そしてシュラバ難民の皆様にも悲報。今回はシュラさん不在なのでシュラバ要素ゼロだよ()
視点は意外な子です。さぁ誰でしょう?(一行目でわかる←)
はじめまして、私はサヨ。私と幼馴染みのイエヤスは帝国兵士になって故郷に仕送りをする為に帝都に来たのだけど、わけあって今はメインストリートの一角にある貸本屋、『BOOK Night』で働かせて貰ってるわ。
そんな私達は今日、怪我で一ヶ月程休んでいた店主の復帰を喜んで祝っていた。
「よっ、やっと戻ってきたな、店長!」
「クロース、復帰おめでとう。怪我をしたってリネットから聞いてたけど、もう大丈夫なの?」
「ああ。傷の痛みはもう大丈夫。でもまだ完治したわけじゃないから運動は程々にね、ってさっき兄さんに言われたばっかだよ」
「君が何度注意しても無茶ばっかするから僕は口を酸っぱくして言ってるんだよ?お説教が嫌なら心配させるような事はしないで」
「ほらまた始まった」
自分の兄であるリネットの説教にうんざりする店主、クロースはやれやれと肩を竦める。いつも通りの日常に戻ったような光景に、私とイエヤスも楽しげに笑う。
クロースの怪我は、不運な事に帝都で偶然ガラの悪い人達に絡まれて出来てしまったものらしい。やっぱり以前から思ってはいたけど、この街は治安が悪過ぎる。暗殺集団のナイトレイドはまだ一人も捕まってないらしいし、最近はもう聞かないけど、先月までは首を斬る辻斬りも出没したって噂もあったし……怖い話ばかりだ。
そんな街で暮らす自分達も他人事のように考えないで気を付けなきゃと思いつつ、未だに連絡が取れないタツミの安否がとても心配だった。
「サヨちゃん?難しそうな顔してるけど、どうかした?」
「えっ?う、ううん、なんでもないわ。ただ、クロースを襲ったのが噂の辻斬りじゃなくて良かったと思って……」
「……そか。心配掛けちゃってごめんね?」
本当に申し訳なさそうに苦笑するクロースにまた謝られて、謝まって欲しかったわけじゃないのに、と少し後悔した。
クロースは、恩人であると同時に私達の大切な友達だ。もちろんこの仕事と彼を紹介してくれたリネットも。でもあの二人は私達に隠し事をしてる。実際、兄のリネットは弟のクロースの名前を間違えそうになる事がたまにあるので、二人の名前は偽名の可能性が高いのだ。
それでも私達は二人が良い人だって信じてる。いや、信じたいから、何も疑ってないフリをしてる。この関係が続く限り、ずっとこのままでいるつもりだ。
「さて、駄弁ってないでそろそろ仕事を始めようか。今日の客寄せは常連への挨拶がてら俺がするから、サヨちゃんは兄さん達の手伝いをしてあげて」
「わかったわ。でもクロースはまだ病み上がりなんだから、体調に変化があったらちゃんと言ってね」
「うげ、サヨちゃんまで兄さんみたいな事言うの?信用ないなぁ……」
「私とリネットはただ心配性なだけよ。貴方の事は信用してるから安心して?」
「……まぁ、それなら良いけど」
信用してる、と言ったその時、クロースはどこか悲しそうな顔をしていた。けれど私はそれに気付かないフリをする。
彼らの秘密を知ったら、二人は黙って私達の前からいなくなってしまいそうな気がして……それが嫌で、辛らそうにしながら何かを必死に隠そうとしてる友達の事を、何も知ろうとせずに『信じてる』と言ってしまうのは、狡いだろうか?
そんな酷い私を知らずに仲良く接してくれるクロースは、またいつものように笑顔を作って仕事を始める。
彼が外に出て行った途端に、近所の人々や店の常連と挨拶を交わす声が聞こえてきた。久しぶり、最近見なかったけど大丈夫か、などといった知人達からの心配の声も。
「ふふっ、やっぱりクロースはみんなに愛されてるわね」
「そりゃあ常に明るくて気の利く奴だからなぁ……。俺もポジション的にはあいつと同じなのに、なんでこうも扱いが違うんだ?」
「あんたの場合はただのバカだからよ」
「ンだとぉ!?このイエヤス様のどこがバカっていうんだよ!?」
「自分で様とか言ってる時点でバカ丸出しじゃない。知り合いだと思われたくないから私から離れて頂戴」
「酷っ!?つか俺今日レジ担当だからな!?持ち場離れろって言うのかこの女!?」
「相変わらず仲良いねぇ、二人共」
本棚を整理していたリネットが私達を見てクスクス笑う。幼馴染みのイエヤスと仲が良いのは認めるけど、微笑ましそうにされるとなんだか気恥ずかしい。
しかし営業中なのに雑談していたその時、常連のお客様が入店してきた。
「おいーっす。邪魔するぜー」
「やぁレオーネ。また酒瓶を持ってきたみたいだけど、ここは居酒屋じゃないっていい加減覚えようね」
「つれない事言うなよリネット!お前も飲んでみれば酒の良さがわかるって!」
「生憎お酒は苦手だから僕は遠慮するよ」
飄々とした様子でリネットの肩を組む女性はレオーネさん。容姿が良く露出が多い服を着ている彼女は、昔からリネット達と仲の良い常連らしい。
「レオーネさんいらっしゃい。今日もお酒飲むんですか?」
「まぁね。でも今回は連れも居るから、少し控えるつもりだよ」
「そうですか……って、あれ?」
レオーネさんが視線でその連れを促したのでそちらに目を向けると、そこにはクロースとその隣にもう一人……懐かしい顔があった。
「……タツミ?」
「ん?……サヨ?」
私と目が合った途端にきょとんとした顔をするその人物は、間違いない。帝都に来る途中ではぐれたタツミだ。
すると彼の声にイエヤスも気付いたようで、慌ててレジから離れてこちらに集まってきた。
「誰かと思ったらタツミじゃねぇか!今までどこ行ってたんだよお前!」
「イエヤス!?お前も無事だったんだな!」
漸く果たせた感動の再会。喜びを分かち合うように熱い握手をする彼らの間に私も入り、
「……バカ、心配したんだから」
「うん、俺も凄く心配だった。また会えて嬉しいぜ、サヨ」
こつん、とタツミの胸に当てた私の拳の力は弱々しい。でもタツミはそんな私の頭を優しく抱き締めてくれた。
「……そこのお二人さん、うちの店でイチャイチャしないでくれませんかね」
「「っ!!?」」
突然、横からぬっと現れたクロースに驚き、咄嗟にお互い離れる。ただクロースはニコニコとした笑顔なのに目が笑ってなくてちょっと怖い。
「イ、イチャイチャだなんてそんな…!?」
「そ、そうだぜラバ!俺達はただの幼馴染みで……いだっ!!?」
「幼馴染みだぁ!?姐さん達だけじゃなく幼馴染みとかいう超羨ましいシチュエーションまで体験してるのかよてめぇ!!許さん!!もう許さんぞお前ェ!!」
「……ラバ?」
「「あっ……」」
タツミの頭を叩いた直後に肩を掴んで激しく揺らすクロースが大声で騒ぐせいで危うく聞き逃しそうになったけど、タツミがクロースの事を『ラバ』と呼んだのに気付いたイエヤスが呟いたその瞬間。騒いでいた二人がしまった、と焦りの色を顔に浮かべた。
「……なぁ、クロース。俺ずっと思ってたんだけどさ……お前の名前って、やっぱり偽名なのか…?」
遂にイエヤスが訊ねてしまった禁断の秘密。真実を問われたクロースは……。
「…………流石に、これ以上は騙せないか」
諦めたように溜め息を吐き、嘘を肯定した。
「ご、ごめんラバ!俺、つい……!」
「いいよもう。元々兄さんがしょっちゅう間違えそうになったりしてたせいで勘付かれてたっぽいし」
「いやぁ、そのぉ……だって、ねぇ…?なんでもないです僕のせいですごめんなさい」
言い訳しようとしたリネットがクロースに睨まれた事によって早口で謝罪する。しかも滝汗まで流していてとても情けない。
「まぁ、結局これも俺の我が儘だしな。付き合ってくれていただけでも有難いし、今回は許すよ。……イエヤスの言った通り、クロースは偽名だ。今までずっと騙しててごめんな、二人共」
「……ラバ。俺のせいで嘘がバレちゃったのにこんな事聞くのもあれだけど……二人に、全部話しても良いか?」
観念したように白状するラバックに、タツミが真剣な表情で何かを訊ねる。
それを聞いたクロースは顔を上げ、鋭い目付きで彼を見つめた。
「……良いのか?俺らの話を聞いたら、あの二人も簡単には故郷に帰れなくなるぞ?」
「それは……でも、このまま話さなかったら、二人と敵対する事になるかもしれないだろ?」
いつもの優しい笑顔の面影がない、突き刺すようなクロースの殺気に思わず私とイエヤスは慄く。けれどそれを向けられたタツミは一瞬狼狽えながらも、臆する事なくクロースを真っ直ぐ見据える。
故郷に帰れない?私達がタツミ達と敵対するってどういう事?
「……大事なお話中悪いんだけどさ。ここだと誰かに聞かれちまうから、奥の部屋に移動しないか?続きはそこで話そうぜ」
「……それもそうだな。このまま黙秘しても気まずいままだろうし、二人にも俺らの秘密を教えるよ」
そう言って店の奥へと促すレオーネさんとクロース。タツミとリネットも黙って二人に続く。
彼らの嘘と秘密。その真実を知ったら、私達の関係は変わらずにいられるのだろうか。そんな不安を抱えながら、私とイエヤスは付いて行った。
二人の話は後のシナリオ的に今のタイミングを逃すといつになるかわからんので、急いで展開を進めました。だからタツミが店に来る時間軸も原作よりちょっと早いけどそこは気にしちゃいけない、いいね?((
因みにうちのサヨちゃんはあんな感じですが、イエヤスはモヤモヤしたままでいる方が嫌できっかけさえあれば物事をはっきりさせようとしそう(偏見)なので、思いっきり兄弟の秘密に踏み込んで貰いました。
タツミもなんかアホの子みたいになっちゃってごめんね?原作の君ならもうちょい慎重に行動するんだろうけど、きっと二人と再会して嬉しくなっちゃったんだよね?ね?((