糸使いちゃんの逆行物語   作:96ごま

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なんと、本日は『糸使いちゃんの逆行物語』の連載開始からちょうど一年ぴったり!一周年ですよっ!書き上げたの結構ギリギリでしたが!((

シュラ「……で?それがどうした?」

えっ

ラバ「冷たっ!?態度超冷たっ!?」

リネ「うわ可哀想……あの人悲しそうな目をしてるよ…?」

シュラ「だって一周年記念だからって何かやるわけでもねぇんだろ?結局はただお前が騒ぎたいだけじゃねぇか」

アッ、ハイ…ソウデスネ…()

リネ「あらら、作者が正論言われていじけちゃった」

ラバ「何この気まずい状況……。えーっと、今回の視点は前回に続いてまたシュラのダンナらしいです」

シュラ「つまり、この作品の一周年を飾るのはこの俺様だな!」(ドヤ顔)

ラバ「さっき辛辣な事言ってたのにめっちゃ嬉しそうだな!?」

リネ「視点聞いた途端に手のひら返しするの早くないかい君!?」

シュラ「五月蝉ぇ!!今回は俺が主役だァ!!!」

あ、一応言っとくけど今回まったり回なんで。シュラさん視点っつってもあんま活躍するとこないよ。

三人「「「えっ」」」


感謝を斬る

あれから暫く経ち、まだ完治とまではいっていないが、ラバックが漸く動けるようになった頃。今日の俺はタツミと一緒に任務をする事になっていた。

 

そしてちょうどアジトを出ようとした時、

 

「あ、居た。おいシュラ、タツミ。これ忘れてるぞ」

 

ひょっこりと現れたラバックが、弁当らしき包みを俺ら二人に渡してきた。

 

「おー、悪ぃ悪ぃ。危うく昼飯抜きになるとこだったぜ」

 

「俺も完全に忘れてた。わざわざ持ってきてくれてありがとな、ラバ」

 

「礼なんていいよ。でもそれ食ったら後で感想聞かせろよ。弁当どころか料理自体かなり久々だから、いまいち自信ないんだよね」

 

……今、こいつはなんと言った?

 

自分が作ったと言ってるに等しい台詞を聞いて、思わず耳を疑う。普段はリネットかアカメが飯や弁当を作るが、今日はラバックの手料理、だと…?……ダメだ、嬉し過ぎてニヤけちまう。

 

「……おい、何ニヤついてんだよダンナ。鏡で自分の顔見てみろ、すっげぇ気色悪ぃぞ」

 

「いや、お前の手料理なんて初めてだからな。これが愛妻弁当ってやつか」

 

「は?勘違いすんな。タツミの分もあるだろ」

 

「え、両方俺のじゃねぇの?」

 

「ちょっ!?俺の弁当まで食うつもりだったのかよあんた!?そういうのはアカメだけにしてくれ!」

 

「まぁ今のは半分冗談として」

 

「残りの半分は本気かよ!?」

 

俺の冗談を真に受けて抗議するタツミに、悪かった悪かったと適当に言ってあしらう。

 

「ラバック、一体どういう風の吹き回しで俺らの弁当を作ったんだ?今日は槍でも降るのか?」

 

「うっせぇな……こないだの礼みたいなもんだよ。ほら、タツミも怪我してたのに俺を運んでくれたんだろ?だから今はこんぐらいしか出来ないけど、感謝の気持ちくらいはちゃんと伝えないとなって……。でもいらないならその辺にでも適当に捨ててくれ」

 

予想外過ぎて訝むと、照れ臭そうにしながらそう言われた。可愛過ぎかこのツンデレ娘。

 

「こんな貴重なもの捨てるわけねぇだろ。お前の手料理なんて一生に一度食えるだけで奇跡なんだからその味を忘れないように大事に食うわ」

 

「お前のその俺に対する信仰心みたいなやつはなんなの…?マジでキモいよ…?」

 

本音を言っただけなのになんかすげぇドン引きされた。弁当を作ってくれるなんて優しいと思ったら急に辛辣でちょっと傷付く。

 

「まぁいいや。用はそんだけだから、俺はそろそろ部屋に戻るよ」

 

そう言ってラバックはひらひらと手を振り、自室へと戻って行った。そしてそれを見送った俺とタツミも貰った弁当を荷物に入れ、その中身を開ける瞬間を楽しみにしながら仕事に向かう。

 

 

 

 

「__……久々に作ったとは思えねぇなこれ」

 

標的とその警備の確認を終えた昼時。自信なさげだった割にしっかりしている弁当の中身に、俺とタツミは驚いた。

 

小振りのハンバーグやミートボールなどといった俺の好きな肉料理に加えて副菜のサラダを添えられたそれは、健康重視で物足りないリネットや、逆に胃が破裂しそうな程ボリュームのあるアカメが作るそれと違って偏りがなく、ちゃんとバランスを考えて作ってくれたのが伝わる。味付けも文句なし。むしろ毎日食べたいくらいだ。

 

流石ナイトレイド一の器用自慢を自称するラバック。料理もこんなに上手いとは、きっと将来良い奥さんになるに違いない。

 

「はぁー、あいつどうやったら俺の嫁に出来っかな……」

 

「シュラって基本そればっか言ってるよな……。ずっと気になってたんだけど、どういうきっかけでラバの事好きになったんだ?」

 

「ん?そうだなぁ……一目惚れ、かもな」

 

「かも?」

 

「初対面の時は顔が好みだってすぐ思ったが、当時はこういう恋愛感情とか知らなかったからな。その時点で好きになったのか、まともに会話するようになってからなのかは自分でもわかんねぇんだ。だから、気付いたら好きになってた、ってのが正しいな」

 

「へぇ……恋ってそういうもんなのか?」

 

「さぁな。人それぞれなんじゃねぇの?ま、どちらにせよいずれお前にもわかるさ」

 

ラバックが言ってた未来通りならな、と内心で呟きながら。

 

タツミは、そうかなぁ?と考えるが、自分にはまだ難しいと判断してそれ以上の思考は諦めたようだ。

 

タツミの未来については全く興味ない。だが前回ラバックと出会うきっかけをくれたこいつには、多少は感謝してなくもない。

 

「にしても、シュラ達が離反した時の話も聞いたけど、好きな子の為だけに親を裏切ったってすげぇよな。俺にはそんなの考えられねぇ。……もしかして、元々父親を恨んでたとか?」

 

「いや全然。むしろあのクズっぷりに憧れてたぜ」

 

「憧れ……」

 

信じられない、と言いたげな顔をするタツミ。そりゃそうだ、俺の親父は帝国を腐らせた悪の親玉みたいな存在なのだから。

 

だがその息子である俺はそんな親父の強大さに憧れを抱いた。逆らう者を排除し、恐怖を与え全てを支配し、一つの国を思うがままにしている親父の事を。力こそが全てだと俺に教えた親父を越えれば、俺は一人前になれると思っている。

 

しかしその野望は今は後回しだ。それよりも優先したい事が出来てしまったから。

 

「まぁ、うちの場合は親父があれなおかげで色々狂ってるからな。普通の家とは感覚も違ぇんだよ」

 

「……じゃあ、なんで離反を?」

 

「それはさっきお前が言っただろ?ラバックの為だってな」

 

とは言ってみたものの、タツミは納得してない様子。どんな理由があっても迷いなく身内を裏切るという考え自体が理解出来ないらしい。でも多分、それが普通というものなのだろう。

 

「それよりお前の箸全然進んでねぇぞ。残すなら俺が全部貰う、寄越せ」

 

「いやいやまだ食ってから!ってかラバの手料理だからってマジで俺の分まで取ろうとすんなよ!お前はアカメか!?」

 

これ以上この話しても時間の無駄だと思った俺は箸が止まってるのを指摘し、タツミの唐揚げを盗もうとするも阻止される。だが大食いのアカメと一緒にされたのは心外だ。

 

とまぁおかずを取り合ってギャーギャー騒ぎながら食事をした後は難なく任務をこなし、俺とタツミは真っ直ぐアジトへと帰還した。

 

 

 

 

 

「おっ、帰ってきたか。おかえり」

 

アジトに帰ってすぐ出迎えてくれたラバック。弁当の感想が気になってそわそわしてるのがわかり易くて可愛らしい。

 

「ただいま。ラバの弁当美味かったぜ」

 

「そう?なら良かった。まぁ今回のはリハビリみたいなもんだったからな。次作る時があったらもっと美味いの作ってやるよ」

 

誉められたのが余程嬉しかったのか、ラバックは自信なさげだったのが嘘かのように腕を組んでふふんと胸を張る。

 

だがそこでアカメが俺とタツミに近寄り、こう耳打ちをしてきた。

 

「ラバはああ言ってるが、本当は何度か失敗して自信を失ってたんだ。でもお前達への感謝の気持ちを形にしてちゃんと伝えたいからって、諦めずに頑張っていたぞ」

 

「!!へぇ、そうだったのか……」

 

怪我もまだ治り切ってないのに、自分(とついでにタツミ)の為に努力して作ってくれたと知り、より一層嬉しさが込み上がってくる。

 

「わざわざ俺らの為に頑張って作ってくれたなんてな。お前も結構健気なとこがあるんだな、ラバック」

 

「べ、別にそこまで苦労したわけじゃねぇし!こんぐらい楽勝だっての!」

 

「ははっ、やっぱラバってシュラには素直じゃないよなぁ。愛情の裏返しってやつ?」

 

タツミがそう言った瞬間、ラバックが無言の腹パンを食らわせた。

 

「な、なんで…!?なんで今殴られたんだ…!?」

 

「五月蝉ぇ、てめぇは暫く黙ってろ」

 

拗ねたようにぷいっと背を向けてしまったラバックの耳がほんのりと赤くなる。だがそれに気付いたのは、彼女の努力を隣で見ていたアカメだけだった。

 




ラバックちゃんデレ回((

ラバ受けを布教したくてこれを書き始めたのがちょうど一年前だという実感は全くないですが、今後も頑張ってシュラバ中心のラバ受けを布教し続けます。なのでこれからも応援して頂ければ幸いです。引き続きこの『糸使いちゃんの逆行物語』を宜しくお願いします…!

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