とある淘汰の転生憑鬼   作:syuu

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一ヶ月以上も更新を怠ってしまい申し訳ありませんorz

今回は暗部活動を中心に書いてみようと思います。


21本編 児童期6 血筋でも理屈でもない

学園都市の夜景による人工的な光が差す電力供給の絶たれた会議室。その室内ではある(・・)液体独特の鉄臭い匂いが部屋一杯に充満し、少し(ぬめ)りのある色水の入った水風船を破裂させたような飛沫が飛び散っており、西瓜(スイカ)やメロン程の大きさの肉塊が幾つも転がされ、血抜きを施す兎の如く逆さ吊りに天井に突き刺された人型(モノ)、それら全てが薄暗い非常灯と街明かりに照らされることにより鮮明となる、その部屋の現状を表すのなら・・・・・・・惨殺現場。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・どうすんだよ、コレ」

――あー、悪い。

「俺にも非があるけどさ、はぁ・・・ング、もうちょっと自制というかさぁ。オェ、臭い」

――いや、お前が"アレ"を見た途端に身体・・・つうよりも俺の場合、精神全体?に人に対する殺意が溢れて抑え切れなかったんだよ。

「んー、そうだよな。俺も見て気持ちの良い物じゃなかったし。・・・はあ、死臭とか血の臭いがキツいから出来ればチョンパじゃなくて血とか内臓が飛び散らない脳内血管を(ベクター)で引き千切って殺す方がビジュアル的にも環境にも資源にも優しいんだけどな・・・。

まぁ、依頼そのものは達成しているから。この惨殺死体の処理は猟犬部隊(ハウンド・ドック)辺りにでも処理させちまおうか」

脳に関わる非人道的実験を請け負っていた脳神経応用科学施設の最上階に、ほんの数分前まで肉塊(したい)を量産する側であった科学者達の肉塊(したい)が散らばっていた。その会議室内でこの施設の研究データが収まっているチップの入った(少し裂けている)兎のぬいぐるみを弄くりながら返り血ひとつ浴びずに()り残しがないか見回り散策をする角を生やした少年、灰神柳は酷く疲れた様子で生きた人間が誰もいない筈の会議室に一人で"会話"をしていた。

彼は通信機器の類いを持っておらず、念話系能力者(テレパス)の思念波や音波、信号、思考波を受信している訳でもない。しかし、独り言としては不自然であり明らかに会話が成立する(・・・・・・・)『誰か』と話し合っていた。

もし、これが全て彼の独り言だとするのなら間違いなく電波系少年としてその手の心理療法(メンタルケア)を受ける必要があるだろう。

しかし、灰神の会話の相手は実在している。

正確には、実在している(・・・・・・)と思わせる程の存在と認識せざるを得ないという意味だが。

()は、精神内限定同系統合思考体。

灰神院(かいじんいん)紅鬼(こうき)、灰神達ディクロニウスの本能が人格形成されたもう一人の人格

『DNAの声』である。

 

 

 

六時間前

 

 

 

「『プロデュース』の殲滅・・・ですか?」

「そ。それが今回の仕事よ。元々そこは、強能力(レベル3)以上の能力者を効率良く生み出す為に統括理事会からの肝入りの企画を受ける機関だったらしいけど、一部の研究チームが自己判断で独自に実験を進めていることが警備員側(・・・・)にも嗅ぎ付けられたらしくてね。

内容は"データのメモリチップ運搬の運び屋に成り代わって、実験での成果結果(メモリチップ)を受け取り次第、速やかに施設内の職員を全員殲滅"、とのことよ。詳しい場所とかの情報はさっき転送したから、今夜中には片が付くでしょ」

 

この間の警備員(アンチスキル)から応援要請任務から一週間、コーヒーの香りが広がるオフィスの一室で灰神は暗部の仕事を請け負っていた。

が、今回の抹殺対象の行動に(いささ)かならず、同じ暗部に関わる者として冷ややかな反応となっていた。

「・・・警備員(アンチスキル)程度(・・)にバレるぐらい派手に動いているって、コイツら何考えているんですか?学園都市暗部の隠蔽、情報操作が追い付かないって・・・」

「さあ?私も詳しい内容は噂程度でしか知らないわよ。でも武装無能力者(スキルアウト)とはいえ、置き去り(チャイルドエラー)だけ(・・)が、一斉に行方不明になったら素人目でも疑うと思うけど?」

灰神はどこか馬鹿にする様な顔を、伊豆舞はどこか呆れた顔をしていた。

「馬鹿の極みに尽きるアホ差加減ですね」

「・・・一応念の為に言って置くけど暗部に関わる以上、余計な詮索をするのはオススメしないわよ」

「いや、この学園都市がまともじゃないのはとっくに知っていますよ・・・」

しかし正直、灰神はこの仕事に興味を抱いている。

年々薄れ行く前々世の知識の中でも『プロデュース』は端っこの隅に追いやられていたものであった。

内容そのものはそれなりに過激なモノで、そのひとつが能力者の"自分だけの現実(パーソナルリアリティ)が具体的に脳のどの部分に宿るのかを解明するために最も単純で手短に済む手段を研究者たちは実行した。

それは被験者の頭骸骨を生きたまま外して脳味噌をクリスマスケーキのように切り分けるという実に恐ろしい内容だ。

勿論、この程度の学園都市の闇は過去を辿れば幾つも転がっているモノである。

灰神がこの『プロデュース』に今更興味を抱いているのは、その実験内容そのもののことではなく。転送された資料に載っていたデータの引き継ぎ先の研究施設の名前が。これから現れる予定の超能力者(レベル5)と、とても深い縁(・・・)のある場所であったからだ。

「だったら尚更じゃない」

「・・・はーい」

「・・・まぁ、その研究所は今夜中に消えて無くなっちゃうわけだから、灰神くんが処理をする際、全員逃がさないようにするために施設内を全部見回る必要がある訳だからその時に偶然見たくもないものが視界に入ったのは仕方無いかもねー」

やや落ち込んだ灰神を見て、伊豆舞は誤魔化すようにコーヒーを飲みながら暗に"好きにしろ"と棒読みで答える。

「モノは言いようですね」

「さぁ?なんのことかしら」

 

2時間前

第一〇学区の第十脳神経応用科学施設最上階

その科学者達はいつものように自分の職場に出勤し、毎週恒例の会議に参加していた。

彼等は学園都市の科学者であることを、暗部に関わりながらも最先端の技術に触れることが出来ることに誇りを持っていた。

配属されたばかりの最初の頃は置き去り(チャイルドエラー)を使った実験内容に戸惑ったり、竦んだりしたものの、しばらくすると平淡な周りの空気に流され使用済みシャーレの細菌を煮沸するようになんの躊躇(ためら)いもなく彼等を実験データ採取のために使い捨てることが出来る。彼等にとって、置き去り(チャイルドエラー)は何度使い潰しても幾らでも補充出来る消耗品(どうぐ)にしか見えなくなっていた。

"贅沢を覚えたダメな大人"

正に彼等の置き去り(チャイルドエラー)を使用したその施設状況の様は、プライドだけが高い愚者の行いのソレであった。

 

それでも彼等の暴走は止まらない。

 

 

実力が全く無かった訳ではなかったのが彼等の蛮行を更に加速させていた。

統括理事会からの依頼を次々とこなしていき、それに合わせるように置き去り(チャイルドエラー)を補充することが可能なこの職場に務めている自分達がまるで

"学園都市上層部に認められた"

そのようなある種の自己満足や優越感に近いモノや"どうせ他の機関も似たようなことをしているだろう"といった思考が彼等の常識を麻痺させていた。

 

「では、今月の定例会議を始める。

先ず先月に届いた『未成標本(ディフォームド)』のデータ報告の件で幾つか問題が――――」

彼等は恐れ無い、罰の意味すら理解していないのだから。

―――自分達ハ選バレタ存在デアルノダカラ。

彼等は知らない、その傲慢がいつまで続かないことを。

―――我々ハ優秀デアルノダカラ。

彼等には、想像も付かない、"勝ちが存在しない(リアルバイオレンス)鬼ごっこ"はもう既に始まっていることを。

―――モルモット風情二何ガデキルトイウノダ?

彼等は、見誤っていた。その鬼は、人から生まれていることを。仲間を救う為なら文字通り世界を敵に回す者だと。

――化ケ物(のうりょくしゃ)ハ実験台トナリ大人シクシテイレバ良イノダ。

 

 

一つの硝子瓶に入っていた"小さな命"であったものが(・・・・・・・)

暗殺から殲滅に、暗殺者(アサシン)淘汰者(セレクター)に変えてしまう。

 

血筋でも理屈でもない、遺伝子に刻まれた(ほんのう)が狂気を生み出すまで後一時間。

 

1時間前

「時間だな」

午後九時十分前、第一〇学区の第十脳神経応用研究施設前の道路を越えたコンビニで張り込みの定番食(擬き)を食しながら私服姿で施設を最後に出る受付嬢の姿を確認する。

ゴミ処理場の隣に大きく聳え立つ高層ビル。一部医療機関も兼ねているのかビル入り口の側面には救援車の車庫も見える。

そんな今回の仕事場(せんじょう)の建物を見ながらニット帽を被った少年が品定めをする視線で、すっかり暗くなった外を丸椅子に座り直し伸びをしながらガラス越しに見据える。

本来、灰神の座って居る席には別の人物が座っている筈であった。

このコンビニが建っていた少なくとも半年以上前から毎月、『同じ日付の同じ時間に同じ席で毎月変わる新メニューを注文する』人物達がいた・・。

その人物達は、1ヵ月置きに入れ替わるかの如く変わっていたが全員が全員同じ日に同じ時間に同じ行動をとっていた。

3ヵ月前の研究者姿の中年男も。

2ヵ月前の大学生くらいの女も。

1ヵ月前の清掃服を着たアルバイトの青年も。

皆、最後に夜9時前後にはこのコンビニの向かいの施設へ向かった。

 

それらは、全て一種の符牒(サイン)である。

彼らが出て行くのを無事見届けたやや逞しい(・・・・・)コンビニの店長が向かい側の施設の警備室へ"運び屋"の確認が取れたことを窺う為の安全策(セキュリティー)なのだ。

 

しかし、今日来る筈の彼、もしくは彼女は灰神がコンビニに入るホンの2分前に元の顔がわからない程ぐちゃぐちゃに潰され・・・血を吸い、叩きつぶした時の蚊のように赤い染みをそのコンビニの屋上に滴らせ、既に事切れていた。

 

灰神は人を一人惨殺した後なのにも拘わらず、否・・・自分に何の関係の無い人間であるからこそ感慨無く餡子入りカツサンドとスカイブルー・オレを流し込むように胃に放り込み。

「・・・微妙」

と、味の感想を呟く。

完食後早々にコンビニの自動ドアを潜り抜けて完全下校時刻により極端に通行量が減った道路を――右側200m先の横断歩道を無視して――真っ直ぐ渡る。

そのまま施設の敷地内へ、表入り口へと歩き続け、フロントを通り抜ける。

照明を60%落としても分かる清潔感と誰もいない筈なのに誰か見られているような焦燥感広がる施設内は大学病院と同じ雰囲気がある。

そのまま目的の部屋まで歩き続ける。

監視カメラの映像画面が全て集中する警備室前の扉で事前に渡された資料に記載されていた合図を9時ピッタリに行う。小さく速く三回、一拍置いて大きく五回叩く。

「お疲れーって、アレ? 随分と若い・・・というより幼い運び屋だな」

「お疲れ様です。こちらに届けられている"荷物"を回収しに来ました」

「ほいほーい、ちょっくら待っててくれ」

警備室から顔を出して来た男は、予想していた人物像より下回っていた"運び屋"に、驚くも、灰神に情報データの詰まったチップが入っている"荷物"の受け渡しを要請され、直ぐにロッカーへと向かい暗証番号を押し鍵を開ける。

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます。それでは――――

記録チップが入っていると思われる黒い兎のぬいぐるみを渡され。灰神は御礼を述べ、ドアを閉めると不可視の(ベクター)を警備室へと伸ばしドアをすり抜け・・・・。

―――サヨウナラ」

椅子がずれる音と、中身の詰まった大きめの布袋が倒れる音とよく似た音が扉の向こうから聞こえた。

 

灰神の任務は『プロデュース』の取り潰し・・・正確には殲滅だが、即ち組織としてその形を成せない程度の損害を生み出すという内容である。

運び屋の真似事は、建前通り施設内の警備室に容易く侵入するために、そしてデータチップを手に入れる為に体制だけ整えただけなので。

もういる必要がなくなった警備員には今日の仕事は、もう上がって貰ったのだ。これからも・・・永遠に。

警備室の扉を開けながら指紋が付かないように、対読心能力(サイコメトリー)用に開発された鑑識用手袋を填めながら(ベクター)で動かなくなった死体を持ち上げ狭いロッカーに無理矢理押し込み、室内の端末を立ち上げる。

ついでに、防犯装置(セキュリティー)を全て落とし内線を寸断する。

 

「多重人格(・・)能力者による能力の発現観測実験に・・・。

能力者同士の脳を入れ替えて発現する能力の種類と強度を調査する実験・・・と、あ!能力者の自分だけの現実(パーソナルリアリティ)が脳のどの部位に宿っているのかを調査する内容・・・って違う違う!!現在使用されている施設と構成研究員のリストは・・・・・これだな」

ぬいぐるみ黒兎の腹から記録チップを取り出すとすぐさま接続し資料通りに載っていたパスワードを入力し内容を読み、目的の資料を見ようとクリックする音とスクロールバーを押す音が頻りに警備室内に響き渡る。

「ふーん、予め渡されていた資料通り暗部関連の実験は五階以上のフロアで執行していて、四階以下のフロアは表向きの普通の脳内神経応用施設を装っているわけか。

つーか、今まで"関係者以外立ち入り禁止"の看板で凌いでいたのかよ!?」

チップを抜き取り、電源を落として灰神は壁に貼り付けられている施設の見取り図を見上げながら(ベクター)をエレベーターの上ボタン前と五階にまで伸ばし拳を作っていた。

「うーん、やっぱりセオリー通り非常階段とエレベーターを駄目にして退路を塞ぐのが一番だな」

メキョ、ガンッ、ミシッ

言い終わるか終わらないかの直前に、五階以上の非常口全てに異質な音が響き渡る。

灰神が(ベクター)に力を込め全ての非常口の扉を歪めたのだ。

金属で出来たドアが熱膨張を起こしたようにその形を崩し、人の力では外すことが不可能なただの壁と成り下がる。

もし、誰かが非常階段側からドアの凹みを見ることが出来たなら握り締めた拳で殴った後を確認することができただろう。

「エレベーターも丁度来たし、さーて仕事仕事」

軽い口調で死刑執行を宣言し、エレベーターが閉まる前に揺れないよう四方の壁を腕ベクターで支え。床と壁の線に沿って(ベクター)をなぞる。

立ち入り禁止と書かれている五階のボタンを躊躇なく押し、エレベーターが上がると床を一階に残しそのまま上がり続ける。

ベクターによる切断能力は3つ。

ひとつめは、ベクターの腕力と握力による単純な力技。

ふたつめは、ベクターを振るう高速移動による手刀ならぬ腕刀。

最後のみっつめは、ベクターを形成する際に発する特有の波動を利用した高周波微振動による切断能力は金属製の床どころか、建物そのものを抉ることも可能である。

今回は、みっつめの高周波微振動を利用した切断能力を使い、チーズを切るかのようにエレベーターの床をくり抜いたのだ。

灰神は落ちないように四方の壁へと透過していた(ベクター)に力を入れて宙に浮いているような状態のままエレベーターに乗り?五階で降り。エレベーターを出て、一番近くの"開発中"のランプが点灯している扉を(ベクター)で無理矢理こじ開け放つ!!するとその中には・・・・・・。

 

 

 

 




意見、質問、感想待っています。

いつになったら原作に突入するのか分かりませんが頑張ります!!



活動報告の方で番外編でのアンケートをしていますのでよろしければどうぞ♪

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