糸使いちゃんの逆行物語   作:96ごま

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なんかこの作品が意外と好評みたいでめちゃくちゃ嬉しい……。
たくさん頂いたご感想もいつも励みになってます、ありがとうございます!!

本編に全く関係無い前書きでごめんね!!!


誘拐を斬る

エスデスに誘k……連れて行かれた俺は、部屋に着いた途端にシャワーを勧められたので有難く借りさせてもらった。

 

「本当は私も一緒に入ってやりたいところだが、その間にお前のサイズに合う服を用意しないといかんから残念だ」

 

と脱衣所に行く直前に言われた時は正直ホッとした。彼女とまた一緒に入るのは心臓に悪いからなるべく遠慮したい。でも……。

 

「うむ!良く似合っているぞ、ラバック!」

 

「……アリガトウゴザイマス」

 

エスデスが用意してくれたのは、可愛らしいメイド服……しかもミニスカである。

 

いやいやいや!なんでメイド服!?任務で女装した経験は一応あるけどさ……けどあれは私服の上だったおかげでまだ耐えられただけだから!

 

太股に空気が触れる違和感が気持ち悪くて、短いスカートの端を両手で掴みながら思わずもじもじと脚同士を擦り合わせるようにする。

 

つかさっき言い忘れてたのになんで俺のスリーサイズ知ってるのこの人!?俺言ってないよね!?知ってるのはナジェンダさんだけだった筈なんだけど!?

 

気付いてしまった謎に悪寒を感じた。更に言うと下着のサイズも上下どちらもピッタリだ。この人マジでストーカーなんじゃないかって嫌でも疑ってしまう……。

 

「しかし、まだ何かが足りないな……」

 

ふむ、と顎に手を添えるエスデス。

 

これ以上何を足すっていうんだよ。頼むからもう勘弁してくれ……。

 

「ああ、そうだ。これがなかったのか」

 

カチャリ。

 

「え」

 

その音は俺の首辺りから聞こえたので触って確認してみると、そこにあったのはエスデスが手に持つ鎖に繋がっているベルトのような首輪だった。

 

「よし、これで完璧だな!」

 

「何が!?全然良くないですよねこれ!?なんで首輪!?」

 

満足気にふふんと胸を張るエスデス。俺は必死に首輪を外そうとするが、ビクともしない。

 

もしかしてこれから忠犬になって奉仕しろとかそういうプレイをさせられるのか…?だからメイド服を!?流石ドS…考えてる事がヤバ過ぎる……!!あとこれなんかデジャヴ感じるんだけど!

 

持ち前の想像力を発揮しながら思い出していたのは、タツミがエスデス主催の都民武芸試合に出場した時の光景だ。

 

「これでお前を逃がしてしまう心配はなくなったな。これからは我が家のようにここで暮らすがいい」

 

心底嬉しそうに両肩をポンと掴まれて、室内に謎の穏やかな空気が流れた。

 

あー…これ監禁ってやつっすか……じなくて!

 

「こんなのがあったら仕事が出来ないじゃないですか!俺明日も任務があるんですよ!?」

 

若干納得してから首輪を外してくれと訴える。

 

少しでも仕事をサボったら後々起こる何かの伏線が無くなるかもしれない…。そうなると自分が知っている未来からまた脱線して後から行動し辛くなってしまう。しかしエスデスは、

 

「ああ、それなら安心しろ。ナジェンダにはラバックは私が頂いたと伝えておくからな」

 

「それむしろ火種を撒く行為だろ!安心出来る要素皆無だからな!?不安しかねぇよ!」

 

「何をそんなムキになっている?お前は私と一緒に居て嬉しくないのか?」

 

「あっ!いやその……エスデス将軍のご厚意は有難いんですけど、やっぱり俺はナジェンダさんの部下なので……」

 

本気なのか冗談なのか全くわからない発言に思わず私語でツッコんでしまったのを反省しつつ、ここから逃げるチャンスを窺う。

 

流石にこのまま居候してしまうのは色々と問題が起きてしまう。美女との添い寝……あの豊満な胸に飛び込んで最高の気持ちで眠れる可能性があるのはとても魅力的だけど、耐えろ俺。我慢するんだ。

 

「まだそれを言うか。ナジェンダの部下など辞めて、私の下に来ればいいといつも言っているだろう?」

 

エスデスが放った言葉は、もう聞き飽きた誘い文句。けれど、

 

「っ、俺はあの人に憧れてここに入ったんだ!いくらあんたの頼みでも、これだけは絶対に譲らないつもりだ!」

 

『簡単な事だろ』と言われた気がして、つい感情的になる。

 

ナジェンダさんに一目惚れして志願した帝国兵士。俺はあの人に一生着いて行くと幼いながらに決意したから逆行した今もここに居るんだ。それなのに彼女を裏切るような事をしたら、自分自身を否定するのと同じだ。

 

声を荒げて反抗すると、目を細めたエスデスが鎖を引き、それに繋がった首輪を付けられている俺は彼女に抱き付くような姿勢になってしまった。

 

「勘違いするな。私がお前を従わせるんだ。貴様に拒否権はない」

 

「ッ!!」

 

見上げた先に現れたのは、文字通り氷のような冷たい目。逃がさないと言うようにその瞳に映された俺はゾクリとする。

 

ここで動いたら死ぬと直感してしまう程、その迫力は凄まじかった。でも、殺されるかもしれないと理解していても、この女には例え演技でも屈したくはない。

 

「……ふふっ、やはりお前は私から目を逸らそうとはしないのだな」

 

「……えっ?」

 

突然、エスデスは鎖を引いていた手を緩めて愉快そうに笑う。でもその笑みと言葉の意味は俺にはわからなかった。

 

「帝国最強と呼ばれている私の前では、皆恐れてすぐに逃げ出そうとしてしまうからな。そんな弱者に興味は無いが、お前のように反抗する者は従わせ甲斐があって好きだぞ」

 

今、エスデスに気に入られてしまった理由が漸くわかった気がする。彼女が気に入ったのは、俺の反抗の目。簡単には屈しないその目が、エスデスのドS心をくすぐらせてしまっていたらしい。

 

なるほどね…。つまりエスデスは、方向性はまた少し違うけど、シュラと同じで俺の事を新しい玩具みたいに思ってるってわけか……。

 

バカにされている。そんな憤りを感じながらも、こいつ等から見たらバカにされるのは当然かと冷静に思っている自分もいる。

 

「それに……お前の目には時折、ただの兵士とは思えん殺意が宿されているように感じる」

 

エスデスは心の奥を覗くように、真意を確かめるように真剣な目で俺の瞳を見つめていた。

 

ナイトレイドでは後方支援担当だったが、どうやら俺の暗殺者の名は伊達ではなかったようだ。

 

「最初は私と同じで危険種を狩って生きてきたのかと思っていたが、調べてみたところ、地方の大商人の娘であるお前にそんな経歴はなかった。……ラバック、貴様は一体何者なんだ?」

 

「…………」

 

核心を突くようなエスデスの質問。

 

まさか殺気だけでここまで怪しまれていたとは思ってもいなかった。なんと答えるべきか。どう誤魔化せば彼女を納得させられるだろうか……。いくら考えても思い付かなかった俺は口を閉ざし、沈黙が部屋を包む。

 

「……答えるつもりはない、か…。まぁ良い、それはまたの機会に聞かせて貰おう」

 

意外とすんなりと今のところは諦めてくれたらしく、俺は緊張で詰まっていた息を吐き出した。

 

「仕方ないから仕事がある時間は自由にさせてやる。その代わり、ちゃんとここに帰って来ると約束しろ。でないと……」

 

「あーもう!わかりましたよ!ここに居候すればいいんでしょ!?」

 

それ以上は聞きたくないと耳を塞いで了承すると、エスデスは「わかれば宜しい」と言って頷いていた。

 

「あと、いい加減この首輪を外してくれませんか…?邪魔過ぎてまともに生活出来ませんから……」

 

「ふむ、確かにそれもそうだな…。逃げないと約束もしたならばまぁ良しとしてやるか……」

 

なんとか納得してくれた様子のエスデスは少し残念そうな表情で首輪を外してくれた。

 

首を圧迫する息苦しさからやっと解放されて、安堵する。これでペット生活は回避出来た…と信じたい。

 

「あ、そういえば裁縫道具とかってここにあります?」

 

「む?まさかあれを縫うというのか?」

 

メイド服姿のままでいるのは流石に嫌なので、シュラに破かれた服を縫ってそれを着直そうと考えた。

 

かなり豪快に裂かれてるけど、時間さえあれば完璧とは言えずとも直せる筈だ。それに、俺は糸の扱いには結構自信があるからね。

 

「そうだな…ここにそんな物は無いが、リヴァにでも訊いてみるか……。少しの間そこで待ってろ」

 

そう告げたエスデスは私服のまま部屋を出て行った。

 

彼女の口から出た名前に聞き覚えがあるなと考えてから、ブラートさんを殺った人物だとすぐに思い出す。

 

俺の記憶が正しけれぱ、そいつは確か三獣士の一人だ。顔や素性はよく知らないが、タツミから聞いた話だとブラートさんの昔の上司…しかも将軍だったらしいとかなんとか……。そりゃ強いわけだ。

 

本当は近い内に一人で居るところを狙って殺してやりたいけど、勝てる算段が一つも無い今は何もしない方がいい。臆病な俺ならそれくらいわかるだろ?だからこの殺意は抑えろ。

 

「……仕方ねぇ。手を出せない代わりに情報集めでもやっとこうかな」

 

一人で呟いてから、改めてエスデスの部屋を見回す。こうして見るとやはり将軍の私室というのは無駄に広いなと思う。

 

すると俺は綺麗に整頓されているように見える彼女のデスクに目をつけた。

 

「チッ、流石に用心深いか…」

 

デスクの上は片付けてあったので引出しを開けようとしたが、鍵が掛かっている。

 

オネスト大臣と手を組んでいるエスデスなら、大臣から何か大事な資料などを渡されていてもおかしくはないと考えてここを探してみたが、今調べられる範囲内にはそれらしきものは一つも見当たらなかった。

 

「ま、そう簡単には見付からねぇよな……ん?」

 

デスクから視線を落とすと、一枚の紙が落ちている事に気が付く。開いた窓から入ってきた風で飛んでしまったのだろうか。

 

落ちていた紙を屈んで拾ってみると、それは何かの資料のようだった。

 

「南西の鎮圧……って、これもしかしてバン族の資料か!?」

 

帝国に反旗を翻したバン族を鎮圧する為に派遣された遠征軍が劣勢だという報告書がエスデスの私室にある。という事は、そろそろナジェンダさんが帝国に失望する時期が訪れる。彼女の離反もそう遠くはない。

 

「危ねぇ…寄り道し過ぎたせいでこっちに通達が来るまで気付くのが遅れるところだったぜ……」

 

早くエスデスの目を欺いて、自分の死亡記録の偽装準備をするべきだ。前世ではナジェンダさんと同じタイミングで離反出来なかったが、今度こそ同行して彼女を守らねば…。

 

そう考えていると部屋の扉が開き、その音にギクリと肩を揺らす。

 

「待たせたなラバック。……ん?そこで何をしているんだ?」

 

「い、いえ!落ちてた紙を見付けたので、大事な書類ならちゃんと戻さなきゃと思って……」

 

「む?いつの間に落としてしまっていたのか…。それはすまなかったな」

 

急いで立ち上がって手に持ったままだった報告書をエスデスに返す。それと同時に、エスデスから俺が頼んだ裁縫道具が手渡された。

 

礼を告げてベッドの縁に座ってから借りた針と糸の状態を確認し、破れた服を早速縫い始めると、エスデスが「ほう」と感心の声を上げる。

 

けどそれだけではなく、彼女は俺の隣に座って肩にピッタリとくっついていた。なんだか恋人みたいで一瞬胸が高鳴ってしまうが、こんなやり取りを続けられるとしたらそう簡単には逃げ出せないだろう。

 

今日はなんか色々あり過ぎてもう疲れた……。今すぐに寝たいけど、こんな格好で寝るなんて絶対にごめんだ。早くこれを直して着替えないと……。

 

服を縫う手を止めずに溜め息を吐いて、これから暫く続くであろう軟禁生活からの脱出方法と、俺の離反作戦は明日考える事にした。

 

 

 

__翌朝。俺はエスデスの柔らかい胸の中で死に掛けていた。

 

願望通りにふくよかな胸に顔を沈められた時はもう死んでもいいと思える程幸せな気分で寝たけど、息が出来ない。冗談抜きで死ぬ。

 

前世でこんな体験をしていた年上キラーことタツミから相談を受けていた俺は幸せな悩みだなと心底妬んでいたが、なるほど、こりゃ困るわ……。

 




逆行中のラバックを怪しむエスデスさん。
でも作者はその場のノリでいつも書いてるから、軟禁生活からの脱出方法とかは特に何も考えていない((

ラバ「憲兵さん助けてええええぇ!!!」



書いててふと思ったんですが、ラバックはナジェンダさんの側に仕える軍に所属していたのに、なんであの時一緒に離反出来なかったんでしょうかね?
ラバの事だから、『しなかった』じゃなくて、『出来なかった』じゃないかなとは個人的に思いますけど……。

……自己解釈タグ付けとこ(忘れてただけ←)
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