緯を説明したリネット兄さんに思わず呆れる。

 

兄さんの話を聞いた限りでは、彼は俺とナジェンダさんに言われた通りにしていたところを巻き込まれた。つまりこのバカに誘拐されたようなもの。といっても、その場に居た兄さんと親しい人間以外は彼を心配するどころか眼中に入れてすらないと思うが。

 

でも爆発とやらの原因は、恐らくブドーの仕業。皇帝の前であるにも関わらず謁見の間で大臣に殴り掛かって暴れ出したシュラにキレて、アドラメレクを発動させた結果だろう。それを回避したシュラは、避けた隙にぶん殴られて兄さんの元まで吹っ飛んだ、といったところじゃないかと俺は推測する。

 

こんにゃろう、あと何回俺らを掻き乱せば気が済むんだ……。それともこのままそうやって妨害し続ける気か?もういっぺん殺して三周目の世界に送ってやろか?ああ?

 

って言ってやりたいけど、前世云々に触れる文句の言い方は兄さんの前では言えないので堪える。

 

「どっかの堅物ジジィに邪魔されるのはわかってたが、皇帝の前で暴れた方が親父も無視出来ねぇと思ってな。親父をぶん殴るのは後のお楽しみ、って事にしとくぜ」

 

「お前、結構無茶な事するなぁ……。そこまでして革命軍に入りてぇのかよ?」

 

「まぁな。前にも言った通り、俺は同じ事を繰り返すのはつまんねぇんだ。別にお前らみたいに信念があるとかそういうのはねぇから、帝国に拘る意味もねぇし、今度はそっちで遊ばせて貰うぜ」

 

「そーかい。ま、帝国の戦力が減ってくれるなら有難いけどよ」

 

こいつは裏切る可能性が高いから、『仲間が増えた』なんて考え方はしない。でもこれで後に出来る敵勢力が一つなかった事になるかもしれないのは大きい。厄介な帝具使いとの戦いが減るし、被害者だって大幅に減る。その点は大歓迎だ。

 

だが、『同じ事を繰り返す』『今度は』という言葉に、この中で唯一逆行していない兄さんが目をパチクリとさせていた。

 

でも変に誤魔化す方が不自然だと考えて、俺は話題を変える口実の意味も含め、キョロキョロと周囲を警戒し始めた。

 

「つーかさ、こんなのんびりしてていいのか?宮殿で暴れたなら追手とか来るんじゃあ……」

 

冷や汗を流すそれは演技ではない。話題を変える口実とは言ったが、本当に追手が来たら怖いからな……。こいつに巻き込まれて計画が頓挫したり帝国の奴らに殺されるのだけはごめんだ。

 

だが帝国に追われてる本人であるシュラは平然として俺を宥める。

 

「そう慌てんな。こんな事もあろうかと、これまで何度か辺境まで遠出してるから、親父やあの堅物のおっさん達は俺がそっちに逃げたと思い込んでる筈だ。……まぁそもそも、親父はこんなしょーもねぇ事にわざわざ軍を動かしたりはしねぇからな。俺の手配書を貼るだけに留まるに違いない」

 

「……んん?どゆこと?人探しだけの為に軍を使わないっていうのはまだわかるけど、事前に他の街に行ったからってそんな一瞬で行けるわけないんだから、シュラさんを探す帝国の捜索範囲は帝都周辺まででしょ?」

 

何言ってんだこいつ、みたいな感じで首を傾げる兄さん。しかしその隣で怯えていた俺はハッと目を見開く。

 

「なるほど、シャンバラか」

 

「シャンバラ?」

 

帝具の存在を知らずにまた疑問俯を浮かべる兄に、俺は帝具という代物がどんなものなのか。そしてシュラが所持している帝具、次元方陣『シャンバラ』の性能を教えた。

 

 

 

 

 

「__……で、自分の足で辺境に行ったシュラはそこにシャンバラのマーキングをしていて、帝国の奴らはこいつがそっちに転送したかもしれないと思い込んで捜索を諦める…つまり離れた場所のマーキングは帝国を欺く為のダミーみたいなもの。そうだろ?」

 

「ご名答。流石将軍二人に認められている優等生だな」

 

「はへぇー…それで気付いたらここに居たんだね。理解は出来ないけど、納得はしたよ」

 

黙って聞いていた兄さんは俺の説明を咀嚼するように感想を言う。

 

まぁ、帝具を扱う俺達もその原理やらなんやらを全く理解してないまま使ってるんだけどな。こればかりは作った本人達でしか一生わからないだろう。

 

「因みにファーム山がある南には行ってねぇから、ここから転送して近道するのは不可能だぜ。だが裏を返せば、そっちに手配書が回って警備が厳重になる心配はねぇ」

 

「おい、南にはって、そっち方面以外には行ったって事かよ!?それ逆に怪しまれるだろ!」

 

「別に南以外の全方面に行ったわけじゃねぇよ。いくら世界を旅した事があるとはいえ、流石にこの短期間でそんな行けねぇって」

 

いやいやと手を振って否定するその返答を聞いて、そうかと安堵する。

 

その時兄さんが「世界中を旅しただなんて凄い」とか言って感心してたけど、シュラは「まぁな」と適当に返しただけ。こいつなら自慢気に語りそうなのにそうしないって事は、それは前世での経験なんだろう。

 

頭の隅でそう考えつつ、俺は帝国の地図を広げて赤いペンを用意する。そしてそのペンを指で器用に回して遊びながら、シュラに今回はどこに行ったのかと情報提供を求めると、奴は正直に応じてくれた。

 

もうこうなったらなるようになるしかない。そう腹を括って、三人で遥か南にある革命軍の前線基地、ファーム山までのルートを一から考え直す。

 

地方軍の雑兵だとしても、少しでも帝国の人間が居そうな場所は極力避け、尚且つ途中で最低限の物資の調達も出来そうな道程はどこか。口に出さずとも前世の記憶も照らし合わせながら、ああでもないこうでもないと話し合って。やっと話が纏まった頃には、もう空は朱色に染まっていた。

 

「んじゃ、そろそろ出発するか。なんか妙なメンバーだし、最初の予定よりもかなり時間掛かっちまったけど」

 

地図とペンを仕舞って、各自腰を上げて荷物を背負い、フードを深く被る。

 

 

 

こうして、外の世界の厳しさをまだ知らないただの一般人と、信頼性なんて微塵も無い親玉の息子。そんな二人を率先して歩き出す見た目と中身の性別が一致していない元殺し屋の俺という奇妙な短い三人旅が、前世とは全く違う可笑しな運命の糸が絡み合った事によって始まった。

 




次回!シュラ死す!?デュ○ルスタンバイ!(大嘘)

ラバ「ネタ古っ!!すっげぇ古いのチョイスしたなお前!?」

リネ「いや、そんな事よりエイプリルフールだからって理由で一人勝手に殺されちゃってるよ…?」

ラバ「あ、ほんとだ。あいつまた殺されたのかよ」

リネ「でも嘘付いて良いのは午前中だけだよ?」

そうだけど絶対ではないっぽいから許して下さい(震え)

シュラ「いいや許さねぇ。お前はここでシバく」

超必殺!!ログアウト!!!(逃亡)

ラバ「ちょっ!?それ俺のパk……」

(強制終了)
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