今回は
"気軽"を司る『木原』
彼は、表向きは『木原』らしからぬ人間生活を送っている。
彼には多くの友人がおり、毎月に一度はカラオケや飲み会を"気軽"に開いたり。
"気軽"に転職しながら『外』で
姉の心配を余所に毎日三食"気軽"にカカオ食品で過ごしていたりと。
毎日"気軽"に生活を続けている。
しかし、少しでも彼の裏事情を知る者にとって木原能宗ほど最も木原一族らしい『木原』を有していることに納得してしまう。
彼自身、幼少期から他人を"諦め"させ、終わらせる事に長けた『木原』を有している姉や他の一族の行動を見るほど自分がどれほど『木原』らしいかを理解していた。
"気軽"に飲み会に誘った友人に酔い醒ましと称して一族の誰が開発した薬品を"気軽"に勧めたり。
依頼された『
自らの危険を省みず、悪魔の所業たる実験の成果を出すために"気軽"に全財産を投資する。
どれだけ多くの犠牲者を出そうとも、逆に自分がどれだけ絶望の淵にいても彼は直ぐに『そんなものさ』と"気軽"に考えてしまう。
そして、彼の"気軽"というスタイルの『木原』の最も危惧すべき特異点は周りの人間を巻き込み、
"感染"というのは勿論周りが勝手に付けた比喩であり、どちらかというと触発や連鎖、共鳴等の集団心理に働きかけられ易いという
集団で生きている人間に取って、場の流れに上手く乗り掛かるのは、至極当然のこと。
外れた者はたとえどのような功績や人情を兼ね備えていたとしても迫害される。(能宗に取ってはそんな流れさえも"気軽"にぶち壊すが)
振り返ってみれば、人類の歴史の七割以上は戦争等の戦いによって埋められており、その原因に真の正統性が有るとされるものさえ敵対している者同士"気軽"に人と人で殺し合っている。
つまり、殺す側に取って奪ってきた命は自分達より"軽い"モノだからこそ
万引き等の罪が軽い犯罪などは"軽い"という事実が有るだけで"気軽"に犯されてしまう。
これらは、地位や権力が高い者程・・・正確には其れに浸りきった腑抜けや根性が腐りきった者であればあるほど行う傾向が見られ、人が人として集まり権力の優劣が出る以上必ず出続ける存在。
そういった者を
「実験に際し一切のブレーキを掛けず、実験体の限界を無視して壊す」ことを信条とする『木原』らしさを最も色濃く再現している。
正に、世界そのものを自分の存在意義でさえ"気軽"に考えているような思考の持ち主である。
勿論、故に彼は木原一族の中でも何倍も危ない橋を渡っているのである程度の引き際は心得ている。(心得ているだけなので実際に引いた回数は片手に収まる程度だが)
今回も一族の知り合いが開発した
その現場で自分と同じ、"気軽"な行動をする人間を目にして興味を持ち。つい"気軽"に話し掛けたのだ。
「何か問題がありましたか?」
部屋着に前掛けと白衣を羽織った長めの茶髪を後ろでまとめている男=木原能宗 に警戒しつつ、灰神は目の前の男に対し、動揺を悟られないように。声を低くして受け答える。
「いや、きみはついさっきまで、知り合いらしい
「・・・別に深い意味は無いですよ。今回、私の依頼は暴走している能力者を無効化して
身内じゃあるまいし、と本当にどうでも良さげに吐き捨て、 "それに、"と続けて不敵に笑う。
「
「!!・・・へぇ、無線の割り込みの時点で気付いていた、と?」
能宗は、予想以上の返答に驚いたのか一瞬目を大きく開き、すぐに楽しそうに口元を歪める。
「ドクター、被験体の回収が済みました」
救急隊姿の集団の一人がワゴン車から顔を出し、能宗に報告をする。
白髪の少年は、能力の演算が回復する前に即効性の睡眠薬を打たれたのか大人しく拘束されていた。
「ああ、わかった直ぐに其方に向かいますよ。
さて、つまり私達は君に見逃されていたというコトかな?」
「ああもう、どう受け取って貰っても構いませんよ」
灰神がめんどくさそうに投げ遣りな言葉を掛ける。
「因みに、少々野蛮な方法を取っていたらどうなっていたのかな?」
「!?・・・私の仕事は彼を無効化した時点で既に達成されたようなものです。・・・尤も、其方が力尽くで来るというのなら」
「「・・・・・・」」
両者の間に重苦しくも鋭い沈黙が漂う。
能宗はポッキーがなくなった右手を白衣のポケットに入れ、中の『何か』を掴み。
灰神は
「ふっ、そんなつもりは有りませんよ。これはただの確認・・・
鼻で軽く笑い、ガサゴソとビニール袋を擦らせる音を出しながら能宗は新しいポッキーを摘み、ポリポリ食べ始めワゴン車の方へ歩き出す。
「それじゃ、またいつかお会いしましょう」
灰神は、目の前のワゴン車が見えなくなるまで警戒し、完全に視界から消えたのを確認するとベクターの発動を止めて。携帯を取り出し研究所に迎えの連絡をした。
ワゴン車内
ワゴン車の中で木原能宗は自分の膝に両手と頭を付けて項垂(うなだ)れていた。
つまり・・・・落ち込んでいるのだ。
「あのードクター、どうしたんですか?」
助手の一人が先程からチョコ製品を食べない能宗を気遣い声を掛ける。
「ふ-。やれやれ、どうしてなかなか儘なりませんね」
「いや、本当に大丈夫ですか?いつものあの"気軽"さは、どこぞに!?」
行き成り顔を上げ、真剣な表情で投げかけられた言葉に助手が驚く。
「大したことじゃありませんよ。今回の任務には無関係のことだし、それほど気にするモノじゃないんだよ。ホラッ」
能宗はポケットからポッキーの箱と一緒にライターぐらい大きさの機械?を取り出し、助手に放り投げる。
「おっと、ドクターこれは?」
「試作段階の『携帯型AIMジャマー』ですよ。まだ未完成品なので使い捨ての上に効果範囲は8m前後、バッテリーはリチウム合金に特殊加工を施した物を使っても2分が限界な
「さっきの
「ええ、軽く暴走するか能力の使用に違和感を与える程度の出力は備えていたのですけどね。
当の本人(灰神)には効果が皆無。あのまま更に挑発をし続けたら、奴はぼく達の首を"気軽"に狩る気でいたね、アレは」
いつの間にか、能宗の険しかった顔はポッキーをかじる度に緩み、今度は科学者特有の未知への興味に向けられる笑みに塗り替えられる。
「わ、笑えない冗談は止して下さいよ~」
「・・・まっ、この学園都市に居る
車の窓から外の景色を焦点の合わない目で呟いたそれは、何の確信もなくただ自然と"気軽"に口から零れていた。
あ、水鞠さんは普通に眠らされただけなので生きてますよ。(わ、忘れていたわけではないので悪しからず(焦))
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