とある淘汰の転生憑鬼   作:syuu

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10本編 幼少期8 「ただいま」

「「「・・・・・・・・・」」」

沈黙がその場を支配していた。

 

確かに灰神の両親は2人とも結果的に灰神を捨てているが実際には生後2ヶ月の時の話であり。

父親には、会ってすらいない。

しかし、バカ正直に灰神がこれまでの生活を伝えるということは、灰神がいた施設の人間が不自然な死に方 (隠蔽された場合は集団行方不明や不自然な研究先の移転等)をしたことと、灰神の脱走を結び付け。 危険人物、若しくは重要参考人として拘束し、別の科学者が上層部に指示を仰いでまた別の施設でもっと厳しい監視体制で研究という名の監禁を、またされる可能性があるのだ。

 

 

「・・・私は、どんなに良い子でいることを言い付けられても、痛いことをされても、静かにしろと命令されても、お手伝いをずっとやることを強制されても、踏まれても、蹴られても、寂しくても、辛くても、両親ふたりが正しくなくても、悲しくても、卑しい鬼と言われ続けても、

 

 

 

一緒に居られ、、れば、・・・・だた、 っ ぞれだげで よ゛がっだの゛に」

 

「もういい、喋るな」

「グスッ」

 

当然のことながら演技である。そんなこと言われてもいないし、両親と話し合ったことすら無い。実際、身体に拷問の後のような傷跡を作ったのは、木原等比である。

(ベクター)で涙腺と、喉を刺激して涙と嗚咽を演出しているのだ。

実に汚い。ディクロニウス特有の整った容姿を最大限利用した演技である。

しかし、水鞠と砂川はそんな灰神の演技を真に受け、貰い泣き状態に陥っていた。

「水鞠先生、衛星の映像を見せて貰えるように本部に申請しましょう。この子の両親に一発、ガツンと怒鳴ってやりたいです」

「ああ、俺も同じ気持ちだ。 早速、本部に連絡を・・・書類なんて後回しだ!!」

 

勿論、灰神はこういうお人好しな人間に会った場合、このような流れになることを予め、予想していた。

そのために、施設を出る前に命懸けで(・・・・)機械の視線(・・・・・)を全て潰したのだから。

 

 

「なんだと!?昨夜、衛星が何者かに襲撃!!しかも第一三学区外周の壁の防衛監視システムが無効化!?何故、第一級警報(コードレッド)が発令されない!?

・・・・6時間後には全て正常に作動し直しただと?」

 

灰神は(ベクター)を伸ばし、学園都市上空の監視衛星と第一三学区の各システムを全て一時停止させていたのだ。学園都市製の最新技術機器はその精密さ故に頑丈に作られる。

しかし、物質を透過し内部に容易く衝撃(ダメージ)を与えられる(ベクター)を持つ灰神には全く意味をなさない。

ただし、(ベクター)は灰神の細胞同士を繋ぐ力を使用しているため。使い過ぎると体の組織が崩壊し溶けてしまう。なので、できるだけ細く小さく(ベクター)を発動させ(俗に言う省エネモード)、体の負担を軽減しようとしたところ、 これが上手く行き、施設から2km先の公園まで移動できる程の余力も有ったのだ。

 

結局、水鞠と砂川は灰神の昨夜の行動を確認する事のできる資料を見つけることは叶わず。

二名の警備員(アンチスキル)は両親の捜索を打ち切り灰神のIDを置き去り(チャイルドエラー)として発行を要請した。

 

灰神としては、国籍すら危うい実験動物状態から人間としての権利を一応保証された身分となったのだ。

 

しかし、唯の教師であり、一介の警備員(アンチスキル)でしかない二人はそんな事情を知らない為、非常に後ろめたい気持ちとなっていた。

 

 

 

 

2日後、

灰神は置き去り(チャイルドエラー)の施設である『あすなろ園』に引き取られた。

「初めまして。あなたが灰神柳君ね?」

「・・・こんにちは」

「すみません、園長先生。わざわざ、お迎えに来て下さって助かります」

二十代後半の女性が第三五支部に灰神を迎えに訪れ。水鞠が見送りをしていた。

「恰好良い角と、綺麗な髪の色ね」

「・・・・」

「あの、園長先生ちょっと」

灰神の容姿については予め聞いていたのか、大して驚きもせず。その容姿の感想をはっきりと伝えた。

すると、水鞠が園長先生を別室で灰神の事情を詳しく話そうとする。

 

「あの子、容姿のことで両親に虐待されていたらしいんですよ」

「分かりますよ。職業柄こういうことは、よく聞きます。だからこそ、そういう子は自分を肯定して自信を持たせなければいけないのです」

「後、今は服で隠されていてわかりませんが無数の傷跡がありますので、他の子達とは別室の部屋で着替えをさせてやって下さい。あの子は、・・・一人で着替えができますので」

「・・・わかりました。大丈夫ですよ、(うち)の年上の子達は面倒見が良いですし。同年代の子も3、4人程居ますからすぐに仲良くなると思います」

 

 

 

 

 

そして、園長先生にあすなろ園に連れられ自己紹介をすることになった。

「皆さん今日からまた一人、新しい家族が増えます。拍手で迎えましょう。

さ、いらっしゃい」

園児たちの小さな手の拍手が、灰神を迎え入れる。

「・・・初めまして、灰神柳です。よろしくお願いします」

「はい、みんなーせえ~のっ「「『お帰りなさいー』」」」

「お帰り?」

無難な挨拶をすると、園長先生が園児と声を合わせて予想外の返事を返してきたのだ。

 

「そうよ。このあすなろ園は初めて来た子を家族として迎え入れるために、この挨拶をするのよ

此処はあなたの新しいお家よ。例え、これから出て行くようなことがあってもいつでも、いらっしゃいね」

 

「・・・!じゃあ、こう言った方が良いですよね?」

灰神は少し考えると、何か閃いたように言葉を紡いだ。

 

 

 

「ただいま」

 




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